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森に溶け込んだキノコの姿

森の中に一本のキノコが生えていた。 木々が重なり薄暗い中に生えているそれは、数時間前まではなかったものである。 『はう……うぅぅん…』 ふと、ぷるぷるとキノコが揺れた。 ぼふっ、ぼふっとその傘からは胞子が吹き出る。 『くすぐった…えほっ!こほっ!!』 漏れた自分の胞子に包まれたキノコは、その胞子で逆にむせたらしい。 激しく体を震わし、さらに胞子が増え。荒々しくあたりを白く染めた。 『ああぁもう、つらいぃ…!! って、あ』 胞子に堪え、そのキノコボディを上げた時、その視界の先には。女性一人分の服が目の前に転がっているのがある。 これもまた、胞子で真っ白に染められていた。 『やっちゃった…私の服が…』 キノコ。もとい、元は妖怪であるふうわは、汚れてしまった服を見て、後悔してしまった。 そう、今日は朝っぱらからマシュネスに負けてしまったのだ。 今ここに生えているのは、女体を強調したキノコそのものである。 マシュネスは自分をキノコに変えると、大興奮して持ち前のキノコ姿アルバムに、ふうわのこの有様をくわえる為、カメラを激写した。 一通りあらゆる角度から取られた後に、そのままふうわを放置して去ってしまった。 「数日はそうしててねぇ。ふふ、みーんな人、人。こんな姿は嫌だー!って騒ぐからねぇ。しばらくそうしててくれたら、慣れるわ」 『な、当然じゃないの!マシュネス!元に戻しなさい!こらーっ!!!』 ぶんぶんぶんっと、キノコの体を揺らすが、根っこから自分はこの自然に溶け込んでいる。地面に自生してしまっている体は、マシュネスを呼び止める事ができなかった。 そうして、一旦自分は妖怪巫女としての人型の姿を失い、キノコに変わり果てたのだ。 『まったく…。まったくも、まったくよ。 今日、学校ある日なんだけど…!?』 ぼふっ!とまた胞子が漏れてしまう。 思えば思うほど恥ずかしい。仮に、学校の友人たちが、この姿を見たらどう思うだろうか? 学校を休んだと思ったら、裸体を晒しながらキノコになっていた。なんて、字面を想像すればするほど、友達みんなが唖然とするのが思いつく。 『……って、私の前で呆然としてたら…次の瞬間、マシュネスに食われるんだろうなぁ…』 待つ間も与えないで、ふうわの横に新しいキノコが生えることになるのだ。 『そう思うと…うん、余計に来ないでくれると助かるなぁ…』 ただでさえ、ギツクモに学校の友人が巻き込まれることが多いのに。大きな範囲で見れば、組織内の身内といえる妖怪までもが、友人を襲う悩みの種になってもらいたくなかった。 『だ、だいたい…。こんな姿、好きになれるわけないじゃない…!ぜんぜん動けないし…』 そう言って、ふうわはくてんと俯いた。 『…………んっ、くぅ…』 とく、とく、とくと。体の中で吸い上げるような音が、気のせいか感じている。 一日、何も動かないで。無理にでもくつろいでいれば、元に戻れる時刻になると思ったが。 自分が、キノコであることを裏付けるように、自分の根元から水が吸い上げられるのを感じる。 今、自分はキノコとして生きるための活動をしているらしかった。 ……逆に、恥ずかしい。 そう強く感じた。 『このままじゃまずい…!なにか、なにかごまかせるものを…』 このままだと、キノコとして活動している自分の体が、どんどん感じてしまって。心までキノコになりそうだ。 なにか晴れるものがないか探し出した。 『……ひゃっ!』 そう慌てていると、ふと体がびくっとするような感覚がした。 頭が熱い。 何事かと思って空を見ると、木々の間から日差しが照っていた。 『……これだ…!』 ふうわは、日差しを見つめると。確信に至った。 「………あらあら、意外と楽しそうねぇ…ふふ」 ザッザッと音がする。 森の中を歩く、土気色の貴婦人といった姿だ。 自然に似合わないような衣装をしつつ、近寄ってくるのはマシュネスだ。 彼女の目線の先では、変わらずぼふっと音を立てながら胞子をふかしているふうわキノコだ。 『楽しいって、ち、違うわよ!!』 「!あらっ……?」 ふうわの反論する声に、意外にもマシュネスはきょとんとした。 「まだキノコ落ちしてないのねぇ…。前のお二人は、鉢植えで育ててたら、もうこのぐらいの頃には自分から水が欲しいっておねだりしてたのに…」 『何もしてなければね。別のほうに意識を向けてれば、少しは保てるわ』 そう言って、胸を張るふうわキノコ。 自信に満ちた振る舞いだが、はたから見ると、手のひらほどしかないキノコが、ぷるんとその体を揺らしてるようにしか見えない。 それだけでもみじめな姿だった。 「へぇ…?ああぁ、日の光か」 ふと、木々の上を見たところで、マシュネスは納得がいった。 「キノコなのにねぇ…。日の光で喜んでたら、心までキノコになりきれないわねぇ…」 『ふん、しっかり抵抗するなら、これぐらい』 「しっかし…。なんでそこまで抵抗するかしらねぇ…。普段、貴方だってぬいぐるみになったりするの楽しんでるでしょうに」 『いや、キノコとぬいぐるみは別物でしょ』 「ええぇ………」 そう言いあっていると、木々からさす光がオレンジに変わり始めていた。 夕方である。 「…ま、別にいいわ…」 そういうと、マシュネスはふうわを地面から抜き取った。 『ひゃうぅっ!!?』 びくっと、キノコの体が揺れる。 「日で意識をたもっちゃうなら…もっと薄暗くて、じめじめしたところに植えましょう。そうすれば、もっとはやく堕ちるわ」 『なっ!!そんなバカなことは…はなせ~!!!』 ふにふにと手の上でもてあそばれるキノコのふうわ。 そうして、ふうわはマシュネスとともに暗い森へと消えていった。

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