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大道芸の人形の着ぐるみ Side Story ~彩矢Side~ 【準備編】

※本作品はpixivで公開した、【大道芸の人形の着ぐるみ】のサイドストーリーとなります。本編をお読みいただいた事を前提にしておりますので、詳細等が省略されております。 本編を一読頂いたあと、お楽しみ頂けると幸いです。 尚、こちらは【準備編】となりますので、【パフォーマンス本番編】の方もお楽しみ下さい。 ・・・ 「おっ!このバイト、凄い給料じゃん!!」 私の名前は【神沢 彩矢(かんざわ あや)】 遊ぶお金に困っていた私は、ネットのバイトサイトで、あるバイトを見つけた。 【簡単な、イベントのアシスタントです】 詳しい内容は書かれていなかったが、イベントのアシスタントというくらいだから、それ程、難しい内容でもないだろう。 なにより、そのバイトに目を付けたのは、とんでもない報酬額だった。 (う~ん…この給料だとすると…やっぱり大変なのかな…) 給料が高いという事は、やはりそれなりに大変な仕事であるという事は考えられる。 しかし、その下には、こう書かれている。 【誰でも出来ます。こちらに任せてもらえれば、オッケー】 (まあ…こう書いてあるんだから、私にも出来るよね…きっと) その文面に、難しいものではないと、自分の中で納得する。 そして、その下には更に、こういう記述が。 【先着たった1名の募集です。早い者勝ち】 (え!?まじ!?) 私は生来、早い者勝ちという言葉に弱い。 その文面を見た私は、すぐにそのサイトにアクセスをして、応募の連絡をしてしまった。 【カチッ】 最後の応募のボタンをクリックする。 (勢いで応募しちゃった…) もしかすると、早い者勝ちという事は、もう募集が終わっているかもしれない。 (もう決まってるよね…こんなに給料いいんだし…。まっ…ダメもとで…っと…) そう思っていると、すぐに、向こうからの連絡のメールが届いた。 【神沢 彩矢様。あなたが、一番早く応募頂きましたので、採用となりました。つきましては、指定の日時に、指定の場所へ来てください】 「やった!!採用だ!ラッキーだったぁ…」 まさか、本当に一番のりで採用に至るとも思っていなかったが、この報酬金額を考えれれば、断る理由もない。 内容の曖昧さに不安を感じるところではあるが、運よく採用されたという嬉しさに、その事は私の頭の中から消えていた。 (よしよし!ラッキー!こんな報酬、滅多にないし!) 幸運な事に、こんな高額報酬の仕事を受けられた。 その事に心を弾ませる私は、その事だけを考え、浮かれ気分でいるのだった。 そして、私は指定された日時にその場所へと行くことにした。 指定された当日の朝。 私は、私服のまま、指定された場所へと到着した。 どうやら、ここでは、今日、大道芸のイベントがあるらしい。 (うん…大道芸のイベントか…。じゃあ、そのイベントブースのお手伝いって事かな…?観客の整理とか…道具の運搬とか…そんなのだろうな…きっと…) そんな事を考えながら、その一角にある、ある建物が指定の場所なので、そこに向かって行った。 そして、私は指示された場所に辿り着き、そのドアの前に立った。 見た感じ、事務所という雰囲気でもなく、倉庫のような感じでもある。 (このドアであってるよね…) 【コンコン】 ノックして、ドアを開いた。 【ギイィ~~~】 「おはようございます、アルバイトで採用された、神沢彩矢です」 そう言いながら、部屋の中に入ると、そこには誰もいなかった。 中は殺風景なコンクリートの壁に包まれた、何もない部屋。 しかし、その奥にも部屋があるようだ。 (あれ!?誰もいない…間違えたかな…) そう思いながらも、私はその建物の中へと歩みを進める。 【ガチャン】 私が建物に入ると、ドアが閉まった。 「おはようございま~~~す!!誰かいませんか~~~!!」 誰かいないかと、もう一度、呼んでみた。 まだ早朝で、外にも人がいず、雑音が少ないため、私の声が響く様に大きく感じる。 【ガタッ!】 すると、奥から物音が聞こえて来た。 (あっ!?誰かいる) その物音がしたほうを見ていると、こちらに人影がくるのを感じた。 そして、奥から、人が現れた。 (え!?) しかし、その現れた人の姿に、私は驚きを隠せなかった。 「オハヨウ、キミがアルバイトにオウボした、カンザワアヤさんだね?」 そう私に話しかけて来た人…いや人といっていいのだろうか…その風貌は…【ピエロ】だったのだ。 「は…はい…私が採用された神沢彩矢です」 (び…びっくりした…まさかピエロが出て来るとは…) 私は驚きながらも、自らの名前を名乗った。 そのピエロ、化粧で全く持って素顔は分からない。 見た目でいうと、コミカルというより、アニメとかに出てくる道化師といったような、少し怖さも醸し出している。 あまりの予想外の展開に、心臓がバクバクと鼓動していた。 「オッケー。じゃあスグにジュンビをしようか」 「えっと…準備というと…。というか…私は何をすればいいんですか??」 あの募集の時の情報しか私には無い…【イベントのアシスタント】、それだけなのだ。 アシスタントといっても、仕事内容を聞かないと、準備のしようもない。 すると、ピエロがもう一人、奥から現れた。 「ダイジョウブ、キミはナニもシラナクテ、ワタシたちにマカセテおけばいいよ」 「そ…そう言われても…」 任せろと言われても、あれだけ高額な給料を貰うのだから、しっかりやる事はやらないといけない。 「ダイジョウブ、ダイジョウブ…」 そう言った一人のピエロが私のほうに近づいて来た。 【パチン!】 そして、近づいて来たピエロが私に向かって指を鳴らした。 (な…何!?) その行為に驚きを隠せなかったが、すぐに更に驚く事実に気が付く。 (え!?嘘!?あれっ!!か…体が…動かない!?) そのピエロが指を鳴らした瞬間だった…私の体の自由が奪われたのだった。 どういう事なのか、さっぱり理解が出来ない。 金縛りなのか、なんなのか分からないが、とにかく手足を動かそうとしても、全く動かないのである。 「イマ、キミはもう、ワタシのイウコトにはサカラエナイよ」 (え!?どういう事!?なの??) ピエロの言っている事がさっぱり分からない。 困惑に困惑を極めていると、ピエロが言った。 (え?ちょっと待って?な…なんで…体が動かないの??え!?あれっ!?それに…言葉が…喋れない!!) 体が動かない事を、ピエロに問いただそうとしたが、声が出ないのである。 口は動いているのに、声が出ていない。 体は動かない、声は出ない…にも関わらず、バタンと倒れる気配も無く、私は立ち続けている…全くもって何が起こっているのか理解が出来ない。 状況が理解できず困惑していると、一人のピエロが言った。 「それじゃ、まずフクをヌイデもらおうか??」 (ふ…服を…脱ぐ!?な…何を言ってるの??このピエロ??) 服を脱げと言われて、こんな人前で脱ぐ人間などいない。 (そんな、知らない人の前で、服を脱ぐなんて、する訳ないでしょ!!) そう思った瞬間だった。 (え!?なに!?ちょ…ちょっと…待って!?嘘!?そんな!馬鹿な!?) すると、私の体が、私の意志に反して、勝手に動き始め、自らが着ている服を脱ぎ始めたのだった。 (ちょ…何!?嘘でしょ!?ちょっと!!止まって!!止まって!!!) 頭では体が止まれと指示しているのに、当の体は、私の命令を聞かずに、どんどんと服を脱いでいく。 (嘘でしょ!!ちょっと!!止まって!!) そして、見る見るうちに、自ら服を脱ぎ捨て、二人のピエロの前で、下着姿となったのだ。 その様子を二人のピエロに凝視されている。 (いやぁぁぁぁ!!恥ずかしい!!そんな!!そんなぁぁぁぁ!!) 見知らぬ他人の前で、自ら服を脱ぎ捨て、下着姿となっているのだ。 恐ろしい程の恥ずかしさが込み上げてくる。 しかし、どれだけ恥ずかしかろうが、今の私に体の自由は無く、どこも隠す事は出来ない。 すると、追い打ちをかける様に、ピエロが言った。 「シタギもいらなよ。それもヌイデね」 (え!?し…下着も!?う…嘘でしょ!?) その言葉に耳を疑ったが、やはり言われた通りに、私の体は動いていく。 (うそ!うそ!やだ!やめてぇぇぇぇぇ!!) そして、私は自ら下着を脱ぎ去り、生まれたままの姿をピエロ達の前に晒したのだった。 乳首はもちろん、陰部までも完全に曝け出している。 しかし、そこを隠す事も出来ない。 (いやぁぁぁぁぁぁぁ!!恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!) その恥ずかしさから、顔が真っ赤に染まっていくのが分かる。 体の自由は利かないが、自らの顔が染まっていくのははっきりと感じ取れた。 しかし、私の恥ずかしさとは裏腹に、そこにいるピエロ達が、その私の裸姿に、それ程興味を示していないのも感じられる。 命令と行動が、とても淡々としており、単なる作業にしか過ぎないという雰囲気すら醸し出す。 その様子から、今、私が裸にされたのが、強姦目的のようなものではない事を感じる。 しかし、そういう目的ではないにしても、知らない人の前で全裸になっているのだから、恥ずかしい事には変わりは無い。 すると、ピエロ達がタイツのようなものを取り出した。 「じゃあ、ツギはコレをキテもらおうか」 そう言いながら私にタイツを差し出した。 意志に関係なく、そのタイツを私は受け取る。 (な…何??これ??ぜ…全身タイツ!?) 私の手からぶら下がるもの…それは、木目調のような柄の全身タイツであった。 もちろん全身タイツなど着た事は無い。 しかし、私の体は全てを知っているかのように、全身タイツのファスナーを開け、自然にそれを着て行った。 全身タイツが、私の体を覆って行く。 手先はミトンのように、足先は靴下のようになっており、指先は分かれていない。 そして、頭の部分は、顔を出す様に丸くくり抜かれており、そこから顔を出した。 【ジーーーーー】 すると後ろへと回り込んだピエロが、背中のファスナーをあげた。 (うぅ…これが…全身タイツ…) ファスナーを閉められると、少し全身が締め付けられるような感覚に見舞われる。 タイツは少し厚手の素材では、あるが肌触りはよく、着心地は悪くない。 とはいうものの、全裸で晒されているよりはましだが、体のラインがはっきりと表され、妙な恥ずかしさが込み上げてくる。 (か…体のラインが…。…裸とは…違う意味で…恥ずかしいよぉ…) 「ツギはコレね」 そう言って、ピエロが取り出したのは、恐らく頭部に被るものと思われる、頭をすっぽりと覆うマスクのようなものだった。 そのマスクには顔がなく、のっぺらぼうのようなもので、体のタイツと同じく木目調の柄になっていた。 【カパッ】 そのマスクが前後に割られ、ピエロが私の頭部のほうへと近づけて来た。 (え!?ちょっと…まって…それ…を…被せられる…の!?) 困惑するものの、私は体が動かず逃げる事は出来ない。 そして、そのマスクが私の頭部の前後に当てがわれた。 (え!?え!?いやっ!!そんな!!そんなの!!被せないで!!) しかし、そう思うものの、抵抗も出来なければ、ピエロの動きも止まらない。 私の心の叫びとは裏腹に、そのマスクは私の頭部を包み込むようにはめられた。 【カポッ】 前後のマスクが完全に私の頭部を包み込む。 いきなり視界が悪くなり、少し暗い世界が私に訪れた。 (いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!) すると、ピエロがググッとそのマスクを抑え込むと、中では私の頭部と、マスクの内部がジャストフィットしたのだった。 (あぁ…) 完全にマスクを被せられた。 視界は悪くなったものの、目の前に斜幕のような物があるらしく、網を通したような景色が見える。 内部がピッタリとしているため、内部にほとんど空間はない。 呼吸は、何もない時よりは、籠っている感じがするが、完全に遮断はされていないようだ。 「よし、これでカンセイね」 (か…完成??) 自らに何が起こっているのか、到底、理解が追い付いていかない。 体の自由が利かなくなったと思えば、言われた通りに勝手に体が動き、全裸になり、全身タイツを着込んだ。 そして、マスクのようなものを被せられて、これで完成だというのだ。 全くもって、理解が出来ない。 (なに?なんなの??いったい…!?) 「それじゃ、イマのアナタのスガタをミテみるといいよ」 そう言いながら、ピエロの一人が大きな鏡を持ち出して来た。 そして、そこに今の私の姿が映し出された。 (え!?こ…これが…私…なの…??) そこに映し出されたのは、全身を木目調の柄の全身タイツに包まれ、のっぺらぼうの同じく木目調の顔を持った人形が立っている。 まるで、それは木で出来た人形のような姿。 人形劇の操り人形の、素体とでもいうような雰囲気だ。 【パチン!】 すると一人のピエロが再び指を鳴らした。 (え!?) その瞬間、私の手足が自由になったのだ。 私が右手を動かすと、鏡に映った木の人形は、同じようにその手を動かす。 つまり、その鏡に映った姿が、間違いなく自分だという事の証明である。 (こ…これ…やっぱり…私なんだ…。で…でも…な…なんで…こんな格好を??) そう思って、ピエロに質問しようとしたが、やはり声は出ない。 (う…動けるけど…声は出ない…) すると、ピエロの一人が私の疑問に答えるように言葉を放った。 「カンザワアヤさん、アナタには、そのスガタで、ワタシたちのパフォーマンスにシュツエンしてもらうね」 (パフォーマンスに…出演!?) その言葉に、一気に頭の中で考えが巡る。 ここは大道芸のイベント会場。 目の前にはピエロが二人…どう考えても、大道芸のパフォーマー。 そして、私は今、そのパフォーマンスに出演してもらうと言われた。 この鏡に映った格好で…。 (ちょ…ちょっと…待って…!?出演…??この格好で!?こんな体のラインがはっきり出た格好で、人前に出るっていうの??そ…そんなの…恥ずかしすぎて、無理に決まってるじゃない!!) 私はそう思いながら、再び鏡に映る自分の姿を見た。 そこには、私の体のラインをはっきりとトレースしたタイツ姿の着ぐるみがいる。 なんなら、下着も着ていないため、乳首の部分も薄っすらと盛り上がってりいるのが分かる。 (いやいや!絶対に無理だって!!こんなの恥ずかしすぎる!!) 私はピエロのほうに向き直し、一人のピエロの片腕を取り、もう片方の手でムリムリというアピールをした。 すると、ピエロが私の手を抑えながら言った。 「ダイジョウブよ。カンゼンにカオもカクレテいるから、ナカミがダレかはマッタク分からないよ」 そう言われても、中が私だと分からなくても、体を晒している感の恥ずかしさは消えない。 (ムリムリ!!そんな事、言われても、恥ずかしいって!この格好!!) 「それに、アトはワタシたちにマカセテいればいいだけ、ダイジョウブ、カンザワ…いや…もうカンザワさんではないね…。ダレかも分からないニンギョウなんだから。ダイジョウブ、オニンギョウさん」 (誰にも分からないっていっても…そんな無理だよぉ…こんな恥ずかしい格好で…人前なんて!!) それでも、私は食い下がりながら、必死に無理だという事をアピールした。 「ショウガないな…」 【パチン!】 すると、一人のピエロがまた指を鳴らした。 (え!?あっ!?また…か…体が…!?) ピエロが指を鳴らすと、私の体の自由は奪われ、また手足が動かせなくなった。 このピエロの指鳴らし…一体なんだといのだろう…。 こうされる度に、体の自由を奪われたり、言われるがままに動かされる。 催眠術とでも言うのだろうか…。 しかし、そんなのが掛けられた時間も無かったはず。 とはいえ、私の体が、私の意志とは関係なく、操られているのは事実。 言われるがままに、全裸になり、この人形の着ぐるみを着用したのだから。 「さあ…デバンまで、ハコの中にハイッテいてもらうよ」 【パカッ】 そう言いながら、ピエロ達は、大きな箱の蓋を開けた。 (え!?箱の中に…入る??ど…どういう…こと…??) その開けられた大きな箱は、長細く人間が一人くらい寝転がって入れるくらいの大きさだ。 形も、言われてみると人のような形をしている。 (この箱の形…) その開けられた箱の形に目が行っていると、ピエロ達が私にスッと近寄り、腕を取った。 そして、その私の腕を体の側面に伸ばした状態で沿わせる。 体の自由の利かない私は、されるがままに姿を変えられる。 体は真っ直ぐに伸ばされ、【気をつけ】の姿勢にさせられた。 (え!?ちょっと待って…こ…この姿勢…うそ…嘘でしょ!?) 今私が取らされたこの姿勢…。 この姿勢と、そこでぽっかりと蓋を開けている箱の中の形状が、全く同じなのである。 先程の、ピエロの言葉…【箱の中に】…そして、この形状を考えれば、答えは一つ。 私は、このまま、あの箱の中に閉じ込められるという事。 (嘘!?嘘でしょ!?あの箱の中に!?) 事態を呑み込み困惑していると、ピエロの二人が私の体を横に倒し始めた。 (いやぁぁぁぁぁぁ!!) ピンと伸びたまま、曲がりもしない体。 私は、棒を倒されるがごとく、ゆっくりと仰向けに倒されていく。 そして、そのまま床に寝転ばされた。 すると、ピエロの二人が私の頭と足を掴んだ。 ゆっくりと持ち上がる体。 やはり、体はピンと伸びたまま、曲がりもしない。 そのまま、私の体は箱の方へと運ばれていった。 (いやぁぁぁ!!やめてぇぇぇぇ!!) 箱の上まで辿り着いた私は、ゆっくりと箱の中へと降ろされていく。 そして、箱の中へとスッポリと収納されたのだった。 箱の内壁は、私を採寸したかのようにピッタリと私の体を囲んでいる。 「それじゃ、ツギにアウのは、ホンバンだよ。ソレまで、ユックリしてるといいよ」 箱の中に寝転がる私に、そう声を掛けたピエロ。 そして、その箱の蓋に手を掛けた。 【キィィィィィ…】 ゆっくりと箱の蓋が閉じられ始める。 (嘘!?やめて!!閉じないで!!閉じ込められるなんていやぁぁぁぁぁぁ!!) しかし、そんな私の叫びとは裏腹に、その箱の蓋はゆっくりと閉じられていくのだった。 【パタン】 (いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!) そして、箱の蓋は閉じられ、私は真っ暗な世界に閉じ込められたのだった。 【ガチャ】 鍵が掛けられる音がした。 これで、私は完全に箱の中に閉じ込められ、自ら出る事は確実に出来ない状況だ。 元より、鍵など掛けられなくても、体が動かせない以上、どうしようもないのだが。 (あぁ…私…完全に…閉じ込められた…) 【パチン!】 箱の外からうっすらとピエロが指を鳴らした音が聞こえた気がした。 (あっ…体が…動く…) 箱の中なので、先程の音が本当にピエロの指の音だったかも分からなかったが、今まで全く動かなかった体が動かせるようになった。 (ん…んぅ…) 動かせるようになった体を動かそうとしたが、箱の内部が予想以上に、私の体にぴったりと出来ていて、ほとんど動かせるというレベルではなかった。 腕も多少動くが、体の側面から位置を変える事も出来ない。 足も伸ばしたままで、曲げようとしても、若干、膝が曲がるくらい。 体を起こそうとしても、頭が数センチ上がる程度。 体の自由が戻ったとしても、体勢を変える事も出来ない状況だ。 (だ…だめだ…物音すら立てられない…これじゃ…助けを呼ぶ事もできないよ…) 箱の中、暗闇の中で、私はただ寝転がっているしかない。 もう何が何だか分からない…。 イベントのお手伝いのアルバイトに来ただけなのに…。 全身タイツを着せられ、着ぐるみのマスクを被せられ、しまいには箱の中に閉じ込められているのだ。 何故、私がこんな格好をさせられているのか?? 何故、体の自由を奪われたのか?? 何故、私が閉じ込められているのか?? 全てが謎のまま、私はこうしているしかない。 そして、そんな事を考えながら、暫くの時間を過ごしていた。 すると、ある事に気が付いた。 (うぅ…あ…暑い…) 箱の中が籠っているせいか、箱の内部がかなり暑くなってきている。 実際には、今、私が置かれている場所もどこかは分からない。 もしかしたら炎天下なのかもしれない。 なんにしても、箱の中の温度が上がっている事は間違いない。 (暑い…全身が…熱くなってる気がする…) 体中から汗が噴き出し始めているのが分かる。 (はぁ…はぁ…はぁ…暑い…暑いよぉ…) 暑さから呼吸も乱れ始める。 (ん!?ちょっと待って…呼吸が乱れる…!?っていうか…この箱…完全密閉されてないよね…??密閉されてたら…息が出来なくなる!?) 呼吸が荒くなり、吸い込む空気も暑さからか籠っている感じがする。 着ぐるみのマスクを被されているのだから、呼吸が少し籠っていて、それには慣れ始めていた。 しかし、今感じるマスクの外から吸い込む空気…それ自体に籠っている感を感じ始めた。 もし仮に密閉されていたとしたら、この中の空気にも限界がある。 それが籠っていると感じ始めたら、かなりやばい状況だ。 (うそうそうそ…そんな…密閉されてたら…し…死んじゃう…) しかし、そうは思うものの、体はほとんど動かす事が出来ない。 死にそうになっても、外の人に何もアピールする事も出来ない。 (いやぁぁぁぁ!!そんなの!!まだ、死にたくないよぉぉぉぉ!!) 密閉されているのではないかという恐怖に、焦りを感じ始める。 空気が籠っていて、苦しさを感じ始めているのは事実。 そのうちに、本当に酸素が無くなり、死んでしまうかもしれない。 (うぅ…そんな…そんな…いやぁぁぁ…死にたくないぃぃぃ…) 必死にほとんど動かない体を動かして、なんとか箱をこじ開けようと力を込めてみる。 この体勢で力など入るはずもないが、焦りを感じた私は、出来る限りの抵抗を試みた。 (うぅっ!!いやぁぁぁぁ!!開けて!!開けてェェェ!!死にたくない!!) しかし、どれだけ足掻こうが、閉められた蓋はビクともしない。 逆に、必死に藻掻いたせいで余計に呼吸が荒くなってしまう。 (はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!開けてっ!!開けてェェェェェェ!!) そんな抵抗も虚しく、死の恐怖と共に、体中を暑さが責め立てる。 意識が少しぼんやりとし始めた。 暑さにより、意識が朦朧とし始めたのか、それとも酸欠で朦朧とし始めたのか、それは分からない。 それとともに、藻掻いていた体の動きも弱くなる。 (はぁ…はぁ…はぁ…暑い…苦しい…し…死にたく…ない…) 思考があやふやになり始め、次第に体の動きも止まった。 (う…い…いや…死ぬのは…い…や…だれ…か…たす…け…て…) そして、私は人形の着ぐるみに身を包まれたまま、箱の中で意識を手放すのだった。 (…い……や……………) 次に私が意識を取り戻すのは、パフォーマンスが始まる時だった。 そう…このまま意識を手放したままの方が、良かったのかもしれない…。 ・・・ パフォーマンス本番編へ続く。 -----------------------END--------------------------

大道芸の人形の着ぐるみ Side Story ~彩矢Side~ 【準備編】

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