カランコロン… 心地よいドアベルが鳴り、二人の男性がバーに入ってきた。 「こんなところにバーなんてあったんだな」と大柄な男性。 「へえー、なかなかよさげな雰囲気ですね」と中肉中背の男性。 大柄な方は田崎陸也(たざきりくや)40歳。身長190cm、体重105kgと大きく、学生時代はラグビー部で全国にも出たことがある。 現在も筋トレは欠かさず続けており、その肉体は女性のみならず、男性社員からもあこがれの的になっている。 中肉中背な方は上谷俊太(かみやしゅんた)28歳。身長175cm、体重70kg。田崎に比べれば小さいが、引き締まった体をしている。 ふたりは同じ会社に勤める上司と部下の関係。今日は田崎が上谷を飲みに誘い、このバーに訪れた。 「こちらにどうぞ」 カウンターでグラスを磨いていたマスターにカウンター席を案内される。 ふたりは戸惑う。そんなに狭い店ではない。カウンター席が7席、4人掛けのテーブル席がふたつある。 見たところ、客は自分たち以外誰もおらず、どうせならテーブル席のほうがゆっくり出来ていいのにと思った。 ただ案内された手前、断ることもできずふたりはカウンター席に座った。 注文したビールを手に取り「乾杯」と小さな声でグラスを合わせる。 疲れた体にビールが染み入る。半分くらいを一気に飲み、ぷはあと大きくため息をつく。 「いやあ、今回のプロジェクトは田崎さんのおかげで大成功でしたよ」 上谷はうれしそうな顔で話す。「いやいやいや」と田崎は首を横に振る。 「おまえの実力だよ。俺なんてほとんど見ていただけだったしな。上谷に託して大正解だったよ」 大きな手で頭をがしがしと乱暴に撫でられ、上谷は照れ臭そうに笑った。 「すいません、俺ちょっとトイレ行ってきます」 上谷は席を立ち、店の奥にあるトイレへと消えていった。 すでに3杯ほどビールを飲んでいる田崎は、いい感じに酔いが回っていた。 田崎はマスターに目をやる。マスターの胸には綾野と書かれたプレートがついている。 少し白髪の混じった髪、顔に見えるしわの感じ…自分と同じくらいの年齢かなと田崎は考えていた。 綾野は、先ほどから話しかけてくるわけでもなく、ずっとグラスを拭いたり、後ろにある棚に掛けられたカーテンを直したりしている。 上谷がトイレに行きひとりになった田崎は、マスターに「ここでお店始めて長いんですか?」と話しかける。 綾野は一度田崎を見た後、また手元に視線を戻し「今年で18年目になります」と答える。 へえと返事をした後、田崎は少し残っていたビールを飲み干した。 それから改めてバーの内装を見渡す。ここでお店を始める前から建っていた建物なんだろう。 座っているカウンターのテーブルなんかを見てみても、色が剥げたり、小さな傷がついたりしているが、毎日きちんと拭かれたり磨かれたりしているようで、いいつやが出ている。 ずっと大切に使われているのがわかる。 「すごくいいバーですね。気に入りましたよ」 「そうですか。ありがとうございます」 拭いていたグラスを置き、綾野は田崎を見る。急に目が合って驚く田崎。 その様子を見て綾野はほほ笑む。 「あなたと部下の方の会話を聞いて、とても素晴らしい関係だなと思っていたんです。まさに理想的な関係だなあと。上谷さんもあなたのような上司と出会えて、とても幸せだと思いますよ」 突然褒められ、うれしいやら恥ずかしいやらで田崎は顔がぐちゃぐちゃになる。 綾野はテーブル下から、シェーカーを取り出した。そこにお酒を入れていき、シェーカーを振る。 シェーカーが止まり、次に田崎の前にグラスが差し出される。 「あ、あの何も頼んではいないんですけど」 「これは私からのプレゼントです。素敵なお二人の出会いに感謝して…です」 カクテルグラスに注がれたカクテルは、きれいな緑と白のグラデーションだった。 「あ、ありがとうございます」 綾野にどうぞと言われ、カクテルを飲む。結構度数が強めなようで、体の中を通っていくとき、かーっと熱くなっていくのがわかった。 「結構強めなんれすね…」 「ええ」 なんだか力がうまく入らないと田崎は感じた。その証拠に口にも力が入らず、喋りが変な感じになってしまった。 グラスを置いたあとさらにその症状は強くなる。グラスを置いたその手は、重力に従うように力なくだらりと垂れる。 そしてそのまま田崎は、意識を失うようにどしゃっと顔をカウンターテーブルに打ち付けた。 カウンターから出てきた綾野は上谷のいるトイレの方を見たあと、ポケットから懐中時計を取り出し時間を見る。 「…たくさんいじって楽しみたいんですけど…その最中にもどってこられたら嫌ですね」 懐中時計をポケットにしまい、田崎に目をやる。 テーブルにべったりついた顔はアヘったように黒目が限界まで上がってしまっている。 動かない田崎の頭に手をかざす。すると頭のかざしている部分だけがほわっと淡く光り始める。 「きれいな緑色をしていますね。やっぱり私が見込んだとおりだ」 その色によって人の頭の質がわかるということなのだろうか。 時間が経つにつれその色は濃さを増していく。田崎はぴくっぴくっと微弱に震えている。 「では、あなたの"中身"(たましい)をいただきますね」 綾野が手を握ると、光はその手の中に納まってしまった。 そしてさっきまで震えていた田崎は全く動かなくなる。呼吸のたびに上下していた大きな背中も動いていない。 "中身"を抜かれた田崎の体は、ただの抜け殻となってしまった。 手を握ったまま綾野はカウンターの中に戻り、小瓶を取り出す。 その瓶の口の上で手を開くと、あの光がまた現れ、すうっと瓶の中に入っていった。 入りきったのを確認して瓶にふたをする。綾野はその瓶を照明にかざし、うっとりとしながら眺めた。 ひとしきりその美しさを堪能したあとは、インデックスシールに"田崎"と書き瓶に貼り付ける。 「コレクションもたくさん集まってきましたね」と独り言をつぶやき、後ろにある棚のカーテンを開ける。 そこに並ぶは、田崎の"中身"が入った瓶と同じものがずらっと。およそ50個ほどはあるだろうか。 その棚の一番左下にある隙間に田崎の瓶が置かれる。しばらく並んだ瓶を眺めた後カーテンをかけなおした。 綾野は"抜け殻"となり全く動かなくなった田崎のもとへ。 「この抜け殻も仕上げておきますか」と言うと、さっき中身を抜いた際に触れていた部分に左の掌をあてる。 今度は掌の方が先に青白く光る。今度は綾野が新しい"中身"を作っている。 「…………ん…」 田崎の体がまた震え始める。綾野が作り出した中身がゆっくりと田崎の頭の中に入っていく。 「…っ………ぉ」 小さな喘ぎ声を出している以外、特に苦しそうな感じはない。 すうっとすべての光が入ったのを確認して、またカウンター内に戻っていく。 「もう少しやりやすいように座席を配置するべきなんでしょうかね…」とため息をつく。 数分後。田崎がゆっくりと体を起こした。 限界まで上を向いてしまっていた黒目は戻っていたのだが、淡い青白い色に変わっていた。 「新しい中身はどうです?」 マスターが質問を投げかける。田崎は首をこきっと鳴らして、二カッとした笑顔でこう答えた。 「綾野様、ありがとうございます。なんだか生まれ変わったような気持ちですよ」 もともとあった田崎の中身は抜かれ、綾野が作り出した新しい中身がいれられた。 それは田崎の言った通り、生まれ変わったような感覚だ。 「あなたには、中身も、その体も、私のものになってもらいました」 「ええ。そうみたいですね。私、田崎陸也はあなたの奴隷と生まれ変わりました」 田崎は何のためらいもなく答える。 「あなたの部下である上谷さんも、同じように私のコレクションに加えても問題ないですか?」 「それはぜひ。あいつも綾野様の奴隷になれたら、きっと俺みたいに喜びますよ」 「すみません、遅くなりました」 田崎が生まれ変わってからさらに数十分後、ようやく上谷がトイレから戻ってきた。 「なにやってたんだよ」と時計を確認する田崎。 そんな長居をするつもりはなかったが、TwitterやLINE、その他分刻みに更新されるいろいろなものを眺めていたら、結構な時間がたってしまっていた。 「いやー、ちょっといろいろです。へへ」 謝罪もそこそこに田崎の横に座る。 「あれ?田崎さんってそんなおしゃれなもの飲むんですね」 上谷は田崎が飲んでいたカクテルに気が付く。 「これか?マスターが作ってくれたんだよ。その人に合わせてイメージして作ってくれるんだってよ」 「へえー」 「おつくりしましょうか?」 「いいんですか?」 マスターは何個か上谷に質問をした。質問内容は心理テストのようなものだった。 『道を歩いていて目の前から女性が歩いてくる。それは誰ですか?』 『記念日に花をプレゼントすることにしました。何の花を何本プレゼントしますか?』…といったような感じの質問。 質問が終わると、その答えから導き出されたいろいろなお酒をシェーカーに入れはじめる。 生で初めて見るカクテルづくりに上谷は興味津々だ。子供のように少し身を乗り出して見学している。 「おーすげー!これ見てみたかったんですよー」 マスターは小気味よいリズムでシェーカーを振る。誰もが一度は真似をしたことのある動作であろう。 シャカシャカ…と数回振ったのち、カクテルグラスを上谷の前に差し出し注ぎ入れる。 底が青く上に行くにつれて白くなるグラデーションのカクテル。そこにカットされたレモンが添えられ完成。 「どうぞ。上谷さんをイメージして作らせていただきました」 「あ、ありがとうございます!」 嬉しそうに恥ずかしそうにきょろきょろと落ち着かない様子だ。 そんな上谷を見て、田崎は「ガキじゃないんだから。ほら、早く飲めよ」とせかす。 「じゃあ…へへ」 こんなうれしいサービスをされたのは初めてだろう。照れながら飲み始める。 甘めのリキュールが体の中を通って、ぽっぽっと暖かくなる。 「ふはあー…すごくおいしいです」 「よかったです」 綾野が田崎に行った所業を見る限りわかると思うが、上谷に作ったカクテルもただのカクテルではない。 もう一杯頼もうかどうしようか考えていると、上谷は自分の体に力が入らなくなってきたのを感じた。 「どうした?」 「いや…なんか力うまく入らなくて」 上谷はそこまでお酒に弱いわけではない。少し強めのお酒を飲んでも、飲まれることはなくきちんと自我を保つことができる。 それに飲んでみた感じ、そこまで度数が強くないというのも分かった。だから、お酒のせいでこうなっているわけではないだろうというのは理解できた。 でもなぜだか力が入らなくない。念のため、自分が酔ってはいないことを確認するため、立ってみようとテーブルに手をついてみるのだが、やっぱりうまく力が入らない。 「大丈夫か?」 「や…意識はしっかりしてんですけどね」 「少し楽にしたほうがいいな」 田崎はぐいと近寄り、上谷のスーツを脱がせ始める。 「だ、大丈夫ですよ。苦しいとかではないので」 いきなり脱がせられたことや、唇が付くくらいまで接近してきた田崎の顔にドキッとしながらも、やめてもらうようお願いする。 しかし田崎はそんなことに耳を貸さず、そのまま上谷のネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外していく。 できれば実力行使で田崎の行動を止めたいのだが、全く力が入らない。抵抗することもできずワイシャツを脱がされ、上半身は肌着だけになってしまった。 「もう大丈夫ですから!」 つい大きな声を張り上げてしまった。上谷はこんな状況になっても、店の雰囲気にそぐわない声を出してしまったとマスターの顔色を伺ってしまう。 しかしマスターは、どうかしましたか?といった具合にふたりを眺めている。ここでようやく上谷は今の状況がおかしいことに気が付く。 自分がトイレから戻ってきて、田崎さんはめったに飲まないカクテルなんか飲んでいた。次に提供されたカクテルを飲んでから体に力が入らなくなった。 そして田崎さんは自分の言うことに全く耳を貸さず服をどんどんとはいでいく。マスターはこの状況に何も口を出さない。 これはなにかよからぬことが仕組まれているのではないか。自分がトイレに行っている間になにかされてしまったのではないか。 なんてことを悠長に考えている間にベルトが外され、チャックを下ろされ蒸れたボクサーパンツがさらされていた。 「ちょっ!さすがにそれはまずいですって!」 「…ひひ…すげえいいにおいがする…」 上谷は田崎の行動に驚愕する。さらけ出されたボクサーパンツに顔をうずめたのだ。しかもいいにおいがするなんていいながら。 とても尊敬していた上司がまさかこんな趣味があるなんてと…少しの絶望を感じたが、押し寄せる刺激によってすぐに消されてしまった。 「やめっ…たざきさっ…」 押し付けられた鼻から田崎の熱い呼吸が伝わってくる。俺にはそんな趣味はないと何度も頭を振って正気を保とうとする。 しかし、不思議にもその伝わる熱が気持ちよく、また先輩である田崎が自分の股間顔をうずめているという状況が妙に興奮するのだ。 自分の思っていることと、体の反応が矛盾してることが頭を乱していく。徐々に上谷の呼吸が荒くなり、ついには上谷の性器は勃起してしまった。 「…うへへ…でけえな…上谷のちんこ…」 田崎は勃起した性器をパンツの上から扱いていく。大きくごつい手の刺激がびりびりと体に伝わる。 「んぉっあ……っおあ……きもちっ…」 上谷の頭の中では、さっき感じた矛盾が正常なものへと改変されていく。 はじめに感じた疑問などは、もうすでに頭の隅に埋もれてしまい、疑問にすら感じることはできなくなっていた。 田崎は激しくしごいたり、鼻をつけ匂いを堪能する。さらにはパンツの上から上谷の性器を舐め始めた。 「はっ…っあ……あ…は…」 体が震える。力が入らない故、流れてくる快楽の信号が直に体や脳に伝わり犯されていく。 そしてついにパンツが下げられてしまい、勃起した性器がさらけ出される。 若い割に立派な性器に田崎はさらに興奮する。 「んっうっふ…じゅる……じゅぶ……じゅるる」 躊躇なく性器にしゃぶりつく。当然ながら田崎はフェラチオなどしたことはなく、そのプレイは雑なものだった。 しかしほとんど性行為の経験がない上谷にとって、雑な方が刺激が強く感じられていた。 「……んあ…も…もっろ……なめ…なめて…」 上谷の頭は快楽のみで埋め尽くされる。だらしなくなった顔は赤みを増し、びくびくと身体を震わせながら涎を垂らす。 綾野はその様子をずっと満足そうに眺めていた。 「少し度数を弱めてしゃべれるようにしてみたんですが、それもなかなか実況してくれているみたいで…いいものですね」 そろそろいい頃合いかと、上谷の後ろに回る。 「田崎さん、もっとスピード早めてください。そろそろ中身を抜きますから」 「はい、綾野様。…じゅる…じゅるじゅぷ…」 「ひっぎぃっ!…いっ…うあ」 動きが速くなり、さらに吸い上げる力が強くなる。 綾野は右手を上谷の頭の上にかざす。田崎の時と同様に手を当てられた部分が緑色に光りはじめる。 「いっ…や…あっ…あ…?…あ…ぁ」 感じている快感とは別に、自分の中から魂が抜かれる感覚が上谷を襲い始める。体の震えは増していく。 「っ…だめっ…だ…たすけっ……っぐ…いっ…いくっ……っっ!」……びゅるるるっ……びゅるっ…… 濃ゆい精液は田崎の口に放たれた。と、同時に上谷の中身が抜かれた。 上谷は全く動かなくなったが、溜まっていた精液はどぷどぷと田崎の口に放たれつづけていた。 上谷の中身が入った瓶は、田崎の瓶の横に並べられた。 「どうですか、ふたりとも。中身がこうやって並んでいる様を見て」 綾野を挟むように田崎と上谷が立っている。 「ええ、とても素敵だと思います。私の魂も喜んでいると思いますよ」と田崎。 「綾野様のコレクションなれることはとても素晴らしいことなのに…あんなにも反抗してしまったことがとても恥ずかしいです」と上谷。 上谷もあのあと新しい中身を入れてもらい、綾野の奴隷として生まれ変わった。 その目は、田崎と同じく淡い青白い色に変わっていた。 「おふたりにもぜひ、私のコレクション収集に協力していただきたいんですよ」 綾野がそう言うと、ふたりは顔を見合わせ笑顔でうなずく。 「それはもちろん。協力させていただきますよ。な、上谷」 「はい。綾野様のご命令ですから。これからたくさんコレクション、増やしていきましょう」 今日もまた、上出来なコレクションが増えたことに、綾野はとても満足していた。