※このお話は、【コスプレ!召喚士と召喚獣】のAfter Storyとなっております。 完全に続きとなっておりますので、先に、本編を一読して頂けると幸いです。 読んで頂いたという前提で説明等はカットしてあります。 ・・・ 【ピロン】 私の携帯に【詩織(しおり)】からのメッセージが届いた。 【今週の日曜だけど、渾身の作が出来上がったから、【涼音(すずね)】にお願いしたいコスがあるんだけど】 (この流れ…) 友人でありコスプレ仲間である詩織から届いたメッセージ。 この流れは、以前の【シヴァ】の着ぐるみを着させられた時と同じ雰囲気だ。 シヴァの着ぐるみを着た時も、詩織の【お願い】を聞いて、コスのイベントで着ぐるみを着る事になった。 普段、顔出しでコスプレをしているのだが、その時は完全に体を包まれた着ぐるみ。 その着ぐるみは、四足歩行で体全体が分厚い素材、更にその上から全身に毛が生えた衣装だった。 そのため、恐ろしい程の暑さに見舞われ、死ぬ思いをしたのだった。 まあ…その状況に私が興奮してしまったのも事実だが…。 詩織の渾身の作…きっとまた、かなり凝ったものだろう。 また、私は苦しい思いをするかもしれない…。 受けてしまえば、大変な事になるかもしれない…。 【ゴクン…】 そう感じながらも、私の指はメッセージを打ち返した。 【いいよ♪詩織の頼みだし】 するとすぐに詩織からの返信があった。 【やったぁ!!じゃぁ、日曜の朝、私の家に来てね♪衣装、用意しておくから】 【は~い】 大変な事になるかもしれない…そう思いながらも、私の返答は二つ返事の承諾だった。 そう思いながらも、心のどこかで、大変な事になるのを期待しているのかもしれない。 あの暑さ…苦しさ…あの状況を…。 ・・・ そして、日曜日の朝を迎え、私は詩織の家へと辿り着いた。 【ガチャ】 「おはよぉ~、涼音~」 「おはよ、詩織」 扉を開けると、そこにはもう既にコスプレに身を包んだ、詩織の姿があった。 「おっ!詩織は、今回も【ロストツリー】の【召喚士】なんだね」 ロストツリーというのは、世間で大人気のMMORPG。 それに登場する召喚士の衣装である。 「そうだよ。これ、最高にお気に入りだし」 とにかく、相変わらず衣装のクオリティーもかなりのもので、それを着こなす詩織の容姿もまた、その完成度を増している。 私達はロストツリーをプレイしていて、ゲーム上も詩織は召喚士、そして私は狩人の職業。 それ故、詩織の召喚士に対するこだわりと愛着が凄いのだ。 「で…っと…前の時と同じく…今回、ロストツリーがテーマだってことだけど…。やっぱり、私の衣装が狩人って事はないよね…??」 「うん、違うよ♪」 (やっぱりね…) あっさりと否定する詩織には、なんの躊躇いの無さを感じる。 この真っ直ぐで純真なところが、詩織の可愛らしい所でもある。 「それじゃ…私の衣装は??」 「こっちの部屋に来て」 シヴァの時と同じく、別の部屋に置いてあるらしく、私は詩織に連れられ、隣の部屋へと移動していった。 【ガチャ】 扉を開き、二人で中へと入って行った。 「うわっ!!凄っ!!」 部屋に入ると、そこにはグレーの毛に包まれた、大きな獣の着ぐるみが横たわっていた。 その横たわる獣に、グッと視線を向けた。 「ん??これ??もしかして…【フェンリル】??」 「そう!!正解~~!!」 フェンリルとは、ロストツリーの中では、召喚獣としては最高ランクに位置する召喚獣。 このゲーム内では、フェンリルはメス設定になっており、狼モチーフだが、獣のように四足歩行ではなく、二足歩行の神獣であり、体中を長いフサフサの毛で覆われている。 攻撃力も半端なく、ゲーム内での人気もかなり高い。 そのフェンリルの着ぐるみがそこに横たわっているのだった。 その横たわる姿だけでも、この着ぐるみのクオリティーの高さが伝わってくる。 「相変わらず…凄いディティールね…。感心しちゃう」 「そう言ってくれると、嬉しいな♪」 「で…私は今日は、フェンリルを着ればいいのね」 「うん!そう!」 ここまで高いクオリティーの着ぐるみ。 そして、ゲーム内でも人気のキャラを着られると思うと、私の胸は弾んでいった。 「よし、じゃあ…早速着てみてよ」 「分かった」 そうして、私はシヴァの時と同様に、全裸になり、容易された全身タイツに身を包んで行った。 背中のファスナーが閉められ、全身タイツに体全体が包まれる。 (ん…この前と素材が違う気がする…でも…やっぱり…肌触りが気持ちいい…) 全身を包む全身タイツのスベスベとした肌触りが、妙な気持ちよさを感じさせる。 前回着た時よりも少し厚手な感じもするが、肌触りの良さに変わりはなかった。 「涼音、この衣装、頭と体の2ピースになってるから、先にマスクを被って」 「は~い」 「っと…その前に…今回の仕様だと、先にこれを被って欲しいの」 そう言って、詩織は黒い何かを差し出した。 「ん?何これ??」 「これね、全頭マスクっていって、頭をすっぽりと覆うマスクなの」 「頭を覆う??」 手渡されたマスクは、本当に頭をピッタリと覆う程のマスクで、口元からホースが伸びている。 そして、目元だけは開いていて目が露出する作りになっていた。 (なんか…凄いな…これ…) その異様な物体に怖さを感じるも、少し興味を抱いてしまう自分もいた。 「ふ~ん…これを被ればいいのね」 私はそう言いながら、全頭マスクの後ろ側をパックリと開いた。 すると、詩織が目をまん丸くしながら、黙って私の方を見ていた。 「な…何??どうしたのよ。なんなの?その表情??」 「え??だ…だって…こんなの被れって言ったら、涼音にふざけるなぁ~~って、言われるかもって…思ってたから…」 (え!?) その詩織の言葉に、少しドキッとしてしまった。 確かに、以前の私なら、そう言ったかもしれない。 しかし、本能的に着ぐるみに身を包まれる事に快感を感じてしまっていた私には、全頭マスクで頭を覆われる事への抵抗感がまるでなくなってしまっていたのだ。 つまり、知らないうちに、その性癖を受け入れ、表にも出してしまっているという事。 そんな自分が少し恥ずかしくも感じてしまった。 「な…何…いってるの…。こんなマスク被るくらいで、何も思わないわよっ!!コスの衣装と同じよ、同じ」 少し焦りながら、詩織の言葉を否定した。 「ふ~ん…さすが涼音!!やっぱり、私の相棒は最高!!」 目をキラキラさせながら、喜びの表情を浮かべる詩織。 本当にピュアな性格だ。 そして、私は手にした全頭マスクを頭へと被せた。 目の位置と口の位置を調節する。 (よし…っと…) 「じゃあ、後ろのファスナー、閉めるね」 そう言って、詩織が後頭部にあるファスナーを閉めてくれた。 【ジーーーー】 ファスナーが閉められ、マスクが私の頭部にぴったりと張り付いてきた。 (うっ…結構…これ…ぴったりとしてるんだ…本当に隙間がないや…。それに口のホースからしか呼吸出来ないな…) 目の部分は開いているものの、マスクは伸縮性があり、かなりピッタリとしてくるので、そこから空気の出入りはない。 口から延びるホースだけが、私の呼吸口となった。 「これ…凄い…ね…」 伸縮性があるマスクのため、多少顎を動かす事が出来、少しモゴモゴとした言葉だが、一応、言葉を発する事は出来た。 「今回の仕様だと、このマスクをしてないとどうしてもダメなんだよ」 「ふ~ん」 「それじゃ、フェンリルのマスクを被って」 そして私は、手渡されたフェンリルのマスクを頭から被ろうとした。 「ちょっと待ってね、ゆっくりお願い」 すると詩織が私がマスクの中に頭を入れようとしたらところで、先程の全頭マスクから伸びるホースをフェンリルのマスクの中へと挿し込んだ。 「よし、いいよ」 そう言われ、私はゆっくりとフェンリルのマスクの中に頭を入れ込んでいった。 【スポッ】 マスクを完全に被るのと同時に、先程挿し込んだホースを詩織が外へと引っ張った。 マスクの中は思った以上に中に空間はない。 シヴァの時と思えば、かなり小さなマスクではあるが、それでも狼の口は人間より前に伸びているから、そこに空間があるとおもったら、それが全くない。 確かに、呼吸はこのホースからするのだから、口の部分が外と繋がっていなくても問題はないのだ。 すると短いファスナーを詩織が閉め、マスクが完全に固定された。 「どう??マスクの感じは??」 そう言われ、私は頭を前後左右へと動かしてみる。 (ん…凄いフィット感…ばっちり動きについてくる…) 自らの頭かと思う程のフィット感で、かなりしっくりきている。 「大丈夫、ばっちりだよ」 ただでさえ、全頭マスクにより、籠った声、それに加えてフェンリルのマスクを被った私の声は、かなりくぐもった声となった。 「今、大丈夫っていったよね??」 やはり詩織には、なんとなく言葉が聞こえているようだが、はっきりは聞こえないらしい。 私は、指でオッケーという仕草をした。 「大丈夫そうだね。じゃあボディを着よっか」 そう言われワンピースとなったボディを着込んでいく。 単純構造のボディ。 足と手を通し、体を入れて背中をしめれば完成である。 私はいとも簡単に、そのボディに体を埋めた。 「じゃあ閉めるね」 【ジーーーー】 詩織の手により、背中のファスナーが閉められていった。 「よし…と…それで…ファスナーをファーで隠してしまえば…」 詩織が私の背中でファスナーを隠す作業をしていた。 着ぐるみのボディはフサフサの見た目と反して、結構中はピチピチに出来ていた。 (ん…結構…これパツンパツンに出来てるな…ちょっと…股のとこも食い込み気味だし…) 着ぐるみのサイズが、本当に私サイズに出来ているのか、着ぐるみ内部にまるで余裕はない。 丈もピッタリ出来ていて、股も少し食い込み気味なくらいのサイズ感だ。 そして、見た目は毛が長めでフサフサしている割に、着ぐるみの肉厚自体はそれ程厚くはない。 といってもタイツとかそういう薄さではないが、それなりに私のボディラインが影響しそうな感じもする。 「よし、できた~~。涼音、完成したから、鏡、見てみてよ」 「うん」 そう言われ、私は用意してあった姿見の方に体を向けた。 (うわぁ~~…凄いな……) するとそこには、二本の足で立った狼の魔物が映り込んでいた。 それは正に、ロストツリーに出てくるフェンリルそのもの。 狼の鋭さ、そして、女性らしいボディラインを表し、妖艶さも兼ね備えている。 相変わらず、詩織の用意する衣装のクオリティーの高さを感じる。 (ちょっと…かっこいいかも…) そんな自分の姿に、少し見惚れてしまった。 「うん!完璧だね!めちゃくちゃ強そうだし…あ~もう我慢できないっ!!」 【ガバッ!!】 そう言った詩織が、いきなり私に抱き着いて来た。 「ちょ…ちょっと…詩織!!」 「う~ん…モフモフ感も最高だし…大好きなフェンリルが…現実に…。あ~~しあわせ~~~~」 私に抱き着きながら、フェンリルの毛の中に顔を埋める詩織。 「詩織ってば!!」 「ん!?あっ…ゴメンゴメン…つい…」 確かに、この造形を見れば、テンションが上がるのは間違いない。 中身の私が見たって、自らテンションが上がったくらいだ。 しかし、詩織はいつもながら、夢中になりすぎる。 「よし…っと…これでフェンリルは完成だけど…。実はね、今回の渾身の作ってのは、ここからもう一段あるの」 「もう一段??」 「じゃ、このまま、駐車場のほうに向かおうか」 「うん」 そして、私は詩織につれられ、フェンリルの姿のまま、駐車場へと向かって行った。 詩織の家の駐車場の横に大きな倉庫のような場所がある。 詩織は、その倉庫の方へと私を誘導して行った。 「今回の目玉なんだけど、それがここの倉庫に準備してあるの」 (なんだろ…?目玉って??) そして詩織はその倉庫の扉を開けた。 【ガチャ】 二人でその倉庫の中へと入って行くと、そこには想像を絶するものが存在していた。 「え!?これって…まさか…」 「そう、【闇の扉】だよ♪」 闇の扉…それは、ロストツリーに出てくる、大きな扉のアイテムであり、最上級召喚士のみ使用する事の出来るレアアイテム。 そして、その闇の扉から召喚されるのは、最上級レベルの召喚獣なのだ。 目の前に、そのゲーム内に存在する扉と瓜二つのものが実在していた。 その大きさは、2m程あり、装飾もかなり凝っていて、物々しさを表現している。 土台もしっかりと出来ていて安定感もある。 「す…すごいよ…これ…本物みたい…」 「でしょでしょ、かなりの費用も掛かったけど、これがこだわりの一品なのだ」 ディテールも凄いが、スケール感も凄い。 こんなのが、コス会場に持ち込まれ、そこに詩織という召喚士がいれば、注目度ナンバー1になる事は間違いない。 本当に、詩織のお金の掛け方には脱帽する。 そして、私がその光景に圧巻されていると、詩織が言った。 「えっとね…予定では、これの中に涼音に入ってもらって、会場で召喚しようと思うの」 (ふ~ん…私が入って…召喚されるのね…) 「んっ!?私が入って!?」 「そう、この中で涼音に待機してもらって、きっかけで召喚するの。そうしたら、会場は大盛り上がり、間違いなしだよ」 「まぁ…確かに盛り上がるだろうね…」 「だよね~~。涼音、入ってくれるよね??」 また、このすがるようなキラキラした期待の目…この顔でお願いされたら断る事は出来ない。 「分かったわよ…詩織のお願いだから…やるよ」 「やったぁ~~~!!」 無邪気に飛び上がって喜ぶ詩織。 (全く…詩織ったら…) 「えっとね、この扉は自動で開く様になってるんだ」 そう言って詩織がリモコンのようなもののスイッチを押した。 【ゴゴゴゴゴ…】 機械音と共に、前面の扉が開き始めた。 (おお~~~) その壮大なスケールの仕掛けに、つい私も感心してしまう。 扉が開くと、そこは一面、真っ黒な平面となっていた。 「で…どうやって入るの??この中に」 「じゃあ、説明するね。え…っと…この扉の中の部分は、二重のゴムの膜になってて、その膜と膜の間に、涼音に入ってもらうの」 「ゴムの膜??」 「そうだな…イメージするなら、バキュームベッドってやつと一緒かな??」 「バキュームベッド!?」 確かにネットで見た事がある。 ゴムの膜に挟まれて、中の空気を抜かれ、真空パックのようにされるものだ。 「挟まれたらもちろん、空気を抜いてペシャンコにするの。すると、黒い人型の膨らみだけ出来るでしょ。扉を開けると、そこには何かは分からない人型の膨らみ…。闇の扉のおどろおどろしさを演出する。そして、このゴムの材質は特殊なもので出来ていて、前面のゴムは、この特殊な液体を振りかけると、あっという間に破れてはじけ飛んでしまうの。はじけ飛ぶのと同時に現れるフェンリル…。そして背面もゴムで出来ているから、フェンリルが出た後も、そこは凹凸も何もない真っ黒の壁が残る。出て来た感を薄くさせるための仕掛けだよ。どう??凄い演出だと思うでしょ??」 「た…確かに…作り込まれてるね…」 詩織の計算しきった演出に驚きが隠せない。 しかし、空気を抜いてペシャンコにしてしまったら、せっかくのフェンリルの毛並みが潰れてしまいもったいない。 「でもさ、そんなことして、フェンリルの毛並みは大丈夫なの??」 「それは大丈夫。どれだけペシャンコにしても、解放すれば、ふわっとなる様な素材でフェンリルは作られてるから、出た瞬間、今と同じ姿だよ」 「ふ~ん…」 (ん??待って…待って…会話の中に確認できてない部分があるでしょ) 「詩織さん…あのさ、演出が凄いのはよ~く分かった。サラッと流されてるけど、その演出って、私がバキュームベッドに閉じ込められるって事ですよね??」 「あっ!?うん…そ…そうだね…そうなるね…。え…っと…その…す…涼音、さっきやってくれるっていったじゃん!!」 「バキュームベッドとは聞いてないけど…」 「ダメなの??ここまで…頑張って用意したのに…やっぱ…ダメなの…」 少し涙目になりながら、私の方を見る詩織。 「うっ…」 この目で見られると、本当に弱い。 「分かった、やるよ。やりますよ。ホントに詩織のお願いに弱いよ…私は…」 「やった~~~!!流石、涼音!!大好き~~~!!」 言葉ではしょうがなくやると言ったものの、本心ではどこか、バキュームベッドに入ってみたいと思っている自分もいた。 まあ、これだけ詩織がよろこんでいるのだから、その点は伏せておこう。 「じゃあ詩織、ゴムの間に入ってみて」 「分かった」 そして闇の扉の横までいくと、私を包み込むゴムの膜の横側が開き、扉のように開いた。 「その真ん中に立って」 そう言われ、私はゴム膜の真ん中に来るように立った。 「閉めながら位置調整するね」 そう詩織がいうと、前面のゴム膜が閉じて来て、私を挟み込むように私に接した。 「フェンリルの口の部分は、少しゴムを膨らませてあるから、そこに口の部分をいれてっと…。あと、首の後ろに出た呼吸用のホースを後ろのゴム膜の穴から出すから」 どうやら、私の呼吸口である口から延びるホースは後ろに出され見えないようにするらしい。 「よし…オッケー。あとは空気を抜くだけだけど。このバキュームベッド、一度空気を抜くと、ほとんど戻らないような作りになってるから。抜いちゃうとホントに動けなくなるからね」 「わかった」 (ポーズ…どうしよっかな…) 召喚される時のイメージを考え、両足を揃えて、両手は斜め下にさげたまま手の平を前に向けた。 「じゃあ、空気抜くよ」 【ピッ】 【ブウゥゥゥゥゥン…】 詩織がそう言うと、勢いよく私の周りの空気が無くなっていく。 それと共にゴム膜が体へと吸いつき始める。 膜が黒いため、私の視界はもうゼロの状態。 段々と体が締め付けられる感触が伝わって来た。 (んあっ…なんだろ…この締め付け感…) 体全身を圧縮により締め付けられる。 しかし、その締め付け感が、妙に心地よく感じる。 そして、全身を締め付ける力がかなりとなった所で、機械音が止まった。 ゴム膜内の空気が、全て吸い出され、完全に私の体はゴムに包まれた。 試しに体が動くか試してみようと手足や体を動かしてみた。 しかし、多少ギシギシと揺れ動くものの、その位置から動かす事はまるで出来ない。 (凄い…全身が締め付けられて…ほとんど動けない…) 呼吸は口から延びるホースのおかげで問題ない。 もうほとんど、体を動かすの事の出来ない私にとって、唯一出来る行動は、このホースで呼吸をするだけだ。 「じゃあ、扉を閉めて、移動するからね」 ゴムに包まれたものの、詩織の声はそれなりに聞こえて来た。 「あっ?そうそう、召喚するきっかけは、【いでよ!フェンリル!】だから。扉が開いても、そのきっかけがないと、前の膜は取らないからね」 もう首を振る事も出来ない私は、無言でその詩織の説明を聞いていた。 【ゴゴゴゴゴ…】 機械音が聞こえる。 視界の全くない私にとって、聞こえる音が状況を知る情報源。 この音は、先程、扉が開くときに聞いた音。 つまり、今、前面の扉が閉められているという事だろう。 そして、機械音が止まり、恐らく扉が閉まった。 このまま、私は闇の扉の中のフェンリルの中身として、開場まで運ばれていく。 それは正に大道具。 会場についても、詩織の傍に置かれた大道具にしか映らないだろう。 しかし、その大道具の中には人が…着ぐるみに包まれた人が入っているのだ。 私は物として、そこまで運ばれるのだ。 (んっ…ぁ…ん…ぅ…) 全身を締め付ける締め付け感。 そして全く身動きが出来ない拘束感。 物として扱われている感覚。 それらが私を興奮させ、闇の扉の中、私は一人で心を高揚させていた。 そのどれもが、私の性癖を刺激し、快感を与える。 (んぁ…だめ…気持ちが…いい…) 私は開場まで運搬されながら、人知れず、快感の海に浸るのだった。 ・・・ 周りから伝わる振動が止まった。 会場に着いたという事だろうか…。 視界ゼロの私には、それが確定情報かどうかの確信を得る事は出来ない。 移動を示していた振動、そして、僅かに聞こえるざわつき。 そこから判断するにどうやら、会場に到着したという事だろう。 しかし、到着はしたものの、私の状況にまるで変化は無かった。 ただひたすら、そのまま放置される…大道具のように。 (うぅ…暑い…) 会場は恐らく炎天下。 そして、私はフェンリルの着ぐるみを着て、バキュームベッドのゴムに包まれ、さらには闇の扉の中に閉じ込められている。 その状況で暑くならないはずも無い。 ただ放置される中、恐ろしい程の暑さが私を襲ってきた。 (暑い…暑い…くるしいよぉ…暑い…んぅ…) 体中を包み込む暑さ、本来なら苦しさを感じるはずのその暑さ。 しかし、私は以前のシヴァを着た際に、知ってしまっていた…。 この暑さに追い詰められる事の【気持ちよさ】。 こうやって、暑さに苦しめられる事に、私は快感を感じてしまうのだ。 全身をゴムで締め付けられ、完全拘束された状態で、暑さにより追い詰められる。 (んぁ…苦しい…暑い…動けない…きついよぉ…んぁ…でも…ぁ…) その重なる私への責めで、私の心はどんどんと高揚してしまっていた。 扉を開けられ、会場にお披露目される前だというのに、私の陰部はグショグショに濡れてしまっている。 (んぅ…ぁっ…こんな…苦しいの…ダメ…こんなの…か…感じちゃう…) そんな快感を覚えてしまっている私は、ただひたすら、最高の環境に放置される。 外では、詩織が相変わらずの人気を博し、召喚士と闇の扉の周りに人だかりを作り、撮影会が繰り広げられているだろう。 そんな中、私は、召喚士の大道具として設置され、人知れず、その中で快感に浸ってしまっているのだ。 集まったお客さん達も、そこに運ばれてきて放置されている時間を考えても、まさか、目の前の闇の扉の中に人が入っているとは思うまい。 ましてや、中で女の子が快感に溺れているなど、想像もしないだろう。 なんたる背徳感。 (あぁ…暑い…苦しい…んぁ…気持ち…いい…んうぅっ…) 体中から汗が噴き出ていく。 この暑さにより噴き出た私の汗。 バキュームベッドというゴムの膜に着ぐるみごと圧縮されているのだから、汗がフェンリルの毛までビショビショにしてしまうのではないか? そう思われたが、そうならない事を、私は感覚的に理解していた。 インナーに着込んだタイツ…それが恐らく水分を通していない。 なんとなくだが、タイツの内側に自らの汗が溜まり込んでいる感覚が分かる。 フェンリルの毛が圧縮されても元に戻る素材を使っている詩織の事だ、そんな事は充分に理解し対策しているはず。 だから、私は着ぐるみを濡らすことなく、暑さに責められるようになっているのだ。 そして、私はその暑さに包まれながら、苦しみ続けた。 どのくらい時間が経ったのだろう…視界ゼロで完全拘束された私には時間を知る術はない。 かなりの時間そこに放置されていた気もする。 私の心と体は、もう火照り切っている。 そんな快楽に頭を埋めつくされた私の耳に、聞き覚えのある機械音が聞こえた。 【ゴゴゴゴゴ…】 (んぁ…これ…扉の…開く音…) その機械音は恐らく扉が開く音。 すると、その音が聞こえたと思った瞬間、まわりから人の声が聞こえ始めた。 「凄い!!これ!!開くんだ!!」 「え??何??何かいるよ!」 「人??」 どうやらお客の目に、私のバキュームベッドに圧縮された体が晒されたようだ。 (んぁ…そんな…私…見られてる…見られてるよぉ…んぅぅ…) 今、私はバキュームベッドに完全拘束された姿を人目に晒している。 真っ黒のゴムの表面にボコボコと浮き出した凹凸だけだが、完全に拘束された私の姿が、皆に見られているのだ。 妙な恥ずかしさと共に、変な高揚感も芽生える。 そして、皆に視姦されている最中に予想外の事が起こった。 【ブウゥゥゥゥン…】 (んあぁぁっ!!!なにぃっ!!これぇぇ!!) なんと、私の陰部の付近に突然、振動が与えられ始めたのだ。 その振動は、確実に陰部に直接感じている。 つまり、着ぐるみの内側に、小さいながらも、振動を与える何かが仕込まれているという事だ。 (んああぁぁぁぁ!!!こんなのぉぉぉ!!むりぃぃぃぃ!!) その振動に刺激され、体が全力で悶えようとする。 【ギシギシ…】 多少、蠢いているくらいの動きは出来るが、バキュームベッドの拘束力により、ほとんど体を動かす事は出来ない。 「う…動き始めた!?」 「ってことは…中に人間がはいってるの??」 「凄い…迫力…なんか暴れてる…感じが…」 「デティールやばいって」 外から見ると真っ黒い塊が、モゾモゾと動いているくらいにしか映らないだろう。 しかし、そこに置かれた大道具の中の物体が動きを見せているというだけで、客目には凄いものと映る。 しかし、実際には、陰部を責められ、快感に苦しむ女の子の悶える姿。 (んあぁぁぁ!!やめてぇぇぇ!!これっ!!止めてェェェェ!!) ただでさえ、ここまで快感の渦に巻き込まれ、火照りに火照り切っていた私の心と体。 この微弱な振動は、私にとっては、止めをさすのと同じくらい、強烈なものなのだ。 (あぅぅぅ!!いやぁぁぁぁ!!むりぃっ!!むりぃっ!!耐えられないぃぃぃ!!) 陰部を責められ、体を悶えさせたいが、完全拘束するバキュームベッドのゴムは、それを私に許さない。 手を動かそうとも、足を動かそうとも、体を捩ろうとも…全ての動きは制限されている。 ただギシギシと音を立て、私の自由を奪い続けるのだった。 (やめてぇぇ!!!これはムリいぃぃぃ!!やりすぎだってぇぇ!!ムリィィィィ!!) 「凄いな…なんか生物って感じ」 「禍々しさが表現されてるね…」 「やばいクオリティーだって」 その私が快感を与えられ、感じて悶える姿を、お客さんたちが凝視する。 ある意味では公開愛撫と言った所だ。 私は公衆の面前で、快感を与えられ悶える姿を晒しているのだ。 (んあぁぁぁぁ!!見てるっ!!みんなが見てるってぇぇぇ!!あぅぅぅぅ!!) しかしそんな事はお構いなしに私を責めたてるその刺激。 バキュームベッドに拘束された私には、その刺激から逃げることも、お客さんの視線から逃れる事も出来ない。 ただひたすらに感じ続ける姿を皆に見せるしかないのだ。 暑さ、そして、締め付け感で高揚しきった私を追い込む、その刺激。 その刺激は、私を一気に最頂点へと辿り着かせる。 (いやぁぁぁぁ!!これいやぁぁぁ!!おかしくっ!!おかしくなるぅぅぅ!!) 快感がピークに達し、私の動きも激しくなるが、やはりその動きはバキュームベッドにより阻害される。 ギシギシと音を立て、少し蠢く程度。 しかし、その動きとは裏腹に、私の中の快感はかなりの所まで達していた。 どれだけ、止めて欲しくても、止まる事のないその刺激。 もちろん、暑さと締め付け感は、ずっと私を包みこんだまま。 快感の渦は、私の心と体を完全に蹂躙していった。 (いやあぁぁぁぁぁぁ!!!むりぃぃぃっ!!イクぅっ!!イクぅっ!!イっちゃうウウウウウゥゥゥゥ!!んああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!) ビクンと体を強張らせ一瞬、その動きを止めた私の体。 私は、お客の見守る中、バキュームベッドに拘束されたまま、人知れず絶頂を向かてしまったのだった。 (んぁ…ぁ…ぁ…) そして、私の絶頂を感じ取ったかの如く、その振動は動きを止めた。 フェンリルをお披露目する前…まだ単なる黒い塊。 まだ始まってもいないのに、私は絶頂を迎え、終わりを迎えたのだった…。 そう、まだ詩織の召喚のきっかけの言葉は聞こえてこない。 まだ始まってもいない…いやまだ始まらない。 すると、一度止まったと思われた振動が、再び私に牙をむき始めた。 【ブウゥゥゥゥゥン…】 (んあぁぁぁぁぁぁっ!!むりぃぃぃぃっ!!今はっ!!もうっ!!ムリィィィィィィ!!) 絶頂を迎えたばかりの私に、追い打ちをかける、その責め。 それはとても耐えられるレベルの快感ではない。 しかし、バキュームベッドに拘束された私には、それから逃げる事も、その快感を逃がす事も出来ないのだった。 (いやぁぁぁぁ!!!むりいぃぃぃ!!変にっ!!変になるぅぅぅぅ!!んあぁぁぁぁぁぁぁっ!!) その後、私はバキュームベッドに拘束されたまま、お客さんの目の前で、何度も絶頂を迎える事となった。 (…ぁ…ぁ…も…もう…む…り…) 暫くして、詩織の声が遠くから聞こえてきた。 いや、実際には近くにいる。 私の意識が朦朧とし、その声が遠く感じているだけだろう。 「…我に仕えし、神々の召喚獣…【いでよ!!フェンリル!!】」 【パシャァッ!!】 【パシイィィッ!!】 詩織の声が聞こえた次の瞬間だった。 私を覆っていた黒いゴムの膜が、弾け飛ぶように、私の前から無くなって行った。 突然前面を支えていたゴム膜がなくなり、私の体は前に倒れ込むように飛び出て行った。 【ドサッ】 私はうずくまるように、地面へと零れ落ちた。 (ぁ…つ…ついに…解放…された…) 飛びそうになっていた意識が薄っすらと戻り始める。 「うおぉぉぉ!!すげぇぇ!!」 「こんな演出あるんだ!!」 「やばいって!これ!」 その闇の扉からの登場の演出を見たお客さんたちが、割れんばかりの歓声をあげる。 「さあ、フェンリル…私の従順な召喚獣よ。我に従い、我の牙となれ」 詩織が私に向かってそう言った。 (これは…た…立たなきゃ…) 登場の演出を終えた後だ、この歓声の中、いつまでもうずくまっている訳にはいかない。 しかし、何度も絶頂を迎えさせられた後の体はいう事を利かない。 足に力が入らず、膝がガクガクと震える。 (立たなきゃ…立たなきゃ…) その力の入らない足を奮起させ、私は必死の思いでヨロヨロと立ち上がった。 (ううううううっ!!) 立ち上がると、再びお客さん達から歓声があがった。 なんとか立ち上がったものの、未だ体はフワフワとし、体がよろめく。 あまりの過酷だった状況から解放され、大きく肩で息をする。 それでもなんとか、少し前屈みになりながら、姿勢を保ち続けた。 「あっ!!写真いいですか!?」 「どうぞ、ご自由に!」 そうして、召喚士とフェンリル、そして、本当の背景となった闇の扉の写真撮影が始まって行った。 その間、私は姿勢を保ち続けるだけで必死だった。 もちろん、バキュームベッドからは解放されたが、着ぐるみの暑さは残ったまま。 その暑さにも耐えながら、とにかく必死にフェンリルであり続けたのだった。 (最後まで…なんとか…なんとか…耐えない…と…耐えない…と…) そして、最後までなんとか意識を繋ぎとめ、耐え抜いた私。 詩織の用意した車に転がり込むように乗り込んで、会場を後にするのだった。 ・・・ そして、SNSにその時に撮られた写真がいくつもアップされていた。 写真を見ると、本当に毛は圧縮されていたとは思えないほどにフサフサになっている。 そのディティールはかなり高く、フェンリルの造形としてかなりの完成度だ。 私自身が見ても、凄さを感じるほどだ。 そのコメントには… 【フェンリルの演技もやばい!!】 【肩で息をする感じが、今にも襲いかかってきそうだった!】 【いかにもハンターのような、前かがみの雰囲気が怖さを感じさせる!】 【この中身の人、かなりの演技派…役者さんかな??】 など、そのフェンリルの雰囲気を称賛するコメントが多く投稿されていた。 しかし、実際は違う…。 何度も絶頂を迎えさせられた女の子が、必死に姿勢を保っているだけの姿。 そして、前屈みなのは、直立する力が残っていなかっただけ。 肩で息しているのは、本当に苦しかっただけ。 決して、演技でもなんでもない、私のあるがままの状態。 必死に耐えている…その姿なのだった。 「よかったね~~涼音。めちゃくちゃ、世間の評価高いよ♪」 「ふぅぅ…。よかったねぇ~…じゃないでしょ!!死ぬかと思ったわよ!こっちは!!だいたい、なんで股の所が振動するようになってるのよ!!」 「え!?いや…そのほうが…盛り上がるかな??と思って…」 「盛り上がる!?あのね~~詩織…あんた…」 「えっ!?あれ??涼音…あれ?私…間違ってた??かなり涼音が楽しんでるように見えたんだけど…??」 「うっ…それは…その…否定は…出来ない…」 「ほら、やっぱり~~~」 「で…でも…限度ってものがあるでしょ!!限度ってものが!!…もうっ…」 そして、私達のコスプレは、まだまだ続いていくのだった。 -----------------------END--------------------------
ももぴ
2024-06-16 22:01:39 +0000 UTClittle
2024-06-16 00:47:06 +0000 UTC