パストとろうあんきは、ケーゼに化かし合いで負けてしまった。 「ああぁ、パスト…!」 テーブルでぷるぷると震えているのはろうあんき。その姿は、つつくたび揺れるプリンだ。 「…っ!ーーっ……!」 一方で、ケーゼの手に持たれているアメは、人の裸体を模している。小刻みに震え、何か声を出そうとしているが、その声は出ない。 アメに変えられたパストだ。 「ふふ、今回も勝ちね」 そういって、勝ち誇っているのは魔女のケーゼだ。 ちゅぱっと口にパストを運んでは、何度も吸い付くようになめている。 「とか何とか言って。ご主人、この二人やっぱ強くなっていってますよ」 「んぅにぇ?」 恍惚としてアメをなめ続けていたが、自分の腰元ぐらいの高さから聞こえた声に、ケーゼは目を向けた。 「そっちのアメの特攻に、プリンが植物でサポートしてました。 ご主人、それで決め手を入れられずいたです」 ぽふっと、やわらか靴を踏み鳴らす。 水色の髪をしたケーゼの人型使い魔ネコ、ミルクだ。 『アメって呼ぶなぁ…!』 「あうぁ…ううぅ」 パストは声が出ないまでに震えるが、桜安姫はそれでも勝てなかったことを悔やみしょぼむ。 「うぇ…。やっぱそう見えた?」 「ですねぇ…。ご主人の戦いは、高火力ではなく、隙を突くトリッキーな逆転型です。」 テーブルに手を掛けつつ、ミルクはケーゼの方へ振り返った。 「なので…。不意打ちに警戒する、遠目からの監視役には弱いのです」 なかなかみぞを刺すような言葉だ。ケーゼはミルクなりの観察力を誇らしく思った。 だが、同時に。ミルクの顔はむすっとしていているのがよくわかる。 「そう、ね…。……怒ってる?」 「むぅ、なにが…ですか?」 ミルクは、相手が二人なのに自分の助けはいらないと断った主に、少し不満を感じていたのだ。 自分自身も実力があると認めてもらいたいのだった。 「………そう、ね」 ケーゼは少しうつむくと。ミルクにそっと近づいた。 そして、パストアメをろうあんきプリンの置かれている皿に置くと、ミルクを抱きか挙げた。 「みゃっ」 ミルクもミルクで、抱き上げる手を振りほどこうとしない。 「…あー、だんだん相手を見るのが上手くなったわね、ミルク。 次回は、あなたも同行しなさい」 しどろもどろにミルクに誘いかける。 「…ええ。了解なのです、我が主」 それに対し、ミルクは静かに答えた。 反抗心の塊な性を持つケーゼには、人を褒めるのは苦手だった。 それゆえに、ミルクの実力を素直に認めて。誘うことにした。 内心、ミルクもまた主の感情の揺れ動きがわかった。 その不器用ながらに、結論として自分の実力の一部を認め、試す機会を持ち掛けてくれたことに、感謝を感じた。 「そうですね。でしたらご主人、次回の化かし合いは私が先手に出るのです」 「ミルクが?」 「そうです。このミルクの術風船を空中にばらまき…。このおやつ二人組のやり方を取り入れて、隙を狙うのです」 「ふむ……面白そうね」 「でしょうでしょう!ふふ」 ミルクは思わず尻尾を振るいだす。ケーゼが同意してくれたことが嬉しかった。 「じゃあ、おやつにしながら話し合おうかしら」 「さーんせいです!」 「じゃあ、テーブル回りやっとくから。紅茶を…」 「りょーかーい!あ、ご主人。桜の方のプリンはもらっていいです?」 「ええ、いいわよ」 「ひぇっ!?」 「やったー!!」 「っ~~~!!(う、うちらを解放しやがれー!!)」 お菓子に変えられてしまった二人を食卓に、捕食者たる魔女と使い魔の二人は、次回の計画を話し合うのだった。