SamuZai
烏川
烏川

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悪魔の追想1.5

幼い頃から、自分が他の人とは何かが違うという自覚はうっすらとは持ち合わせていた。 一緒にサッカー頑張ろう、と爽やかな笑顔を浮かべていたあの友人が、次第に笑顔を見せなくなり、グランドに姿を見せなくなったのはまだ小学2年生の時だ。 一緒に同じ中学に行こう、と机の上で教科書を並べていた友人が、次第によそよそしくなり、卑屈な上目遣いをするようになったのはいつ頃のことだったろうか。 実の両親とすら交流の少ない一人っ子の自分だ。 誰かが近づいてくると、どうにかしてその人と仲良しになりたい、と自分なりに心を砕いてきたつもりだった。 一緒にいてとても楽しそうにしているクラスメート達や、小説の中の友情物語などを目にするたびに、自分もあんな輪の中にいる人間でありたいという気持ちはある程度物心ついたころから、黒田圭輔の中にはずっとあった。 なのに、相手とより深い仲になり、自分を曝け出せば出すほど相手の心も体も、いつもどこか遠いところに行ってしまう。 自分という人間は、何か余程常人として欠けたところがあるのだろうか、と10代に差し掛かったころの圭輔は思い悩むようになっていた。 そんな思春期らしい悩みを抱えたまま、入学した中学校でバスケ部に勧誘された。 タッパの良さを買われたのもあるだろうが、5年生からバスケクラブに助っ人で入らされていた経験もあり、特に何か入りたい部活も無かった彼は、自分などで役に立てるならと2つ返事で了承した。 下ろしたての体操着に腕を通しながら、思ったものだ。 中学でこそは、誰かとても仲の良い友人を手に入れたい。一人ぼっちの寂しい奴で居続けるのはそろそろ、つらい。 みんな、なんであんなに簡単に仲良しの友達や仲間を作れるんだろう。 笑顔を向けあって、肩を抱き合って、お互いの事を誰よりも知ってます、といわんばかりの彼らの関係性に憧れた。 自分など、相手と心を通わせれば通わせるほど皆遠くへ行ってしまうというのに。 友達が欲しかった。 自分に何か悪いところがあるのなら、それを指摘してくれるような友達が。 そのためだったらどんな試練でも、苦労でも乗り越える心づもりでいた。 自分に出来る事なら、その友達が喜ぶことを、どんな事でもしてみせる。 それくらいの意気込みで、入部したてのバスケ部の歓迎会にも臨んでいた。 歓迎会にはまだ早い時間帯、太陽もまださんさんと黄色い空の下、体育館で圭輔は彼と出会った。 まず最初に彼を目にした時、一番に思ったのはなんでこんな小さい子が中学校の体育館にいるのか、ということだった。 反射的に浮かんだそんな疑問は彼が身に着けているゼッケンが目に飛び込んできたことで状況的に解消されたが。 それでも、目の前の男児が自分と同世代とは思えないという根本的な疑問は解消されない。 短く切りそろえられた髪の下の、やはり幼い面立ちは圭輔にえも言われないような印象を与えた。 丸っこくて大きな瞳は琥珀色をして、まるで宝石のようだと思った。 日焼けでもしているように鮮やかな褐色の肌は視線でどこを辿ってもそのまま吸い込まれたくなるような滑らかな質感を呈していた。 全体的に男児然としている、そんな同級生の姿に圭輔は自分でも驚くほどに心をかき乱された。 彼がもし同じバスケ部の新入部員なのだとしたら、なんとしてでも仲良くなりたい。 友達を選り好みするつもりはないが、こんな子がもし自分の友達になってくれたら、これからの中学生活がどれだけ素晴らしいものになるか。 全うに友達付き合いなどこなしたことの無い圭輔にはそれこそ想像もつかなかった。 一生懸命、勇気を振り絞って圭輔は彼、姫原智希に声をかけた。 どうしてそんなに見た目が幼いのか。 どうしてそんなに身体がちっちゃいのか。 何気なさを装って、自分が一番気になる事を問いてみた。 その結果、相手の少年は拳というとてもわかりやすい返答を圭輔に対して与えてくれた。 出会って3秒で一目ぼれし、出会って3分で嫌われるという、それは圭輔としても新記録を弾き出した歴史的瞬間であった。 顧問の仲裁を受けた時も、圭輔には自分の何が良くなかったのかという事は正味のところは分かりかねた。 人のありのままをあからさまに表現するのは良くない、というようなことをそれとなく諭されたが、それの何が良くないのか、理屈では理解できても感覚ではわからない。 自分だったら自分の容姿や能力の事を正直に言われてもなんとも思わないし、今後の参考にしようと思うだけだろう。 けれど、あの姫原という少年が、自分の言ったことで何か彼の琴線に触れたのだったら、一刻も早くフォローを入れて自分に対する印象を少しでも回復したい、と思った。 彼と仲良くなりたい、という気持ちは頬をぶたれた後でも全く萎えてはいなかった。 「姫原。」 呼び止めると、相手は憮然とした顔はしていたけど、一応振り向いてくれた。 「俺は、姫原がどうしてそんなに子供っぽいのかが気になっただけで、別に姫原の悪口を言ったつもりはないんだ。」 自分なりに真心を込めて、思いの丈を伝えようと思った。 「それに、体が小さくてもバスケで出来る事は沢山あると思う。そういうポジションも、バスケにはある。だから、自分がそんなに小さい事をあんまり卑屈に思わなくてもいいと思う。」 一生懸命言葉を選んで、自分には決して悪気は無かった、姫原に対して気分を害する意図があったわけじゃなかった、そういうことを圭輔なりに精一杯伝えたつもりだった。 姫原と、友達になりたい。 こんな子と仲良くなれたら、自分の人生これからもっともっと楽しいものになるだろう。 自分に出来る精一杯をぶつけた後の、姫原智希の反応は、それでも圭輔の思うようなものにはならなかった。 「………お前なんか…っ…だいっきらいだ…っ……!!!!!!!」 心なしか、うっすらと涙を浮かべながら、彼はそんな言葉を圭輔にぶつけた。 その彼の姿に、圭輔の方も天地がひっくり返るほどの衝撃を受けた。 仲良くなりたいと思った相手に、出会って半日も経っていないそんな相手にここまで嫌われる自分というものが、やりきれなかった。 それ以来、姫原智希は自分との接触を極力避けるようになり、けれど、そんな相手が他のチームメイト達とすぐに仲良くなって自分には見せないような笑顔を見せるようになると、そんな光景を目にするたびにどうしようもない劣等感を覚えた。 後日、何気なくおもちゃ屋のショーウィンドウに通りかかると、反射的に姫原のあのあどけない顔が頭に浮かんで立ち止まることもあった。 自分には姫原を害する意思は無い、むしろ仲良くなりたい。 そんな気持ちを示すためにプレゼント、という手もある。そんな考えさえ浮かんだ。 花束…は、男の子相手には少し違うだろうか。 2か月近く思い悩んだ末、部の顧問から姫原の勉強を見てやるようにというお達しを貰った。 まさに願っても無い、としか言いようのない指令だった。 姫原は数学が苦手なのか。 それは、圭輔にとっては思うだけで楽しい、そんな事実だった。 数学なんて苦手、なんて思うほどの科目だったろうか。 そう思いつつも、教科書を前に困ったり悩んだりしている姫原の姿を想像し、そんな姫原に感謝されたり見直されたりしている自分を想像すると何とも言えず心が震えた。 その日の6限が終わると、すぐ先にある未来への希望を胸に圭輔は姫原智希の教室へと早々に足を進めたのだった。

Comments

こんばんは。はじめまして、素敵なコメントをありがとうございます! 私的には皆ハッピーエンドのつもりなんですが…w 太一は少年夢魔と赤ちゃん作って幸せだし、俊明もガイズとデキちゃってベタベタ、という。 仰ってくださっている通り、追想はこれまでとは違った雰囲気で始まって、終わらせようと思っています。FANBOXならではの楽しみも追及していこうと思います。それでは、よろしくお願いします!

烏川

初FANボックスをBOXを始めたと知り、ファン登録させていただきました。 いつもpixivではステキな小説をありがとうございます。 悪魔の〜シリーズは毎回主人公がどのように堕落していくのか楽しみに読ませていただいています。 時々ハッピーエンドになる主人公もいますが、そのような展開も大好物なのであの淫魔とパートナーの青年たちには幸せになってもらいたいです。 今回の追想シリーズは今までになかった展開だなと思って読ませていただいています。 これからの姫原くんと黒田くんの関係がどうなっていくのか楽しみにしています。

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