この夏。地方大会1回戦で敗れた○○野球部は、新チームとなり合宿を行っていた。 今日、2時間をかけて合宿所に到着したものの、雨で練習は中止となった。 「…こんなとこ行っても何もないって」 「面白そうじゃん。トレーニングにもなるし」 合宿所裏にある林。そこに部員である田中と飯田のふたりがいる。 なんでもかんでも興味があればすぐに行動に移してしまう田中。 それにいつも付き合わされる飯田。 「すげえよ!裏のところにジャングルみたいな場所あるぜ!見に行こう!」と田中が飯田を無理やり誘ったのだ。 セカンドとショートと守備位置も近く、背丈も似ている。 田中はいつも飯田を誘って行動しているため、他の部員からは兄弟みたいだと言われていた。 Tシャツにハーパンという格好のふたり。飯田は何か羽織って来れば良かったと後悔した。それくらい林の奥はひんやりと肌寒かった。 「なー、もどろーってー」 「すげえでっけえ木がある」 話をまるで聞かない田中に、飯田はため息をつく。 ある程度散策もしおわり、岩に腰掛けて休む。 「面白かったなー」 「…別に」 どうでもういい話を交わしていたとき、ふたりの足元に小さな虫が現れた。尺取り虫のような虫だ。しかし向き合って喋っているふたりは気づかない。 その虫が田中、飯田それぞれの足首に噛み付く。ただその力は弱く、これにも2人は気がつかない。 「そろそろもどろ」 「やっと帰れるよ」 岩から降りるときに降った足の勢いで虫はどこかへ飛んでいった。ただ噛みついた際に僅かに出た体液は、血管を通りふたりの体内に流れていった。 「あそこもっと探索したかったなー」 「もういいって…田中も満足してたじゃん」 ふたりは同室だった。移動疲れと併せ、散策の疲れもあり、少し話したあとすぐに寝てしまった。 寝てから2時間後の0時。二人の目がパチッと開く。 アラームを設定していたわけでもない。それなのにふたりは同じタイミングで目を開けた。 言葉を発さず上半身だけ起こしあたりを見回す。その目には光がなく、生気が感じられなかった。 見回している中、ふたり目が合う。お互いの存在を確認したあと、すっと立ち上がり向き合う形になった。 部屋の中央、Tシャツにハーパンの田中、パジャマを着ている飯田。あと一歩でも近づけばぶつかってしまう程、近寄って向き合っている。 そしてふたりは、抱き合い口づけをし始めた。部屋に水音が響く。最初は何度か唇が触れ合うだけだったが、ゆっくりと唇を密着させディープキスへと発展する。 目は開けたままだが、それはお互いを見ておらず、どこか違う場所を見ながらだった。 しかもその動作は自分たちが行っているというよりは、何か違うものに体を支配され動かされているようにも見える。 ぴちゃぴちゃという音は次第にくちゅぐちゅと大きな音になっていく。 数分後、ふたりは口を離す。お互いに顔を見合った後、よだれでぬれた口周りを気にもせず、また布団に戻り寝息を立て寝てしまった。 「んあー…よく寝た」 「…ねむた」 翌朝、起きた2人は昨日のことを何も覚えてはいないのか、特にあの行動について話したりはしなかった。 そして、朝から寝るまでの間、2人に特別変な行動や言動は見られず、いつも通りの2人であった。 「おやすみー」 「おやすみ」 22時就寝。すぐに眠りにつくふたり。 そして2時間後の0時に、2人は目を開ける。昨日と同じ動作で目が合い立ち上がる。相変わらず無表情である。 昨日と違い始めからディープキスをする。5分ほどしたあと唇を離す。どちらも勃起していた。 すると飯田がTシャツとハーパンを脱ぎ始めた。そしてそのままパンツも脱ぎ全裸になった。田中はその動作を見ても特に声も上げず、気をつけのまま待っていた。 脱いだ衣類は乱暴に部屋の隅に投げられ、飯田はその場に股を広げて座る。 それを確認して、田中もその場に座り飯田の股間に顔を近づける。そして勃起した飯田のちんこを舐め始めた。 口付けの時とは違う水音が響く。たぶん初めてであろうフェラチオはどこかぎこちなく、なれない感じでつづく。 じゅる…じゅぷ……じゅる… 相変わらずふたりとも目に生気はなく、何かに動かされているように行動している。 次第に飯田の息が荒くなる。それを感知してか田中の動きも早くなる。 「ふ…っ……」 息を漏らした後、飯田は射精をする。田中は口を外さず全てを口にためる。 全て出し終えると、ちゅぽとちんこから口を離す。口にためた精液が垂れないよう口を窄めている。 それからふたりは口づけをし、溜めていた精液を分け合い、ごくりごくりと飲み込んでいく。 口が離れ顔を見合わせているかたちではあるが、相変わらず生気はなく、意識して見ていることはない。 そしてふたりはそのまま布団に戻り、また寝息をたて寝た。 「うえっくしゅ!」 「さすがに裸になって寝るくらい暑くはなかったろ」 あのあと、裸のまま寝ていた飯田は風邪をひいた。 「大人しく寝てろよ。じゃあ藤原、こいつ頼むな」 「はい、わかりました」 1年のマネージャー藤原が看病することになった。 13時。昼の練習が始まる。 薬が効いて容体が安定した飯田はすうすうと寝ている。藤原も昨日遅くまでデータのまとめをしていたため、眠くなってしまい、部屋の隅の方にあるテーブルに突っ伏し寝てしまった。 静かな部屋に時計の秒針の音だけが聞こえる。 数分後。寝ていたはずの飯田が目を開ける。その目は、深夜の行動の際と同じく、淀んだ目だった。 ふとんをよけ立ち上がる。寝ている藤原を確認し近づく。 背後に周りぐいと藤原の体を持ち上げる。寝不足だったため藤原はぐっすりと寝てしまっており、乱暴な行動にも目を覚ますことは無かった。 畳に仰向けにした藤原に対し、飯田は口づけをする。口からは大量の唾液が送られた。藤原はそれを無意識に飲み込む。 ぷはと口を離し、乱暴に寝かせられた藤原をそのままに、飯田はまた布団に戻り寝てしまう。 あの日虫に噛まれてから、飯田と田中の体内はその虫の苗床になっていた。 この数日の夜中の奇妙な行動は、すべてその虫から体内に分泌されたものによる副作用のようなものだった。 お互いに体内の分泌液を分け合ったり、精液をわけあったりと…わずか2日足らずで2人の体は完璧な苗床にされていた。 そのため次の行動は仲間を増やすための繁殖行動となり、繁殖に十分なくらいの濃度となる唾液を藤原の体に送り込んだ。 あれだけの濃度の唾液を送られた藤原は、遅くても3日くらいで完璧な苗床となるはずである。 *** 合宿も終わりオフの日。 「…あれ?なんでいるの?」 「お前も…それに藤原も…なんできたの?」 「…えと…なんででしょう」 不思議なことに飯田、田中、藤原の3人は部室に集まった。しかし3人ともなぜここにきたのかわからない。自然とここに足が動いてきたのだ。 「…じしゅれ……」 「…いいだ……」 「…どうし………」 3人の動きが順番に止まる。数秒の沈黙。 「…動かせるか?」 先に喋ったのは飯田。 「…んぅ……まだぎこちないか」 次に喋りながら体を動かしたのは田中。 「……特に支障はないと思うが」 最後に藤原。 それぞれが今までの3人とは違う口調だった。藤原に関しては、先輩ふたりに対しタメ口であることから、その異常さがわかる。 苗床と化していた3人は、ついに普段の行動まで支配されるに至ってしまった。3人が集まったことで体内の細胞がお互いを認識したのち、意識を乗っ取り普段の行動を支配したのだ。 「…藤原の体に唾液を送り込むまでは完ぺきだったんだけどな」 「行動が深夜だけに限られていたし、藤原は部屋が個別で行動に移せなかったな」 「唾液を送り込むという乗っ取り方では、少し効率が悪いな。…たとえば体内の虫を利用するとか…」 *** それから数日後の、ある雨の日。 今日の練習は、天気のせいで休みになった。 しかし田中は楽し気に部室に向かっていた。 「うーっす」 ドアを開けるとキャプテンの藤田が椅子に縛られ、猿轡をされていた。 そしてその横にマネージャーの藤原が立っていた。 「んー!んー!」 「あれ?藤田じゃん。そいつを乗っ取る予定あったっけ?」 「いや、今日はこいつをやる予定はなかった。ただ、どうやら俺たちの行動に気づいてたみたいで捕えておいたんだ」 「マジ?こいつ気づいてたの?とりあえず、口のやつとっていいぞ」 「ぷあっ!…やっぱりおまえだったのかよ」 「なにが?」 「なにがじゃねえよ!今も藤原と話してただろ!」 「うるせえな。もっと声のボリュームを落とせよ」 「早くみんなをもとに戻せ!」 「出た。お決まりのセリフ。戻すわけねえじゃん。全員乗っ取るつもりだったし」 田中は不気味に笑う。田中のセリフの通り、あの日から野球部は、ほとんどが乗っ取られていた。 「乗っ取るってなんだよ…」 「いちいち説明しなきゃだめ?おまえもいずれは支配下に置かれるんだし。だれがなんのためにやってるとか説明すんのダルいんだけど」 「おまっ!…ぐっ!」 田中に襲い掛かろうとするも、椅子ごと倒れる藤田。 「おいおいあんま乱暴に動くなよ。きれいなままやりたいんだからよ。…まあいいや説明してやるよ。藤原。あれもってこい」 「わかった」 備品の棚の奥。新品の野球ボールが入っている箱を持ってくる。 「よく見とけよ。お前が見たいって言ったんだからな」 箱を開ける。中には瓶に詰められたうねうねと奇妙に動くスライムが入っている。 「うっ………うげぇ………」 「汚えな。だから嫌だったんだよ。素直にやられてれば吐かなくてもすんだのによ。まあこれを使うんだけど…ちょうどいいや。特別にやってるところも見せてやるよ。今日やる予定だったの誰だっけ?」 「1年の辻だな。もう少ししたら来るだろう」 外から叫ぶ声が聞こえる。 「ごめんごめん。遅れたよ」 「なにするんですか!やめてください!」 無理やり部室に押し込まれる辻。連れてきたのは飯田だった。 「もう少し静かに連れてこいよ。ばれたらめんどくせえだろー」 「こんなに暴れるとは思わなかったんだよ」 辻は1年の中でも大柄で、ラグビーやアメフトをやっているといっても不思議ではないくらいの体格だ。 しかしそんな辻も、自分よりはるかに小さい飯田に簡単に封じ込められてしまっている。 これも支配された際の力であり、見た目はそこまで変わらないもののベースの力が何十倍にも増強される。 そのため、あんなにも大柄な辻でさえも、飯田に歯が立たなくなってしまうのである。 「放してくださいよ!」 壁に押さえつけられながらももがく辻。 「…せ…せんぱい…やめて……っぶっ!……う…げ……」 躊躇なく拳を辻の鳩尾にいれる。そのまま崩れ落ちる。 「はやく縛りつけろ」 「おい…やめて…やれよ…」 ありえない非日常の現実に藤田の声は力をなくす。せめて後輩をかばう言葉しか吐けない。 「すべてお前のせいだよ。素直に従えばこんな場面を見なくてよかったのにな。…それじゃあさっさとやっちまうか。」 ひとつ瓶を取り出す。蓋を開けひとつ小さなスライムを取り出す。うねうねと幼虫のように動くスライム。田中はそれを見つめうっとりとした表情を浮かべる。 「あー…できることなら俺に入れたいくらいだよ…へへ……」 こつこつと辻に近づく。頭を掴み顔をあげさせる。 「おまえも…仲間になれる。よかったな」 「あ………が………」 そのスライムは脳に近い耳から入れられる。耳元に近づけてやると、ひゅんと耳の中に入る。それから数秒。 「っ…ぐ………ぎ……あ……あ!!!あ!?!?あ!!!」 辻がバタバタともがき始める。 「辻!おい!やめろ!やめさせろ!!」 「ばーか。もう遅えよ。これからあっという間だぞ」 「び…びゅび!びゅ!……ぼ………ば…………び………………………あ………」 わずか数秒。あれだけ暴れていた辻は全く動かなくなった。 「入り込めたか?」 「あ…………あー…………………あー……………」 上がった顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。 「こいつの頭ん中は入りやすそうだからな」 「あっ……あ……………つじ…つじ。…………〇〇高校、1年。辻勝也。190cm、95kg、野球部所属。彼女なし、童貞、仮性包茎。」 藤田は起きていることが全く理解できなかった。 「オッケーだな。どうよ藤田。こんな感じでやってんだけど」 「………あ……こ……これ……」 「なんだよ。不思議がって追ってきた割には耐性がないんだもんな。なんか俺たちがやってるところをみて、正義感たっぷりに乗り込んできたわりに、なーんもわかってねえじゃんか。みんなで楽しくとかやってると思ってた?そんなのんきにやってるわけねえだろ。…俺たちの目的は…野球部を全員を乗っ取ること。乗っ取って俺たちの自由にするんだ。お前らを使っていろいろ楽しませてもらうよ」 「………やめろ…」 「あ?」 「………やめてくれ……」 「……だからよ。やめるわけねえだろ!いい加減わかれよ!クソが!」 「うぐっ…」 思い切り顔面を殴られる藤田。 「あー…まじでこいつうぜえ。だから俺真面目くんとか嫌いなんだよ。…藤原、こいつのこと任すわ。…こいつ結構好みだったから近くにおいてやろうかなって思ってたけど、一番下にしておけ。むかついたから徹底的にこき使うわ。」 「わかった」 「辻も使えるだろうから二人でやっとけな。なんかあったらいつもどおりラインに」 「はい、かしこまりました」 「……たなか……おま…え………」 「飯田、かえろーぜ。腹減ったよ」 「なんか食って帰るか」 藤田の声も聞かず部室をあとにする田中と飯田。 「あ、こんちわっす」 玄関で1年と会う。 「おう。明日面談だからな。ちゃんと来いよ」 「はい!」 「そんじゃおつかれー」 「お疲れ様ですー」 明日、乗っ取られるとも知らない1年の笑顔を見たあと、田中と飯田はニヤリと笑った。
りょう
2023-12-13 18:05:51 +0000 UTCささもと
2022-05-14 09:18:07 +0000 UTCりょう
2022-05-11 12:39:47 +0000 UTC