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ミカ
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櫛田桔梗の不運 ―あるいは山内春樹の天赦日①―

【プロローグ】 私はどこで選択肢を間違えたんだろう。少なくとも数日前までは完璧な立ち回りをし、ものの見事に宿敵を陥落できていたはずだった。自然を装い医師に近付き、しなやかに検査に参加することに成功。そして合意と公的な認可のもと、思う存分あの女の痴態を撮影した。あまつさえ、アイツ自身の最もデリケートな腸内問題まで暴くことが出来た。 さらに首尾は上々に運び、全員では無いもののクラスメートたちの前であの女を辱めることに成功する。馬鹿なあの女は私の策にまんまと入り込み、自らの意思で行っているかのように一枚、また一枚と制服を脱ぐ。そして一糸纏わぬ姿になった後も、私の思い通りに自分から恥部をクラスの男どもや女どもに献上したんだ。あの時のアイツの悔しそうな表情は絶対に忘れない。もちろんその瞬間の達成感もだ。アイツは上手に心のうちを隠していたつもりかもしれないが、横で見ていた私には抑えきれない羞恥と屈辱の表情がありありと見て取れた。 私は自らの理想のプランを完璧に遂行し勝者になった。これで長く患っていた心のしこりも溶け、実質的にこのクラスを統括する立場になれたんだ。 「なのにどうして」  呟く声は誰にも聞こえない。頭だけ布団にくるまっているおかげで、小さな独り言くらいならすぐそばにいるこの男にも届かないからだ。加えて言うなら、この表情も見られることはない。歯を食いしばって、刺し殺せるほど鋭くなった目つきは、同様の理由から360°どこからも見えはしないのだ。  その点だけは幸運と言えよう。私が日々生きるカロリーの大半を要して隠してきた本性を、こんな形で水泡に帰すことなんて絶対にあってはならない。だから幸運なんだ、この一点だけは。  そしてそれ以外の全ては不幸だ。絶対の、確信を持って言えるくらいの不幸。それが現在の私に降りかかっていている。理由?そんなものこの状態を見れば誰でも察するだろう(尤(もっと)も、他の誰であろうがこんな痴態を見せるつもりなんてないが)。  全く、俺ってやつはつくづく、なぜこうまで主人公なんだよ。やれやれ、都合の良い展開が続きすぎて流石に手が足りなくなりそうだぜ。  先日の堀北の裸鑑賞会は言うに及ばず、体育祭の時はずっと狙っていた佐倉まで自分のものにすることが出来た。二人三脚の練習にかこつけて佐倉を手玉に取ることが出来たばかりか、最終的にはアイツの裸(それもブラジャーのおまけつき)を収めることに成功した。  今、俺のスマホの中は2人の裸でいっぱいだ。堀北も佐倉も、大切な体を余すところなく俺に見せつけ、そして撮影することを許してくれたもんだから、メモリーがパンクしそうだぜ。 最近の日課はコイツラの比較画像を作り、鑑賞しながらオ〇ニーをすることだ。2人とも言い感じにタイプが違う美少女だから、胸も尻もアソコも対照的に楽しむことができる。いやはや、まさに王様になった気分だ。 そんな折に、世界の主人公である俺に留めとばかりに舞い込んできたオイシイ誘い。是が非でも飛び付いた俺に、どうやら間違いはなかったらしい。 「いやぁ……まさかこんなものまで手に入るなんてなあ」 反応はないけど、必要以上にはっきりと声に出したから布団にくるまっているこいつにもちゃんと届いているだろう。表情が見えないことだけが不幸だが、それはそれ以外の幸運の総和を思えば些末な問題だろうよ。  そう。私 ― 櫛田桔梗は今、人生最大の不幸に見舞われている。まさか……  そう。俺 ― 山内春樹は今、この世で最も幸運な人物になっている。まさか……    「「コイツの裸を拝める(に裸を見られる)なんて!!」」     【事前譚】  話はこの日の数日前の夕刻にさかのぼる。普段通り学校から帰宅した櫛田と山内は、部屋のポストに投函された見慣れない色の封筒に気が付いた。訝しみながらも取り出した空色の封筒に差出人の名前はなかった。しかし、隅に印字された堅苦しい機関名を認めるとそれぞれの顔は強張った。 【文科省直属教育部】 その名前にこれまでの数日間に訪れたいくつものイベントが想起された2人は、それぞれに自室のバッドまで駆け足で戻ると急いで封を開ける。そして、 『山内春樹くん立会い下での、櫛田桔梗さんの健康優良児検査参加のお願い』 「は……はぁっ!!?なんで…!」 「マジかよぉ!?」  文書の最初の文言、というより表題を読むや否や片や怒りの、片や喜びの絶叫を上げた。双方の胸中には気色の異なる疑問が浮かぶものの、続く概要に目を向けることにした。 『先日は堀北さんの健康優良児検査に参加いただきまことに感謝いたします。両名を始めとした多くの参加者の協力により、今後の保険教育を発展させる多くのデータを収集することができました。  しかし、データを収集するうちに我々は重要な要素の不足に気が付きました。それは他でもない、思春期の同級生女子の肉体を観察することが出来た、思春期男子の興奮と精神的変容です。先般の検査においても、折に触れて数人の男子へ感想を聞くことはできておりましたが、簡単なコメント程度で十分な検証材料足り得ず、統合した検査結果が偏ったものになったことは言うまでもありません。  よってこの度我々は、前回の検査で最も昂ぶりを見せていた男子と、その男子が最も高揚するであろう女子を被験者に選び再検査を実施することにいたしました。』  自身の常識を逸脱した内容に言葉が出ない2人。まぁ、それぞれの驚きの”質”は正反対のものなのだが、一方は絶望に顔色を無くし、一方は期待に顔を高揚させている。  そして櫛田と山内は書類が2枚あることに気付く。2枚目は検査の詳細だった。櫛田も山内も、それぞれの理由で思考が鈍くなっていたのだが、一度息を整えると2枚目に目を通した。 『・検査は○月○日の日曜日。10時より校内の保健室で執り行う。検査項目はあらかじめ決められるが、それぞれの検査時間は無制限(男子被験者の承認を得るまで)とする。 ・普段の学校生活に準じさせるため、検査は制服で行う。なお、女子被験者はアンダースコートやショートパンツ等の下着を隠す衣服の着用を認めない。 ・女子被験者は男子被験者の要望を必ず聞き、一切の拒絶や反論を認めない。ただし、男子被験者の要望による発言は例外とする。 ・男子被験者は各検査における感想を詳細にはっきりと口述し、自身の高揚を漏らさず記録することに協力すること。 ・検査はカーテンで仕切られたベッド上にて、他者へ意識が向きにくい状態にて行う。 ・女子・男子被験者はこの検査を拒否することをいかなる理由においても禁止し、当日の不参加には再考査無しの退学処分を与える。 ・検査の公平性と客観的なデータ収集のため、本部から派遣される医師1人を立会人とし、カーテン外からの指示、補佐を行う。 以上』 読めば読むほどにニヤケ顔を増す山内に対し、櫛田は表情を修羅に変化させながら紙を握りつぶすほどに握力を増す。さらに、文書の下部に記された立会人医師の氏名。 「あのクソジジイ……」  当時横で確認していた笑顔を思い出した桔梗は、最終的に紙を破り捨て、布団に潜り込んで絶叫したという。 【当日】 「ってなわけで櫛田。その…なんだ……検査だから仕方ないっつーか、お互いに退学が掛かってるんだからちゃんとしような」 「うん、そうだよね。でも、その、やっぱり恥ずかしいからお手柔らかにしてほしいかな……あはは」  時間通りに保健室に赴いた二人は、挨拶もほどほどに早速カーテンで仕切られた空間にて向かい合って座っていた。秋晴れの朗らかな陽光が差し込む保健室は、開けられた窓から涼しい風が舞い込んでくる。保健室のベッドは2つあったため、櫛田と山内はそれぞれのベッドに腰かけて指示を待つ。  2人の表情はそれぞれの内心を抱擁し取り繕いつつも、それが滲み出ている様が容易に認められた。もちろん両者にもである。櫛田は笑顔の端々を引き攣らせ口元をヒクつかせているのに対し、山内は下卑た内心のせいで鼻の下を縮めることが出来ず鼻の穴をヒクつかせているのだ。 「ほっほっほ。2人とも予想通り、緊張で強張っておるようですな。櫛田さんもまさか、自らが被験者になろうとは思わなかったようで」 「……チッ」 「ん?なんか言ったか桔梗ちゃん?」 「ううん。何でもないよ」  笑顔のまま器用にしたおかげか、反射的に出てきた内面をうまく誤魔化せはした。しかし、桔梗の内心は医師への殺意が決壊寸前まで膨れ上がっている。 (覚えておきなさい。必ずお前は破滅させてやる)  昨日の友は今日の敵とでも言うのか、あの日はあんなに櫛田に協力的だった医師が今は彼女を手籠めにしようと策を弄してきたのだ。計算高い櫛田にとって、これ程心を逆撫でられる状況は他にあるまい。  しかして相手は老獪極まる男性医師。好々爺を装いつつも櫛田の内心をはかり、かつ敢えてそれを無視することに何の躊躇いもなかった。 「では早速ですが初めの検査に移りますよ。まずは山内くんの好みの展開で櫛田さんに脱衣してもらいます。山内くんは感想をできるだけ詳しく私に教えてくださいね」 「ハイッ!」 「……」  そう、今の彼の興味はかのクラスでこの検査に最適な山内の反応と、それを真正面から受けないといけない桔梗の内心を想像することなのだから。  * 「山内くんはどのような脱衣に興奮しますか?自分で脱がせたり、相手に脱いでもらったり、笑顔で、はたまた恥ずかしそうに……などなど、脱衣一つとってもシチュエーションは多岐に渡りますよね。本日は君の理想のシチュエーションで櫛田さんに衣服を脱いでもらうことができますよ」 「マ、マジかよ……。じゃあ、そうだな……とりあえず桔梗ちゃんには上を全部脱いでもらおうかな、自分から。表情は恥ずかしがっててもいいけど、できるだけ笑顔で頼むよ。なんてゆーかこう、俺に見てほしいの的な感じ?」 「アハハ……いきなり注文が多いね。私にうまくできるかな(このクソ変態野郎が)」  他人の観察に長けている櫛田にとって、山内如きがどんな方向性の要望をするかは手に取るようにわかっていた。しかし、いざその時になれば屈辱と憎しみでぶん殴りたくなる。  だが今は退学をチラつかされている。それもどの程度些細な反抗で執行されるかもわからない。暴発しそうな胸中を持ち前の精神性で抑え込んだ桔梗は、笑顔を仮面のように固定したまま上半身の脱衣に取り掛かった。  顔を下へ向けた櫛田は、緩慢ながら確かな運用で胸もとのリボンを摘まみ、解く。学校指定の大きなリボンはあっけなく解けるのだが、男子である山内にはそれすらも非日常的な光景なので釘付けになった。 「せ、先生。あの桔梗ちゃんが俺の前でリボンを解いてますよ。ヤバいっす…もう既に興奮でヤバいっすよ。なんつーか、『俺のために全てを晒す覚悟ができた』みたいに見えるんです」 「ふむ、なるほど。例えるなら彼女になった櫛田さんが、大好きな山内くんのために心を決め、とても恥ずかしけど処女を捧げる覚悟ができた。と言ったところですかな?」 「そう!まさにそんな感じっす!!赤くなってる頬とかまさにそんなカンジ」 (誰が……誰がお前なんかに)  ミジンコほども浮かばなかった思いを勝手に創作され、どころか朗々と代読される屈辱。赤面は羞恥と言うより怒りによるところが多分にあるのだが、目の前のバカは自分勝手に解釈している。付き合いきれない。そう悟った桔梗はブレザーを脱いで畳むと、俯いたままシャツのボタンの取り外しにかかった。  まずは若干首を締めつつ第一ボタンを外す。そして鎖骨や喉を弛緩させて以降のボタンも取り外す。ここだけを切り取ればいつもの慣れた行為。当たり前の行動なのだが、今日だけは彼女にとって日常と異なる異物が纏わりついている。 「先生…。俺の目の前で桔梗ちゃんがワイシャツを脱いでるよ………」  恍惚の眼差しで自分を見守るウジ虫の存在だ。 (キモい。キモすぎる。この制服は帰ったら全部捨てないといけないわ)  視線だけで所有物を腐敗させられるような感覚に、桔梗は内心で毒づいた。プライドが高く、当然自身の容姿を認めている彼女には耐え難い時間だろう。 「あ、あまり見ないでほしいな………」 「そんなんムリムリ!全部脳に焼き付けないといけないよ!」 「………」  だが繰り返すが、桔梗は自身の内面を知られるわけにはいかない。例え相手が羽虫以下の人間であろうと、学校に関わる人物の前では徹頭徹尾優等生を演じないといけないのだ。  桔梗は強張った笑顔を保持したままワイシャツをたたみ、キャミソールの端を持つと躊躇なく捲り、脱いだ。 「お………おぉ…………」 「どうしました山内くん?状況を報告してくださるかな?」 「す、すいません先生。なんか今更、これが夢なんじゃないかって思ったんです。それぐらい衝撃的っつーか、信じらんないっつーか」  男、山内春樹は櫛田桔梗の笑顔……のやや下方に視線を向けたままフリーズしていた。そこに鎮座するのは、山内春樹の人生に縁が結ばれる予定のなかった宝物。 「だって櫛田桔梗ちゃんのブラジャーだぜ!?正真正銘のホンモノ!しかも着衣状態っす!! クゥ〜、これまでなんべんコイツを想像してオ○ニーしてきたことか!!  色はオレンジで元気な桔梗ちゃんにぴったりっす。それと淵とか前が黒いレースリボンになってて…カワイイのにそこはかとなくエロくて……あーもう!早くシコりてー!!」 「オ、オナ……」  桔梗の表情に動揺と嫌悪が入り混じった。いくら興奮しているとはいえ、女子の、それも本人の目の前でオカズ宣言をするあたり、やはり山内春樹にはデリカシーが微塵も無いようだ。  しかし、悲しくも今日の桔梗はこのノンデリに逆らうことができないので、 「あっ、ブラジャーは下から捲くる感じでお願いな!それで自分からおっぱい見せてよ。あ、それとその時には『私のおっぱい見て♡』って言いながら捲くってね」 「………」  こういったプライドを逆撫でる要求にも応えねばならない。  桔梗が少しだけ俯いた。前髪がちょうど大きな目を隠しているため、鋭い睨みは山内まで届いていない。せめて相手が山内"以外"ならよかったのに、と後悔に似た諦観を持ちつつも彼女は後ろ手でホックを外す。桔梗レベルのバストサイズが故か、その途端にブラが前方に小さく弾け、カップと胸の間に隙間を作った。  山内の目がいっそう輝いた。  隙間のできたカップからは、彼女自慢の双房の稜線が見え隠れし、潜んでいる淫乱な怪物を想像させる。さらに、緩み二の腕に落ちてきた肩紐や、カップから溢れ出た熱気が合間れば、見るものを釘付けにする魔性で艶やかな色気が完成した。  『あぁ……もうたまらない』。山内がため息をつくほど悦に浸る中、櫛田桔梗は(無理やり)双房の目張りを解いたのだった。 「えっと……私のおっぱい………見て」  ぐいぃ………………     …………たゆん 「でたーーーーー!!!!」  ともすればそれは保健室まで届くほどの絶叫だったかもしれない。今日が日曜日だからよかったものの、平日であれば何かと駆け付けた生徒によって、この状況はより広がっていただろう。  男性医師は口元に笑みを湛えながらその歓喜を迎え、ボールペンをカチリとノックして彼に聞いた。 「『何』が出たのですか山内くん。記録いたしますので君の言葉で、君の感動をそのままに教えてください」 「おっぱいっすよおっぱい!櫛田桔梗の、憧れの櫛田桔梗ちゃんのおっぱいが俺の目の前に出てきたですよ!!!」 「……」 「ふむふむなるほど。では今櫛田さんは保健室のカーテンの中、第三者がそばにいるにも拘らず生乳を放り出しているのですな?それも同級生の男子に見せつけながら」 「そういうことっす先生!ずっと夢見てた桔梗ちゃんのおっぱいを現実に見る日が来るなんて……  えっと桔梗ちゃんおっぱいの感想っスよね。なんつーか一言で言うと、巨乳のクセに垂れてなくて、それでいて乳首めっちゃエロいって感じの、隠れアバズレ乳です!!」 「……」  俯いた前髪で隠れているが、桔梗の眼光は山内を物理的に射殺せるまで鋭く尖っていた。 (人の胸をよくもそんな勝手に)  思春期の乙女の乳房を、それも本人を目の前にしてこれほど淫猥極まりたる表現で伝えることのできる男は、世界中を探しても他にいないだろう。しかし山内は、そんな桔梗の胸中を知ってか知らずか、遠慮なく続く言の葉を紡ぐのだ。 「聞いてくださいよ先生。桔梗ちゃんって、優等生のクセしていつも俺たちを誘惑してくるんだぜ?制服の上からでも胸が大きいの丸わかりなのに、体育の時なんてそれをバインバイン揺らしながら走ってて。  デカ乳を自慢したいならドンドン見てやるから、遠慮なく言えっつーの(笑)」 (この自意識過剰が) 「ほほう。では櫛田さんは日頃から男子の劣情を煽るような、むっつりスケベだったということですな。メモメモっと。  そして山内くんは日々、彼女に対する劣情を抱えながら悶々としていた、と?」 「さっきも言った通り、俺は3日に1回は桔梗ちゃんでオナってんだぜ?」  まるでそこに桔梗などいないかのように進展していく、男たちの下種なトークは続いて堀北鈴音の乳房と彼女のそれとの比較へ向かった。 「して山内くん。櫛田さんの乳房の形状はいかほどかな?」 「そうっすね。大きさはこないだの堀北よりは確実にあるけど、佐倉に比べると小さいかな。でも乳首と乳輪はダントツで桔梗ちゃんの勝ち!つーかこんなサクランボみたいな乳首反則っしょ(笑)  しかも肌が白くて下乳も上乳も丸々としてるから、でっかい肉まんか大福みたいなんだ。この細さでこのエロパイオツって学校中探しても見つからねーって」 「……」 「では山内くんは、堀北さんと櫛田さんどちらの乳房がお好みかな?例えば揉んだり咥えたりできるならどちらを選ぶのでしょう」 「うわーそれ難しすぎる2択だって先生!  うーん、バランスと品の良い堀北か、エロさと揉みごたえの桔梗ちゃんか……」  下種どものトークは一向に終わる気配がない。聞きたくもない情報が否応なしに耳に届き続ける桔梗は、ブラを捲り上げたまま歯噛みをする。  しかし幸か不幸か事態は彼女の胸をターゲットから外す方向にシフトする。ただ、 「山内くん。櫛田さんの胸に感動しておられるところ恐縮ですが、そろそろ検査を次へ進めたいですじゃ。君の希望するシチュエーションにおいて、櫛田さんのパンティの脱衣、そして性器の確認へ移りますぞ」 「っっっ!?」 「は、はいっ!!」  桔梗にとって善の方向に向かうことはまず無いのだが。 (こ、こんな格好……)  男、山内春樹は櫛田桔梗というアイドルのショーツを(おそらく世界初で)脱がすにあたって、自分が最も興奮する状況とはどのようなものかしばらく考えた。  クラス中の多くの、いやともすれば学校中の多くの男子が狙っているであろう桔梗の下着を、代表して自分が脱がせるのである。これほど大事にしないといけない瞬間は他に無いはずだ。 『櫛田ちゃんに脱いでもらう?いやそれとも俺が脱がす方がいいか?いや、せっかくならハサミで切り裂くのもアリか。  体勢は立ったまま?座ったまま?あっ、四つん這いなんてのもいいゾ』  目の前に被害者がいることを気にも留めず、ただただ自分の欲望を口から垂れ流し続ける低俗な同級生。桔梗は冷めた目でその男を傍観していた。  長考は約10分に及ぶも最終的に帰結した意見。それを山内は一旦カーテンの向こうの医師に伝え、さらに彼からの命令と言うかたちで桔梗に伝わった。 「山内くん……。少し息苦しいから早く済ませてね」  桔梗は今、布団の中に潜りながら下半身だけを外へ出している。スカートに覆われた下腹部と、黒のニーソックスだけが白い掛布団から飛び出ているのだ。さらに、それを満足そうに見下ろす男が一人。 「へへ。やっぱり初脱ぎはオーソドックスにするべきだな。しかも相手の顔を隠してあげる気遣いができる俺って優しすぎるぜ」  山内は絶世の美少女である櫛田の"下半身"に集中するため、それ以外の部位を隠すという妙案を思いついたのだった。チェックの赤いスカートに覆われた、安産型の肉感ある下半身。絶対領域を目で追い、その奥にある秘密の場所を想像するだに生唾を飲んでしまいそうだ。 (いまごろ櫛田はどんな顔してんのかなぁ?やっぱり顔を真っ赤にして恥ずかしがってんのかなぁ?)  などと、都合の良い妄想に浸れるのもこの体勢の醍醐味なのだが、しかして桔梗は屈辱に歯を噛みながら、修羅の顔つきで布団の向こうにいるブ男を睨んでいた。 (お前だけは絶対に破滅させてやる。私に与えた屈辱の何倍も辱めて再起不能にしてやる。覚えておけ)  いずれ櫛田はこの言を実行するのだろうが、残念ながら今この瞬間だけはどうすることもできそうにない。  桔梗が内心で怨嗟の限りを紡ぐ間にも、山内は鼻歌交じりに腰を下ろし、桔梗のスカートへ無遠慮に両手を差し込んだ。 (!? ……汚い手が私のショーツのウエストを) 「先生。準備できましたんで脱がしてもイイっすか?」 「大丈夫ですよ。さぁ櫛田さん。山内くんが君のパンティを下ろしてくれますぞ。脱がせやすいように協力して差し上げなさい」 (~~~!!!)  桔梗の内心が嵐のように荒れ狂う。これまで自分が16年間守ってきた場所が男子に、それもあろうことかコイツに暴かれようとしている。いっそ憤死するレベルの恥辱だ。 (断れば退学……断れば……退学ゥゥゥゥ)  しかし逆らうことの代償が余りにも大きすぎる。自分のプライドと今後の学校生活、そして周りの敵たちへの影響。それは、天秤に乗せるにはあまりにも一方的な大小だ。  だからこそ彼女、櫛田桔梗は 「……」  すっ  山内がショーツを脱がせやすくなるように、自ら腰を上げたのだった。


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