エロで理解する修辞技法 提喩法 先行配信
Added 2019-05-12 23:40:52 +0000 UTCそれでは今回は提喩法にいってみます。
提喩法とは『上位概念で下位概念を表したり、逆に下位概念で上位概念に置き換えたりする比喩をいう。換喩との違いは、包含する関係にあるか否かである。提喩を用いた修辞法を提喩法という。』
という例によって「日本語を話せ日本語を!」と胸倉掴んで逆ギレかましたくなるような定義ですが、そこを大人になって用例まで落ち着いて見てみます。
・「全く、情けない男だ」=ある人物が相手にこう告げた時、情けないのはその相手(下位概念)だけであって、男全般(上位概念)を指しているわけではない。
・「豚肉も悪くないけど、どちらかといえば鳥の方が好きだな。」=まず鳥という上位概念で鶏という下位概念を指している。さらに、鶏という上位概念からさらに下位概念の鶏肉、あるいは鶏肉料理を指している。
・「紙もすっかり値上がりしたので、本当に困る」=会話の状況によって、この紙がトイレットペーパーを指してるのか、それとも何らかの用箋を指しているのかわからないが、紙という上位概念で、下位概念を想起させるものとなっている。
という用例を読んでも分かるような分からないような感じです。
そもそも「提喩」という言葉の「堤」の字がどういう意味を示してるのかよく分からない。
換喩なら「言い換える喩え」とパッとすぐ浮かぶのに、と思ったので堤の字の意味を調べてみると堤の字には「統べる」という意味があることが分かりました。
まあ、とにかく、あるファミリーの上にあるものを下のものを使って表現したり、逆に下にあるものを上のもので表現するもんだ、となるべく簡単な言葉を使って解釈することにしてエロに変換して考えました。
下にあるものを上にあるもので表現するエロは比較的簡単です。
用例にある「全く、情けない男だ」という表現からしてなんだか既にエロを感じます。
別に男だったらなんでもいいというわけではないですが、ここでいう「男」という単語からはもうそれだけで相手を蔑むようなニュアンスがあります。
なぜそんなニュアンスが生まれるのか。
鋼の錬金術師という漫画でキング・ブラッドレイが「したたかにあがけよ、人間」というようなセリフを誰かに言っていたような気がします。
これは特定の個人に言っても十分通用するセリフですが、ここで言っている「人間」という単語こそ下にあるもの(特定の個人)を上にあるもの(人間というファミリー)で表現した言い方です。
これはつまり相手を特定の個人とは見なしていない言い方という事になります。
例えばご近所に八百屋を営んでいる吉田さんという人がいたとします。
そんな吉田さんに「ねえ、吉田さん。聞いた?こないだの田中さんとこの娘さんの話。」と話しかけるという事は、相手の事を吉田さんという個人として認めて話していることになります。それを聞いた吉田さんの方も「えーなになに~?」なんて気さくに返事を返してくれる事でしょう。
けれど、そんな吉田さんに対して「八百屋さーん、大根一本ください」と呼びかけるという事は、お客様として吉田さんのことを数多くいる八百屋さんファミリーのうちの一人というニュアンスで呼んでいることになり他意は無くとも個人としての相手を軽んじている言い方になります。ましてや「おい八百屋!」なんて不躾に呼びつけようものなら吉田さんとの今後の人間関係はズタズタです。
このように「下のものを上のもので表現する提喩(以下:下上提喩)」というものは、対象の個性を軽んじる、という不躾で失礼なニュアンスを含みやすいようです。
これをエロに応用するのはとても簡単です、というかこの表現自体がエロと言ってもいいくらい、とか適当言ってたら偉い文学者の人とかに怒られそうですが。
───
「おい、なんなんだよ!ここ!!!出してくれよーーー!」
何の変哲もない、いつどこの学校にでも通えるような質素な学ラン姿の少年は声変わりしたてのハスキーな声でわめきたてながらしきりにドアを叩き続けていた。
いや、それがドアなのか壁なのか、厳密には少年にもよくわかっていない。
というより、今この場が果たして部屋と呼べる代物なのかどうか。
彼が所属しているサッカー部のシャワー室とさほど変わらない大きさのその部屋は「起きて半畳寝て一畳」、そんな言葉すら浮かぶほどのスペースしか持ち合わせていなかった。
いるだけで息苦しいその空間の中で目を覚まして、どれだけの時間が経過しただろうか。
自分がなぜこんな場所にいるのか分からない。
部活でヘトヘトになって一人家路についていた矢先、何か夜空から眩しい光が降り注いだかと思うとそこからの記憶は全く無く、気が付けばここで一人しゃがみこんでいた。
暗闇の中、ひとしきり喚いて体力を消費したところで、少年をとりまく環境に何か異変が生じ始めた。
具体的に何が起きているのか把握できず、ゴムのような化学的な匂いがしたかと思えば、ぼとり、ぼとり、と何かが学ランの肩を打つ音がした。
「な、なんだぁ…?…!!」
ろくに照明など無い、壁から放たれる微かな蛍光程度しか感じられないその空間ではそれが何かは少年には視認することは出来なかった。
けれど、いつの間にかその場に現れた、スライムのような感触を持つその腕は、少年の頬や胴体を撫で回しながらその全身から涎のようなものを垂らしていた。
いつの間にか、少年の体を守っていた学ランの肩は跡形も無く姿を消し、彼の、まだ華奢ではあるが同年代の女子よりは骨味を増した思春期の少年の上身がいつの間にか露わになっていた。
スライムの垂らすその涎は、生体以外のあらゆるものを溶かしつくす、特殊な溶解液だった。
「え、ちょっ…な…っ…!!なに、これ……やめっ…ああああっ!!!!」
狼狽している少年の体を、いよいよ複数のスライムの腕が寄ってたかって襲い掛かり、数分もかからないうちに彼を丸裸にしてしまっていた。
別室では、異形の姿をした生き物たちが、大きなモニターを見ながらそんな少年の様子を伺っている。
彼らはここから数万光年の距離にあるとある高度文明の星からやってきた者達だった。
彼らの目的は、原始惑星とそこに棲む生き物についての研究を行い、それについてのレポートを提出する事。
とにかく、何でもいいから急いで事を進めなければ、彼らの上位に属する者から厳しい懲罰を受ける運命が待っていた。
『ちぇー、コイツ雄だ。どうせなら雌の方がよかったなあ。』
『こんな動物相手に何考えてんだよ。いいじゃん。とりあえず、ペニスはどこについてるんだろ?こいつ、まだ幼体っぽいけど、精液はもう出るのかなあ。』
『何でもいいから、適当にあれやってこれやっちゃおうよ。先生に怒られるの、俺嫌だよ。』
そんなようなことを、彼らは彼らの言語でくっちゃべりながら、作業を開始しようとしていた。
───
と、まあ地球より遥かに高文明の星からやってきた宇宙人が人間の男の子を浚ってあれやこれやしちゃうという感じに。
たとえ地球上ではこの少年に「田嶋雄一」塩田中学2年生でサッカー部員、今はマネージャーの彼女と付き合っていて…なんていう個人としての肩書や事情があろうとも、やってきた宇宙人達からすれば早く片付けたい宿題のために何でもいいから適当に見繕った個性度外視の人間という「上のもの」であり、ただの動物であり雄であり幼体という上位概念としてしか見ていないわけです。
まあこんなまどろっこしい例えを出さなくても、例えば王位を追われて落ちぶれたアレン王子が「奴隷003号」に堕ちてしまうとか屈強な格闘家の事を「脳筋霊長類」呼ばわりするとか、そんなんでも十分エロを表現できます。
このように下上提喩は卑しめる、貶める系のエロとは非常に相性の良い技法だと思います。
それはいいのです。
問題は「上のものを下のもので表現する提喩法(以下:上下提喩)」の方です。
私がこれについて考えたときに真っ先に頭に浮かんだのは「紳士用お手洗い」という言葉です。
ちょっといいところにご飯とか食べに行ったときに、用を足すために入ったお手洗いにこんな名称がついているのはよく目にします。
それを見るたび「私、そんなに言われるほど紳士じゃないけどなあ。まあ婦人じゃないことだけは確かだけどな。」なんて間抜けな事を思いながら用を足した経験のある方は私以外にもいるかもしれません。
ここでいう「紳士」というのは要するに男性そのものを指すわけですが、言うまでも無く全ての男性が紳士と呼ばれるような人物であるとは限りません。すべての女性がレディであるわけではないのと一緒です。
これはまさに上のもの(男性)を下のもの(紳士)で表現する提喩法の典型です。
一緒にくっついてる「お手洗い」も同様です。
お手洗いというのも結局はトイレのことを指すわけですが、トイレは何も手を洗うためだけに行く所じゃありませんというかそれ以外の用事の方がずっと多いでしょう。
電車に乗ってて突然腹具合が悪くなってしまい、必死になって探しまわってやっと見つけて飛び込んだ「紳士用お手洗い」に本当に手を洗う蛇口しか無かったりしたらどうしよう、とか考えたら気が気じゃありません。
上下提喩というのはつまるところ、下上提喩とは逆で、相手に対して配慮を加える手厚い表現法ということが出来ます。
全ての男性を「紳士」として扱い、全ての女性を「レディ」として扱ってくれる技法ということですので。
そして、問題はこれをどうエロに応用するかということです。
上下提喩というのは言わば品性を底上げするための技法であるというのがここまでの解釈です。
私はこないだ「エロにも知性や品性がいらないとは言わない」というような事を言った覚えがありますが、だからといって積極的にエロに上品を取り入れようとまでは思いません。
エロだからってあまりに下品に徹してばかりでは芸も味も無いという理由であえて残したいという程度の話で、不良だからって財布の中身を全部強奪せずに電車賃だけは残してくれるカツアゲと同レベルの話です。
上下提喩でエロを表現しろというのは、なんだか超良い匂いのする高級石鹸とかを持ってこられて「これでなんかウマいもん作ってよ!」かなんか言われてる料理人の気分です。
「石鹸は食うな!手を洗え!」とお客様を怒鳴りつけるわけにはいかないので一応今後の課題として頭の隅に置いておきます。
うーん…「肉」という上位に対して「豚肉」は下位に当たるので、「肉便器」って焼き印された肉便器達の額に焼き印追加して「豚肉便器」にするか?果たしてエロなのかそれは、というか何だそれは。
というわけで、次があるなら諷喩法で。それではまた。