船幽霊のシャーロゥは、この町に来てから肉体に近しい、実体を持つようになった。 かつて、守猫神社の先代と出会った頃には、物を直接触れる肉体なんてものはなかった事を覚えている。 ここ十数年で町のなにかが変化したのかと思ったが、シャーロゥはそれ以上深く考えなかった。 結論、風羽の親代わりとして、家事や表向きに便利ぐらいに思った。 そうすごしているある日、シャーロゥは布団の中に居た。 ゆっくり寝ている、というわけではない。 その姿は、普段のシャーロゥの背丈とはまったく合わないサイズだ。青白い人間とサメの複合みたいな普段の見た目も失せており、どちらかというと、犬のぬいぐるみのような姿になっていた。 「ぐぅ…」 どうにかして起き上がろうと、体に力を入れる。 だが、そもそも立つ力さえもほとんどない体なうえに、そのふわふわな肌には黄色いリボンが巻かれていて、もはやお手上げと言える状態だった。 「はふぅ…」 その横で、パジャマ姿の少女が寝ている。 シャーロゥを身に寄せ、顔をうずめているその少女は。緑髪に大きな耳と自分の身長と同じぐらいのサイズはある巨大な尻尾を震わせていた。 人狼のワーフム。守猫神社の養子だ。 シャーロゥをぬいぐるみに変えたのはワーフムだ。本来であるならば、身をすべて支配された、危険な状況と言えるのかもしれないが、シャーロゥは強く抵抗はせず、まんざらでもなかった。 ワーフムは、夜中は誰かをぬいぐるみにして、抱きながら寝たい癖を持っているのだ。 あまり妖術を日常的に使いすぎると、外で暮らしたとき間違って使ってしまう恐れもあるので、風羽やシャーロゥはやめさせようとしているが、未だやめる気配はない。 まあ、ぬいぐるみの体で過ごすと、ぐっすり寝たみたいに体の疲れがとるので、一応は助かるか。 そんなことを思いながら、シャーロゥは夜を過ごした。