シアンはベルトコンベアに運ばれていた。 「あはは、はぁ~…しーんじられない。 まさか、こんな規模になる事もあるなんて」 辺り一帯に充満しているのは、妖怪のそれとも違う不可思議な妖気。 ギツクモだ。シアンが拘束されている工場のあらゆるところにギツクモが充満している。 「まさか、『ギツクモが群れを作る』なんて」 ふと、昔好きだったゲームで、宇宙生命体があらゆる物質を浸食して、一つの異空間を作り上げるという性質があったのを思い出した。 ちょうどそれだ。放置された一つの工場の、装置の一つ一つがギツクモと化しているのだ。 ゴウンゴウンゴウンと、かつて食品工場だったと思われる無人の工場は鳴り続ける。 逃げ出そうと力を力むが、四肢をワイヤーで拘束されている。 おまけに、天井から吊降ろされているチューブらしいものが、シアンの腹部に『突き刺さっている』。 明確な痛みだ。 その痛みを改めて感じて、シアンは思わずくすっと笑ってしまった。 「(あんだけ妖怪が居るのにさぁ?痛みが久々だなんて、笑えるよねぇ)」 それだけ、やっぱりこの町はルールとして甘いのだ。そう感じた。 「(でも、それだけあの子が真剣に妖怪と人の調和を考えてるのね…っと)」 そうこう考えているうちに、目の前に暗闇が近づいてきていた。 ベルトコンベアの行き着く先。何かを温めるような装置だ。 もうすぐ、自分は何かに加工されるのだろう。 しかし、シアンに恐怖はなかった。 少し意外な気持ちだった。ああ、やっぱり自分は死ぬことに対しては無頓着なんだと改めて認識する。 「(まぁ、今回は私の敗北ね。 どんな姿にされちゃうかなぁ…変わった後、私は元の姿に戻れるかな…?)」 下半身が飲み込まれ。そして、自分の足が溶ける感覚を味わう。 「本当に癖になる。 助けてくれる人が居たら、さらに嬉しくなっちゃうなぁ」 顔がゆるみなあがら、シアンは機械に飲み込まれていった。 融解。遠心。凝固。回転。音。振動。冷気。湿気。加熱。加熱。 手足の感覚もない中で、不思議な感覚を味わった。 自分が小さくなったような、手に取られているような。 やがて、パキパキと割られた。 そして、冷蔵庫の中のようなところで、自分は。真っ白な楕円状の、ぷるぷるとしたボディで保管されている。 最高に気持ちいい、自分が誰だったかもわからない。 ただ、目の前で動いている、きかいの表面に反射する姿は。 ゆでたまごだ。