何気なく回転寿司へとやってきた守猫一家の三人。 ふうわ、ワーフム、シャーロゥ。それぞれが人間に扮し席に着くが。三人は義と言えど家族関係にある。だが、見た目から思うにシャーロゥ、ふうわ、ワーフムの順の三姉妹にも思えるのも事実であった。 「ふぅ…。久々ね、回転寿司なんて」 仕事の疲れが出たのか、ため息をつきながら話すはふうわ。 「そうだな…。前来たのは、ワーフムちゃんがうちに来た直後暗いか」 こくりと、シャーロゥはうなづく。 「そのぐらい?ねえやんもしゃろーも、行ったりしなかったんだ」 「ああ。あいにく、ふうわならまだしも。私はそもそも交友関係が薄いものでな…」 と、そうつぶやくシャーロゥは遠くを見るように目をそらしていた。 「まあまあ。よく会うレリーフちゃんも、アウトドアとかしないタイプだし、仕方ないよ。シャーロゥ」 軽くふうわはフォローをいれた。 「だな…。ああ、すまない。少し手洗い行ってくるから、先に注文しててくれ」 「はいなの~」 シャーロゥはゆっくりと立ち上がり、その場を去った。 「どれを選んでもいいの?」 「ああ。高値の皿は、数枚に抑えてくれれば」 「わーい!」 と、おそらく妖怪の姿だったら大きく尻尾をふるってるだろうぐらいに、ワーフムは目を輝かせた。 「ワーフムは食欲旺盛だな…。能力も、ぬいぐるみに変える能力じゃなくて、相手をお肉に変える能力の方が合ってたんじゃ?」 「んー、かも。でもワーフムは、妖怪としてお肉は食いたくないや」 その一言に、ふうわは目を伏せた。 「…そっか」 「妖怪は可愛いものですや。ふうわねえやん」 マグロをとりつつ、ワーフムは些細につぶやく。 「そうすれば、人間になりたいっていうふうわ姉やんとも。この先も一緒に入れる。 ワーフムはぬいぐるみにする能力の方が可愛くて好きだよ」 「ワーフムがそういうなら、それが良いんだろうね」 口角を上げて、やんちゃそうな笑みを見せるワーフムに曇りはない。そう思うと、ふうわは気持ちほっとした。 色々あったけど、自分よりもワーフムは明るい。それだけで、ワーフムを妹として迎えた意味はあった。 そう、ふうわは内心安心した。 「けれど、ねえやん」 「ん?」 「お肉にするならお肉にするで。妖術は、どんなふうに呪いをこめればいいの?」 「込め方?」 そう言われてみると、どうだったか。ふうわは少し首を傾げた。 「んー…。私は分からん。ケーゼなら近い感覚を知ってそうだけど…」 「ケーゼかー。あの人ぐらいだしね、相手を食う気満々で襲ってくるの」 「どこにあの原動力があるのか、知りたいぐらいだわ…。 あー、しかし。やり方かー…」 思案しているとき。横手の回転レーンから新しい寿司が流れてくるのが目に入った。 「あ、たぶんだけど。 相手と変えたい食べ物、交互に思い浮かべればいいんじゃない?」 「交互に?」 「ぬいぐるみに変える時と同じだよ。相手はふわふわで、こんなフォルムのぬいぐるみ…。って連想するときみたいに。単純に相手の味を思い浮かべればいいはず」 その言葉で、ワーフムの耳は、気持ちピコンと上がった気がした。 「おー!なるほど、いつもと同じだね!」 「……相手の味って、私はいったいなにを言っているんだ…?」 自分の言っていることがシュールに思え、ふうわは口に手をあて眉をひそめる。 「大体わかったよ、ねえやん。相手の味だね」 「うんうん。スッキリしたかな?」 問題が解決して、ふうわは気持ちほっとした。 だが、ふうわがワーフムを見ると。ワーフムはこちらを見ずに回転レーンをじっと見ているようであった。 「……?ワーフム?」 「…………」 「ワーフムー?」 「…………うちとねえやんはサーモン」 「はい?」 瞬間、ワーフムの全身が緑色の閃光を放ち、辺りを包み込んだ。 「ワーフム!!?」 ワーフムの能力。月の光をため込み、妖術を爆発させる扇だ。 昨夜チャージした分の残りは、容赦なく座っていた二人を包み込んだ。 ふうわが目を覚ますと、天井が横へ横へとそれていた。 『う、ううぅ…?いったい、なにが?』 起き上がろうとするが、体は動かない。おまけに、全身がとろとろと湿っているように思う。 『いったい、何があったの…?たしか、えーと。 妹が爆発して……妹が爆発して!!?』 普段いうことが無いだろうに単語に気が付き、ふうわの意識はハッと鮮明になった。 『お、おおぉぉ……』 横から、戸惑うワーフムの声が聞こえる。 『ワーフム、あなたまさか……』 『…まさか成功するとは思わなくて、いつもの感覚で…つい』 横手に、鉄の柱らしきものが見えた。 そこには、回転レーンに乗る。二人の裸体を模したサーモン寿司が並んでいるのが見えた。 『ササササ、サーモン寿司じゃん!!?』 『てへ』 『ワーフム、はやく戻しなさい!』 『それが、昨夜からの月光のチャージは、さっきので底切れで。放てる妖力は品切れです!』 ふうわは、見えないものの横に並んでいるワーフム寿司が満べんのどや顔をかました気がした。 『そんな無責任なぁ!?』 『まぁまぁ、ねえやん。今戻っても突然すし屋に出現した裸体の女性、なんて記事になっちゃうのがオチだし?』 『だから!?』 『……ごめんなさい』 『ノ~~……』 一つの皿に乗ったサーモン寿司は、そのまま回転レーンを流れていった。 「…………なにが、あった……」 戻ってきたシャーロゥは。予約していたテーブル席の奥に、脱げ落ちて残ったふうわとワーフムの服一式を丸々と発見していた。
のなめ
2019-07-01 22:28:01 +0000 UTC