お昼前のオフィスは、いつもより静かだった。
プリンターの音と、数人が打つキーボードの音だけがフロアに響いていた。
私は席を立ち、営業部の千尋ちゃんのデスクへと向かった。
「千尋ちゃん、お昼休み、時間ってある?」
突然声をかけると、彼女は小さく肩を揺らして振り返った。
「瑠衣さん、どうしました?」
彼女は微笑みながら立ち上がった。
私は少しだけ彼女に近寄り、耳元でささやいた。
「この間、茜が千尋ちゃんに送った音声データの件なんだけど……」
その瞬間、千尋ちゃんの頬がぱっと赤くなった。
視線が泳ぎ、唇が何かを言いかけて止まる。
「あ……レンさんの……」
「そうそう、びっくりしちゃったよね?」
柔らかく言いながら、私は彼女の反応を観察する。
動揺の中に、わずかな好奇心の光。
やっぱりこの娘……素質ある……。
「その件で、レンくんが千尋ちゃんに話したいことがあるんだって。大丈夫かな?」
「話したいことですか……?」
彼女は戸惑いながらも、少し考えてから頷いた。
「……分かりました」
「良かった。じゃあお昼休みに1階の資料室に来て貰えるかな?」
「あっ、レンくんは少し遅れるみたいだから、鍵を開けて先に中で待っててくれる?はい、これ」
私は経理部で管理している資料室の鍵を彼女に渡した。
「あ、ありがとうございます……」
千尋ちゃんの返事を聞いてから、私はそっと席に戻る。
スマホの画面を開く。
メッセージアプリの吹き出しにはレンくんの名前。
『命令:12時ぴったりになったら資料室で、千尋ちゃんの名前を呼びながら乳首をいじること。中から鍵を閉めれば大丈夫だから』
送信。
すぐに既読がつく。
画面を閉じて、私は胸の奥で微かに笑った。
ふふっ……お昼休みが楽しみだね……。
◆
――時計が12時を指す。
昼休みのざわめきが遠ざかる中、僕は資料室の扉を静かに閉めた。
呼吸が浅い。心臓の音がやけに大きく響いている。
乳首がブラと擦れて、神経がそこに集中していく。
ポケットにはスマホ。
お昼前に瑠衣さんからメッセージが届いた。
『千尋ちゃんの名前を呼びながら乳首をいじりなさい』
足がすくむ。けれど、拒否はできない。
幸い、昼休みに資料室に来る人はいない。ましてや、鍵を閉めてしまえば誰にもバレない。
右手がゆっくりとカッターシャツの中、ブラの奥の突起を目指す。
乳首に触れた瞬間、身体がびくりと跳ねた。
今までの調教で、もう自分の身体が勝手に反応してしまう。
「……っ、千尋ちゃん……」
声を出した途端、胸の奥が熱くなった。
羞恥で顔が焼けるように赤くなるのに、
指先は止まらない。
「千尋ちゃん……っ、聞こえたら……どうしよう……」
言葉を吐くたびに、空気が震え、
乳首に掛けた力が少しずつ強くなる。
あの時の声――録音されたあの音。
自分で聞いて、逃げ出したくなるほど恥ずかしかったのに、
今はその続きを、自分からしている。
本人がいる建物の中で……。
「千尋ちゃん……あぁ……気持ちいい……」。
全身が火照って、足が力を失う。
そのときだった。
「レンさん……」
電気が走る様に、全身が震えた。
背筋が凍る。
ゆっくり後ろを向く。
そこに立っていたのは――千尋だった。
◆
「あ……あ……」
声が出ない。
僕の右手は、まだブラの中で止まっている。
千尋の目がそこに釘づけになる。
「ち、ちが……違う……これは……」
すぐに手を引いた。
言葉が詰まり、何も言えなくなる。
千尋は数歩だけ前に出た。
眉が困ったように歪んでいるのに、目の奥はどこか怪しい光を帯びている。
「瑠衣さんから……“資料室でレンさんが話がある”って言われて……」
やがて千尋が、小さく息を呑んだ。
「……どうして、私の名前を……?」
僕は俯いたまま、震える声で答える。
「……ごめん……命令、だったんだ。瑠衣さんに……言われて……」
「命令……?」
千尋の目がわずかに見開かれる。
驚きと戸惑い。
けれど、その奥に、ほんの一瞬だけ別の感情が混じった。
「命令だけ……ですか?……レンさん、私の目を見て……私の名前……もう一度、呼んでください」
静かな声。けれど、その響きは、拒絶を許さない。
彼女の顔がすぐ近くにある。
視線が絡む。
逃げられない。
「ち、千尋ちゃん……」
声を絞り出した瞬間、胸の奥が痺れる。
乳首が脈打って、全身が波のように震えた
千尋の瞳が、まっすぐ僕を射抜いていた。
逃げようとしても、その視線が肌の奥まで入り込んでくる。
「そのまま……さっきの続きをして下さい」
小さく息を飲んだ僕の動きを、彼女は見逃さなかった。
「命令で嫌々やっていたなら止めてもいいです。でも……もし続きをしたいなら……いいですよ」
◆
理屈の上では従う理由なんてないのに、
声を聞くだけで身体の奥が反応してしまう。
指先が、胸のあたりで止まる。
呼吸が浅くなり、鼓動が早くなる。
「……やっぱり、止まれないんですね」
千尋の声が、わずかに震えを含んでいた。
その震えが、空気を伝って僕の中に染みていく。
「上着、脱いでください」
一瞬、時間が止まった。
「え……」
彼女の表情は変わらない。穏やかで、しかし一切の逃げ道を塞ぐような瞳。
おそるおそるボタンに手をかける。
シャツの布が指の間をすり抜け、ブラの奥にも冷たい空気が肌に触れた。
視線を感じる。
まるで、その視線が触れてくるみたいに、背筋がぞくりとする。
「……私が……触ってあげますね……」
千尋の指先が、そっと僕の胸もとに触れた。
その瞬間、息が止まる。
指先はわずかに震えていたけれど、動きは迷いがなかった。
「……すごい、熱い……」
呟きのような声が落ちる。
その言葉に合わせて、胸の奥がきゅっと締めつけられる。
視線をそらそうとしても、千尋の瞳がそれを許さない。
距離が近い。吐息が混ざるほど。
ふたりの間の空気が、柔らかく揺れている。
「恥ずかしいですか?」
うなずこうとしたけれど、声が出ない。
ただ、喉の奥からかすかな息だけが漏れる。
千尋はそんな僕の反応を確かめるように見つめていた。
その眼差しは優しさでも冷たさでもなく、
まるで“観察”のようだった。
「……レンさん、すごい……えっちな顔してます」
静かな声が、耳の奥を震わせる。
自分の表情を見られていることが、どうしようもなく恥ずかしい。
けれど、それ以上に――逃げられない。
胸の奥が脈打ち、呼吸が乱れる。
頭が真っ白になっていく中で、
千尋の唇がわずかに動いた。
「……ねぇ、レンさん」
「――このまま続けたら、どうなっちゃうんでしょうね」
その声が、耳のすぐ近くで溶けた。
身体が勝手に震え、意識が霞む。
世界が遠のいていく中、
千尋の目だけが鮮明に見えていた。
【15章へつづく…】
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