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異世界風俗店【ファンタジア】 Side Story 05 河童Side

※本作品はPixivに投稿した《異世界風俗店【ファンタジア】》のサイドストーリーとなります。 本編の方を読んでいただいた事を前提で書いてありますので、説明が省かれている部分がありますのでご了承ください。 ・・・ 私にはヒーローがいた。 ここは小学校の教室の中。 「なによ!!意地悪するほうが悪いでしょ!!やめなよ!!」 私は、クラスメートの女の子に悪戯をした男子に食いついていた。 「うっせえな!!いっつもギャアギャア騒がしいんだよ!お前は!!」 【ドンッ】 「きゃっ!!」 私は悪戯をした男子につき飛ばされ、床に尻もちをついてしまった。 「い…痛い…」 「うるさいお前が悪いんだよ!!」 「そんな…こと…」 悪いのは向こうなのだが、体格のいいその男子には、私は敵わない。 すると、そこに彼が現れた。 「ちょっと待てよ!!どう見たって【茉祐里(まゆり)】の方が正しいだろ!」 そう言って、私とその悪戯をした男子の間に割って入ったのは、幼馴染の【ケータ】。 漢字で書くと啓太郎なのだが、長いので、私はケータと呼んでいた。 「ケータ…」 「うっせえな、なんだ啓太郎、そいつが吊っかかって来たんだぜ」 「違うだろ…。マユリの方が正しいし、お前がマユリを突き飛ばしたのも許せないね」 「なんだと?」 「どしてもってなら、こっからは俺が相手してやるよ」 「生意気なやつだな!!」 そして、ケータはその男子から、私を守ってくれたのだ。 いつも私を庇ってくれるケータ。 その優しい背中が、私にはとても眩しく映った。 そう…私のヒーローだ。 学校帰り。 私とケータは二人で帰路を歩いていた。 「ケータ…今日もありがと」 「ん??何が??」 「今日も、私を助けてくれたじゃん」 「あぁ…あれね。俺にとっちゃ、当たり前みたいな事だしな…マユリを守るのが」 「え!?そんな…えっと…ありがと…」 「いいよ、俺はずっとお前の事を守ってやるからな!」 「え…それって…大人になっても??」 「ああ、大人になっても」 「じゃあ、私、ケータのお嫁さんになる」 「お嫁さん!?ま…大人になったらな」 「うん、約束よ」 「ああ、約束だ」 そんな子供同士のくだらない会話。 しかし、それが私の思い出なのだ。 ・・・ 【ピロン】 お客が来たという合図の音がなった。 「はっ!?」 (し…しまった…うっかり、居眠りしちゃった…) どうやら、私は準備を完了して、お客を待っている間に、少しだけ居眠りをしてしまっていたらしい。 (さっきの夢…子供の時の…) 居眠りをして見ていた夢の事を思い出す。 それは、子供の時の、私のヒーローの夢…。 ここは、異世界風俗店【ファンタジア】 風俗店といっても、この店は一風変わっている。 何が違うかというと、ここで働くキャストは皆、異世界ファンタジーに登場するようなそのキャラクター、つまり普通の人間の女の子ではないのだ。 とは言っても、もちろん実際にそんなものが存在するわけでない。 キャストは、キャラクターの着ぐるみを着ているのだ。 全身をタイツで覆い、マスクを被り、中身の人間を覆い隠す。 そして、そのキャラクターを演じ、成りきる。 私こと【庄野 茉祐里(しょうの まゆり)】も、この店、ファンタジアのキャストの一人である。 そして、私の演じるキャラクター…。 それは、河童の【ミズハ】。 私は背も小さく、胸やお尻が豊満な訳でもない。 そんな体型に自身がないのもあって、今までまともな男性経験も無い。 なのに何故、私が、風俗などに身を寄せているか…。 それは、そんな自分から他の存在になれるという変身願望からだろう。 普段の自分には自信も無く、何も出来やしない。 しかし、ここでは、私は河童という空想上の生物になり切り、別の自分を演じられる。 お客さんもまた、その空想上の生物に興味があり来てくれている。 つまり、庄野茉祐里ではなく、河童のミズハを求めてやってきてくれるのだ。 庄野茉祐里を着ぐるみという皮で、隠しきっているからこそ、そのニーズに答えることが出来るのだ。 そして、サキュバスやエルフの役と違って、【河童のミズハ】は、少し子供っぽい設定のため、私の体型がマッチする。 つまり、この自信の無い体型が適任という事なのだ。 河童といえど、甲羅は無く、全身をピッチリとした薄いゴムのスーツに身を包んでいる。 私の体サイズに作られた衣装なので、着ると、見事なまでに私の体型をトレースする。 ある意味では全身タイツのような状態で、体のラインを晒しているのだから、恥ずかしい衣装だともいえる。 しかし、河童のマスクを被る事により、庄野茉祐里という存在は完全に消え去るので、恥ずかしくは無い。 そこにいるのは、【河童のミズハ】であり、晒しているのはミズハの体なのだ。 そして、ミズハのマスクは、いわゆる河童のようなくちばしはなく、いわゆる女の子と言った顔。 手足まで薄いゴムの素材に包まれているので、ある意味、衣装に通気性は無い。 衣装に身を包まれると、目、鼻、口以外はまるで外の空気すら感じなくなるのだ。 しかし、この全身ゴム素材という所に、河童のミズハの特徴がある。 ここは風俗店、主には手や口で奉仕するというお店。 サキュバスやエルフなどは、手にサテン地の手袋をしており、その触感でお客さんの性器に奉仕する。 しかし、私は手袋をしていない。 手まで、薄いゴム素材に包まれているからだ。 ゴムが故に、手にローションをたっぷり付けても、沁みる事もないし、お客さんの処理をした後も、そのまま洗えば綺麗になる。 河童のミズハは、体液が表面についている設定になっているので、お客さんはローションにまみれたヌルヌルのミズハの手で性器を弄られる事になるのだ。 そこが、ミズハの特徴の一つであり、それにはまって来てくれるお客さんも多い。 (さて…お客さんが来たから、手にローションをつけってっと…) 体液という設定のため、お客さんが入ってくる前に、手にローションを追加しておく。 開店準備段階で、全身にもローションを塗っているが、これは雰囲気造りのため、これと言って追加はしない。 (で…っと…河童のミズハモードにならないとね…) そして、私はお客さんが入ってくる前に、自らを河童のミズハという存在になり切るスイッチを入れるのだった。 【ガチャ】 扉からお客さんが入って来た。 「また来てくれたんだ、【アモガミ】さん。今日もありがとね」 「やあ、ミズハ、今日もよろしく」 少し子供っぽい口調で、お客に接する。 それが、河童のミズハのキャラクターなのである。 「で??今日はどうするの??どっから触る??」 「え…っと…」 ミズハの手は、ローションによってヌルヌルになっているため、全身を触って欲しいというお客が多いのだ。 なので、大体のお客は、まず全裸になる事から始める。 まともな男性経験も無い私が、こうやって、毎度のように裸の男性に対峙する訳だ。 本当なら、恥ずかしくて目を覆う所だが、今の私は違う…河童のミズハなのだから。 「ホントはね、尻子玉ぬきたいとこなんだけど、怒られちゃうからさ。じゃ…ここから触るね」 そうして、私は、お客さんの全身をヌルヌルの手で奉仕していく。 意外に、この手で性感帯に触れた時に反応を見せる、お客さんが可愛かったりもする。 そして、ある程度、全身の奉仕が終わると、性器の奉仕へと移る。 途中で、こっそりと手にローションを追加し、お客さんの性器を弄り倒すのだ。 「んうっ!!」 盛り上がってきた所で、お客さんの精液が飛び出した。 私の手にも、大量の精液が付着するが、後で洗えばいいので問題は無い。 そして、終わりの時間が訪れる。 「アモガミさん、体、ヌルヌルだから、しっかり拭いて帰ってね」 「今日もありがとう、ミズハ、とても気持ちよかったよ」 「ありがと、またね」 そして、お客さんは部屋を出て行った。 その後も、何人ものお客を相手にしていく。 河童のミズハの設定からか、手で処理するだけのAコースが多く、口でも処理するBコースは珍しい。 次のお客が来るまでの間、部屋で待ちながら、立ったまま、鏡に映った自分の姿を見る。 そこには、全身を緑色のゴムに包まれた、ほぼ私自身といった体が映し出されている。 全身をゴムに包まれて、自らの肌は一切出てはいないものの、乳首もしっかりと突出し、陰部のワレメも存在している。 そして、胸やお尻、ウエストのラインなどは、私の体そのもの。 緑色に染まり、ローションによりぬめりテカってはいて、人間ならざる者の感は出ているが、やはり私の体だ。 (ふぅ…改めて、こうやって見てみても、貧相な体だな…泣けてくるよ…) この役にマッチしているとはいえ、やはり、身長の小ささや、胸の無さ、ダイナミックなスタイルでは無いというのは悲しい事である。 「ふんっ!!いいんだ!!今は河童のミズハなんだから!!胸なんて無くてもいいだから!!」 そんな自らのがっかり感を慰める様に、鏡に映った自分に言い聞かせた。 そして、今日の最後のお客を終えて、終了の時間を迎えた。 「お疲れ~~」 バックヤードに向かうと、サキュバスやエルフ、人魚などと言った、他のキャスト達と出会う。 各々の設定ではあるが、色っぽく女性らしい妖艶なスタイルの子も多数いる。 そんなキャスト達の、胸やお尻、そのスタイルに目が行ってしまう。 (ふぅぅ…私もあんなだったら…) その差を見せつけられ、さらに自分の自信を失ってしまう。 「お疲れ、マユリ。どうしたの、そんなに肩を落として??」 その声に振り返ると、そこにはエルフの姿があった。 「ん?その声は【サツキ】?あれ??エルフのマスク変わった??」 私に声を掛けて来たのはエルフ役のサツキ。 キャストは皆、仲がいいのだが、サツキとは気が合う方なので、特に仲がいい。 「おっ!よく気が付いたね。私のお客、要求キャラ設定が多いから、どんな設定でも行けるくらいの表情にしてもらったの」 「へぇ~~。さすがサツキ。変幻自在って感じだね」 「って…ところで、どうしたの??思いっきり、がっかり空気が出ていたよ」 「うっ…!?そ…それは…えっと…。そ…そんなのは出してませ~ん!!」 一瞬の空気だったはずなのに、それを見透かすサツキは鋭い。 「うそうそ、背中に書いてあったもん、【ガッカリ】って」 「う…うぐぅ…そんな…」 「どうせ、また、スタイルがどうとか考えてたんでしょ」 「うっ…」 なんとも見事に、正解を射抜くサツキ。 「何度も言ってるけど、別に、胸がある方がいいって訳じゃないし。マユリにはマユリの魅力があるじゃん」 「そう言ってくれるのはありがたいけど…」 そう言いながら、エルフの衣装に身を包まれたサツキの姿を上から下まで目線を走らせた。 「そのスタイルを持ったサツキにそう言われても、説得力なんてないって!!」 サツキは決して、胸は大きい方ではないが、身長もそこそこあり、スレンダーな見事なスタイルをしている。 こんな私とは大違いなのだ。 「そう??私だって、コンプレックスの塊だよ。私みたいな体型が好きな人もいれば、マユリの体型が好きな人もいっぱいいると思うんだけどな…」 「そ…そんな…もんかな…」 「そうそう、だって、私達女子だって、筋肉馬鹿みたいな体型が好きな人もいれば、シャープな人が好きな人もいるでしょ。そんなもんだよ」 「そ…そう言われれば…そうかも…」 「とにかく、自信を持ちなって、マユリだって魅力はいっぱいあるんだから!」 「あ…ありがと…」 なんだか、サツキに一方的に励まされてしまった。 そして、着替え部屋に入り、私は河童の衣装を脱いで行く。 「ぷはぁ~~~」 部屋に入るとすぐにマスクを取った。 「おっ?今日もいい感じに茹で上がってっるね~~。背中降ろすよ」 「よろしくぅ~」 【ジーーーー】 サツキがそう言って、背中のファスナーを下げてくれた。 マスクを取った私の顔は、いつもながら真っ赤に染まっている。 何故なら、この河童スーツ、全身がゴムで出来ているため、薄手ながらも、かなりの体温上昇となる。 なので、マスクの中の私の顔も、終わり頃には真っ赤に染まってしまっているのである。 そして、私はいつも通り、背中を降ろして貰った所で、シャワールームへと向かった。 他のキャストは、その着替え室で脱ぐのだが、私だけはシャワールーム。 その理由も河童スーツにあった。 シャワールームに入った私は、河童スーツを脱ぎ始めた。 背中のファスナーは、他人に降ろしてもらうが、後の衣装は自らで脱ぐ。 この衣装、全身がゴムで出来ているうえ、私の体にピッタリとフィットしているため、簡単な造りの衣装の割りに、脱いだり着たりにすごく時間と手間が掛かるのだ。 更には、特殊な伸縮性のある素材で出来ており、手先や足先まで一体成形となっている。 手先や足先を潜り込ませる時に、ある程度力を入れれば、その間口が広がり、私の手先などが収まる仕組みだ。 なので、脱ぐときも上手く脱がないと手足が抜けない。 (よいっしょ…っと…) 爪を立てて破れないように、優しく握りながら、スーツを脱いで行く。 肌タイツを脱ぐエルフやサキュバス達に比べれば、圧倒的に大変なのだ。 見事なまでに、私の体にフィットしているので、ゆっくりとやらないと破いてしまいそうだ。 かなり慎重に脱いでいくため、時間が掛かり、大体、他のキャストは先に着替えが終わってしまう。 (よいっしょ…ゆっくり…優しく…っと…) そして、私はかなりの時間を掛けながら、河童スーツを脱ぎ終わった。 「ふぅぅ~~」 【グチャ】 すると、脱ぎ終わった河童スーツの背中の切れ目から、溢れ出る様に私の汗が流れ出て来た。 シャワールームで私が衣装を脱ぎ着する理由の一つがここにある。 この河童スーツはゴム製で出来ているため、見た目の簡素さ、薄さの割りに、内部の温度があがり、かなりの汗を掻く。 そして、ゴム製のため、その汗は外に染み出る事無く、スーツ内に留まり続ける。 なので、脱ぎ終わった河童スーツの中と、脱ぎ終わった私の体は、両方、汗でビショビショに濡れているのだった。 なので、脱ぎ終わった河童スーツから流れ出る汗、そして、私の体から流れ出る汗で、周辺をビショビショにしてしまう。 あと一つの理由が、私が河童スーツを全裸で着ている事にもある。 他のキャストの中にも人型ではない着ぐるみを着ている人もいる。 しかし、皆、下にインナー用の全身タイツを着ている。 だが、私に至っては、この河童スーツが私の体にピッタリとフィットしている上、ゴム製で出来ているため、着る際に、全裸で、全身にローションを塗らないと着る事が出来ないのだ。 なので、衣装を脱いだ瞬間、私は全裸になってしまう。 まあ、着替え室には女性しかいないので、いいと言えばいいのだが、皆、肌タイツなり、インナーのタイツだったり、する中、一人だけ全裸と言うのも浮いてしまうので、私は衣装を脱ぎ着を、シャワールームで行うのだ。 そして、中が私の汗でビショビショ…いや、汗が溜まっているというほどの河童スーツを所定の場所に入れ、シャワーを浴びて汗を流す。 そして、シャワーを浴び終わり、私服に着替えると、私は庄野茉祐里に戻る。 そこには、何の取り得も無い、注目される点など何もない、普通の女の子がいるのだ。 河童のミズハのように、注視してくれる人など、誰もいない私に戻るのだ。 「さ…帰るか…」 そうやって、私の一日は終わっていく。 誰かに求められていた存在から、誰にも注視されない存在に戻り、日常に帰っていくのだった。 私の日常…。 家に帰っても、誰もいる訳でもない。 私ごときでは、相手にしてくれる男性もいない。 こうやって、幼少期からずっと、彼氏もいないまま今に至るのだった。 河童のミズハでいる時は、求めてくれる人がいる分、そちらの私のほうが充実しているのかもしれない。 そんな事すら思ってしまう。 (はぁ…) ・・・ そんなある日のファンタジアでの出来事だった。 【ピロン】 「あっ、お客さんが来た。えっと…【コーシン】さんか…。一度、来て私の所に来てる人か…。どんな人だっけ…?」 部屋の中にある情報端末を見ると、そのお客さんが何回目に来店しているかなどの情報が表示される。 それを見ると、一度、私の所に来ているらしい。 しかし、一度だけのお客さんでは、なかなか覚える事も難しいのが本音である。 【ガチャ】 そして扉が開き、そのお客さんが入って来た。 「こんばんは」 そのお客さんが入って来るなり、私に挨拶をしてきた。 (あっ!?思い出した!!確か…このお客さん…) 「また来てくれたんだね。ありがと、コーシンさん」 そのお客の顔を見て、すぐに記憶が甦って来た。 少し前に、一度来て、物凄い初心な感じで、可愛らしい印象があった。 見た目も、すごく爽やかな感じで、好印象だったので覚えている。 「で…っと…今日は、どっから触ろっか??どこでもいいっていうなら尻子玉なんだけど、ホントに怒られるからな…」 子供らしい口調で、少し、からかう様にコーシンさんに話しかけた。 「えっと…さ…。今日はちょっと、そう言う意味で来たんじゃなくてさ…」 コーシンさんが少し、恥ずかしがりながらそう言った。 「ん??そういう意味じゃない??どういう事??分かんないよ。とにかく早く脱ぎなよ~~」 そう言いながら、私は両手をワシワシさせながら、近づいて行った。 「ちょ…ちょっと待って。落ち着いて。俺の話を聞いてくれ」 「な…なんだよ…」 そんな私の勢いを止めるようにコーシンさんが言った。 「と…とにかく…座って話そう」 「いいよ、じゃ、ここのベッドに座りなよ」 すると、コーシンさんはベッドの縁に腰を降ろした。 「それじゃ、あたしも」 私はそのコーシンさんの横に、チョコンと腰を降ろした。 「うっ!?」 「え!?何!?嫌??嫌なのか!?」 私が横に座った事に、少しビクッとしたコーシンさんに詰め寄る。 「ち…違うよ。ちょっと驚いただけ…。全然嫌じゃないよ」 「そっか、ならいいや」 ベッドの淵に座り、床に届かない足をプランプランさせながら、コーシンさんのほうに視線を向けた。 「それで、なんなのさ??話しって??」 「あのさ、この前、俺がここに来たのは、友達に連れられて強引に入店させられたんだ」 「はぁ??そうなの??でも、よかっただろ??」 「ま…まあ…凄く、気持ちよかった。かなり緊張したけど…」 「だろうね。この前のコーシンさん、ガチガチだったしな」 「しょ…しょうがないだろ…俺、風俗自体、初めてだったんだから」 「そうなのか??」 すると、コーシンさんが少し気持ちを落ち着かせた様子で、話を始めた。 「この前は、ホントに初めてで、良く分からないままだったんだけど、改めて家に帰ってみてさ…。もう一度、君に会いたいって思っちゃったんだよね」 「え!?」 河童のミズハに対して言われたのだが、言葉にされて、自分に投げかけられると、少し嬉しくも恥ずかしい。 「でも、君に会いたいっていうのが、性処理をしてもらいたいとか、そう言うのじゃなくて、なんかこう…おしゃべりがしたいというか…なんというか…。君に接してみたい…って感じかな」 「な…なんだよ…それ…。ちょっと照れるじゃんか…」 (なに…こ…この人…この人が言っている事…なんか…ドキドキしちゃう…) 河童のミズハの着ぐるみの中、素でドキドキする茉祐里の存在があった。 「うん…別に、一緒の空間にいて、少しの間、おしゃべりが出来ればそれでいい…」 「なにそれ…」 風俗店に来て、この人は何を言っているのだろう。 そう思ってしまうが、コーシンさんの表情は、そこに嘘も偽りも無く、真っ直ぐな空気を見せている。 「あたしはそれでいいけど、コーシンさんは、それでいいの??お金払ってるんだろ??」 「いいんだ。そのつもりで今日は来たんだし」 「変なの…」 「変なので結構だよ」 そして、私は暫くの間、コーシンさんに触れる事もせずに、ひたすらおしゃべりを続けた。 たわいもない会話が繰り返される。 (なんだろ…この空気…この人…すごく喋ってると落ち着くな…) コーシンさんの話術だろうか、おしゃべりをしている間に、とてもリラックスして、彼の空気に取り込まれて行った。 そして、もうすぐ終わりの時間が来る頃だった。 私のほうが、おしゃべりに夢中になり、時間を忘れてしまうところだった。 「おっと、もうこんな時間だよ。ホントに抜かなくていいの??」 「いいんだ。俺がこうしたくてしたんだし」 「ふ~ん…」 しかし、まあ、コーシンさんの話術のせいで、おしゃべりの時間、私も楽しんでたのも事実であり、何か腑に落ちない所もあった。 「ところで、なんで、あたしの所にまた来たのさ??」 「え…それは…なんというか…」 それを聞いた途端、少し口ごもるコーシンさん。 「ここまで、お話したんだし、隠さなくてもいいだろ??」 「え…っと…笑わないで聞いてもらえるかな…」 「笑わない、絶対に笑わない!」 「分かった。じゃあ話すよ」 そして、コーシンさんは少し改まって、話し始めた。 「正直言って、ミズハの雰囲気が、俺の幼馴染の女の子に似てたんだ」 「え??幼馴染??」 「そう、その幼馴染の女の子、小さい頃は、ずっと俺と一緒にいて、いっつも俺が守ってあげてたんだけど、ある時、引っ越しで遠くの町に行っちゃってさ。それ以来、全く会ってもいないんだ。その子の面影と言うか、雰囲気が、ミズハに重なっちゃってさ」 「あたしに…その子が??」 「見た目はもちろん、河童じゃなくて普通の女の子だよ」 「あ…あたりまえでしょ…」 「しゃべる雰囲気とか、仕草とか、そう言った所かな~~」 「そっか…」 「ガキの頃の思い出なんだけど、それが心のどこかに引きずっているのか、この年で、俺、未だ彼女無しなんだよな。恥ずかしいだろ??」 「そ…そんなことないよ…。あ…あたしも似たようなものだし…」 (私も…自分に自信が無いのと…心のどこかにケータがいるのかもな…) コーシンさんの話につられて、つい、素の自分が出てしまった。 彼の話を聞く限り、私と本当に同じような状況だと感じた。 彼の見た目と雰囲気を考えれば、彼女がいないなんて考えにくい。 しかし、彼自身がそうしてしまっているのだろう。 なんとももったいのない話だ…。 (あっ…見た目の自信のなさの所は、私とは違うか…) 「結婚の約束とかしちゃってさ…。まあ、子供の頃の勢いみたいなのだけど。それでも、俺の心のどこかには、彼女がいる気がしてさ」 (ほんと…なんか…私と同じ感じがするな…) コーシンさんの話しを聞いていて、共感できるというかなんというか、同じ空気を感じた。 「で??その女の子は可愛かったの??」 「当たり前だろ。めちゃめちゃ可愛かった。本当に守ってあげたい存在だったんだ」 「ふ~ん。その女の子は幸せだな、そんなに想ってもらって」 「って、まあ…完全に俺の独りよがりだけどな」 きっとコーシンさんは、その子の事を大切に思っていたのだろう。 少し、そんなに想われる事に嫉妬してしまった。 (いいなぁ…私もそれくらい想ってくれる人がいたらな…) そんな事を考えながら、楽しそうに話すコーシンさんのほうを見ていた。 「小さい頃は、厄介ごとに直ぐ首を突っ込む奴だったから、直ぐに助けてやらないと、いけなくてさ。何度、俺が【マユリ】に手を出すな!!って叫んだ事か…」 「え!?」 今、コーシンさんが口にした名前…それは確かに…【マユリ】と言った。 聞き違いではないないだろうか…それは…私の名前と同じ。 そんな偶然があるだろうか…私はその耳に残る言葉に、体が固まってしまった。 「マ…マユリ…」 「あぁ、マユリってのが、その俺の幼馴染の女の子の名前。ホント、マユリは自分から厄介事に首を突っ込むんだけど、でも、間違ってないんだよ、彼女。マユリは正しいと思う事には引かないタイプだったから、巻き込まれるんだよ。それがいいとこ何だけどさ」 今、コーシンさんは、もう一度、その女の子の名前がマユリだと言った。 その瞬間、幼き頃の記憶が頭の中を通り過ぎていった。 ・・・ 「ちょっと待てよ!!」 私と悪戯っ子の間に割り込んだ、その背中…。 いつも、私を助けてくれた、その背中…。 厄介ごとに首を突っ込んだ私を守ってくれる存在…。 ・・・ 「う…うそ…」 「ん??どうしたの??」 「そんな…ケ…ケータ…なの??」 「え!?な…なんで…俺のその呼び名を…??えっ!?ちょ…ちょっと待って…も…もしかして…マ…マユリ…マユリなのか??」 「ケ…ケータ…」 「マユリ!!」 その瞬間だった。 【ガチャ】 部屋の扉が開いた。 「すいません。もうお時間が過ぎておりますので、お帰りのほうをお願いいたします」 知らない間に終わりの時間を迎えていたようで、スタッフが退店の案内にきたのだった。 お互いが衝撃の事実に直面した所だった。 しかし、その事実をスタッフがいる前で口外するわけにもいかない。 「す…すいません…直ぐに出ます…」 そう言ったコーシンさんは、私のほうに名残惜しそうな目線を向けながら、出口に向かって行った。 「じゃあな、ミズハ。また来るから…」 そう言いながら、部屋を出ていくコーシンさん。 その後ろ姿が、先程までのコーシンさんとは違って見えた。 あのコーシンさんは、私の幼き日のヒーロー、ケータだったというのだから。 そして、コーシンさんは部屋を出て行った。 一日の仕事が終わり、一気に今日の出来事が頭の中を駆け巡る。 (ケータ…あのケータなんだよね…。全然分からなかった…) 今日来た、お客さんが、幼き日の私のヒーロー、ケータだった。 幼き日に、転校する事で離れ離れになってしまった彼が、この年になって再び、私の前に現れたのだ。 そして、そのケータに、河童のミズハが庄野茉祐里だという事が分かってしまった。 再会した事への嬉しさはある。 しかし、再会したのは、お客としてのケータと、河童のミズハの姿の私。 憧れの存在であった彼の目の前で、私は、河童スーツながらも、ほぼ裸同然の体のラインを見せてしまっていた。 なんとも恥ずかしい事である。 子供のころと比べ、成長したのにも関わらず、こんな胸のない貧相な体を晒したのだ。 せめて服を着ている状態を見られた方がましだった。 こんな、乳首からワレメまで晒している姿を見られているのだ。 よくよく考えると、恥ずかしくて死にそうなくらいな事だ。 この河童のミズハの姿、もともと見た目にはかなり恥ずかしい。 しかし、それは、マスクで顔が隠れているから…庄野茉祐里という存在でなくなるから、出来る格好だ。 それが、その恰好のまま、庄野茉祐里だとバレてしまった。 しかも、その相手が幼き日の初恋の相手。 一番、恥ずかしい状況でもある。 更にいうなら、ケータとは知らず、私は前回、彼がこの店に来た時には、手で奉仕し、射精させているのだから…。 想い返すと、色々と恥ずかしさが込み上げ来る。 (う…う…うわあぁぁぁぁぁ!!!恥ずかしいぃぃぃぃ!!恥ずかしすぎるぅぅぅぅぅ!!!) 私は、河童のミズハをやり出してから、初めて、自らの乳首と陰部のワレメを両手で隠した。 もう既に遅いのだが、なんとなく込み上げてくる恥ずかしさから、両手が自然とそこを覆ったのだった。 ・・・ その衝撃の出会いから数日が経った。 それでもやはり、私の頭の中からケータの事が離れないでいた。 こうして、ファンタジアで働いていても、ついケータの事を考えてしまう。 (…もし…次にケータがお客として来たらどうしよ…。お店のコンセプトだから、河童のミズハとして接しなきゃな…) (はっ!?もし来られたら、この姿をまた見られる事になる…!?そ…それも…恥ずかしい…) (でも…一度見られてるし…。きっと、こんな貧相な体だって分かたんだから、幻滅してるよね…) (しかも、私がこういう店で働いてるって、知っちゃったんだし…) (って事は…もう来ない可能性が高い…かな…) そんな事に頭を巡らせていると、あの時のあの出会いは、あの出会いのままで終わっているほうがいいかもしれないとさえ思い始めていた。 しかし、幼き頃より今まで、私の心の中には、ケータがいた。 そして、そのもう会うはずも無いと思っていた彼が、私の前に現れた。 そんな偶然の出会いが、頭から離れるはずもないのだった。 (はぁぁ~~~…。でも、結局、また出会った所で、こんな私じゃ、ケータには相応しくないし…。相手にされる訳もないか…) 【ピロン】 そして、またいつものようにお客が来た合図が鳴った。 準備をして、お客を迎え入れる。 (ん??この人、初めての人だな…) 表示されたお客は、どうやら初めての人のようだった。 【ガチャ】 扉が開き、お客が中に入って来た。 「いらっしゃい。お客さん、あたしのとこ来るの初めてだよね??」 いつものように、少し子供っぽく、お客に話しかける。 「そ…そう…は…初めてだよ…よろしく…」 そう答えたお客は、体格がしっかりしている割りには、少し、ハキハキとはしていない感じだ。 「あたしの名前は、河童のミズハ。よろしく」 「うっ…か…可愛い…な…」 見た目は大柄で体格がいいのに、ボソッとそんな事を言うお客。 「可愛いとか、ちょっと照れるなぁ…。あたしの手は、体液でヌルヌルだからさ。いろなところ触ってあげるよ。他のお客さんにも好評なんだ」 「い…いろんな所…」 「そうそう、だからとりあえず、服を脱いじゃってよ」 「わ…分かった…」 すると指示通りに、その場で全裸になっていくお客。 そして、そのまま私はローションにまみれた手で、お客の体を触って行った。 暫く触っていると、お客のほうも、慣れて来たようで、色々と会話をし始めた。 「んぅ…とても気持ちいいよ…ミズハちゃん…」 「でしょでしょ」 「それに…とても…魅力的だ…」 「魅力的??そんな事、言われたことないよ」 「本当だ…とても…可愛いと思う…。そのスレンダー体…光沢に満ちた体…手先や足先まで、全部、魅力的だ…」 「そ…そう…??そんな言われると、ホントに照れるって」 (こ…この人…ちょっと変わってるな…。私なんかに…そんな事いうなんて…) 私に向ける眼差しが、何か異質な感じがあって、少し引いてしまう。 私の体は決して魅力的と呼べるものではない。 とはいえ、前にエルフのサツキちゃんが言ってた、好みというのもあるから、そんなものかとも思ってしまう。 そして、私が手を進めていくと、そのお客は、小さな声でブツブツと独り言を言っているようだった。 「…っ…し…く……ぼ………く………」 小さい声過ぎて、何を言っているのかは分からないが、とにかくクレームとかでは無さそうなので、そのまま奉仕を続けた。 (さて…そろそろ…性器のほうをやる時間かな…) 体中を触り、最後に性器に奉仕をして、抜かなければならない。 その最終局面に移ろうとした、その時だった。 「ミズハちゃん…ミズハちゃん…可愛い…可愛すぎる!!」 【ガバッ!!】 「えっ!?」 今までそこに横たわっていたお客が、突然体を起こし、私の腕を掴んできたのである。 「ちょ…ちょっとお客さん、どうしたのさ!?」 私の腕を掴んだまま離さないそのお客。 (ど…どうしちゃったの!?突然!?) あまりに唐突な事に、驚いてしまい、体が固まってしまった。 「ミズハちゃん…なんて可愛いんだ…綺麗だよ…体…触らせてよ…」 「え!?」 そのお客は、もう片方の手を私の体に伸ばして来た。 「ちょ…ちょっと!!やめてよ!!」 私も掴まれていない方の手で、伸ばして来た手を払いのける。 「いいじゃないか…ちょっとくらい…。僕はもう…君の事が好きでたまらない…触りたくてしょうがないんだ…」 「ちょっと!!このお店じゃ、そう言う事は禁止されてるんです!!やめてください!!」 あまりの緊急事態に、子供っぽい口調の演技はすっかり忘れ、素の自分で、お客に注意をした。 「いいじゃないか…僕はお客だし…もう我慢ができないんだ…」 【ガシッ!!】 「きゃぁっ!!」 すると、もう片方の手もお客に掴まれてしまった。 両腕を左右に開かれ、捕らえられてしまう。 「ちょっと!!やめて下さい!!」 「可愛いよ…ミズハちゃん…綺麗だよ…」 そのお客の目が完全に陶酔しているかのように見える。 その瞬間、このお客がおふざけではなく、本気で、この行為に至っているのが感じられた。 「ちょ…いやっ!!やめて!!やめて!!やめて下さい!!」 部屋には監視カメラも付いているから、非常時にはスタッフが来てくれるはず。 それまで、なんとか逃げ切らなければならない。 しかし、相手は屈強な体格の男性。 その掴まれた手は、私ごとき力ではとても外す事など出来はしない。 (いやぁ!!離して!!離して!!離して!!) 必死に藻掻くも、全く振りほどける気がしない。 すると、お客はその顔を私の顔にグッと近づけて来た。 「あぁ~~ミズハちゃん…とても可愛いよ…僕のものにしてしまいたいよ…」 私の顔の前で、そう呟いたお客。 そのセリフ、その雰囲気に、背中に悪寒が走った。 そして、完全に捕らわれた両腕、その悪寒から逃げる事は出来ないのだ。 【襲われる…】 その言葉が、頭の中を通り過ぎていった。 「う…ぅ…い…いやぁぁぁぁぁぁ!!!助けてェェェェ!!誰か!!助けてェェェぇ!!」 私は必死の思いで、叫び声をあげた。 スタッフが来てくれるまでとか、そういう打算的な話しではない。 本能から、その悪寒に恐怖を感じ、助けて欲しいと自然と言葉が出たのだった。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 そして次の瞬間だった。 【ガチャ!】 【ドカッ!!】 何か大きな音がしたと思った瞬間、目の前にいたお客の姿が、一瞬のうちに消えていった。 (え!?な…何!?) 「おい!お前!!ミズハに手を出すな!!」 そのお客と私の間に現れた、一つの影…。 その人影は、私に背を向け、お客の方に向かって声をあげた。 (…この背中…この背中…私の知ってる背中…。なんども…なんども…私を助けてくれる…子の背中…) 「いててて…何なんだてめえ!!」 「こちらこそ。お前こそ、ミズハに何してくれんだよ」 「うっさい、邪魔するな!!」 「どうしてもってんなら、俺が相手してやるよ」 (…この背中…私の…私の…ヒーロー…) 「ケータ…」 そして、ケータはそのお客に手をあげる事無く、抑えつけ自由を奪った。 すぐにスタッフの人達が駆けつけ、そのお客を拘束し、事態は収まりを見せたのだった。 そして、ファンタジアの河童のミズハの部屋には、私とケータの二人だけが残された。 突然襲い掛かった、恐怖。 そして、その恐怖から脱したという安堵感からだろうか、私の頭の中は真っ白になり、呆然と座り込んでいた。 すると、ケータが私に話しかけてきた。 「大丈夫だったか?マユリ…」 その一言に、ようやく事態が落ち着いたという感覚が過り、何か張りつめていた私の緊張が、一気に解けていった。 その瞬間、悲しさや恐怖からくるものではない、心がほっとしたために溢れ出る涙が、私の目から零れ落ちていった。 「うぅ…こ…怖かった…よぉ…ぐすっ…怖かった…」 河童のマスクの内側で涙をこぼしながら、私は泣き声染みた声でそう言った。 「でも、もう大丈夫だ。安心しなよ」 その一言に、ぐっと心が安らいでいくのが分かった。 「ありがと…ホントに…ありがと…ケータ…」 「いいんだ。俺はお前を守るって約束したんだからさ…マユリ」 「!?」 その瞬間、私の頭の中に、ケータがよんだ名前…マユリという声が響き渡った。 気持ちが少し落ち着き、今の状況が一気に私の中に流れ込んでくる。 そう…今の私は、河童のミズハ…そして、ここはファンタジアの中。 「あっ…えっ…っと…その…なな…何か勘違いしてるんじゃない??あ…あたしは…河童のミズハだよ。コ…コーシンさんが言ってる名前は、前言ってた幼馴染の名前でしょ??」 完全に動揺しきっているが、出来る限り子供っぽく、河童のミズハとして演技を始めた。 そう…私は河童のミズハ…。 今のケータと昔のケータとは違う…。 幼馴染の頃のケータとマユリ…それは幼き頃の関係であって、今は違う…。 私は河童のミズハであり、ケータはそのお店のお客。 こんな魅力も何もない体…そして、私はこんなお店で働いているのだ。 中身がケータの幼馴染のマユリであってはいけないんだ…。 するとケータが私に向かって言った。 「俺は嬉しかったんだ…。まさか、あの時離れ離れになったマユリに再び会う事が出来るなんて、夢にも思わなかった」 「え…でも…あたしは…河童のミズハだから…」 「いないんだよ。俺の人生において、後にも先にも、俺の事を【ケータ】って呼ぶのは、ただ一人しかいない…。マユリ…君だけなんだ」 「え!?」 「だから、俺は君がマユリだって確信した。俺が、君の雰囲気の中にマユリを感じていたのも、それで、全て納得がいった。だから、マユリにまた会う事が出来たって思った時、嬉しくてたまらなかった」 (…ケータ…) 「あの時の約束…大人になっても、君を守るって…約束…。俺に約束を守らせてくれないか??」 「ケ…ケータ…」 真っ直ぐに私の方を見つめて、そう話すケータの眼差しは、とても真剣で嘘偽りないものであった。 そんな眼差しを向けながら、そう言われると、尚更、私の心には刺さり込む。 「で…でも…わ…私…ケータが思ってるような、魅力的な女の子になれてないから…」 「どこが??」 「だ…だって…身長もそんなないし…胸だって…ぜんぜん大きくないし…」 「そんなの関係ない。俺は背が低い方が好きだし、巨乳は嫌いだ。だからマユリは、凄く魅力的だと思う」 「か…顔だって…そんな…可愛くないし…」 「顔??勝手に可愛くないとか決めるなよ。俺はまだ、マユリの顔みてないし」 「え…だって…」 「じゃ、マスク取って、俺に見せてくれよ。それは俺が決める事だしさ」 「え!?マ…マスクを…!?え…そ…それは…ムリだよ…。だって…汗だくだし…お…お化粧もしてないし…」 もともと、化粧はほとんどしていないので、それ程変わらないが、汗だくだという所は間違いない。 「いいんだ。俺は、素のマユリが見たい。だから、化粧も何もしてなくていいんだ。だからマスク取って、俺に見せてくれよ」 「え…でも…汗だく…だし…」 「汗だく??それも、マユリが頑張った結果だろ。じゃあそれもマユリの魅力じゃない??」 「そ…そんな…事…」 「とにかく、俺はマユリにしっかり向き合いたいんだ。頼むよ」 「え…でも…」 こうやって押されると弱いのが、私の性格でもある。 そして、私相手に、こんなに押して来てくれる人がいなかったというの事実。 「マユリ…もう一度、俺としっかり向き合ってくれないか…」 「う…わ…分かった…ちょ…ちょっとだけ…だよ…」 そして、私はケータに押され、マスクを取る事となった。 (ん!?…ちょっと待って…そこまでやるには…普通のお客じゃなくて、【招待客】にしないとまずいんじゃ…) そう思い、招待客ボタンを押そうと、端末に目を向けると、何故か既に、【招待客モード】に入っていたのだった。 (え??もう…招待客になってる…。じゃ…じゃあ…いいか…) 何故、既に招待客モードになっていたかは分からないが、招待客モードになっている場合は、部屋の中で、何をしても問題ない。 (よし…) 私は意を決して、ミズハのマスクに手を掛けた。 そして、マスクの留め具を外し、マスクを前後に開いた。 後は、マスクを上へ抜き去り、頭から外すだけ。 これを外してしまえば、中身の私の顔を晒す事になる。 今の私の顔を見て、ケータが幻滅するかもしれない…。 でも、あそこまで、ケータに言われて、このまま顔を隠している訳にもいかない。 晒す事で、この関係も終わるかもしれない…しかし、このままで終わる訳にもいかない。 私は意を決し、自らに被せられていたマスクを脱ぎ去った。 【ズポッ…】 マスクが外れ、ゴムタイツの顔の部分だけが丸くくり抜かれた頭部が晒された。 顔中に汗が流れ落ちている。 そんな私の顔を凝視するように、ケータが見つめている。 (う…うぅ…やっぱり…ケータ…幻滅した…よね…) そう思いながら、私は視線を斜め下へと落として行った。 「思った通りだ…」 「え!?」 私の素顔を見たケータが言った。 私はその言葉を聞き、再びケータの方へと視線を戻した。 そこには、優しい笑みを浮かべたケータの姿があった。 「思った通り…俺が思い描いていた通り…マユリは、大人になっても可愛いままだ…」 「え…!?」 「よかった…思った通りの可愛さで安心したよ」 「え!?え!?…か…可愛い…!?」 「うん、可愛い」 「う…うそ…そんな…」 「嘘じゃないよ。ホントに可愛い」 「そそそ…そんな…」 大人になってから、そんな事を言われたこともないので、そんなに直球で言われると、どう反応して良いか分からない。 「スタイルも俺好み、顔もこんなに可愛い。どこに問題があるんだ??充分すぎる程、魅力的じゃないか」 「そ…そんな…私…」 「問題があるとすれば、君の魅力の部分じゃない。マユリが俺の事を【嫌いだ】【相手にしたくない】と思っているかどうかだ。だとしたら、俺も無理は言わない」 「そんな…私は…ケータの事…。私も…ケータの事…ずっと思ってきた…。だから…ケータに会いたい…会って話しがしたい…でも…」 「じゃあいいじゃないか、なんの問題もない。俺はマユリ…君の事が好きだ。離れ離れになって、開いてしまった空白の時間…。これからの時間を二人で過ごさせてくれないか?」 「こ…こんな私で…いいの…??ケータ?」 「マユリ…【君と】がいいんだ」 「ケータ…嬉しい…」 【ガバッ】 するとケータが私にグッと近づき、私の体を抱き寄せた。 そして、抱き寄せられた私はそっと目を瞑った。 目を瞑った私の唇に、ケータの唇が優しく触れた。 私のヒーローが、また私を守りに来てくれたのだった。 唇と唇が触れていると、私の額から汗が流れ落ちる感触があった。 (!?) こんないい雰囲気の最中、自分の顔が汗だくである事を思い出してしまった。 「ちょ…ちょ…ちょっと待って…ケータ!!」 私はケータを押しのけ、体を突き放した。 「ど…どうした??マユリ??」 「わ…私…そう言えば、顔…めちゃくちゃ汗だくだった…!!恥ずかしっ!!」 「そ…そうなのか??」 「そ…そうなの!!汗だくの顔は恥ずかしいの!!」 そう言って私は、すぐに河童のミズハのマスクを手に取り、再びそのマスクを被った。 【ズボッ】 そして、すぐに留め具をとめて、河童のミズハへと戻った。 「え!?また被っちゃうの??」 「さてと…あたしは河童のミズハ、しっかり仕事をしないと怒られちゃうからさ」 再び、河童のミズハの演技に戻った私。 「コーシンさんを満足させないといけないんだよね!!」 【ガバッ!!】 「うおっ!!」 そして、私はケータに飛び掛かり、ミズハのまま、ケータに覆いかぶさった。 「いただいちゃうよ…」 そして、ミズハのマスクを被ったまま、ケータの唇を奪った。 ケータの唇と触れるのは、ミズハのマスクの唇。 しかし、その隙間から伸びる、私の舌は、ケータの中へと侵入していく。 そして、ケータの服を脱がし、私は河童のミズハの体で、ケータと交わるのだった。 「じゃあ、私、ケータのお嫁さんになる」 「お嫁さん!?ま…大人になったらな」 「うん、約束よ」 「ああ、約束だ」 幼き日の私のヒーローは、今も私のヒーローになったのだ。 ・・・ 後日のファンタジア…。 そこには、河童の【ミズハ】の姿はもういない。 新しく河童の【ミズキ】というキャストが増えた。 その河童、ミズハと背丈は変わらないが、胸はミズハより、少しだけ大きいらしい。 とはいえ、河童の子供っぽさは変わらず醸し出す。 「今日はどこから触るんだい??」 -----------------------END--------------------------

異世界風俗店【ファンタジア】 Side Story 05 河童Side

Comments

コメントありがとうございます♪ そんな…泣いちゃうなんて…嬉しい限りのご感想です😂

ももぴ

個人的に好きなラストで泣いちゃいました😭

KK


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