●
殴ろうと拳を構えると同時に隆起する二頭筋、血管の浮かんだ腕の筋。前のめりに膨らんだ胸に、発達が過ぎて溝に影を作っている腹筋。
まさにすべてが規格外であった。はた目にはプロのボディビルダーにさえ引けを取らず、おそらく筋肥大を重視した近しい鍛え方をしている。
ユウキを倒す為と語ってはいたが……、いったいどれほどまでの因縁があれば、同世代でここまで体を仕上げることができるのか……。
「大したことねぇなぁ?」
そして。力を振り絞って繰り出した反撃もその圧巻の体格には通じず、カイチはシドウに責められるがままになっていた。
「ボクシングが得意らしいが、素人の俺に全く通用しねぇなんてなぁ? ま、当てられても効かねぇのか、はははっ!」
「こ、の……、クソ、がぁ…………!!」
「……楽しみはまだまだこれからだ、ぜっ!!」
ドゴオオオオオォオオオッ!!
「ぐぉ……っぁ!!」
再び、シドウの強烈な拳が炸裂する。カイチがこれまで必死に鍛えてきた岩のような腹筋が、岩をも砕くような威力の拳に打ちのめされていく。
ドガァッ!! グボォッ!!
ドボオオオォォォ!!
「っぁ……ぇ……が、はぁぁ……っ!!」
「テメェには……、アイツをおびき出す為の餌になってもらわねぇとなぁ……、アイツがドン引きするぐらい、仕上げてやらねぇとなぁ!?」
グボオオオォォォ!!
ドボオオオォォォ!!
「がっはははははっ! ここらでデカい顔してる紛争学園が、軍立でもねぇそこらの奴に喧嘩で一方的にボコられるなんざ……、どんな気分だ? はははっ!!」
ドゴオオオオオォオオオッ!!
グボオオオォォォ!!
「は、がぁ……ぁぁ……がっ!!」
わき腹を挟み込むように同時に拳をうずめる。左右から襲ってくる衝撃が腹の底で渦巻いている間にも、胸や腹を殴られ続ける。
巨大な拳、その一撃一撃が、日ごろの鍛錬で鍛え抜かれたはずの強健な筋肉に埋まっていく。格闘技の構えも型も何もない攻撃の破壊力は、されど、まさにその大柄な恵体にふさわしいものだった。
(が、ぁ……ぁ…………、怪力、馬鹿が……、悔しいが……見かけ通りの威力だ……クソ……!!)
……最初から、意識を刈り取る勢いで潰すべきだった。様子見に徹して一発でも貰った時点で、自分の敗北は確定していたのだ。
不覚にも、カイチは前のめりに崩れ、自分を壊そうとしてきているその立派な肉体に身体を預ける格好になってしまった。シドウは鼻を鳴らし、弱々しく息を吸うばかりのカイチの肩を乱暴に掴む。
「オラ、立てや!!」
ドゴオオオオオォオオオッ!!
「楽しもうぜぇ……、折角の喧嘩だ。勝負ごとは好きだろ? ん??」
グボオオオォォォ!!
「げ、は……ぁ……」
一度でも受ければ戦意喪失、意識さえ刈り取られかねない威力の拳が、何度も何度も体に突き刺さってくる。
同じ個所は狙ってはいない。二度も陥没させれば完全に破壊してしまうのを分かっていて、己が拳で対象の筋肉が沈んでいく感触を楽しむためだろうか。
晴らせない悔しさは、次第に恐怖に変わっていく。肩を小刻みに震わせ始めるカイチは、尚もシドウの巨大な影に覆われ、屠られる獲物のような状態に陥ってしまっていた。
ドボオオオォォォ!!
「言ったよなぁ、まだまだ終わらせぇぞ!!」
グボオオオォォォ!!
「俺のガタイに怯まなかったのだけは褒めてやるが……」
ドガァッ!!
「俺と喧嘩した奴がどうなるか……、その身にたっぷり教え込んでやるぜ!!」
ドガァッ!! グボォッ!!
(……マジで……、コイツは……バケモンだ……、クソ……!!)
……壊される。打ちのめされたカイチがそう確信した直後にも、破壊するべき肉体を前にしたシドウの嗜虐心は止まらず。容赦のない拳がその顔面に迫っていた……。
つづきはこちら。
fanbox post: creator/23459386/post/1084051
yukibou
2020-06-06 11:09:10 +0000 UTCpengint
2020-06-06 11:07:14 +0000 UTC