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雨宮ミズキ
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患者さんと先生 幕開け編 解説 約2900文字




※「患者さんと先生 幕開け編」のネタバレ全開です。


「魂を削ったポイント」

「繰り返し悪夢を見たシーン」

「裏設定、裏描写」


の3つで作者解説していこうと思います。

解説なんて大層なことを言いましたが、ただのオタク語りと怪文書です。


全体的に自我の強い内容のため、作者とキャラクターを切り離したい方はどうか読まずにいただければ幸いです。







・魂を削ったポイント

セリフとモノローグです。

……そこはいつも魂削っておけよ!という気持ちもあるんですが、削りすぎると死ぬのと、削ったものが必ずしもいいものかというとそうではないので。

あと、ポジティブで明るい作品で魂を削ることはないので、今回はここぞとばかりに削りに削りました。

今回はいつも以上に絵よりテキスト周りで悩んだと思う。原稿終盤になっても直していたくらいには…。

絵がへっぽこなのはもう元からなので、メガネ変えてもどうしようもないな!と思ったのもあり、今回は割り切って心の機微やテキスト周りに重きを置きました。

自分の内側に張り付いている言葉を削り取ってきたので大分しんどかったです。

魂というかシンプルに命が削れた。


以前の記事で、自分(作者)とキャラを完全に切り離して動かす話をしたと思うのですが、今回はかなりキャラと自分を密着させたり、キャラを降霊させたりして作りました。


そうしたら、めちゃくちゃ悪夢を見るようになりました。

それも新刊の内容そのままの。


降霊したはいいものの、脱稿後の除霊ができなかった。

おかえりくださいませ???


↓次は悪夢について。




・繰り返し悪夢を見たシーン


複数のシーンを見たのですが、下記2つが特に頻出悪夢でした。



「なんで…みんなみたいに普通にできないんだろ…」

(P14)

「あ やっぱり私ってダメだったんだ」

(P64)

ここは何度も何度も夢を見ました。しんどかった。


起きて号泣して、自分の立ち位置を何度も確かめて、私はダメではない、普通にできないこともダメなことも多かれ少なかれあれどまあまあちゃんと生きている、と自分に強く言い聞かせなければ文字通り死んでしまいそうなほどメンタルがぐらつきました。


率直に書くと、私が自分自身に対して心の底からよく思うことです。

でも、そういう自分自身のできなさやダメさを嘆くことは自分だけに起こるのではなく、極々ありふれたことだと思うんですよね。良くも悪くも。


自分自身の弱さを認めると苦しい。

他人に自分の弱さを曝け出して根拠無くなだめられたりしたらもっと苦しく、すごく悔しい。全く嬉しくはない。

(患者さん目線だと)健康な人間なり、自分より優位に立つ人間にそういうことをされたら「…人の気も知らないで」(P8)とピキって言いたくもなると思うんです。

私ならそう思う。(煽ることになるので絶対に言わないけど)


でも、自分自身の汚さを他人が何かしらの形で被った上でそれでも肯定してくれたらめちゃくちゃ救われる。

この流れを「ゲロチュー」と言葉にしてしまうとネタ感があってあまり好きではないんですが、ここまでされたら「自分は汚くない」と思うしかなくないですか。

先生強いな…。



ただ、全体を通して自分の気持ちをキャラクターに代弁させたかったわけでは決してなく。

上記2シーンは読んだ全員に共感させたい、と思ってかなりシンプルな言葉にまとめておりました。

例えば、「なんでみんなみたいに体が強くないんだろう…」でも「あ やっぱり私って体が弱かったんだ」でも通じますが、そうなると共感できる読者は限られるので。

この2つのセリフは特に気持ちを重ねやすいようにセリフを練ることができて満足しています。


が、共感しやすいように描いたら当然の如くかなり共感してしまったせいで、悪夢として出まくるようになってしまいました…。

読者には患者さんに共感し感情移入した上で先生に救われてほしい、という意図で作ったのですが、現実に先生はいないので救われないまま苦しいままの自分が取り残されました。

自分が描いてるだけあって、先生に救われる妄想がうまくできなかった。



あと、

「先生は汚くなんてないですよ」(P33)

ここも悪夢を見ました。「先生とシンクロしてる…照」と思いつつも、

「自分自身の汚らわしさや欠点を理解ある誰かに優しく否定されたい」

という欲求が「わがまますぎるし幼すぎる〜!!でもそれが現にここにある〜!!!嫌〜汚い〜!!!!認めたくない!」と自分に跳ね返ってきました。

先生にもあるし、自分にもあるし、きっと誰にでもあるわがままな部分。

こういう汚さや欲深さは真正面から見るととてもしんどい。でも、自分の汚い部分を汚くないって言われたい。他人に甘く許容されたい。

私はこの流れを「ハッピーエンドさよ教」と唱えながら作業していました。

(さよ教=さよならを教えて 鬱エロゲ 知らない人はググってください)


以上、3つの悪夢ポイントでした。




・裏設定、裏描写


①舞台は中高一貫校

先生の独白の「どうせ数年だけの付き合いなのだから」(P10)は、生徒と付き合う1〜6年を仮定した話なのでした。「3年間の付き合い」と言っていないところがミソ。

ただ、それなら「6年間の付き合いなのだから」になってもおかしくないのですが、それは体調を崩していた月子もとい患者さんの様子を見ていたからであり、中高一貫校で6年間通い切れる生徒は全員ではないと保健室の先生という職業柄知っているからです。

自分が教えてもらった話だと、入学した生徒の3割くらいが中退、または転校(別の高校に進学)になると聞きました。

割合は学校にもよるとは思いますが、ある程度脱落していくのは中高一貫校に限った話じゃないですからね。その辺り進学校も大変らしい。


②先生の本名


がるまにさんでの登場人物紹介に「先生の名前は石流竹千代」「患者さんの本名は笹五位月子」と書きました。

これは誤字や誤入力ではありません。

作中で名札の名前の部分(P9,P28)が見えなくなっているのもミソです。

実際名札には「石流 竹千代」と書いてあるのですが、先生の認識により名前が無かったことになっています。

名前の話は追々漫画で描きます。



③夢のシーンの縄、蓮の描写




わざわざ明記しなくても分かるだろ〜!?と読者の教養に委ねたシーン(30P,31P)

カンダタ、蜘蛛の糸と書けばもう伝わることでしょう。芥川竜之介の蜘蛛の糸の内容を汲んでいます。


夢(地獄)だと認識した状態で、救われたいという内なる欲求に蜘蛛の糸である首吊りロープ=患者さんが上からぶら下がる。

しかしその蜘蛛の糸に手を伸ばさず「荒唐無稽な僕の地獄」「本当の君はそんな顔をしない」と突き放す先生。

これは夢であり地獄なので、その蜘蛛の糸は切れると分かっているんですね。賢い。

それでも性的欲求には逆らえず、あ、あ、あ〜となるところ、最高にお気に入りシーンです。

蜘蛛の糸は無事切れました。


私は女と性欲に弱い黒髪メガネ白衣の男が大好きです。



・総括


人には人のダメさがあると思うんですが、その辺りをダメな者同士で埋め合っていくのが尊いなと思います。

「破れ鍋に綴じ蓋」、すごく好きな言葉です。


以上、制作秘話と解説でした。

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