SamuZai
烏川
烏川

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捕食者 後篇

今の世の中、プレデターに関する知識ならネットでいくらでも拾うことが出来る。 別に生物学の専門家でもなんでもないただの凡人で、一中学教師に過ぎない俺が、彼らの生態についてここまで高説ぶちまけることができるくらいにプレデター情報は氾濫している。 色々規制の強いテレビと違ってネットの情報は豊富な分玉石混交で、ネットリテラシーが問われるけれど、それだけにセンセーショナルだ。 特に目撃談や体験談はその筆頭ともいうべきもので、プレデターの存在が今やどれだけ世を席巻しているかがよくわかる。 プレデターそのものや襲われている男性を偶然目撃し、その時の衝撃をストレートに独白しているだけの罪の無いものもあれば、興味本位でプレデターを捜索し、運良く遭遇するやプレデターやその被害者の姿をツウィッター上で報告する、なんていうゲスの極みみたいな輩も中にはいる。 そんな風に自分からプレデターを探しに行く不謹慎な人間の中には意外と女性も多く、炎上狙いなのか何なのか、目撃証言を本人の男性蔑視思想も織り交ぜて面白おかしく語っているサイトをいくつか見た覚えがあった。 おそらくは女性である自分はプレデターの被害に遭う事は無いと思い込んでいるのだろうが、それはひどい勘違いだ。 男性に対する害ばかりが注目されがちだが、プレデターが女性に対して危害を及ぼすことは実は往々にしてある。 けれど、そんなサイトを運営している人間にわざわざ親切に忠告してやる義理も無いから現時点では皆放置しているようだ。 他にもツチノコを探してたら偶然プレデターに出くわして被害に遭ってしまったツチノコ捜索隊、なんていうかわいそうなのかマヌケなのかよくわからない体験談を読んだ覚えもある。 プレデターとの遭遇に関してはフィクション、ノンフィクションに関わらず多様な体験談が埋蔵されていて、その、人々の下衆な好奇心を擽る内容ゆえか、事態の陰惨さにも関わらずある種の娯楽コンテンツのようになりつつある。 一方、目撃談に対して、直接プレデターの被害に遭った男性の体験談というのは比較的少ない。 ちょっと考えれば当たり前の話だ。 プレデターに襲われて精液を搾り取られた男性の心理というのは、あまり同列に語るべきじゃないかもしれないが女性にとってのレイプ被害に似た、「人としての尊厳を踏みにじられた」という屈辱を覚えるらしく、自らその時の事を語りたがる被害者はあまりいない。 特に思春期の多感な年頃の男子による体験談なんていうのは本当に稀で、あっても結局は大人による釣り行為や創作という結論に達したりする。 体験談の方は大体、20代半ば~30代の男性のものが中心になっていて、それらはそれらで目撃談と同じく多様性を見せてくれる。 被害者として他の男性に真剣に注意喚起を行っている者もいれば、プレデターの搾精による決して他では体験できない異次元の快感についてをただ回顧するようなポルノ染みたものもあって、どこまでが事実でどこまでが創作なのかの判別は難しい。 クオリティの高いものは極めて少ないが、プレデターの被害にあった実際の光景を断片的に映した素人映像ならばネット上でも見ることが出来て、これがまた結構えぐい。 異形の生き物が、野郎のチンポに執拗に吸い付いて離さない姿はもうそれだけでえぐい。 プレデターの掌は相手の体に貼り付きやすいように肉の吸盤を形成しているが、それでも相手の抵抗や自身の分泌する粘液によって取り逃す事が無いではない。 が、それでもなお一度咥えこんだ肉竿を口から離す事だけは決して無く、文字通り食い下がりながら、驚異の吸引力でどこまでも搾精行為を維持し続ける。 やっとありついた肉棒を嬲るプレデターの貪欲な舌使いや粘膜の蠕動。その顎から繰り出される目にも留まらぬ高速の逆ピストン。 そこから伝わってくる彼らの原始的欲望には見ているだけでも圧倒される。ましてや、それらを直接繰り出された男達はとてもじゃないが意味のある行動なんかとれやしない。 そうして、性器への執拗な愛撫によって無防備になった男達に対して、さらに追い打ちをかけるように尻尾による肛門刺激が始まる。 尻尾といっても侮ってはいけない。 筋肉と神経が発達したそれはまるで蛇のように俊敏かつ狡猾に、主の意のままに宙を駆け、獲物への侵入を図り、自身の粘液も活用し他生物の肛門へ滑り込んで、腸内の粘膜を蹂躙する。 前述の通り、産卵管でもあるプレデターの尾の先端付近では発達した輪状筋がゴムの塊のような独特な硬度を保っている。 その生まれ持った卑猥な先端をふんだんに活用し、獲物の弱点を嬲って穿って、男達を官能に引きずり込んで無理矢理に絶頂に追い込む。 まるで計画的にやっているかのような巧妙な手口だが、プレデターによるヒトの雄への一連の性感帯刺激はおそらくハチのダンスなんかと同じくDNAに刻まれている本能行動の一環なのだろう。 それだけの獰猛さを持ちながら、プレデターの責めが人の体に傷を残したという話は滅多に聞かない。それだけ、彼らのヒト雄への捕食行動は綿密にプログラムされている。 本能に忠実な下等生物ならではの知性の乏しさは、同時に生物としてのなりふり構わなさや、力強さを体現していた。 そんなプレデターという生き物から受ける生理的嫌悪とは裏腹に、連中が与えてくる物理的な快楽は実に凄まじいものだ。 例の会議で見た記録映像を思い起こせば、まだ性的な知識も経験も無いはずの小さな男の子が、しまいには自分が味わわされているその感覚が快感(キモチイイ)なのだと自覚して動揺している様子が声だけでも感じ取れていた。 だからこそ、若年者によるプレデター被害経験が語られることは少ないのだろう。 下等で知能も決して高いとは言えない生き物にまんまと捕食され、望まぬまま与えられた快感にあぁんと喘いだなんて、そんなかっこ悪いこと、思春期の男子が易々と告白できる内容じゃない。 一方で、そんな自分の体験を精緻に描写する成人男性も存在したりする。 知能の低い下等生物ごときに捕食され、餌食になり果てた自分の事を回顧してマゾヒスティクな快感に酔いしれるような手合いだ。俺にはちょっと理解しがたい。 ─── 再び、職員室の電話が鳴り、病院に残ったままの担任教師から現況が語られた。 男子生徒はおそらく肉体的精神的疲労からだろう、入眠し、その間に女子生徒から事情を聴取したようだ。 彼女らの証言によると、3年生の同級である彼ら彼女らは受験前の思い出作りのために集団デートなるものの計画を話し合っていたらしい。 その証言だけで、こちらとしては軽い頭痛を覚えた。 女子との約束を前にして鼻息を荒くした若い男子なんていうのは、プレデターの好物中の好物だ。 その匂いを嗅ぎつけたプレデター達がこぞって集まって、人気のない体育館の裏で今回の凶行に及んだというわけか。 その一連の流れは、ある意味では自然の摂理かのようにすら感じられた。 こういう事があるから、最近では高校生以下の異性同士の必要以上の交流を規制するべきではないかという議論もされている。どこまで効果があるのかは知らないが。 そして、その報告を聞いた瞬間、俺の脳裏では以前にネットで読んだ男子高校生の体験談の内容が思い起こされていた。 なぜ匿名のネット上なのにその男子が高校生と言いきれるのかというと、その談話の内容に実際の被害者にしか知りえない情報があり、描写にもリアリティがあったからだ。 記事の中の男子高校生も、今回の件と同様に、女子と一緒にいるところをプレデターに襲われた。 まだ高校2年生だった彼は、深夜の塾帰りに寄った公園で、付き合い始めて間も無い彼女と束の間、二人きりの逢瀬を交わしていた。 とは言っても深夜の公園で如何わしい行為に及んでいたわけでもなく、言葉通り2人きりで並んでおしゃべりをしたり肩を寄せ合ったりと、2人だけの時間を過ごしていたという。 そんな、聞いただけでこちらの胸に甘酸っぱいものが広がるような青春の1ページにも、プレデターの存在はやはり大水を差してしまう。 プレデターとて、いかに獲物の男子を見つけたからといって無計画に飛びつくわけじゃない。 ましてやその時の少年は以前の記録にあった男児のように水着一枚ではしゃいでいたわけではなく、塾帰りで、制服のブレザーで身を包んでいた。 プレデターが付け入るスキなど見当たらない。 彼に限らず、現代社会で全うに暮らしている人間の大半はそんなものだろう。それでもプレデターの餌食になってしまう者は後を絶たない。 その理由を、彼の体験談はとても端的に記していた。 宵闇の中、たまたまプレデターを発見した少年と少女は、それまでの甘いムードから一転緊張を走らせた。 これが噂のプレデターかと、怖がる少女と、そんな彼女を庇い、身を強張らせる少年。それは、大好きな彼女を守るためでもあったし、きっと、彼女にかっこいいところを見せたいという少年らしいプライドもあっただろう。 剣道部に所属していたその少年は、咄嗟に持っていた竹刀を出してプレデターに対して構え、威嚇行動に走ったという。 多分、それが良くなかった。 ─── プレデターを前にした人間が一番やってはいけないことがある。物理的な攻撃だ。 特に自身に対して明らかな害意を持った者が接触してきた場合、プレデターは自身を守るために即座に自分の最大の武器を投入する。 その最大の武器というのが実は、毒だ。 プレデターの後ろ脚、その踵には蹴爪様の尖りがあって、危機を感じた際には敵の攻撃から素早い動きで身をかわしつつ、そこから無色無臭の毒霧を散布する。 獲物がプレデターに致命傷を与えようと、プレデターを追いかけて息を荒げているうち、気付けばその毒が体内に入り込んでいるという寸法である。 件の少年少女も例に漏れず、本人達の知らないうちにいつの間にかこの毒の餌食になっていた。 ひとたびこの毒が体内に一定量入り込むと、血中を介して大脳に達しその人間の、主に生殖活動に関わる部位に強く作用する。 毒によって刺激を受けた神経は急激なシグナル亢進を起こし、周囲の状況とは無関係にその人間の性衝動を増大させ、強制的に発情状態にしてしまう。 平たく言えば、男子の頭の中が突然スケベな事しか考えられなくなってしまう、というところだろうか。 そして、突然理不尽に増大した性欲に対する情報処理の一環としてその男子の脳が、膨張する自身の性欲に対する理由づけとしてしばしば淫らな幻覚を見せる。 折角の竹刀による打撃も決まらず、哀れにもこの毒をまともに喰らった少年は、こんな感じの事を述懐している。 “プレデターを竹刀で追い回してるうちに、なんだかそれ自体が楽しくて段々コーフンしてきた。そしたら、プレデターだと思ってたソイツが実は杏奈ちゃんだったことにいきなり気が付いて驚いた。何が何だかわからなかったけど、杏奈ちゃんは俺とセックスがしたいって、テレパシーで俺の頭に直接そう囁きかけてきて、まだ外だっていうのにそう言われたら俺も我慢できなくて、いつの間にかパンツを下ろしてた。杏奈ちゃんが自分から俺のチンポに吸い付いてきて、それがあんまりヤバ過ぎて、プレデターとかそういうのは、段々どうでもよくなっていった。” 杏奈ちゃんというのは一緒にいた彼女の事だろうが、その内容からは、プレデターとの立ち回りの間に少年の頭が徐々に侵され、幻覚によってまともな思考を奪われていったのが分かる。そこから先はこう続いている。 “ほんとのところを言うと、俺のチンポを吸ってるのがプレデターなのはなんとなく分かってたし、何かおかしな事が起きてるのも頭のどっかではずっと分かってた。でも、すぐ傍で杏奈ちゃんがきぃきぃ言いながら地面を転がってて助けてあげたいのに、杏奈ちゃんのおまんこが俺のチンポをズボズボしゃぶってくるのがエロくて、気持ち良くてどうすることも出来なかった。” “こっちの杏奈ちゃんも、プレデターだけど杏奈ちゃんだし、そもそも、杏奈ちゃんがプレデターだからって問題があるか?こんなに俺の事を求めてくれてるのに。(中略)もう、気持ち良すぎてチンポがとろけそうだとか思ってたら、今度は杏奈ちゃんの方も俺の中に入りたいと言ってきた。そうか、俺ばっかり杏奈ちゃんの中に入っちゃ男女平等じゃないよな。” “自分でもわけわかんない事言ってるのは分かってるけど、その時の俺はホントにそんな感じだった。俺の方から全部脱いでケツを突きだしたら、杏奈ちゃんの、なんか太くて生温い棒みたいなのがズボズボズボ-ッ!て一気にケツの穴の奥まで入ってきて、杏奈ちゃんの前なのにすげえアホな声が出て、それがちょっと恥ずかった。” “ぶっといウナギみたいのがケツん中を出たり入ったりして頭ヘンになりそうだったけど、それがいよーに楽しくなってきて、杏奈ちゃん大好きだーーー!!とかチンポキモチイィーーーッwww!!!とかケツ穴イエーイwww!みたいになって、気分はもう最高にハッピーになってた。マジで、頭ん中でお祝いの打ち上げ花火が飛びまくってる感じだった。チンポもずっとギンギンだったと思う。(中略)あの時俺のチンポをしゃぶってきたのはプレデターだったってことはそん時も今も頭では分かってるのに、心では俺はやっぱり杏奈ちゃんとヤったんじゃないかって思ってるような気がするし、そう思いたい。てか、あの時だけはプレデターはやっぱり杏奈ちゃんだったんじゃないか?とか思うし(以下略)” 後になればなるほど文章に落ち着きが無くなってきているが、訴えたい気持ちだけは妙に伝わってくる文章だった。 現実と幻覚の間を行ったり来たりしながら、ひたすらプレデターに与えられる快楽に翻弄され続けた少年の、当惑の気持ちが良く分かる。 毒によって性欲の暴走した少年の若い体を、プレデターはその全身を使って嫌というほど慰撫しまくる。 特に、これくらいの年頃の男子の勃起ペニスなんて、プレデターからすればジューシーな肉汁が溢れる熱々のフランクフルトみたいなもんだろう。 少年の方も、甘い幻覚によってまともな思考も判断力も封じられ、その上で、ひたすら雄としての本能のままに快楽を貪ったわけだ。 さぞ強烈な解放感や充足感を覚えたはずだろう。最高にハッピーな気分とは多分そんなところだ。 こんなふうに、一端プレデターの毒に侵されてしまった男子はその多くが抵抗を忘れて、自分からプレデターに対して体を開くようになる。 そして、自分の脳が生み出す淫夢とプレデターが与えてくる肉体的快楽に溺れて、あれよあれよという間に彼らの良い餌食にされる。 着衣などで武装しても無駄なのだ。やるなら着衣に加えて防毒マスクでも装備しなくてはいけないが、そんなもの一般家庭で用意できるわけも無い。 一方、同じ毒を女性が喰らった場合は純粋に毒としての害しか齎さない。 毒といっても男性と同様に、生命の危機に直結する効果は無いが、男女の脳構造の違いのせいか、女性に対してはこの毒はさらに強力に作用する。 男性にとっては性衝動を刺激し、性欲を異常亢進するくらいの効力しか無いが、女性の場合はより強く引き起こされる興奮から、現れる幻覚の陰惨さや悲劇性がより強調されやすくなる。 昔に遭った屈辱的な経験やトラウマレベルの悲劇などを記憶から引きずり起こされることなどもあり、結果的にPTSDを悪化させるなどの例もあるほどだ。 同じ人間でありながら、プレデターの毒に対する男女の反応は大きく変わってくる。 ただ、この毒の男性に対する効果がプレデターにとって都合が良すぎることから、毒とはいってもこの機能はやはり搾精をより円滑に進めるためのものであり、女性に対する効果はあくまで副次的なものであると推測されている。 ちなみにこの毒は水溶性で、一定の効果を齎した後は汗や尿と一緒に体外に排出される。 なので身体的には体内蓄積とか後遺症のようなものは生じないはずではあるが、プレデターによる搾精を経て勃起不全に陥るほどの心の傷を受けたり、逆に多淫症、自慰依存に陥ったりといった被害者の話は枚挙に暇がない。後者の原因の多くはおそらくこの神経毒の効果が大きいだろう。 また、女性とは違って毒の効きの弱い男性の場合は、現実と幻覚の境界がより曖昧で、一度溺れた淫夢の記憶からすっきりと脱却できない事も多い。 それはこの少年の経験談からも実感出来ることだろう。 結局、少年と「杏奈ちゃん」は、この一件を機に残念ながら破局を迎えたようだが(迎えてなかったらそれはそれで驚きだが)、その事に対する嘆きよりもむしろ淫夢の中の「杏奈ちゃん」との行為が強烈に意識に残って、忘れられない様子だった。 だがもし彼が万が一杏奈ちゃんとよりを戻したところで、同じ経験をする事は不可能なわけで、それは他の女の子と付き合っても変わることはない。 可哀想だが、あらゆる意味で彼の前途には難儀なものを感じさせられる。 今日の男子2人の事件も、きっとこの少年と似たようなプロセスを辿ったに違いない。 試験終わりで、しかも夏休みを控え、浮き浮き気分で談笑していた生徒達。その匂いに惹かれてプレデターがのっそりと姿を現した。 誰からともなくプレデターを発見した彼らは、同じように女子を守るためか、はたまた面白半分かは知らないが、その辺の棒きれか何かを掴んでプレデターを追い払おうと威嚇する。 それを獲物からの攻撃とみなしたプレデターは、逃げるそぶりを装いながら、いつものように神経毒を撒き散らす。 躍起になってプレデターを追い回していたはずの男子達は、いつの間にやら堕ちた淫夢の中で美味しく味付けされ、プレデターにとって邪魔なというかどうでもいい女子達は地に伏しながら悪夢に喘ぎ、苦しみ続ける。 準備がすっかり整ったところで、潜んでいた他のプレデター達が一気になだれ込んできて、男子2人を輪姦………ではなく捕食し、そこからはもう、楽しい楽しい立食パーティの始まりだ。 その後始末など、誰がするというわけでもなく。 代わりに後始末をさせられる、というか、させられたのは他でも無い俺達だ。全く以て理不尽極まる。 放課後も残ってずっと電話番をしていたが、男子達は正気こそ戻らないものの腸内洗浄までしっかり行われたようだった。身体の健康の方は問題無いようで何よりだ。 後は毒による精神汚染が消えるのを待つだけだ。こればかりは酒と同じで自然に抜けるのを待つしかない。 ─── 男子達の事情聴取は彼らの意識が戻ってからということで、他に出来る事は見当たらない。 学年主任の許可を取り、今日のところはなんとか帰路につく。 今回被害に遭った男子の中に自分の担任する生徒がいなくてよかった。 プレデターの餌食になりそうなやんちゃな奴ならあいつやらこいつやら、色々思いつくが、何とか今日まで無事に生き延びている。次のHRでは改めて注意を促しておこう。 …プレデターか。 そういえば、随分と昔に同じ名前をタイトルにしたモンスターの映画が流行ったことがあったな。 あれは、確か地球を侵略にきた宇宙人の話じゃなかったかと思う。 個人的には、この、現実世界のプレデターも、宇宙とか異世界から突然迷い込んできた生き物なんじゃないかと思ってる。 そうでもなきゃ説明のつかない事がこの生き物には多すぎる。 “Organithorhynchus anallinus”なんて偉そうな学名が付いていたりするが、生物学上の分類なんかこの生き物にはあってないようなものだ。 どんな分類にも属さないから、この生き物に近い生態の動物からもじって付けられた、半ばシャレみたいな名前だ。 そりゃそうだろう。ヒトの精液を主食とする生き物なんて、こうして実在が明らかになるまで発想すらできなかった。けれど、奴らは現として存在する。 ただ、連中が侵略者なのか、といえばそれはそれで疑問は出てくるけれども。 電車を二駅ほど経て、徒歩数分でわが家へとたどり着いた。 本棚と最低限の調理具以外は、かび臭い煎餅布団ぐらいしかない家だが、それでも俺にとっては他にはどこにもない我が家には違い無い。 コンビニで適当に買ってきた惣菜やそばを啜ったあとは後片付けを済ませて、部屋の簡単な掃除を済ませた。 我ながらその手際の良さに年季がかったものを感じる。こういう事をやってくれる奥さん的な存在が、いる奴にはいるんだろうけど俺にはそういう存在はいないし、これからも出来る予感はしない。 それでもいい。今の世の中、俺みたいな奴は他にもいくらでもいるだろうし。 仕事は無難にこなして、無難な給料をもらい、無難な趣味を楽しんで生きる。それで、誰に何を言われることも無い。それでいい。 なあ、お前もそう思うだろう? 押し入れを開け、その中の、黒い鉄製のケージから俺を覗く2つのビー玉を前に、心の中だけで同意を求めた。 檻の中のそいつは、プレデターは、勿論返事なんて返さないまま、その透明な双眸に歪な俺の姿だけを反射させていた。 自分の今の立場というものを理解しているんだろうか、外で見かける時よりも随分と従順というか、大人しい。 たまたまうちに出てきたところを運良く捕獲してから、なんとなくペット替わりに飼ってはいるが、こいつは食事の時以外はいつも同じテンションだ。 元々、プレデターという生き物には鳴き声というものが無い。 生態上、口先から喉までに距離があるプレデターには鳴き声で互いの状況を伝達しにくいという欠点もあるし、そんな事をしているくらいならちゅぱちゅぱとチンコだの野郎の肌だのを吸っていたいというのが正味のところだろう。 彼らのチーム行動はそれこそDNAに深く刻まれていて、今更細かい意思伝達なんて、必要としない。 冷蔵庫から、事前に混和させておいた餌液の入った哺乳瓶を突き出してやると、それまで大人しかった奴が、それこそチンポに吸い付くかのような勢いで咥えこんできて、思わず笑ってしまった。可愛い奴だ。 餌液の中には、事前にドンキで買っておいたプロテイン剤をいくつか混和させている。それに狂おしいほどの勢いで吸い付いてくる姿からも、いくつか分かる事があった。 やっぱり、プレデターにとってはこれらの行動は全部食事というか、純然たる栄養補給なんだ。 こいつらが、どこか他の星や世界からきた生き物なんじゃないか、という発想はこういうところからも出てくる。 だってそうだろう。考えてもみよう。 いくら効率よくチーム行動をとったところで一生懸命防衛している人間達から、プレデターがいったい一日どれだけの精液を摂取できるというのか。 プレデターがどんなに小柄だからって体長数10cmはある。 そんな小動物というほど小動物でもない彼らが、自分達の代謝を維持できるだけのタンパク源を人間だけから搾り取るというには無理があるというのに、他の動物がプレデターの被害にあったという話はとんと聞かない。 きっと、プレデターが元々いた星、というか世界には人間の雄の精液に似た、とても栄養満点の体液を垂れ流す乳牛みたいな生き物がいたんじゃないだろうか。 そして何かのきっかけで俺達の世界に迷い込んできたプレデター達は、その代替として俺達人間の雄のチンポを狙う。まるで、母親の乳房に吸い付く乳児みたいに。 けれど、それじゃあとても種を維持するだけの栄養補給は維持できないだろう。 ニュースを見れば、プレデターの害や、プレデターの脅威について盛んに報道したりしているが、やつらにちょっと深く接した人間からすれば、その反応はやや大げさというかアレルギーに近い。 こいつらは、おそらくほっとけば、自然淘汰の末に、勝手に滅びる。 それよりもこいつらが人間に対してもたらす恩恵についても目を向けた方が、まだ建設的だ。 初めてプレデターによる搾精を受けた時は、ある意味で人類の夜明けだと思った。 どんなオナホもかなわないほどの異次元な快感と、手間のいらなさ。ティッシュで虚しい後片付けなんて必要無く、強烈な快感を味わえるんだぞ。 自分の精液を一滴残らず吸い上げられるっていうのは、想像以上に充実感を感じるものだと初めて知った。 これに頼り出してから、風俗で嬢に気を遣う必要なんて、微塵も無くなった。 ただ、ネットでよく見る毒霧の体験だけはまだちょっと不安で試したことは無いんだよな。 慣れてる人らは、必要な時に必要なアクションで、必要な量だけをプレデターから出させることが出来るみたいだけど、俺にはまだそんなスキルも度胸も無い。いずれ試したいとは思っているけれど。 文字通り、夢のような快感を味わえるらしい。なんだか、麻薬の快感にあこがれる気持ちに似ているかもしれない。 それから、ちょっとネットの情報を詳しく漁ると、自分で産んで育てたプレデターを調理して食った、なんていう勇者の体験談も読むことが出来る。 産んだ、というのは腸に産み付けられたプレデターの卵を、除去することなく孵したということだろう。 人間の腸の中で一度に大量に孵ったプレデターの卵。 そこから溢れだすアルカリの卵液が、人間には気の狂いそうな痛痒感を与え、どぼどぼと大量に孵ったプレデターの幼体を生み出す時の強烈な排泄の快感に身悶え…。 そうして育てられたプレデターには生まれつき喰い応えのある部位がいくつか備わっているらしい。特に、優れた吸引力を維持する横隔膜(ハラミ)のあたりは、醤油焼きにすれば酒のつまみとして絶品だそうだ。 それはそれで、ぜひ試してみたいが、包丁係は誰かに任せたい。 今日の事件の後始末についてはまだ頭が痛いが、それだけにこのストレスについてはぜひともプレデター自身に責任を取ってもらいたいところだ とりあえず明日までに3発くらいは抜いてもらおう。 毒霧の快感もいつかは必ず試したいところだが、それは次の日も休みって時にな。当分は連休なんて取れそうにないけど。 ケージのカギを外しながら、物も言わない下等生物を前に、俺は一人ほくそ笑んで、パンツを下した。


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