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制作途中_小説公開「シーペラーズ」

pixivで公開予定の小説の前半。 ----------  周囲一帯から波の音がする。  それは残すことなく、全方位から波の音がするのだった。  孤島だ。それも陸が水面よりも遥かに高い、島全体の高さが7mはあり、外部から来るもの全てを拒む、無人島から有人島となるのを拒んだような島だ。 「はぁ…はぁ…」  しかし、例えどんな極地であろうと、そこへ行くものもあるようであった。ちょうどその崖を登る人物が居る。  その人物は、大人びた体格に、緑の髪をしている。そして、目にはサングラスを付けていた。  蛇楽。彼女の名前は蛇楽だ。  ここではない遠い町、美倉町を住みかとしている、蛇の目をもった、蛇目の魔女だ。  ばしゃ、ばちゃっ。  ようやく7m程にも及ぶ崖を上った蛇楽は、地面に倒れ込んだ。  その全身からは海水が飛び散る。辺り一帯の乾いた土を、湿り気のあるものへ返るその姿は、彼女がつい先ほどまで海水に浸り続けていたことを示す以外には無い。 「ふぅ、ふー……まだ、生きているぞ。こんなところで、私は墓を作る気は無い…」  自分の肌に触れると、体温を感じられる。  蛇楽にとって、今それ以上に嬉しい事は無かった。 「あの船は…」  動きにくい体を持ち上げ、蛇楽は周囲を見渡した。  だが、彼女自身の言う船。そもそも、ボートからタンカー船までもが、360度広がる水平線の中に見えはしなかった。  そう、彼女は数日前まで、とある外国行きのタンカー船に『密航』していたのだった。 「(あのタンカーに乗っていれば。今頃は…アメリカについていたものを…)」  現代における魔術、その研究において。一番重要視されているのが、『隠蔽魔術』だった。不可視から始まり、一種のセンサーに対して、不感知を心得るものまで、種類は多彩に広がっている。  蛇楽は、それの初級までを心得ていた。  不可視をもってすれば、広いタンカー船内、その中においての密航は簡単だった。  だが、そんな状況さえも壊したのが、海難事故である。  強い荒波、タンカーの中への漏水が、一つのタンカーが沈むという事故さえも及んだのだ。 「もうすこし、現代のタンカーというものは丈夫だと思ってたが…」  少し、蛇楽は空を見る。そこにある太陽をサングラス越しに覗いたのちに、ある方向の水平線を見た。 「大まかに見れば、あっちが…アメリカだったかな。あの方向に……ケーゼの故郷、アーカムがあったはずなのに…」  蛇楽は悔しかった。今回の密航旅の目的は、ケーゼの出征を、故郷で探る事だったのだ。  ケーゼ=アラカルトの過去はいまいち分かっていない。蛇楽はケーゼのライバルでありつつも、どこかお調子者であり、策士めいた閃きと自信をもってちょっかいを出してくる彼女を、友人として認めていた。  そのケーゼはこのところ、砂浜で太平洋を眺めては、遠目で横から覗いても分かるほどの、憎しみに満ちた顔をする事があったのだ。  蛇楽はその顔に覚えがあった。突然の発作で、場を壊してでも恨みを晴らすため、暴れる顔だった。  ずっと何かを引きずってて、昔を思い返しては、無言有言問わず、後悔や悲しさ、憎しみに憎悪をたぎらせる癖だ。  ケーゼは、自分の知らない憎悪を引きずってる。それこそ、自分と出会うよりも前の、相当昔だ。  蛇楽は、素直に怖かった。当たり前に過ごしている日々の中で、突然友人が憎しみに狩られ、もうそれまでと同じように過ごす事のできない、凶行を働くのが近い気がしたからだ。 「……だが、こうなってしまっては、仕方がない」  そう言うと、蛇楽は自分の足が、歩けることを確認して立ち上がる。  そして、わずかな雑草と、多少広くとも、砂しか無い島の中央へと歩きだした。 「仕切り、直しだ。 一旦、美倉町へ帰ることを目標にする」  アメリカ本土へ行く前に、かなりの労力を働いてしまった。  まだ、ケーゼが何かをするまでは、時間があるはず。準備を万全にできるタイミングになってから、探すのが得策だ。  …そう、蛇楽が住処にしている美倉町とは、勝手が違う。  人を食らい、人を殺し、人を加工する妖怪に魔女、その他の怪物たちが、あくまでルールを元にその凶暴性を発散できるから、あの町は安全なのだ。  外の町では、それはない。そこに生きて潜む者たちは、人を喰らいもするし、殺しもするし。一生、表に出さない姿に作り替え、閉じ込めてしまうものさえも居るのだ


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