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『盗賊の鰐人が魔法使いの兎におしっこさせてもらえない話』

鰐人の盗賊が自分よりはるかに小さな兎の魔法使いに弄ばれ、プライドをへし折られ屈辱を味合わされた挙句失禁してしまう話です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  珍しく虫の鳴き声の聞こえない、蒸し暑い夏の夜。一人の鰐人の男が川の中ほどで沐浴に興じていた。  降りしきる柔らかな月の光を浴びて艶やかに輝く緑の鱗には、夥しい数の傷跡が刻まれている。四肢は大層逞しく、全身に筋肉の鎧を纏っている。その雰囲気の頑強さは、強固な岩の塊を想起させるものであった。  肉体の強靭さにふさわしく、その面構えはやはり凶悪だった。鉄すらかみ砕きそうな大顎に、見る者全てが委縮するような鋭い双眸。明らかに堅気の雰囲気ではない。  身を清め終わり、一糸まとわぬ姿で川より出た鰐人は、軽く身体の水気を払うと近くの木の枝に掛けてあった褌を手に取り、身に着けた。その褌の赤色の染色は使い古された為に滅法くすんでおり、またあちこちがほつれ、一部破けているところさえあった。褌というよりぼろ布と言った方が正しいほどの摩耗具合だが、今の鰐人は様々な事情からこれを身に着ける他になかった。  風が吹くたびに、布に覆われているはずの股間がすうすうとして心地悪い。鰐人は溜息を吐き、それからその大柄な身をぶるりと震わせた。先程たらふく飲まされた水が降りてきたのだろう、下腹部が張っている。尿意が溜まってきていた。  鰐獣人は執拗にきょろきょろと周囲を確認し、僅かに逡巡する。そして誰もいないことを把握すると、意を決したように勢いよく褌の前をずらしてスリットを露出させた。そのまま手ごろな草藪の前に立ち、下腹部に力を込める。  ぐぐ、と熱い感触が膀胱より溢れ、尿道に迸る。大層溜め込まれた小便の流れが尿道の先より飛び出ようとした矢先―― 「君、なにをしているんだい」  鰐人の背後から、まだ舌足らずな少年の諫めるような声が掛かった。その声に鰐人は僅かにばつの悪そうな顔をし、出掛かった小便を慌てて引っ込める。 「なんでもねえ」 「隠さなくても。オシッコしたかったんでしょ」 「……チッ」  鰐人は声の主に向け、忌々しさを隠さない様子でそう吐き捨てる。その語気には怒りがにじんでいたが、声の主は茶化すように笑うばかりだった。  気勢が削がれたとばかりに軽く舌打ちをしながら、鰐人はスリットにペニスを引っ込め、ずらしていた褌の前を元に戻す。  鰐人が振り向くと、そこには兎獣人の少年がこれ見よがしな笑みを浮かべながら立っていた。みすぼらしい褌一丁の鰐獣人とは違い、魔法の糸で編まれた鮮やかな紫色のローブと暖かそうな布地の茶ズボン、そして先端に宝石の埋め込まれた豪華な金杖を片手に持っている。まさに魔法使いと言った出で立ちであり、漂わせる雰囲気は鰐人と対照的に高貴なものであった。  兎獣人の少年は鰐人のごつごつとした身体をいやらしい手つきで撫でまわし、何かに気付いたようにむっと口を尖らせる。 「全く、奴隷の分際で勝手な事をしては困るよ。ボク、水浴び以外の『許可』は出してないよね?」 「俺はテメエの奴隷じゃねえ……!」 「まだそんなこと言ってるの。物分かり悪いなあ」  鰐人は兎の魔法使いの手を振り払い、大の大人ですら泣き出しそうな迫力を込めた眼光で彼を睨み付ける。しかしその凄みは一切の効力を持たず、兎の魔法使いは呆れたような口ぶりで溜息を吐いた。  魔法使いが何らかの魔術を唱えると、鰐人の身体に夥しい量の魔術文字が浮かび上がる。赤く瞬くその文字は鰐人の全身をぐるりと走り、まるで鎖に縛られているかのようであった。 「いいかい。君に掛けたこの魔法は、隷属魔術っていうの。この魔術文字には一つ一つ意味があって……えーっと、例えばこれ。『主人に対する一切の暴力を禁止する』とか。君がボクに対して殴りかかれないのは、暴力を禁止する隷属魔術を掛けているからなんだね」  元々が罪人に対する処罰と拘束の為に開発された隷属魔術は、掛けられた対象の行動を制限することに特化していた。平たく言ってしまえば、なにに対しても制限を掛けることができる。倫理的観点より生命に著しく危害を及ぼすような制限は禁忌とされていたが、そんなことは兎獣人にとっては関係のないことだった。 「君はボクに対して危害を加えることは出来ないし、ボクの命令なしではなにもできない。ね、主人と奴隷って感じでしょ?」 「……」  嬉々とした様子で語る兎獣人の少年の表情に、鰐人は底知れぬ恐怖を抱いていた。それと同時に、己の運のなさを恨む。  鰐人は山賊だった。街より遠く離れた山道を住処とし、旅人たちを襲うことで糊口を凌いでいた。時折討伐隊の冒険者達を差し向けられることもあったが、軟弱な冒険者など屈強な鰐人の敵ではない。素っ裸に剥いて街へと送り返してやったことさえある。  まさに敵なしといった状況の鰐人は、ある日護衛もなしに一人山道を歩く兎獣人の子供を見つけた。軟弱な体躯に優雅な出で立ちはまさしく貴族の子供といった様子で、鰐人にとっては鴨が葱を背負ってのこのこ現れたようなものだった。  一瞬で打ちのめし、いつものように金目のものを踏んだくろうとしたのだが……。 「しかし、恐怖の山賊様っていうのも思ったほどじゃないよねえ。護衛の一人もいないなんて、普通は警戒するとおもうのだけど」 「……黙れ」  鰐人のことを察知していた兎獣人は、襲われるふりをして寧ろ誘い込んだのだった。兎獣人に触れることすら叶わず、雷撃の魔法によって一瞬で意識を奪われた鰐獣人は、目が覚めたら全身に夥しい量の隷属魔法を行使されていた。  そこからが鰐人の地獄だった。目を覚ますや否や眼前の兎獣人に殴りかかろうとした鰐人は、懲罰として全身を何度も焼かれるような痛みにのたうち回る羽目になったのだ。何度かの、山賊生活の中ではかつて味わったことのない痛みの後、それが隷属魔法によるものだと鰐人は教わり、そして己の身に無数の禁止事項が与えられていることを理解した。  羅列すればキリがなく、そのどれもが恐ろしいものだった。暴力の禁止や逃走の禁止といった事項で魔法使いの隷属から脱することも叶わなくなり、魔法使いの許可なしでは睡眠や食事をとることすら叶わない。衣服の着用すら制限されており、情けとばかりに褌の着用のみ辛うじて許されているのが逆に屈辱的だった。 「ま、いいや。ほら水浴び終わったなら戻るよ。明日も早いんだから早く寝ないと」 「……ま、待て」  しかし、それすらも今の鰐人にとっては些末な問題だった。今一番鰐人を悩ませていることは、裸同然の姿でいなくてはいけないことではない。 「ん? 何?」 「……」  兎獣人を呼びとめたが、二の句が継げずぎりぎりと歯噛みする。  その言葉を言うのは、あまりに屈辱的だった。そんなことの許可を強請るなど、まるで親の言うことを聞くしかない子供のようなものであるからだ。  しかし、言う他にない。もはや限界は近く、屈辱にひるんでいる暇などなかった。 「しょ、ションベン……ションベンをさせてくれ……」  大柄に似合わないか細い声で、鰐人はそう言った。両手で股を抑え、ぐっと前かがみになって縮こまっている。時折落ち着かない様子で足踏みをしているところを見るに、限界は相当近いらしい。  兎の魔法使いが掛けた隷属魔法のひとつに、許可のない排泄を禁止するというものがあった。その為、用を足すのにもわざわざ兎のお伺いを立てなくてはならないし、兎に見られながら用を足すしかない。その時間が、鰐人にとっては一番の屈辱を与えるものであった。  その凶悪な見た目にそぐわない可愛らしいポーズに、兎の魔法使いは思わずぷっと噴き出した。羞恥に顔を赤く染めるその様子ははたから見ていると大層愉悦的で、見ていて飽きることはないだろう。 「そんなにオシッコしたいんだ。……ま、昼前から許可与えてないし、それもそうか」  兎の魔法使いは、隷属のまま数日が過ぎてもなお従順にならない鰐人を躾けるべく、あえて様々な生理現象の発散を禁止させることにしていたのだ。ある日は一日の食事を禁止し、またある日は一睡もさせないまま長距離を歩き回らせたこともあった。しかし鰐人は思っていたより頑丈で、多少堪える素振りは見せても服従させるほどの苦痛とはならなかった。 「頼む、今日は一度しか行ってねえ……。このままだと、破裂しそうだ……!」  しかし、排尿制限は思ったより鰐人の屈辱を促した。朝一の放尿を拒否し、そのまま昼まで連れ回したところ、鰐人は随分と堪えた様子で尿意に苦しんでいた。漏らしてしまえば唯一の衣服である褌が使い物にならなくなってしまうという恐怖もあるだろうし、なにより大の大人が分別の付かない子供のように小便を漏らしてしまうということが、鰐人には耐えられなかったらしい。  そのままもだえ苦しんだ挙句失禁する様子を揶揄ってみてもよかったが、兎の魔法使いは調教には緩急が必須であることを理解していた。そのため、限界寸前のところで許可を出し、鰐人はすんでのところで失禁を免れたのだった。 「なあ、頼むよ……もう我慢できねえ……」  鰐人は地獄のような羞恥に曝されていたが、しかしまだどこかに希望を抱いていた。本当に漏らす寸前になれば兎の魔法使いは放尿の許可を与えるだろう、という見通しだった。しかし、その甘い願望は打ち砕かれることになる。 「うーん、そうだなあ。君が水浴びの後、まっすぐ戻ってきて許可をねだってたなら考えなくもなかったんだけどね」  にい、と兎の魔法使いは意地の悪い笑みを浮かべる。 「君、さっきボクの許可なくオシッコしようとしたでしょ。言うことを聞かない悪い子には、お仕置きが必要じゃない?」  兎の魔法使いが何を言わんとしているかを察し、鰐人は憔悴したように顔を歪めた。 「あ、あれは……違う……そんなつもりじゃ……」 「違わなーい。よし決めた、言うことを聞かなかったペナルティとして、朝までオシッコを我慢しようか」 「あ、朝まで……!?」  鰐人は驚愕した。今ですら漏らしそうなのに、朝まで我慢できるわけがない。 「ふ、ふざけんじゃねえ! そんなの、漏らせって言ってるようなもんじゃねえか!」 「うん、そうだよ。あ、でも漏らしたら禁を破ることになっちゃうから、またビリビリしちゃうね」  兎の魔法使いは、杖の先で鰐人の下腹部をとんとんと小突く。軽く叩かれただけなのに、鰐人は大仰にうめき声をあげる。くすんだ赤い褌にじゅっと熱いものが染み、鰐人は慌てたようにぎゅっと股間を抑え込んだ。もしお漏らしをしてしまえば、また禁を破ったことによる懲罰の苦痛が与えられることになる。それだけは避けなくてはならない。 「ひ……! ふぐっ、ふーっ……て、めえ……」 「モジモジしながら凄まれても全然怖くないよ? さ、戻ろう」  なおも笑みを崩さない兎の魔法使いに引っ張られ、鰐人はよたよたとした足取りで野営地へと戻る。一歩一歩大地を踏みしめるたびに、足を伝った振動が膀胱をたぷたぷと揺らし、その都度強烈な尿意に全てを垂れ流してしまいそうになる。  野営の場所には小さな火が炊かれている。兎の魔法使いは火より少し離れた位置に腰掛けると、荷物より小さな手記とペンを取り出した。時折愉快そうな笑みを浮かべながら筆を走らせているが、今の鰐人にとってはどうでもいいことだった。 「あ、日記を付けてから寝るから、君先に休んでていいよ。地べただけどね」  隷属の憂き目にあってからというもの、鰐人の処遇は劣悪にもほどがあった。寝具など与えられるわけもなく、火にあたって暖を取ることすら気まぐれに禁止される。冷えた地面に裸同然の格好で寝転がるのだから、当然体温は奪われていく一方だ。今が蒸し暑い夏の夜だから辛うじて命はとりとめているものの、もう少し日が経てば命に関わるほどの寒さに襲われるに違いない。そしてなにより、冷えは尿意を誘発するものだった。 「ん……ぐうう……クソぉ……」  言われるがままに地面に横たわり、早く朝を迎えたい一心で目を瞑るも、下腹部を暴れ回る尿意はいかんともしがたい。目を開け、両手で股間部分を揉みしだき、ごろごろと転げまわったところで尿意がどこかへと消えていくわけでもない。 「ションベン……してえよぉ……!」  屈強で凶悪な鰐の山賊は、その姿にあまりにも似つかわしくない声色で兎の魔法使いに訴えた。今にも泣きだしそうに表情は歪み、子供のようにぎゅっと身体を縮こまらせたまま、かたかたと生まれたての小鹿のように震えている。最早鰐人にプライドはなく、排尿欲求のみが彼を突き動かしていた。  そんな様子に憐れみを覚えたのか、兎の魔法使いは筆を走らせる手を止めて、大げさにため息を吐いた。 「うるさいなあ。……そんなにオシッコしたいなら、許可あげよっか?」 「……! さっさと寄こせ! 変態野郎!」 「あ、そういう態度取るんだ。ちょっとイラっとしちゃったし、やっぱ許可は取り消しかなー」  ペンをくるくると回し、ふざけたように笑う兎の魔法使い。その挑発的な素振りに鰐人は煮えたぎるほどの怒りを覚えたが、ここで牙を剥けばその後の顛末は目に見えている。必死に怒りを抑え込み、鰐人は地面に座りなおして兎の魔法使いに頭を下げた。 「しょ、ションベン……させてくれ……」 「えー。もうちょっと丁寧にお願いしてよ。『もう我慢が出来ません。どうかこの哀れな奴隷にオシッコをさせてください、ご主人様』……でしょ?」  鰐人の山賊にとっては精一杯の懇願であったが、兎の魔法使いにとっては物足りないものらしい。文面を見るに、自身を哀れな奴隷だと称するまで、鰐人に排尿を許すつもりはないようだった。  その言葉を口にするのは、あまりにも屈辱的だった。今まで暴力で他人を支配し、ありとあらゆるものを己の思うがままに奪うことが出来た鰐の山賊にとって、まだ年若く、しかも一見か弱い兎の少年に服従を誓うことはプライドが許さない。  しかしそんな少年の前で耐えきれずに小便を漏らせば、この先ずっと揶揄われ続けるだろう。大の大人がオシッコすら我慢できず漏らしてしまったなど、もしそんな噂がばら撒かれてしまえば恐怖の山賊は形無しだ。情けないお漏らし小僧として馬鹿にされ続けるなど、気が狂ってしまいそうだった。  逡巡は、しかし長くは続かない。尿意の限界はすぐそこまで迫っていて、スリットの口を必死に引き締めることでどうにか溢れるのをこらえている状況だった。時折膀胱の中身が流動し、その度にジワリと褌が雫でしみていくのが分かる。  意を決し、鰐人は口を開いた。 「も、もう……我慢が、出来ません……。ど、どうか……この、哀れな奴隷に……お、オシッコを……させて下さい……!」 「それだけ?」 「ご、ご主人……さま……!」  プライドをかなぐり捨て、鰐人は屈辱に歯ぎしりしながら請い求めた。その顔は様々な感情でぐちゃぐちゃに歪み、目尻にはじんわりと涙さえ浮かべている。産まれてからこの方味わったことのない羞恥の連続に、鰐人の心は殺意の炎によってぐつぐつと煮立っていた。 「偉い偉い、良く言えました。ご主人様も鼻が高いよ」  そんな殺意のこもった鰐人の眼差しすらも受け流し、兎の魔法使いはパチパチとわざとらしく拍手をした。ささやくように何かの魔法を詠唱すると、鰐人の股間部分に走っていた魔法文字が一瞬消え、別の文面に書き換えられる。 「さて。これで許可は与えた。存分にオシッコしてくれて構わないよ。――ただし、褌は脱いじゃだめ」 「……は?」  鰐人は言葉を受け、呆気にとられたように口を開けた。くすくすと愉快そうに笑う兎の言葉が、なに一つとして理解できない。 「だからあ、魔法の文面を変えたの。『おしっこしてもいいけど、褌は脱いじゃダメ』って命令にしたのさ!」 「なっ……そんなの滅茶苦茶じゃねえか! クソ、ふざけんな――ぐああっ!」  褌を脱げなければ、それはただの失禁と変わらない。余りの理不尽に反抗するべく褌に手を掛けた鰐人は、しかし脱ぐことはおろか布地をずらして局部を露出させることすら叶わなかった。迸る電熱が、鰐人の身を打ち砕く。 「ぐが、がががっ――ぎゃあああっ!」  ばちばち、ばちっ!  人の身を焼くには十分すぎるほどの火力を持った稲妻が、鰐人の身体を激しく揺さぶった。  電撃に身体の自由を奪われ、一瞬の弛緩が訪れる。引き締めていた膀胱の出口が力を失い、スリットから金色の奔流が勢いよく迸り、鰐人は成すすべなく小便を撒き散らした。 「う、ああっ……はぁあ……っ」  電撃に身を焼かれ、鰐人は脱力したままその場に倒れ込んだ。我慢のタガが外れ、スリットからはちょろちょろと小便が染み出ている。辛うじて局部を隠すように被さった薄汚い赤褌に、じんわりと赤黒い小便染みが広がっていった。  限界の間際まで溜め込まれた小便は一層濃く、噎せ返るような臭気があたりに立ち込めていく。誰がどう見ても、排尿ではなく失禁の光景であった。 「わあ、いっぱい出るね」 「……く、ううッ」  屈強で豪気な鰐人が、幼子のように身を震わせ小便を垂れている。解放の快感に浸りながらも、他人に小便の様子を余すところなく観察されているという事実が羞恥を促し、鰐人の目尻にはうすら涙が浮かんでいた。  余りにも異様で倒錯的な光景に、兎の魔法使いは心の内で下卑た笑みを浮かべていた。力では到底叶わないであろう存在を屈服させたも同然なのだから、快感を感じるのも道理なのだろう。  鰐人の小便はまだ止まらない。破裂するか否かの瀬戸際にまで膨らんでいた膀胱から、絞り出すようにして小便を迸らせる。  じゅわ、じゅわわと叩き付けるような水飛沫に、酷い臭気の湯気が立ち上っていた。こんな姿、到底他人になど見せられるようなものではないというのに。 「はーい、しーしーしましょうねー」 「っ、あっ……ああ……っ!」  兎のブーツの踏みつけが下腹部をぐりぐりと圧迫し、鰐人は呻き声をあげた。圧に呼応するようにして、小便の勢いがより強くなる。自分よりか弱く小さな存在に導尿されているという事実が、余りにも屈辱的だった。  しばし経ち、僅かに冷静さを取り戻した頭で周囲を見やれば、自身を囲むようにして大きな水桶をひっくり返したような小便溜まりが広がっている。 「はーっ、はーっ……っ、ああ」 「これ全部、君ひとりで出してるんだよ。……うえ、くっさいなあ」  つんと鼻を突く臭気に、兎の魔法使いは揶揄うように鼻を摘まんでみせる。 「あーあー、褌もびしょびしょだ。これ、もういらないよね」  ぱちん、と兎が指を鳴らすと、小さな風の手が杖先から伸びて鰐人の褌を掠め取る。びくびくと痙攣するスリットが丸出しになり、吹き抜ける風が未だに小便の染み出しているスリットを撫で上げる。敏感な場所をなぞられ、鰐人は羞恥に歯を食い縛った。 「ま、待て……褌、かえせ……っ」 「やーだ。そうだなあ、こうしちゃえ」  兎の魔法使いがぷつぷつと小声で呟くと、風の手に摘まみ上げられた赤褌がゆっくりと移動を始める。行く手の先には、野営の為にこさえられた小さな焚火があった。 「お、おい……やめろ、それだけは! 着るもんなくなっちまう!」  これから何をされるのか、それは鰐人にも容易に想像の付く事柄だった。 「やだ」  褌を焚火に投げ込み、燃やしてしまおうという算段。鰐人が必死になって止めようとするが、無慈悲にも兎の魔法使いは褌を火の中へと投げ入れた。水気を含んだ布を被せられ、火の勢いが落ちた焚火に向け、魔法の火種を吹き付ける。  ごう、と火柱が立ち昇り、同時にいっそうの臭気があたりを包んだ。赤く広がる炎の中に赤褌は完全に溶け、最早影も形もない。 「あはは! これでおちんちん丸出しだね」 「ふ、ふざけんな……ふざけんなッ、クソガキ! てめえ、どうしてこんなこと……!」  褌を身に着けていたことで、辛うじて崩壊の瀬戸際で食い止められていた自尊心は、素っ裸に剥かれたことで今やもう見る影もない。自分の背丈の半分以下の、大して力も持たないような子供に弄ばれ、挙句の果てにお漏らしまでしてしまうなど、こんなバカな話があってたまるものか。  最後の抵抗とばかりに兎の魔法使いを睨み付けようとすると、丁度倒れた鰐人を見下すような兎の視線と目が合った。 「どうして? ――君は悪い盗賊なんだから、服なんか着てちゃダメでしょ?」  冷たい、冷たい氷のような視線と、一切の感情の感じられない言葉。小さな兎の中に渦巻く、なにか途方もなく恐ろしいものの一端に触れてしまったようで、鰐人は身震いをした。 「悪い奴に権利なんかあっちゃダメなんだよ。ごはんを食べることも、寝ることも、トイレに行くことも、息をすることだって本当は許しちゃダメなんだ」  でもね、と兎の魔法使いは杖を振り上げた。風の手が鰐人の首を締め上げ、ギリギリと力を強めていく。 「ぐ、が……かひゅっ……」  電撃に焼かれて弱った身体では魔法を振り払うことも出来ず、じたばたと身じろぎをしても首は締まっていく一方だった。  取り込まれる酸素が次第に薄れ、視界が薄暗く、耳がぼんやりと遠くになっていく。消えていく意識の中で、鰐人は兎の魔法使いの悪魔めいた微笑みを見る。 「でもね、ボクは優しいから。君をきちんと更生させてあげる。まずは……そうだな、明日は王都への街道に合流するつもりだから、きちんと旅人さん達にご挨拶すること。百人に挨拶を返されたら、一回おしっこさせてあげよう」  締め墜とされた鰐人の口端から、こぽりと白い泡が漏れる。完全に気絶してしまったようで白目を剥きつつ、まだ膀胱に残っていたらしい残尿がスリットの割れ目からちょろちょろと噴き出していた。  兎は蠱惑的な笑みを見せ、小便だまりの中に伏せた鰐人を舐め回すように眺める。 「最も、服も着てないような怪しい人に挨拶返してくれる人なんていないだろうし、膀胱がおかしくなっちゃうのが先かなあ」  たのしみだなあ、という兎の呟きが、夜の闇の中へと静かに溶けていった。


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