SamuZai
ももぴ
ももぴ

fanbox


幼馴染の着ぐるみ美少女 Side Story ~藍那side~ 前編

※本作品はpixivで公開した、【幼馴染の着ぐるみ美少女】のサイドストーリーとなります。本編をお読みいただいた事を前提にしておりますので、詳細等が省略されております。 本編を一読頂いたあと、お楽しみ頂けると幸いです。 文字数がオーバーしたので、前編後編になります。 ・・・ 「え?なになに?それ、【夏希(なつき)】の写真??」 私は、幼馴染で高校も同じの二人、【奏太(そうた)】と夏希の二人がスマホを見ている所に割って入った。 「ちょっ…【藍那(あいな)】!今、写真確認してるんだから邪魔するなよ」 「べ…別に邪魔しようとしてる訳じゃないでしょ!私も夏希の写真が見たいってだけ」 「な…なら、【私も見せて】って言えばいいじゃねぇか」 「今から言おうとしてた訳だし」 「なっ…お前なぁ…」 「まぁまぁ…二人とも、そんな熱くならないでよ。一緒に見ればいいよ。ねっ、奏太、藍那ちゃん」 「う…分かった、一緒に見るか?」 「う…うん…」 相変わらず、すぐにこうなってしまう私達を夏希がうまく纏めてくれる。 そして、私たちはスマホを覗き込んで写真を見た。 そこに映っていたのは、いわゆる【美少女着ぐるみ】の写真。 中身は夏希。 夏希は男子だけど、背も低く、私と変わらない。 そして、体つきもかなり華奢で、こうやって着ぐるみに包まれてしまうと、全く男子だとは分からないくらいだ。 夏希が着ぐるみを趣味にしているのは、私達3人しか知らない。 実際の所、私も知ってはいたが、写真を見るのは初めてだった。 (ぅ…凄く可愛い…。お人形さんみたい…。この中に夏希が…) 私は、その写真を見て、何か胸がドキドキとしてしまった。 なんだろうか…?その美少女の着ぐるみを着る事で、男子である夏希がこんなにも可愛く映り込む。 幼馴染でいつも見ている夏希が、こうなるんだ…という衝撃。 そして、何か胸に引っ掛かる思いが込み上げていた。 「ふ~ん…可愛いね…。話には聞いてたけど、初めてみた~。凄いね…夏希…ちょー可愛いじゃん」 「まあ、俺の写真の腕でもあるんだがな」 「何言ってるのよ、これは誰が撮っても、可愛く撮れるわよ」 「何を~~~!!」 「まあまあ二人とも」 「まっ…夏希もかなり可愛いとは思うけど、やっぱり他の女子には見られないほうがいいわよ。私は幼馴染だし、こういうの可愛いって思っちゃうけど、変に思う子もいるだろうから」 「大丈夫だよ。こんな趣味持ってるの、奏太と藍那にしか言ってないし」 私はその写真に少し魅入ってしまったが、やはり、中身が男子という事を考えると、女装癖のように捉えられる可能性も高い。 他人には、あまり言わない方がいいと思う。 「んじゃ、もちろんの事だけど、俺たちだけの秘密という事で」 「分かってるわよ」 「あっ、二人とももう授業が始まるよ。早く戻らなきゃ」 「おうっ!」 「うん」 (夏希の着ぐるみ…可愛かったな…) ・・・ 初めて夏希の着ぐるみ姿を見て衝撃を受けてから暫く経った。 ある日、私は学校で、夏希と二人きりになる時があった。 (夏希と二人か…ちょっと…聞いてみようかな…) 私は思い切って、夏希に質問してみる事にした。 その内容は、あの写真…夏希の着ぐるみの写真を見てから、ずっと胸にモヤモヤと残っている気持に沸き起こる疑問だった。 「夏希…ちょっと聞いてもいい??」 「なに??藍那ちゃん」 「あのさ…着ぐるみに包まれるのってどんな気持ちなの??」 「え!?どんな…気持ち??」 「うん、夏希は着ぐるみを着るのが好きな訳でしょ?って事は何か…気持ちがいいとか…そういう気持ちがあって着ぐるみを着てるのかな?って思って」 すると、夏希は少し首を傾げながら、考え始めた。 「う~ん…っとね…。着ぐるみに包まれると、自分ではない他の存在に変われるっていう…変身願望かな…。それが、可愛い美少女着ぐるみだって事で、鏡に映った自分の姿を見た時に、これが自分なの??って驚いたからかな…。女装とかと違って自分の存在は全く消えちゃうし、まるで【お人形さん】になれたような、感覚かな…」 「へぇ…お人形さんみたいにね…」 「それで、一度身を包んでみたら、もうやめられなくなっちゃって…。あっ!?ゴゴ…ゴメン!!気持ち悪いよね…こんな事言ったら…」 しっかりと理由を話したあと、急に焦り始める夏希。 「ううん。全然、気持ち悪くなんかないよ。やっぱり、可愛い存在になりたいって願望はみんなあるし。私だって、夏希の写真見た時、こんなお人形さんみたいになりたいって思っちゃたりしたしね」 思わずそんな言葉が口から零れた。 そして、その瞬間気が付いた。 (そうか…あの写真を見た時から残ったモヤモヤ感…。私…私も、写真に写ったお人形さんみたいになりたい…って心のどこかにあったんだ…) その思いがそこにあったのに、自分で認識出来ていなかった気持ち。 それが、夏希との会話で、表に出て来たのだ。 「え??じゃ…じゃあ…藍那ちゃんも着ぐるみ…着てみる??」 「え!?え!?わ…私が…??着ぐるみを??」 あまりに唐突な質問すぎて、焦りに焦ってしまう。 「うん、そうすれば、お人形さんみたいになれる感覚が分かるよ」 「お…お人形さんみたいに…なれる…」 その言葉に、私の胸の鼓動が、どんどんと早くなっていった。 「藍那ちゃん、僕と背格好もほとんど変わらないから、問題なく着れると思うし、藍那ちゃんなら、かなり可愛い仕上がりになると思うよ」 「私が…あんな可愛く…なれる…」 この前見た、夏希の着ぐるみ姿の写真が頭の中に浮かんで来た。 (私が…あんな可愛い…お人形さんみたいに…) ドクンドクンと心臓の鼓動が響き渡る。 自分があの着ぐるみの中身だと想像すると、なんだか胸の鼓動が収まらない。 これが変身願望なのだろうか…? 夏希の提案に、私の胸は踊り始めていた。 「あっ!?でも…僕が着た着ぐるみとかだと嫌かな??タイツも衣装も洗濯してるから大丈夫だと思うけど…」 「う…うん…だ…大丈夫。夏希が着たものに、なんの抵抗もないから。あ…あの…き…着ぐるみ、着させてもらってもいいかな??」 「もちろん!趣味を共有してもらえるのは嬉しいしね!」 「あ…ありがと…」 そして、私は夏希の着ぐるみを着させて貰う事になった。 ・・・ そんなある日、休日に私は夏希と約束し、夏希の家で着ぐるみを着させてもらう事になった。 そして、私は今、夏希の家に夏希と二人きりでいる。 夏希の両親は海外などに働きに出ているため、夏希はほぼ一人暮らし。 そして、その家に、男女が二人きり。 それだけを聞いたら、危ない状況ではあるが、夏希は幼馴染だし、夏希の性格を考えれば、突然、私を襲うような事は絶対にしない。 なので、私も無警戒でここに来たのだった。 「えっと…じゃあ…何から始めればいい??」 「うんとね…まずは全裸で、この肌タイツを着て」 そう言って、夏希は私に肌色の全身タイツを手渡して来た。 「ぜ…全裸で着るの??」 「ラインが透けないようなインナーなら下に着てもいいんだけど、普通のブラとかだと、肌タイツの上に、はっきりとインナーの形が出ちゃうんだよね」 「インナーのライン??」 「そう、着ぐるみにとっては、この肌タイツが肌だから、その下に何か着てるってのはおかしいでしょ??だからボコボコしないようなインナーか、裸じゃないとおかしいんだ」 確かに、夏希が言う通り、肌タイツが皮膚だとすると、そこがボコボコしているのはおかしい。 「ちなみに夏希が着る時も全裸なの??」 「ううん。僕は男だからさ…専用のインナーを着るんだ」 「専用のインナー??」 「そう、男だとついてるものもついてるし、逆に胸はないから…」 「そっか…。その専用のインナーはボコボコしないの??」 「そうならないように、端っこのほうが処理されてて、段差が目立たないようになってるんだ」 「ふ~ん」 「でも藍那ちゃんは女の子だから、そんなの必要ないでしょ」 「そっか…そういう理由ね…よしっ!!」 そして理由を聞いた私は、そのまま、自らの洋服に手を掛け、服を脱ぎ去ろうとした。 「ちょ!?ちょっと!!待って!!藍那ちゃん!!」 「え??」 その行動を遮る夏希の言葉に、私はピタッと動きを止めてしまう。 「あ…藍那ちゃん、いくら幼馴染とはいえ、ここで脱ぐのは問題になるから…隣の部屋で着替えて来てよ…」 夏希が顔を真っ赤にしながら、そう言った。 確かに、今の勢いだと、言われた通りに、この場で全裸になっていた。 「あっ…そっかそっか…ゴメンゴメン…。夏希だと、ついうっかりしちゃって…危ない危ない…」 「僕だとうっかりされるってのも、なんだか釈然としないけど…。とにかく隣の部屋で着替えて来てよ」 「う…うん…分かった…」 そして、私は隣の部屋に行き、着ていた洋服を全部脱ぎ去った。 手には肌色の全身タイツ、そのタイツに視線を向ける。 (これを今から着るんだ…どんな感じなんだろ…) もちろん、全身タイツなど初めての経験で、いまいち想像がつかない。 (よしっ) そして私は、タイツの背中のファスナーが開いた部から足を滑り込ませていった。 自らの足と全身タイツが擦れ合う。 (あぁ…なんか…スベスベで気持ちがいい…) サテン地のようなスベスベとした感触の肌タイツ。 普段履くようなストッキングとは、また違う…不思議な気持ちよさが伝わってくる。 そして、両足を入れ、肌タイツをたくし上げ、体を覆うと共に、両腕をタイツへと滑り込ませる。 頭部にあたる部分に自らの頭を入れ込むと、顔の部分だけが、丸くくり抜かれており、そこから、私の顔が覗く。 (ん…っと…これで、背中のファスナーを閉めればいいのね…) 比較的、体の柔らかい私は、自分で背中のファスナーを閉める事が出来そうだ。 【ジーーーーーー】 背中のファスナーを上まで上げて、髪の毛が挟まらないように、閉じ切った。 (んぅ…これ…) ファスナーを閉じ切ると、一気に全身が軽く締め付けられるような感触が伝わり、体中が【覆われた】という感覚が湧き上がる。 その覆われる感覚…なにか、外界と遮断され包み込まれるような、不思議な感覚。 少し、心地よいような気もする…。 視線を自らの体へと落とすと、そのタイツは伸縮性が高いのか、締め付けにより、綺麗に私のボディラインをトレースしている。 (凄いな…このタイツ…胸の形もくっきり出てる…。ってか…乳首の位置も分かっちゃうな…) そのピチピチさに、少し恥ずかしさも感じるが、まあ…部屋には夏希だけだし、それ程問題はないだろう。 「これでオッケーっと…」 肌タイツを着終えた私は、夏希がいる部屋へと戻って行った。 【ガチャ】 「準備できたよー」 「ん!?」 全身を肌タイツ一枚で覆った私が、部屋の中に入って行くと、そこにいた夏希が、一瞬、私に視線を向けたあと、すぐさま、視線を横に外した。 「どうしたの夏希??」 「どうしたもなにも…。よくよく考えれば分かる事だけど…藍那ちゃんの…その…体が…はっきり…分かっちゃう…から…」 夏希が視線を逸らしたまま、しどろもどろにそう答えた。 「確かに恥ずかしいけど…。夏希なら見られてもいいかなって思って。私はそんなに気にしないよ」 なんだろうか…幼馴染だからか、夏希が少し中性的だからか、実際にそれ程、抵抗感はない。 いや…中性的なところが強いだろう。 幼馴染とはいえ、そこにいるのが奏太だったら、とても恥ずかしくて見せられない。 「また…僕なら…って…それはそれで心外だけどな…。と…とにかく、テーブルの上に、ショーツがあるから、それを履いて」 「うん分かった」 そして、テーブルの上に広げられた衣装のうち、まずショーツを手にし、それを履いていく。 なんか不思議な感覚だ。 もう既に、私の体には一枚の布に包まれて、全てが隠されているのに、その上から履くショーツ。 普段は生の体に履くものだから、少し違和感を覚える。 「出来たよ、ブラは??」 「衣装のワンピースが、胸元までしかなくて、肩が丸出しになる衣装だから、普段、僕が着る時は、ブラは着けないんだ。肩ひもが出ちゃうし。藍那ちゃんが肩ひものないブラを持ってるか、肩ひもが出ても良ければ、付けてもいいけど…」 相変わらず視線を私に向けないまま、話す夏希。 夏希の初心な感じが可愛らしい。 「そっか、じゃあ私もブラ無しでいいや」 「そう。それじゃ、次はワンピースかな?着方は分かる??」 そう言われ、置いてあるワンピースに手を掛けた。 見た感じ、背中にファスナーがあり、普通に着て背中を閉めればいい感じだろう。 「大丈夫、じゃあワンピース着るね」 そう言って私はワンピースを着て、背中のファスナーを閉じた。 (ん??この衣装…サイズ…ピッタリだ…) そのワンピースのサイズ、着丈や胴回りの感じも、私にジャストフィットする。 (これ…普段は夏希が着てるやつだよね…って事は、私と夏希はホントに体型が一緒って事??) 背丈は確かに見るからに私と同じくらいだ。 しかし、ウエスト等まで同じくらいという事は、なんだか切ないものを感じる。 (くぅ…夏希とはいえ、男子は男子…。私だって、それなりに細いほうだけど、夏希が細すぎるのよ!!) と、一応、心の中で突っ込みを入れた。 「着れたよ」 私がそう言うと、ようやく夏希が私のほうに視線を戻した。 すると、私を見た夏希の表情がパッと明るくなった。 「凄いよ藍那ちゃん。サイズもぴったりだね。めちゃくちゃ似合ってるよ」 「そ…そう…ありがと…」 ピッタリと言われると、それはそれで、切ないものもあるのだが…。 「後はこれ…マスクを被るだけだよ」 そう言って夏希が、可愛らしい顔をした着ぐるみのマスクを取り出した。 そのマスクに視線を注ぐ。 (可愛い顔…本当にお人形さんみたい…。これを私が被るの…?これから私がこの子になるの…?) マスクを見ながらそう考えると、胸がドキドキとしてきた。 これを被れば、私は私と言う存在ではなくなる。 これから自分が変わっていくという事に、胸が高鳴っていく。 「入口から頭を入れて、後ろのファスナーをするだけだから。でも、最初は自分でファスナーの開け閉めは難しいと思うから、僕が手伝うよ」 そう言いながら夏希が着ぐるみのマスクを手渡してきた。 そのマスクを受け取り、私は自らの頭部の上へとマスクを持ち上げた。 ゆっくりと、そのマスクを降ろしていく。 頭頂部がマスクの中へと入る。 今から本当に、この着ぐるみの美少女になるんだという実感が湧いてきて、胸の鼓動が収まらない。 だんだんと、マスクを下ろし、自らの頭部をマスクの中へと包み込んでいった。 そして、私の頭は着ぐるみのマスクに完全に包まれたのだった。 「じゃあファスナーを閉めるね」 そう言って夏希がマスクのファスナーを閉めてくれた。 【ジーーーー】 「で、ファスナーをしっかりと隠して…っと。よし、これで完成だよ!」 そう言いながら、夏希が私の肩をポンッと軽く叩いた。 (完成…あっ…やっぱり…見にくいんだ…) 初めて体験する、着ぐるみのマスク。 目の部分にあるスリットのような所から、外の景色が見えるが、やはり、何も被っていない状態に比べれば、見えにくいのは当たり前だ。 思ったより、マスクの内部は狭く、中に余裕な空間はあまりない。 吐き出した空気が、少しマスクの中に籠っているような気もする。 頭を左右に振ってみると、マスクの中が狭くジャストフィットしているせいか、しっかりと私の動きについてくる。 「夏希、このマスクって簡単には外れないよね??」 「うん、しっかりと頭部をホールドするタイプで、首元はかなり細く出来てるから、ファスナーを開けない限り、絶対に外れないよ」 つまり、意図的にファスナーを開けない限りは、私の頭は包まれたママという事だ。 「それじゃ、鏡で自分の姿を見てみなよ」 そう言って、夏希が姿身を用意してくれた。 (えっ!?これが…私…!?) その鏡に映っていた少女。 それは、夏希の着ぐるみ写真を見た時に映っていた少女、そのものだった。 この前見た写真は、夏希の写真。 しかし、今、この鏡に映っているのは、紛れもなく私…藍那なのだ。 とはいうものの、もうそこに映っているのは、着ぐるみの美少女であり、藍那ではない。 そこに藍那という存在は全く露出していないのだ。 「凄い…これが私なんだ…自分で言うのもなんだけど…可愛い…」 思わず感想が口に出てしまった。 「そうだよ、それが今の藍那ちゃん…。いや、もう藍那ちゃんではないんだ。っと…それと、着ぐるみを着たら、もう声を出さない事。これは僕も必ず守っているルールなんだけど、声を出したら、中身の存在が露出したって事になるから、それはタブーなんだ」 そう言われ、私は咄嗟に両手を口元に当てた。 (そっか…そうだよね…。もう私という存在は無いものだから、私の声が出たらおかしいよね…) 「うんうん、結構センスあると思うよ。その両手で口を抑える仕草が自然と出るなら、凄いと思う」 (えっ!?そうなの??何も考えてなかった…) 「少し、鏡を見ながら、自分をしっかり見るといいよ」 そう言われ、私はゆっくりと鏡を眺める事にした。 そこには、可愛らしい美少女の人形のような姿が映る。 私が小さく手を振ると、同じように振り返して来る美少女。 つまり、間違いなく私自身の姿。 (可愛いな…私が…こんな可愛い姿になれるんだ…) その姿に少し見惚れてしまう。 そして、着ぐるみの感触をあらためて感じる。 全身タイツに包まれた体。 唯一露出した顔の部分は、マスクを被る事により、完全に覆われた。 全身を包み込まれるような、この感じ…。 変身願望を満足させるのと動揺に、何かに包み込まれるという不思議な気持ちよさもそこにあった。 視界は良くないものの、すぐに慣れ、周りをしっかりと把握できるようになった。 次第に、その見にくい視界が、今の私の視界だと感じ始め、見にくいと感じなくなる。 息も籠るものの、だんだんとそれに慣れて来たのか、苦しいという感覚はない。 暫くしているうちに、着ぐるみを着ているのが体に馴染み、まるで違和感が無くなり始めた。 (たしかに…これはハマるかも…) そう思っていると、夏希が声を掛けて来た。 「だいぶ慣れて来たみたいだね。エアコン掛けてても、着ぐるみを着ると、脱いだ時、喉が乾くから、ちょっと飲み物を買いに行ってくるね。ゆっくり堪能してていいよ」 夏希にそう言われ、私は無言で大きく首を縦に振った。 そして、夏希が部屋出て行き、私は独りぼっちになった。 (ふぅ~~~凄い…これが着ぐるみかぁ…) 私は自分が着ぐるみに包まれている事に満足しながら、夏希のベッドの上に転がった。 (そういえば、夏希がマスクのファスナーをしてくれたけど、自分で開けられるのかな??) そう思って、自らの高等部に手を回した。 (ん??あれ??ん??…) しかし、ファスナーのつまみらしいものが手に当たる感触が無い。 どうやら、ファスナーを閉めたあと、何か見えないように覆って隠してあるのだろう。 構造がしっかりと分かっていない私では、自分で開けられそうにない。 (まっ…夏希に開けて貰えばいいから…いいか…) そんな事を考えながら、私はベッドの上でゴロゴロとしながら、着ぐるみに包まれた自分を堪能していた。 そんな時だった。 【ガチャ】 (あっ、夏希が帰って来た) 扉が開き、夏希が返って来た…と思ったら、あまりにも予想外の展開が訪れた。 「遊びに来たぜ~~」 そう言って、部屋に入って来たのは、夏希ではなく、幼馴染の奏太だったのだ。 (そそそ…奏太!!!!なな…なんで奏太が来るのよ!!) あまりにも想定外の人物の登場に、動揺が隠せない。 その動揺を隠せないまま、私は固まる様にベッドの上に座っていた。 (どうしよ…どうしよ…どうしよ…どうしよ…) すると、奏太がベッドの上に座る私の方に視線を向けた。 (うわっ…やばい…ばれる!?) 「なんだ、こんな時間から、着てたのか」 そんな私を見ても、驚きもたいしたリアクションもなく、そう言い放った奏太。 (え!?) 私はその奏太の反応に驚いてしまい、思考が一瞬固まった。 私が着ぐるみを着ているという事が、奏太にバレたと思ってしまった。 しかし、まるで、気にもしていない様子で、当たり前のような反応の奏太。 「この前、読んでた漫画の続き、読ましてもらうな」  そう言った奏太は、何食わぬ素振りで、本棚へ向かって行った。 (え…バ…バレて…ない…??) 少し冷静になり、状況を考えた。 よくよく考えてみると、私は今、着ぐるみに全身を包まれているのだ。 突然の出来事に、パニックになりそうだったが、藍那という存在は露呈していない。 そして、ここは夏希の部屋。 奏太も、夏希が家で着ぐるみを着ている事など、日常のように知っている。 あの奏太の反応…つまり、奏太はここにいる着ぐるみの中身を夏希だと思っているということなのだ。 (そっか…私の事…夏希だと思ってるんだ…) そして、ベッドの上で固まる私をよそに、奏太はテーブルに座り込み、漫画を読み始めた。 二人だけの無言の空間が続く。 もちろん、私は着ぐるみを着ているのだから、喋る訳にはいかない。 というより、喋ってしまったら、中身が私だとバレてしまう。 私が、着ぐるみを着たいという願望があったという事を奏太に知られてしまう。 私自身、夏希のそういう趣味は認めているが、奏太が女子である私に対して、受け入れてくれるか分からない。 無言の空間…マスクの中に自分の心臓の音が響き渡る気がする。 着ぐるみを着て、外に逃げ出すわけにもいかない。 しかし、ここにいては、バレてしまうかもという恐怖感はある。 どうしていいのか分からずに、ただ心臓の鼓動を高鳴らせながら、奏太の様子を傍観していた。 ドキドキの時間が流れていく。 そして、奏太が漫画を一冊読み終わった。 「あぁ~面白かった。続きが気になるわ~~」 そう言いながら奏太は立ち上がり、次の巻を本棚に取りに行こうとした。 その瞬間、奏太が一瞬立ち止まり、私の方に視線を向けた。 (え!?何!?なんか変??) 一瞬だけ向けられた視線ではあったが、あからさまに私に向けた視線。 すぐに本棚のほうに向かって行った奏太。 しかし、なんとなくその視線には、意味が感じられた。 (何??何??何か…私…変なことした??) すると、奏太は再び漫画を手にし、テーブルの所で読み始めた。 そして、漫画を読んでいる最中も、何回か私の方へ視線を送る奏太。 先程までとは様子が違う事はあからさまだった。 (うぅ…なんか…気にされてる…バ…バレた…のかな…) ドキドキとしながら、漫画を読む奏太を観察する。 すると、暫く漫画を読んでいた奏太が、いきなり、パタンと漫画を閉じた。 そして、立ち上がり、私の方へと向き直した。 (え!?何??) その奏太の行動に、体がビクッと反応してしまった。 すると私の方に向いた奏太が言った。 「夏希…お前…何か俺に隠し事してないか…??」 (え!?あっ…) 隠し事といえば、間違いなく隠し事だ。 今、奏太は目の前にいる着ぐるみの事を夏希だと思っている。 しかし、実際の中身は私なのだ。 騙すつもりがある訳ではないが、隠したい事実というのは正解なのである。 私は片手を前に出し、無言でその手を横に振り、【ないない】とアピールした。 しかし、実際に隠し事をしている私は、あからさまに動揺が隠せない。 すると、そんな私の様子を見て奏太が言った。 「ほほう…その反応を見せながら、隠し事は無いと…。本当に何も隠してないか??」 (だめだ!動揺が完全にバレちゃってる!!) しかし、声を出す事を出来ない私は、必死にそれを否定するしかない。 同じジャスチャーで、必死に隠し事はないとアピールする。 「その動揺っぷり…確実に何かあるな…」 しかし、その動揺を見抜く奏太。 そう言いながら、奏太が私の方へと詰め寄って来た。 どうする事も出来ない私は、ベッドの上で後ずさりをする。 (やばい!!バレた!?) すると、奏太が言った。 「ん!?ま…まさか!俺がこの前貸した漫画を無くしたとか!?」 (!?バ…バレてない!?) 今、奏太は完全にここにいるのが夏希だという体の質問をした。 つまり、未だ、奏太はこの着ぐるみが夏希だと思っているという事。 しかし、借りた漫画の事など、私に分かる訳はない。 (そんなの分からない!!って多分夏希はそんな事しないし!!ち…違うと思う!!) 私は、答えの分からない質問に必死に違うというジェスチャーで返す。 「怪しいな…その反応…」 しかし、あからさまな動揺を見せる私に疑念を解消させない奏太。 それはそうだ、中身が違うという事実を隠しているのだから。 (やばい…バレてはいないけど…完全に別の意味で疑われてる…) すると、奏太はグッと私の方に近づいて来て言った。 「ふ~ん…意地でも認めない気か…よし…それじゃあ…力尽くで答えさしてやる!!」 (え!?) 【ガバッ!!】 その瞬間、奏太が私に襲い掛かって来たのである。 (きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!) あまりにも突然の出来事に、声を上げてしまいそうになったが、必死に抑え込む。 (いやぁぁぁぁぁぁぁ!!) そして、私は襲いかかって来た奏太から必死に逃げようとした。 手を掴まれたり、押し倒されたりして、もみくちゃになる。 奏太は私の事を、夏希だと思っているので、容赦はない。 【ゾクッ…】 (…んぁ…) その瞬間、私の中に不思議な感覚が通り過ぎた。 何か、襲われる事への恐怖のようなものでもあり、かつ、何か興奮するような感覚。 それが何かは分からなかった。 運動で鍛えている男子の奏太に、女子である私が敵うはずも無い。 私が必死に逃げようと、うつ伏せになった瞬間、奏太が私の上に跨るように乗っかり、私を抑えつけた。 (んぐっ…) うつ伏せのまま腰の当たりに乗っかられ、完全に抑えつけられた私。 どんなに手足をバタつかせても、奏太はビクともしなかった。 (あぁ…ダメだ…完全につかまった…) 「さて…どうしても話さないというなら、意地でもはかせてやろう」 それでも何とか逃れようと、体を藻掻かせるが、やはりビクともしない。 「降参するなら今のうちだぞ、早く喋ってしまえ」 (しゃ…じゃべれないし!!言えるわけないし!!むりぃぃぃぃぃ!!) 声を出す事が出来ない私は、必死に頭をブンブンと横に振り、その言葉に反論する。 「よし、じゃあお望み通り、喋りたくなるくらいお仕置きをしてやるよ」 (おっ…お仕置き!?な…何?それ!?) 背中の方に跨る奏太の口から、お仕置きという言葉が聞こえた。 「よ~し、くすぐりの刑だ!!」 (く…くすぐり!?) その奏太の言葉が聞こえた瞬間だった。 (うひゃっ!ひひひひひ!!!) 抑えつけられたまま、脇腹がくすぐられ始めたのだった。 私はくすぐりに弱い。 (ひひひひっ!!くすっ!!くすぐたいぃぃぃぃ!!) 着ているワンピースの上からのくすぐり攻撃ではあるが、くすぐりに弱い私には、たまらない攻撃である。 そのくすぐったさから、体を悶えさえる。 しかし、腰を抑えつけられた私の体は逃げることが出来ない。 たまらず、手で奏太の手を跳ねのけようとするが、こちらの体勢が悪いのと、力の差で全く跳ねのけることが出来ない。 (くすぐったい!!くすぐったい!!やめてっ!!やめてぇぇぇぇぇぇ!!) 「ええい!!これでもか!!」 思わずくすぐったさに声が出そうになるが、必死に声が出るのを堪え続けた。 暫く続いたくすぐり攻撃だったが、ピタッと奏太の手が止まった。 (と…止まった…はぁ…はぁ…はぁ…) 執拗なくすぐり攻撃に、恐ろしく息が上がる。 着ぐるみのマスクを被っているせいで、その呼吸がマスク内に籠り、苦しさが倍増する。 (苦しい…苦しい…はぁ…はぁ…はぁ…) すると、くすぐりの手を止めた奏太が言った。 「そうか、これでも言わない気か…じゃあ…」 【ジーーーー】 その瞬間、聞きなれた音がした。 (ん!?この音…ファスナーの音??) マスク内に自らの呼吸音が響き渡り、鮮明に聞こえた訳ではないが、その音がファスナーの音だとは認識出来た。 (何??どういう事!?) そんな疑問を浮かべた瞬間だった。 私の腰に乗っていた、奏太の重さが一瞬なくなり、体を抑えつける力が感じられなくなった。 「とりゃ~~~!!」 (えっ!?) その次の瞬間、体から何かが引っ張られる感触が伝わって来た。 そして直ぐにまた、腰部に奏太の体重が乗っかってくる。 (んぐっ!!) あまりにも唐突かつ、一瞬で起きていて、何が起こっているのか分からない。 すると、両足が何かに纏められながら、引っ張り上げられた。 (何!?) しかし、引っ張り上げられた両足も、すぐに自由を取り戻した。 (えっ!?えっ!?えっ!?) 何が起こっているのか分からずにいると、私の視界にとんでもない物が映り込んだ。 先程まではそこになかった物…。 それは、私が着ているはずのワンピースが、ベッドの上に落ちているのだ。 (えっ!?ワンピース!?あれっ!?) 着ているはずのワンピースが、そこに落ちている。 私は咄嗟に自らの脇腹のほうに手を伸ばした。 (うそっ!?) 脇腹に到達した自分の指先。 その指先が当たる脇腹は、あからさまに肌タイツ一枚しかない事が感じ取れた。 (えっ…うそ…まさか…ワ…ワンピースを…脱がされた…) ワンピースを脱がされてしまうと、その下には、肌タイツ一枚とその上に履いたショーツのみ。 その肌タイツの下には何も着ていない。 ぴっちりとした肌タイツは私の体をきっちりとトレースしている。 そして、その背中を眺めるように、私に跨る奏太。 その事実を認識した瞬間、恐ろしい程の恥ずかしさが込み上げて来た。 (いやぁぁぁぁぁぁ!!めちゃ恥ずかしいぃぃぃ!!そんなっ!!そんなあぁぁぁぁ!!) 全身を肌タイツに包まれているが、感覚的には、全裸を見られているような羞恥心が襲う。 しかし、どれだけ恥ずかしかろうが、体を抑えつけれられいる私は、奏太の視線から逃れる事は出来ない。 「よし、今度は、もっとダイレクトに行くからな。謝るなら今だぞ…」 (え!?ダイレクトに…って…まさか…この状態で…くすぐられるの??いやぁぁぁ!!そんなの!そんなのムリに決まってる!!) 私は声を出さずに必死に頭を左右に振り、やめて欲しいと懇願した。 「それじゃ、続きのくすぐりの刑だ!!」 (いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!) そして、くすぐりの刑が続行された。 先程のワンピース越しの感触とは訳が違う。 もちろん、ワンピース分だけ、奏太の指と私の体の間は薄くなっている。 そして、スベスベ感のある肌タイツが、その指先の感触を、より強烈にする。 (んひぃぃぃぃぃ!!むりぃぃぃぃぃ!!こんなのっ!!こんなのっ!!耐えられないぃぃぃぃぃ!!) そのくすぐったさから、暴れまわる体。 しかし、奏太ががっちりとホールドしているため、そこから動く事は出来ない。 (んああぁぁ!!出ちゃう!!声!!でちゃうぅぅぅぅ!!) 頭が狂いそうなくらいくすぐったいのだが、声を出したら終わりだ。 そんな状況でもなお、必死に声だけは堪え続けた。 「ほらほら、どうだ!くすぐったいだろ!!」 そんなくすぐり攻撃の最中、奏太の手が私の胸に当たった感触があったが、今の私には、そんなところに気を回していられる余裕などなかった。 あまりのくすぐったさに、正気を保つのが必死なレベルだ。 (これっ!!むりっ!!いやぁぁぁぁぁぁ!!やめてぇぇぇぇ!!死ぬぅぅぅぅ!!) 肌タイツ一枚の上から、絶妙なソフトタッチで襲い掛かる奏太のくすぐり攻撃。 そのくすぐったさに頭の中が持っていかれないように耐えるのと、声を出さないように耐えるので、精一杯であった。 それに耐えるのに精一杯で、奏太の手を止めようと抵抗する余裕もない。 (くすぐったすぎて!!死んじゃうぅぅぅぅ!!いやぁぁぁぁぁぁ!!) おしっこを漏らしてしまいそうな程の、壮絶なるくすぐったさは、暫くの間、私を襲い続けた。 (んあぁぁぁぁ!!!ムリィィィィ!!!) そして、私の限界を迎えようとしてた頃、奏太の手が再びピタッと止まった。 (んはっ…!?止まった!?) くすぐり攻撃が止まり、襲っていた壮絶なくすぐったさから解放された。 しかし、それだけのくすぐりを受けた体は、恐ろしい程に消耗し、大きく呼吸も乱れる。 「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」 (はぁっ!はぁっ!はぁっ!!苦しい!苦しい!!死ぬ、死んじゃう!!息が…息が…はぁっ!はぁっ!はぁっ!!) 「うぬ…かなり強情だな…。かくなる上は、違う方向から責めるしかないな」 くすぐり攻撃に耐え、消耗しきった体、荒れた呼吸。 動く力が失われてしまったのではないかと思う程に、体に力が入らない。 奏太が何かを言ったのは聞こえたが、内容を聞き取る余裕すらない。 (はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!苦しい!!苦しいよ…) 着ぐるみのマスクがこんなに苦しいとは想像もしていなかった。 いや、本来、普通にしているだけなら、こんな事にはなっていないだろう。 恐ろしい程のくすぐり攻撃を受けて、体を悶えまくらせて、呼吸も大きく乱れたから、こうなっているのだろう。 すると、また奏太の声が薄っすらと聞こえた。 「よし、それじゃあ…最終手段を使ってやる!!」 ・・・後編へ続く

幼馴染の着ぐるみ美少女 Side Story ~藍那side~ 前編

More Creators