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幼なじみが俺で、俺が俺の妹で(25)『正月の再会』

「あけましておめでとうございます」  九ヶ月ぶりに見た『瑠璃』は、前よりもっと美人になっていた。  一月の三日。うちの両親が早くも仕事に駆り立てられて朝から家を出た日の昼過ぎ、光莉はふらりとわが明良家にやって来た。  うちの隣の神社のさらに隣、藤浦家に昨日の夕方くらいから車や人の出入りがあるのはわかっていた。だから、来ることに驚きはない。  光莉とは、メッセージのやり取りはともかく、直接再会するのは九ヶ月ぶりだ。会いたくなかったわけじゃない。  それに何より、来年四月に元に戻るために打ち合わせは欠かせない。『瑠璃』には当日何があろうとこっちに来ていてもらわないと。  なのに俺は、なぜか自分から積極的に動く気にはなれずにいた。瑠璃が挨拶しに行こうかと誘ってくれても、あれこれ言い訳して家を出なかった。  そんなところに、今は『瑠璃』である光莉が現れた。  初詣に行った時の俺みたいに、晴れ着を着ているわけじゃない。本来の瑠璃とは少し方向性の違う、スポーティなパンツルック。上はセーターにダウンベスト。  服の選択も着こなしも全体に洗練された雰囲気が漂い、でも、俺が心のどこかで懸念していたようなけばけばしい方面への変化はない。瑠璃本来の良さに、光莉のセンスが加えられたという印象。  悪い方向に変わってないのは顔立ちや体つきも同じ。  顔は、ほんの少し大人びたかもしれない。髪型は変わらず黒く長くまっすぐに伸ばしている。  そして身長もけっこう伸びていて、胸とお尻はしっかり大きくなっていた。  と、いくぶんかお澄まし気味だった表情がくしゃりと崩れた。  そこにいるのは、『瑠璃』の身体というだけで、まぎれもなく光莉だった。 「瑠璃ちゃんのお兄ちゃん、ずいぶん背が高くなったねー! 顔も何かかっこよくなってない? 引き締まってるみたいだし、運動でも始めた?」 「え、スクワットくらいかな」  瑠璃がふしぎと気圧されたような表情で答える。あれ? 瑠璃、俺の身体でそんなことしてたの? 「で、お兄ちゃんのあたしは……まあ、こんなもんだよね。思ってたよりはずっとがんばってるけど」  俺は高い位置から見下ろされて、そんなことを言われた。 「な、何だよその言い草!」 「いやいや、褒めてるってば。ただ、こうしていると、一歳違いとは思えないなとは思っちゃうけど」  言いながら、光莉は瑠璃と腕を組む。  この九ヶ月で二人とも背が伸びた。そして『俺』は、中身が瑠璃だからか妙に凛々しくなったようで、隣の『瑠璃』にもさほど見劣りしていない。  たしかに、大して身長に変化もない俺と一歳差とは思えない、やけにお似合いな雰囲気のカップルがそこにいた。  それを見て、俺は苛立った。  あれ? 「自分で『自分』の身体を低評価しなくても……」 「低評価じゃないよ。オタク男子とネットで友達になって色々教えられて、ロリの需要というものをはっきり認識したからねー」  瑠璃が光莉へ気弱に突っ込んだり光莉がそれに返したりしているようだけど、俺は今しがたの自分の感情に戸惑っていた。  今のイライラって何だ?  さっきまで『瑠璃』を見ていた時はこんな気持ちにならなかった。もちろん『俺』を見たって今みたいにはならなかった。  なのに二人が並んでいるといらつく。光莉に、『瑠璃』に、会いたくなかった理由は、この光景を見たくなかったからかもしれないと不意に悟った。  これって……。  もしかしてあたし、瑠璃ちゃんに焼きもち焼いてる? いや、落ち着け俺。  ええと、つまり……俺、『瑠璃』に嫉妬してるってことか?!  俺がうろたえている間にも話は続く。 「それでね、瑠璃ちゃんにはたぶん反対されないと思うけど、あたし、高校はこっちに戻ってくるつもりだから。ここの家で一人暮らししてもいいか、『お父さん』と『お母さん』には少し打診していて、家事とかちゃんとできるならってことで認められそうな雰囲気」 「え、いいの!?」  瑠璃が驚くし、俺も意外だ。あんなに東京生活にあこがれていた光莉なのに。 「もしかして、あたしが戻りたくないとか言い出すと思ってた?」 「そ、そこまでは……」  瑠璃も内心少し懸念はしていたのか、完全否定とまではいかない。 「しばらく暮らしてみてわかったんだけどね。あたし、東京には向いてないみたい。ごみごみしてるし、妙にせかせかさせられるし。やっぱりこっちがいいわ」  光莉のその言葉は、はっきりした実感を伴っていて、本心から言っているんだろうなと納得させられるものがあった。 「ついでに言うと、瑠璃ちゃんの身体も人生も向いていないかな? この身体、美人さん過ぎて、あまり気軽にオタク御用達の店とか行けないんだよね。さっき言った友達とも、この身体と立場で変に進展しちゃったりしたらいけないから、まだ直接会えてないし。あと、勉強が大変!」  こちらはこちらで重みがある。 「そしてもう一つ、戻らなくちゃいけない理由としては」  そこまで言うと、光莉は瑠璃にだけ聞こえるように耳打ちする。瑠璃の顔はたちまち真っ赤になった。 「な、おい、光莉! 瑠璃に何言った!?」 「それは女子の内緒話ということで」 「なら俺も女子だぞ!」 「え? そんなこと言っちゃうくらい『あたし』に染まっちゃってるの……? 瑠璃ちゃん、大丈夫なの?」 「だ、大丈夫だよ……たぶん」 「今のは冗談だっての! 瑠璃もそんな濁した言い方しないで!」  でも光莉は瑠璃に何を言ったかは黙して語らず、そのまま帰っていった。 * 「瑠璃、光莉に何言われたんだよ」 「それは、その、恥ずかしいから秘密」  風呂で訊いても瑠璃は教えてくれない。 「……むう。まあいいよ」 「ごめんね……いつか、話せると思うから」  何でそれが今じゃないのかが気になるが、これ以上しつこくしても効果はなさそうだ。  いつもの二人の姿勢に入りながら、俺は気を取り直して話題を変えることにした。 「それにしても、『瑠璃』の身体、しっかり大きくなってたな」 「う、うん」 「『俺』もだいぶ大きくなったけど、あれなら並んでも全然おかしくない」 「え?」 「え? どうしてそこで疑問形?」 「あ、ああ、『俺』って、みっくんの今の身体じゃなくて、みっくんの元の身体ってことね。身長の話だったんだ」 「あ、そういう――」  瑠璃に言われて納得し、ちょっと遅れて腹が立つ。 「今の身体だって背は伸びてるっての! てか瑠璃、最初に身長の話じゃないと思ったなら何を連想したんだよ!?」 「それは……」 「なんでこのタイミングでここが大きくなるのよ!」  俺はいつもより乱暴に瑠璃の股間を扱った。

Comments

エピソードの取捨選択がまだ定まってませんが、31話くらいかなと。 三角入れ替わりって、やっぱりどうも一人余る感覚はありました。三人目をどう動かすかを考えた結果、こういう話になったところも……というのは終盤のネタバレですので今書くことではないですね。 完結まで安定して書いていけますようがんばります。

そうですか。 波乱があるとすれば 31話ぐらいなのでしょうか? あまりない三角入れ替わりストーリー 3人共が同じ方向に向かっていくとは なかなかないのでは。 後は外的な要素で神様の気まぐれとか? ごめんなさい。 いらんことばっかり言って。 それだけ大好きな作品です。 いつもありがとうございます。

丸井主将

ありがとうございます。 光莉については最初からこの方向性で考えていましたね。可逆の三角入れ替わりストーリーだと、だいたいこういうキャラが状況をかき乱しますが、この話ではその手の攪乱は必要ないなと思いまして。それでも、夏休みに出さないことなどによって、ここまで一種の緊迫感は与えられたかなと。 この先、30話くらいまではこの雰囲気で行く予定です。

あらまぁ! 意外でした 瑠璃ちゃん。 ほのぼのですね。 ホントにこのままほのぼのなのか? 乞うご期待!    なのか?

丸井主将


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