美少女転校生の自覚のない秘密 1話先行公開版 ※切れて抜けていた部分を含めました
Added 2025-11-26 10:40:23 +0000 UTC現代から少しだけ離れている未来の時代。世間ではまるで人間のようなスムーズな動作や振る舞いを披露し、技術力を示すアンドロイドが注目を集めており、人類のテクノロジーはここまで発展を遂げたかと話題になっていた。 しかし、あくまでそれらは大抵一過性の話題に過ぎず、世間をそれ一色に染めるほどの火力はない。大抵ひとつの話題として流され、後々にそんなのもあったと回顧されていく。 しかし人々の視界や思考から一旦外れても、それらは密かに日常の中にゆっくり、意識外のうちに入り込んでくることも珍しくないのである。 これは、そんなまだ現代よりも近い未来の中で、とある学生に起きた、未知との出会いと大きな変化の話、そして痴態の話である。 * * * とある島国の首都。その中心地から外れた地区にある高校、富士野高等学校。 一般的にイメージできる高校とそれほど大きな差は無く、生徒達も活発で、やや騒がしさが日常の中にあると感じられる、規模もそれなりに大きい高校である。 周辺にはコンビニやファミレスなど、学生が向かうにもちょうどいい施設が揃っており、バス停や歩きでは少々距離のある停車駅といった交通機関も存在している。 住宅街からも距離はそこまで遠くなく、家が近いならば選択肢として充分に入れることのできる。まさしく、痒い所にもしっかり手が届く、環境の良い高校であった。 そんな高校の、とある秋方の朝。ホームルーム前の1年C組では、ざわざわとちょっとした盛り上がりが起きていた。 「どんなの来るか知ってる?」 「いやぜんっぜん。なんか女子って話聞くけどガチかな」 「ガチならエッグいくらい可愛い子がいいんだけどなー!」 「女子の方も男子来るみたいな話ししてるんだよなー……これマジで誰も知らなそうなんだけど」 「転校生誰くるか見てないの?」 「なんか金髪みたいだった的な話は誰かが言ってた気がする」 「えっウソ、そしたらハーフとか? それとも海外の人? えーイケメンそう……」 「でも男女どっちかわかんないんでしょ?」 「女子でもかっこいい人だったら堕ちちゃうかも……」 その盛り上がりの理由は、今日この1年C組に転校生がやってくるというものだった。 転校生が来るとなれば、クラスの中はその話題で一色になる。 噂の出所は生徒達のコミュニティであり、話自体は前日の夜に出てきていた。 それまでは皆半信半疑であり、そんな突然来るわけないと疑われていた。 だが、いざ生徒達が今日登校すると、クラスの机がひとつ追加されていた。それが決定打となり、一気に盛り上がり始めたのだった。 「一樹お前良かったな、転校生が隣に来るってよ」 「あーまあ、俺は別にいいよ。めんどいことにならなければさ」 「けどすげー可愛い子来るとか言ってんじゃん?」 「男女両方あーだこーだ言ってるから信用できねえ……まあ、俺はどっちでもいいよ」 前の席に座っている友人の洋平と二人で喋っているのは、現在クラスの一番後方かつ端の席に座っている澤田一樹。 二人が話している通り、現状最も転校生が来るという内容の中で当事者感覚が強いのは間違いなく彼である。 登校し教室に入ると、自分の隣に存在していなかったはずの席が出現していた。その瞬間に、おそらく転校生と関わる時間が多くなるのは自分だろうと察していた。 そこまで話題にする気も無いし、この後色々と面倒なことになるんだろうなあと、既にこの日の学校生活に萎えている様子。 せめて面倒くさくない人が来てほしいと思いながら洋平と話していると、ホームルームを始める為に担任の女性教師が入ってきた。 「はい、おはよう皆。早速ホームルームを始めていくわ」 開始前の起立から始まる一連の流れを進めた後、彼女は早速本題に入る。 「えー、おそらくみんな察してはいるだろうけど、今日はホームルームを始める前に、転校生の紹介をします」 予想はしてても、いざ明言されると確定したというのもあってざわざわとどよめきが起きる。 視線は、いつもはきちんと教師の方を向いているが、今日は教師と教室の入口を殆どの生徒が行き来していた。 「既に教室の前に来てもらってるから、早速呼ぶわね。入ってきても大丈夫よ、瑞希さん」 「はい、失礼します」 転校生の声は、間違いなく女子のそれだった。 返事が聞こえた瞬間、一部男子生徒の間で密かに盛り上がりの声が聞こえ、女子からはちょっとした落胆と仲良くなれるかどうかという声が出てきた。 そして、とてもスムーズに引き戸のドアが開き、転校生が足を一歩踏み入れた次の瞬間、教室の空気は一気に塗り替わった。 「えっ……美少女過ぎない……?」 「ウッソ……あんな可愛い子がこの学校に……えっ? モデルとかじゃないよね……?」 「マジ……? アイドル顔負けどころじゃないだろ……」 「こっからでもオーラ感じんだけど……遠くからなら堂々と見れる分よかったわ……」 ざわざわと、彼女の姿に対して、まるで皇女でも現れたかのようなどよめきが起きる。 横を向いて歩いている転校生の立ち振る舞いは完璧そのもので、一歩一歩歩くその歩幅や足の運び、姿勢に至るまで、全てが美しく魅力的だった。 教壇の横に立ち、方向転換してクラスメイトの方を向くと、その美貌の暴力から来る微笑みが直接投げかけられた。 「……では、転校生を紹介しますね。今日からこの1年C組でみんなと一緒に授業を受ける、副島瑞希さんです」 「副島瑞希です。今日からよろしくお願いします。あ、今から名前を書きますね」 彼女は一度挨拶してからすぐ振り向き、黒板に自身の名前を一文字ずつ丁寧に線を引いていく。 彼女が書く字は、まるで達人の如く非常に綺麗で、遠くから見てもハッキリという字か認識できるほどの形状美を表していた。 「改めて、今日からよろしくお願いします」 ブロンドというよりも雰囲気はクリーム色に感じる、ハーフアップである程度髪をまとめた綺麗なセミロングヘアーに、流し目の非常に似合うサファイアのように美しく大きな瞳と非常に整ったバランスの顔立ちは、淡雪のように白い肌と合わさり、どんな表情であっても魅力的に感じさせた。 今は堂々と立ったまま微笑んでいるが、それすらもまるでひとつの美術作品のように感じさせる。 クラスメイトと同じ富士野高校の制服を既に身に着けているが、まるで別次元の着こなしのようにも見える。 制服の下から盛り上がっている、同世代の中では間違いなく大きな方である膨らみに、見事な曲線を描いているボディライン。 スカートの下から出ている脚も細くしなやかで、まるで別世界の姫のようにすら思えた。 「えー……瑞希さんは今日から、このクラスでの授業に参加します。瑞希さん、ひとまず自己紹介を」 担任教師ですら息を呑む彼女の可愛らしさと美しさ。まだざわざわと騒げるはずなのに、生徒達も一斉に沈黙していた。 「はい。今日からこのクラスの一員になります。まだ来たばかりで、色々とわからないことはありますが、少しずつ、皆と仲良くなれたらなと思います」 瑞希はゆっくりと、完璧な角度で頭を下げて、改めて微笑んだ。 はっきりとしていながらも清廉さが詰まっているような喋りと細かな全体の所作。 喋っている間も、一人ひとりがいる方向をしっかりと見ており、思わずその清楚と美の具現化のような身姿に、見惚れてしまっていた。 「じ、じゃあ瑞希さん、あの空いている席に座ってください。それから、ホームルームを始めるので」 「はい、わかりました」 担任教師の指示に従って、クラスメイトの机の間を縫うようにして歩く瑞希。一歩前に進む度、スカートやネクタイが揺れるよりも、陽光が無数の曲線になったかのような美しい髪が揺れる方に目が行き、どうしても目がそちらに行く。 彼女が横を通り過ぎて間近で見た生徒達は、男女関係なく至近距離を通った彼女のオーラに、心臓を高鳴らせていた。 そして、彼女は一樹の隣にある席に座る。 「……………………」 一樹もまた、何も声が出ず沈黙していた。 背筋を伸ばして、教科書に乗るような模範的な姿勢を椅子に座った後、先に瑞希の方が彼に声をかける。 「おはよう、今日からよろしくね。せっかく隣になったんだから、名前を教えてもらってもいいかしら?」 真隣の席から彼の方を流し目で見つめる姿は、それだけでも周囲が彼女を引き立てる背景になっているかのような感覚があった。 声も落ち着いており、微笑みが淡い光を帯びているようにも感じる。 最初のしっかりとした挨拶とはまた違うクールな印象は、一樹の心を撃ち抜くには充分すぎる威力があった。 「……〜〜! ……えー……澤田一樹です。よ、よろしく」 「一樹くんね。ちゃんと覚えたわ」 彼女の一文字一文字がハッキリと聞こえてくる。周囲のクラスメイトからの羨ましいというオーラが、周りを見なくても肌で感じる。 まだホームルームの途中であった為、二人はすぐに担任教師の話に耳を傾けたが、一樹はチラチラと横目で、彼女の横顔を目に入れずにはいられなかった。 一番うしろの席なのもあって、満場一致でクラス1どころか全高1の美少女と感じているであろうクラスメイト達は、ホームルームの間もその姿を見られないのを歯がゆく思いながら、頭に入ってこない教師の喋りの時間を過ごしていた。 こうして、1年C組に一人の天使とも形容できるであろう桁違いの人物が舞い降りたのだった。 * * * ホームルームが終了し、1時間目の授業までの合間の時間。 瑞希のもとへ男子達が駆け寄るよりも早く、女子達が一斉に机の周りに集まってきた。 「ねえねえ瑞希さん! 前はどこにいたの!?」 「前はもう少しここからは離れてたところね。都からは結構離れてる東の方よ」 「瑞希さんって、なんて呼んだらいいかな!? 前の学校でのあだ名とかある?」 「…………瑞希さんでも瑞希でも、どっちでも大丈夫よ。呼びたいように呼んで」 「髪すっごいサラサラしてるし、肌もとっても綺麗だし……えっ、どんなことしてるの? すごくない?」 「大したことはしてないわ。いつも通りに過ごしてるだけよ」 「ねえ瑞希さん! 部活とか入ってた!? もうどこに入るのかとか決めてる!?」 「部活はやってないわ。今のところ入る予定もないもの」 次元の違う美少女に対して、クラスの女子達が一斉に質問攻めをする。 それを瑞希は、一切態度を崩さずとても慣れたようなマイペースさで、きちんとひとつひとつ、しっかりと返答していった。 そんな様子を、一樹を始めとした男子達は、外から眺めていた。 「すっげー人気だなー。まあそりゃそうか。あんなとんでもねえ美少女だとな、女性陣もああなるよな」 「てめえ初っ端から瑞希ちゃんに話しかけられたからって余裕ぶっこいてんじゃねえぞ」 「今年の運全部消費したって思っても釣り合う出来事だったわ」 「もう今年たいして残ってねえだろトータルプラスどころじゃねえじゃねえか」 そんな様子を遠くから見つめる一樹と洋平。女子達が集まっている分、話しかけられるタイミングが失われているが、一番最初に話しかけられたという一点において、一樹は非常に大きなアドバンテージを得られた。と他の男子達は感じていた。 実際それは彼自身も思っており、今でも彼女の声が脳内で反芻していた。 どうにか瑞希という絶世の美少女に近づきたい。そんな至極当然でもある気持ちを、現在彼女の存在を認識しているクラスの男子達ほぼ全員が思っていたのだった。 そうして、これまでの授業の日々に、転校生の瑞季を加えた新たな学校の日々が始まった。 「これでどうですか? 先生」 「せ、正解です……割と難しめのやつだったんだが……」 授業が始まってから間もなく、瑞季はそのビジュアルに全く劣らない完璧ぶりを次々と披露していった。 数学では、提示された問題を計算式の部分から完璧に黒板に記載し、むしろ彼女の方が先生かと思える程の正解を見せる。 「足元が泥濘んでいる。どうしても足が離れない。沼が足をとっているのではない。私の足が、身体が、心が、抜けることを拒んでいるのだ」 「ありがとうございます、瑞季さん…………音読上手いわね……」 現代文になると、担当教師から音読を求められた時、まるで劇がその場に現れたかのように、発音も文の切れ目も、ペースも完璧な音読を披露してみせた。 恥ずかしがることもなく堂々としており、クラスメイトには彼女が大女優であるかのように見えた。 「瑞季ちゃんナイス! 前からバレーやってた?」 「授業で習った分だけよ。おおよそこういう風にやればいいのかなっていうのを、習ったままにやってるの」 体育に於いては、ちょうどその時行われていたバレーボールで、まるで部活経験者のごとくサーブ、トス、レシーブ、さらにはスパイクまで全てこなし、自身の豊かな胸が弾むことも厭わず最高のパフォーマンスを披露した。 どの授業でも、やることなすこと全て優れており、その度に皆が度肝を抜かれる。 まさに、才色兼備、完璧美少女など、褒め言葉が足りないほどのハイスペックぶりを露わにしていた。 「お願い瑞季さん! 陸上部入って! 瑞季さんならきっと、すっごい選手になれるよ! ていうかもうなってるって!」 「お誘いは嬉しいけどごめんなさいね。気持ちは受け取っておくわ」 「瑞季さん! その……演劇部に入りませんか? あの音読もそうだけど、語りの中にとっても美しいものがあったの! 瑞季さんの舞台上の姿、隣でも座席からでも、とっても見てみたいんです!」 「そこまで言ってくれて嬉しいわ。でも、部活で本腰は入れられないかも。ごめんなさい」 転校してから間もなく、彼女が授業や日常の中で披露されていくパフォーマンスは、誰もが眼を見張るものがあった。 まるで、すぐ隣に大スターがいるかのように、彼女のハイスペックぶりが次々と露わになり、部活動への勧誘が止まらなかった。 その度に瑞季は丁重に断りつつも、強くは否定せず、己の道を歩くが如く特定の部に入るということをしないように努め続けていた。 才色兼備どころか文武両道の姿すら魅せる瑞季。そんな完璧超人にも関わらず、食事は少食で殆ど食べている姿を見せていない。 なんでもこなせる上に、謎に満ちたミステリアスな姿は、転校して間もなく、異例のファンの存在を作り出していた。 まさしく完璧美少女を体現する瑞季だが、そんな彼女が現時点で最も交流を行っていたのは、隣の席の一樹だった。 「一樹くん、この授業はどこまで進んでるの?」 「……これはだいたい110ページまでだな。それで、こっちの教科書はここまで進んでて……」 「なるほどね。ありがとう、助かったわ」 瑞希が転校してから2日目。彼女はだいたいどこまでそれぞれの教科の授業が進んでいるか、現状どこを進めているか、必要な教材に不足がないか、この高校がどういう場所かなど、それらの質問を積極的に彼に対して行っていた。 向こう側から話しかけてくれる女子生徒達にもお世話になっているが、自分から話しかけるというパターンになると、一樹がその相手になる頻度が多かったのだった。 彼自身も、よく話し相手になっているという自覚があり、その度かなりの緊張が内心に響いていた。 彼に話しかけているのは、絶世の美少女という他ない人物。そんな彼女が真っ直ぐ顔を見つめながら、耳から脳髄まで届きそうな魅力的な声で対話をしてくる。 平静を装ってはいても、どうしても慣れないものがあった。 「じゃあ瑞希さんまた明日!」 「じゃあね、悠里さん。また明日。さてと、また二人になったわね」 「…………まさか同じ帰り道になるとは思わねえよ……」 「あら、私と一緒に帰るのがそんなにイヤ?」 「そういうわけじゃないんですけど……いやでもなんというか……」 「敬語とタメ口が度々混じってて落ち着かないわね。どっちかに統一したほうが喋りやすいんじゃない?」 「…………じゃあタメ口で」 さらに、一樹の帰り道と瑞希の帰り道が被っていることが、1日目の時点で発覚した。 彼女と一緒に帰ろうと、C組の同じ道を歩くクラスメイト達が男女問わず着いていくが、最後に残ったのは一樹だった。 ただでさえ隣の席で緊張と、思春期特有の情欲を隠していたのにも関わらず、二人っきりになるという特別極まりないイベントが発生すると動揺する他ない。 瑞希は常に自分を崩さず、平常心で対話を続けており、時には一樹の調子が狂っているところも平気で指摘した。 「その方がいいわ。変に緊張してても、コミュニケーションが余計におかしくなっちゃうでしょ」 「誰のせいだと思ってんだ……」 「あら、責任転嫁する? どうしても緊張するなら、botみたいな返しをしてもいいけど」 「まだ2日目なのに喋る度胸すごいな瑞希さんは……」 「思ったことを言ってるだけよ。固いやり取りするよりは、正面から言ったほうがまだ打ち解けやすいじゃない」 決して自分のペースは崩さずブレない。そんな彼女に、威風堂々とした雰囲気が感じられる。 瑞希は本当に、確固たる自分と自信を持っているのだと、一樹は感じた。 そうして、どこか漠然と距離が縮んだような気がするやり取りから少し経って、家から程遠くない別れ道に辿り着く。 ちょうど二人はここでお別れ。それぞれの家に向かう方向に立ち、向かい合う。 「じゃあ、俺はこれで」 「また明日ね。今日も楽しかったわ」 彼女が向かう道の先から差してくる夕陽の光が、瑞希の姿を照らし出す。 背後に茜色の白を纏い、流し目で微笑みかけてくる彼女の姿は、眩しいはずなのにその姿だけはハッキリと見えた。陽光すらも引き立て役になり、線を出して靡く髪と共に彼女がとても煌めいて見えた。 この時、一樹は胸の奥で強く自覚した。自分は瑞希に惚れ、さらにそういうこともしてみたい。思春期らしい情欲が、彼の中に渦巻いた。 背を向けて去っていく瑞希の姿を、彼は思わずしばらく見つめていた。 その姿がある程度小さくなったところで、彼はようやく正気に戻り、自宅目指して歩いていった。 「…………………………頭おかしくなりそうだ」 彼は頭がおかしくなっていた。 わずかな期間で瑞希に心を撃ち抜かれ、彼の気持ちは完全に彼女に傾いていた。 それは他の男子生徒も同様ではあったが、彼女と一緒にいる時間が長くなっていた分、一樹は特段、その存在を強く意識せざるを得なかった。 自室のベッドの上で、ひたすら無心でぼーっとしている一樹。今までそんなことは無かったが、彼にとってこれは天からの恵みにも等しい出来事だった。 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜……マジで可愛すぎるんだよ〜〜〜〜……」 脱力するように情けない声で漏らす一樹。だが、彼の中には、同時にある感情が湧き出していた。 「あんな可愛い生身の人間がいていいのかよ〜……」 一樹には、友達にも言っていないある秘めたやや強めの性的趣向があった。 それは、女性型のアンドロイドが大好きだということである。 彼の持っているエロマンガや、端末内に秘めている画像類は、女性型のアンドロイドが淫らなことをしたり、人間として振る舞っていたのに機械的な面を曝け出したり、生身の人間ならば異様なことをするような作品を強く好んでいる。 それもあってか、彼は現実の女性や同世代の女子に対して、可愛いや美人だと思うことはあっても、それがアンドロイドだったらなあと最後に思っていた。 しかし今回、その最後の壁を吹き飛ばす威力の魅力を持つ女子がやってきた。生身であっても構わないと思える程に。それが彼にとっても衝撃的だった。 「………………あーやべ…………明日からどう接しようか……」 放心している間も、彼女のことが脳内に浮かんでくる。宿題をしようにもなんだか手を出す気にすらなれない。 このままでは流石に駄目だと思いながら手を出すも、やはり瑞希のことが離れない。 いつも通り接するつもりではあるが、果たして平静を保っていられるだろうか。 そんなことを思いながら、彼はやきもきしつつひとまず新しい日常が始まり間もなく訪れた個人的な激動に身を任せる以外になかったのだった。 しかし、この新しい日常は、彼にとって予想外の展開に転がり込むことになる。 瑞希が転校してから2週間近くが経過し、おおよその大盛りあがりがある程度沈静化してきた頃。 彼女は相変わらず、クラス内の女子に話しかけ対応しつつ、他の男子からも勇気を持って話しかけられ始め、様々なクラスメイトとの交友を持つようになった。 「……お前良いよなあ、瑞希ちゃんとよく話しててさあ」 「…………そうだな。俺相当運がいいよ」 「この野郎、お前の運を欠片でもいいから分けてもらいてえわ」 「俺もたぶん違う立場だったらそう思ってるかもしれねえ」 「……一樹お前最近相当調子悪いな?」 一樹は、瑞希に心を撃ち落とされて以降、周囲から見ても感じられる程に調子が悪くなっていた。 普段通りに接することはできるが、どこか何かが印象として鈍っているように感じる。少なくとも洋平からはそう認識されていた。 「……俺にもわっかんねえわ」 「しっかりしろよなー。瑞希ちゃんとよく話したり、一緒に帰ってんだろ? お前今かなり幸せ者だからな? それとも、幸せがキャパオーバーしてんのか?」 「…………そうかもしんねえ」 「かーーーー!! ハッキリ言われると逆に清々しいな!」 彼の気持ちは、完全に瑞希に傾いている。絶世の美少女である分、洋平でもそうなることは強く強く理解できた。 だがその分、ここからどうすることもできない。とりあえず彼は、一樹の顛末を、横から手を出すことなく見守ることにしたのだった。 その日の昼休み、おおよそ半分の時間が経った頃に、ふと瑞希と一樹が二人きりになった。 珍しく、人気の無い校舎裏の倉庫の裏に、瑞希の方から誘ってきたのだった。 「……どうしたんだよ、こんな所に呼び出して」 「そんなたいした用でもないわ。もし良かったら、今日の帰りに私の家に来ない? ってだけよ」 一瞬、一樹は鼓膜が吹き飛んだかと思った。 「…………え?」 「この距離なら普通に聞こえてるでしょ。私の家に来ない? せっかくこうして転校した先で仲良くなった人が出来たんだから、誘っても変じゃないでしょ?」 「いや……それで誘うんだったら、女子の友達とかの方がいいんじゃねえか?」 「別に関係ないわ。今の所、一番仲が良いのはあなただから、そうしようって思っただけよ。それとも、あんまり行きたくない? それなら」 「いやいやいや待て待て待て! 行く! 行かせてもらいます!」 「ふふ、また変な敬語出てる。治ってないわね」 彼女からの予想外の申し出に、一樹はただただ心臓の高鳴りをどうにか抑えられることを願いながら平常心を保とうとしつつ、了承する以外に選択肢はなかった。 瑞希の調子は相変わらず。これまでのクールでいつも通りの振る舞いを保っており、そこに何か特別な感情があるようには見えなかった。 「けど、なんでこんなとこでそれを?」 「今の状況だと、誰かをうちに誘うとなると大変なことになりそうでしょう? 特にあなたの方が。あまり表立って言わない方が良いと思わない?」 「まあ、それは確かに……」 「そうだ、今のうちに連絡先を交換しておきましょ。その方がやりやすいと思うわ」 唯我独尊的な雰囲気が出ていながらも、しっかり周囲のことやそれによるリスクも考えているんだなあと思いながら、そういえば話している割には案外そういうことしていなかったと、二人はこの場で連絡先を交換することにした。 ひとまずこの場は、これで話が終わったが、後々になって彼は、瑞希と連絡先を交換したという事実がこの時果たされたということを自覚し、もし周囲にバレたら殺されそうだと内心で思っていた。 それから同日の放課後。転校して間もない頃よりは流石に減ったが、瑞希は複数人で下校し、話しつつ道中で一人ひとりと別れていった。 そして残った一樹と瑞希。もはや定番になった二人だけの道中で会話を交わしながら、本来は自宅の方へ繋がる別れ道を、今日は二人一緒に同じ方向に向かう。 「そういやこっちの方は行ったことなかったな。それなりに長く暮らしてるのに」 「身辺だと用がないと長い間知らないなんてこともあるものね」 「まあそういうことなんだよなー……」 一歩一歩歩くごとに、彼女の家に上がり込むという事象が近づくのを感じる。 動揺を強引に抑え込んでいる彼とは対象的に、瑞希はずっといつもと変わらぬマイペースさを保っており、声の調子も反応も、いつもの堂々とした立ち振る舞いを継続していた。 そして、別れ道を同じ方向に歩いてからそれ程長く時間が経っていないうちに、瑞希はとある2階建ての一軒家の前に立ち止まった。 「着いたわ。ここが私の家。引っ越してから誰かを誘うのは初めてなの」 一軒家としては比較的大きめで、小さめながら庭までしっかりと設けられている。 庭に繋がっている引き戸の窓を見ると、誰かが部屋の中にいるであろう明かりが見えた。 瑞希の後ろをついていき、間違いなく最高峰な美少女の家の玄関に足を踏み入れる。 「お邪魔しまーす……」 室内は非常に綺麗で、玄関の明かりすらも彼女を映えさせるスポットライトに見える。 ここで一樹は、そういえばちょっと前にこの家があったような方向で何かしらの工事や建設が行われていたことを思い出した。 室内の清廉さや香りが普通の家とは違い、イメージとして新築っぽいと漠然と感じるなにかがあった。 ちょっとした疑問が割り込んできたが、そんな彼の思考は、靴を脱ぐ所作すら美しい瑞希の振る舞いに上書きされた。 友達の家に初めて来た時はどこか緊張するものがある。今回はその上位版の感覚が全身に走っている。 彼自身もしたことないような、直線的かつ自分なりに丁寧な動きで靴を脱いできちんと揃え、本格的に家に上がる。 「ただいま、お母さん」 「おかえり、瑞希。あら、そちらの方は?」 「私のクラスメイトよ。せっかくだから家に誘いたいと思ったの。良いでしょ?」 「あらぁ〜〜娘が男の子連れてくるなんて、歳頃なのね」 「そういうわけじゃないわ」 「初めまして、瑞希の母親の燿子です。瑞希とこれからも仲良くしてあげてね」 「ああはい、よろしくお願いします」 「立ち止まってないで、行くわよ」 丁寧な母親の対応に、一樹も丁寧に一礼をしてから、改めて2階の瑞希の部屋へ移動した。 それまでの間に、彼は無数の疑問が湧き上がってきていた。 「…………瑞希の母親、相当若くないか?」 「まあ、よく言われるわね。気にしないで」 その中でも特に大きかったのは、母親が明らかに若すぎるところだった。 母親と言っているが、瑞希の母親である副島燿子は、どこからどう見ても、年齢高めに見積もっても30歳前後にしか見えなかった。 瑞希に比べると短めなボブ系のミディアムヘアーではあるが、サイドテールで髪をまとめており、それによって本来はもう少しセミロング寄りながらもある程度短い印象が生まれている。 娘に負けず劣らずの胸の豊満さだが、瑞希よりも少々控えめに見える。しかしそれでも形良く柔らかそうな印象があり、それが落ち着いた部屋着によって映えている。 隠れ気味なボディラインであっても、そのスタイルの良さと、瑞希に受け継がれている女性基準の高身長も有しており、その姿は、むしろ母親どころか姉のようにしか見えなかった。 瑞希が飛び抜けた美人な分、母親もそれだけかなり若く見える美人であることも納得はできるが、いざ目にすると本当かと現実を疑わざるを得ないほどだった。 そして、瑞希に誘われるがままに、彼は彼女の部屋ヘと足を踏み入れた。 「ここが瑞希の部屋……!」 初めて訪れた女子の部屋。しかし、その光景はイメージとは違うものだった。 部屋の中は質素気味で飾り気はなく、最低限の設備や用品が整えられている程度。 引っ越しから間もないであろう時期というのもあり、納得できる範疇だが、それにしては机の影など、様々な目立たない箇所に、ルーターなどの通信機器が点在しており、充電端末も現代では様々な電子機器を使うという前提があっても、やや多いような気がする。 そういうタイプの部屋なのだろうと納得はできるが、どこかハッキリとさせられない違和感がある。そんな奇妙なむず痒さが、彼女の部屋にはあった。 とはいえ、今はそれよりも瑞希の部屋で彼女と二人きりという気持ちのほうが上回っており、テンションが違和感に蓋をした。 「何か持ってくるわ。そこで適当に待ってて」 自宅でも、自室にクラスメイトを誘っても平常心を保ち続けている瑞希は、一旦部屋を離れて1階へ向かっていった。 彼女の部屋で一人だけになった一樹。緊張感が高まり、どうしようかとじっと待っていたその時、彼はふと、部屋のクローゼットが微妙に開いていることに気づいた。 「こういうの閉めといた方がいいと思うんだよな……」 どんな細かいことでもきちんとしている彼女の、思わぬところでほんのちょっとだけ抜けてる部分に、こういうとこもあるんだと思いながら、彼はクローゼットを閉めようした。 しかしその時、偶然にも開いた部分から中の様子が視界に入ってきた。 「………………えっ? なんだあれ……?」 隙間からはハンガーにかけられた数々の衣服がぶら下がっているが、そのさらに奥に、見たことのない携帯端末が設置されていることに気づいた。 自分の所持している携帯端末と形状は違いが、今までに見た覚えのないデザインであり、それも複数並べられている。 そういうガジェット系の趣味でもあるのだろうか、とも考えたが、そんな気配は今まで微塵も感じられなかった。 まだそこまで日が経ってないのだから、そんな面が見えなくても当然ではあるが、一体これはなんだと彼は興味を惹かれた。 ちょうど瑞希は1階へ移動している。行儀良くないが、すぐに戻せば大丈夫なはずだと、一樹は申し訳ないと思いながら、少しだけ開いたクローゼットを開き、見知らぬタイプの携帯端末に手を伸ばして動かした。 すると、既に電源が入っており、PINやパターン系のロックがかけられておらず、すぐに開くことができた。 「電源が入ってる……てことは、使ってるやつなのか? けど、これとは別のをもう持ってたし……じゃあなんだこれ」 彼女が使っている機種とは明らかに違う上に、触ってみてすぐに画面内の挙動や画質からハイスペックな機種であることも感じられた。 それが何台も、しかも起動した状態でクローゼットに仕舞われているのは違和感しか出てこない。 一体どういうことなのか。そう考えた直後、彼はホーム画面に表示されている見知らぬ名前のアプリアイコンをタップした。 「………………え、これって……!」 そこに表示されたのは、一糸まとわぬ瑞希の直立姿勢で経っている姿を画面内に据えつつ並べられた各種メニュー。 彼女の裸を画面内ながらも見てしまったことに対する罪悪感は湧いてきたが、それ以上になんだこれはという気持ちが浮かぶ。 しかし直後、彼の脳裏にひとつの答えが浮かんできた。 「まさか、これってそういうことでそういうものなのか……?」 一樹は過去に、アンドロイド系のマンガやエロマンガ、映像作品で、機体に対してのコントロールや管理を行うアプリが描写されていることを思い出した。 ある種の定番であり、よくあるものだと受け入れていたが、もしかしたらこれがそれなのか。しかしそうなると、瑞希がアンドロイドということになる。だがそんなのは現実的ではない。 現実のアンドロイドはまだそういう自律稼働を行える水準には至っていないはず。ちょくちょく現実になればなあと思いながらそういうニュースを追っている彼は良くわかっていた。 だがもしそれが本当なら……そういうことが現実になったなら……そんな常に米粒レベルの大きさでしかなかった希望が、初めて一気に可能性を帯びる。 すると、扉の向こうの廊下から足音が聞こえてきた。 この距離では、再び戻して閉めるだけの余裕はない。彼は携帯端末を持ったままクローゼットを元の状態に戻し、部屋の中央で立ち上がった。 そしてちょうど、彼女が木皿に入ったクッキーを持って部屋に入ってきた。 「……なんで立ってるのよ。座ってても良いのに」 「ああまあ、なんというかな……」 なぜか立ったままの彼を変な風に見ながら、一旦机に木皿を置き、折り畳み式の丸型テーブルを取り出そうとする。 (…………いっぺん、本当か試してみるか……) 一樹は、先程覗いたアプリ内の項目の中に、一時停止のボタンがあることを確認していた。 文字通りそれをタップすれば、彼女の動きが止まるのか、はたまた、ただのそういう変わった趣味なだけか。 とりあえず試して見る価値はある。瑞希が、クローゼットとは別の場所に仕舞っているテーブルを取り出す為に上半身を傾けているその隙に、彼はそのボタンをタップした。 「後で飲み物も持ってくるわ。一樹は緑茶は好──────」 直後、瑞希は話している途中で突然発言が途切れ、ぴくりとも動かなくなった。 髪が揺れ、制服もわずかに揺れているが、肝心の身体は時が止まったように静止している。 「…………ガチなのかこれ、本当か? 本当……なのか?」 一樹は彼女の目の前まで移動し、顔を覗く。相変わらずの美しく可愛らしい顔だが、表情や口の形は話している最中のそれで途切れており、まるで時が止まったようになっている。 目の前で手を振ったり、軽く声をかけてみても反応がない。 その隙に初めて手を触れてみると、とても肌触りがよく、いつまでも触っていたくなるような感触をしていた。 まさか、パントマイムをしているわけではないのか。そう思いながら、もう一度一時停止ボタンをタップした。 「────き? あら、どうしたの? 手伝ってくれるの?」 「────!! あ、ああ手伝うよ。なんか瑞希にだけさせるのは悪いし」 「ありがと。優しいとこあるのね」 目の前で手を振ったり、手に触れたり、顔の前でうろちょろしていたことには一切触れず、いきなり近づいてきたかのような発言が飛んできた。 彼はほぼ確信した。瑞希はあの時、本当に止まっていたのだと。 端末をポケットに入れ、机を立ててあげながら彼は思った。本当に彼女はアンドロイドなのかと。そして、この管理アプリは本物なのかと。 一樹は、さらに一歩踏み込んでみたくなった。 「口に合うかはわからないけど、どうぞ」 机が用意されると、瑞希は彼のいる方向に寄せるように木皿を置き、座り込む。 一樹は、彼女が対面に座った直後、再び一時停止ボタンをタップした。 瑞希はまるで写真のモデルのように佇み微笑んだまま、先程と同様に動かなくなっている。 横に回ったり、目の前で手を振ってみても、同じ方向を向いたままびくともしない。 一樹はこの間に、アプリ内のメニューをひたすら確認し、どのような内容が書かれているのか、操作項目があるのかを確認する。 「…………本当に、アンドロイドなのか……瑞希って」 急いで簡単にバーっと見たときにはわからなかったが、そこに記されていたのは、数々のアンドロイドとしての彼女の情報だった。 彼女は製造されてまだ2ヶ月も経っておらず、それまでいた学校など存在しない。転校生というのはただの設定でしかなかった。 しかし彼女は自分のことを人間だと認識しており、組み込まれた設定通りに日々振舞っている。 携帯端末の中には彼女の内部構造も詳細に記されており、どんなことができるのか、どのような動作を行うのかまで細かな説明がなされていた。 ただそういう内容が書いているだけにも思えるが、目の前でこうして止まっている姿を見ると信じざるを得ない。 続けて一樹は、様々なメニューを確認する。 設定や身体の操作項目から、彼女への命令も直接アプリから行える。 それを見た瞬間、彼女に惚れた時とは質の違う、赤い感覚のする心臓の高鳴りが起き始めた。 一樹は手を震わせながら、まずは適当な動作を指示してみようと、その場で立ち上がり横に一回転するようにと文章を入力し、送信する。 直後、瑞希は表情そのままに立ち上がり、スカートを浮かせながら一回転し、再び座り込んだ。 「……マジか、本当か、本当にやるのか……!」 意味のない動作を、常に自分の意志でやっているという雰囲気しか出していなかった彼女が命令通りに行った。心臓の鼓動がより早くなった。 ということはと、一樹の脳裏に欲望の選択肢が溢れ出て来る。 前からそういう目で見る時もあったし、興味もあった。だが、そんな状況が本当に来るとたじろいでしまう。 だが、どうせ今は認識できていないはず。一樹は携帯端末から、自分の胸元を出して下着を脱ぐように命令を送信した すると、瑞希は表情そのままにネクタイを外し、制服の胸元のボタンを外して谷間を晒し、さらに下着を外してスカートの下から女性器ユニットを露わにした。 指定された分の命令が終了すると、彼女はまた同じ姿勢になり、何事もなかったように戻った。 一樹は息を呑んだ。あの女神が舞い降りたかのような美少女がアンドロイドで、しかもどんな命令でも出来るなんて、こんな都合の良いことがあっていいのかと。 これは夢かと思いながら手が震え始めたところで、彼は決定的な機能を見つける。 「セクサロイド機能……!? えっ、擬似人格の操作……!」 セクサロイド機能の存在と、擬似人格の操作項目。まさしくそういう用途で使ってくれと言わんばかりのメニューだった。 そんなものがあるならば、使わない理由など一切ない。もう一部脱がしてしまったのだから、もう行けるとこまで行ってしまおうと、セクサロイド機能をONにし、さらに擬似人格の性欲値を一気に限界近くまで引き上げた。 そして、一時停止を解除した瞬間、瑞希は頬を染めて、じっと熱っぽい視線で一樹のことを見つめながら、四足歩行のごとく近づいてきた。 「一樹……率直に聞くけど、あなたは私のことをどう思ってるの……?」 「俺はその……うわっ!」 先程の初めての部屋での交流という雰囲気から、突然情欲的な空気へと移り変わった室内。 モードを切り替えられた瑞希は、まるで発情した動物のように一樹を押し倒し、学生服のズボンを脱がせ、下着まで脱がせて男性器を露出させた。 彼女の正体を知った直後から、彼の肉棒はずっと固くなり続けている。 それを視認すると、瑞希は自分から下着を脱ごうとしたが、既に脱いでいたことに気づいた。 「あら、私いつ脱いだかしら……まあいいわ。私ね、今とっても胸が熱くなって、全身が疼いて仕方ないの。あなたならそれを晴らしてくれるでしょ? ねえ、いいでしょ? もう我慢出来ないの」 答えを聞く前に、瑞希は自ら押し倒した一樹の股間に座り、既にじんわりと愛液を帯びた女性器ユニットに、戸惑うことなく男性器を受け入れ、上下に動き始めた。 「あっ、あっ、あっ、あぁ……あっ…………きもちいい…………今まで……あっ……したことなかったけど…………あんっ……これがセックスなのね……あんっ……」 髪が揺れ、制服越しの胸が揺れ、一方的に全身を使って攻め立てる瑞希の恍惚な表情がよく見える。 膣肉が上下する刺激と重なり、膣壁が単体でマッサージするような挙動を行い、二重の気持ちよさを一樹に提供する。 今までは自分の手で自慰ばかりをしていた彼に突然襲いかかってきた、絶世の美少女からもたらされる人間以上の快感。 一樹は声を出すこともできず、瑞希から一方的に攻め立てられることを受け入れるしかなかった。 だが、そんな彼女の淫らな姿が、彼にはとてつもない刺激となった。 ずっと彼女への確定しない情欲を溜め込んでいた中で、アンドロイドだという非現実的かつ最高の好みの属性が混ぜ込まれたことで、彼のリビドーは一気に高まっていく。 男性器の状態変化を感知した瑞希は、膣肉と全身の上下運動を加速させて一気に搾り取る準備に入った。 彼女が自分の口で言っていた通り、今まで性行為を実際の男性と行った記録は無く、全てあらかじめインストールされていたプログラムに従った挙動によるもの。 膣肉が締まり、吸引が行われ、子宮口が開放されていつでも精液を受け止める準備が整えられる。 「っ……ぅ…………こんな気持ちいいのか……っ……!」 あまりの気持ちよさに息を切らしながら、思わず腰を浮かせて最後に思いっきり彼女の女性器内を突く一樹。 そして、彼はとてつもない気持ちよさの奔流の中で絶頂に達し、遠慮する余裕すらなく、一気に溜め込んだ精の全てを吐き出した。 「あっ! あ、あ、あっ! ああっ! いいじゃない……私の中に、一樹くんの気持ちが、たくさん伝わってくるわ……はあ、ぁ……ああっ! あっ!」 新鮮な精液が次々と子宮ユニットへ注がれ、センサーが感知し、快楽信号を伝えていく。 全身を気持ちよさそうに震わせ、割れ目と肉棒の隙間から人工愛液が漏れている。 今まで一度も聞いたことのない声を漏らす彼女の姿は、彼が達した後も官能的。だが、一樹の方はとてつもない衝撃がいくつもあったことで精神的に疲弊しており、それに連なり一度の射精で気が抜けると、一気に頭が冷静になってきた。 何より、初めて来た家で、かつ出来心でもある試しの操作で起きた情事をこのまま続けでも大丈夫なのかわからない。 下にいる母親や、彼女達を作ったであろう者達に何を言われるかわからない。 だが、瑞希は止める気配が無く、むしろこのまま搾り取り続けようとしているような雰囲気に満ちていた。 下腹部の奥でバイブのように膣肉を震わせ、彼が撃ち出した液を全て子宮まで運び終えると、瑞希は再び腰を動かし始めた。 「待っ…………瑞希……っ……ちょっと待てって……っ…………!」 「何言ってるのよ……私はまだ足りてないのよ……! まだ満足してないんだから……あっ……私を、満足させて……あんっ…………」 セクサロイド機能が実行されていても、設定された擬似人格のマイペースさは保たれており、快楽信号をさらに得るべく、さらに精液を得ようとしていた。 一樹自身は止めようとしても、セクサロイドとして動く彼女がそれを許さない。自分が止めようと言っても、まず彼女は学校でのブレなさと同様に聞く気配はない。 一樹は、いつもならばこうなるとほぼ押されることは決まっていたが、今は違うと手元の携帯端末を動かし、なんとか一時停止の操作を行った。 「あっ……あっ! あんっ…………はぁ……あっ……きもちいいわ…………こんなこと、今まで一度もしていなかったなんて、あっ、勿体な──────」 変わらぬ調子で上下に動き、二度目の射精を促そうとする瑞希。 だが、彼女はその途中で一時停止し、膝立ちの姿勢で動かなくなった。 一樹は、なんとかその隙に、硬直した女性器ユニットから肉棒を抜き、位置をズラして彼女が見下ろす床から抜け出した。 全身が停止している分、今の瑞希は誰もいない床に向けて恍惚に染まった顔で見下ろしながら、どこか不安定な姿勢で座り続け、男性器の形状が残り穴が残った女性器ユニットから、ぽたぽたとわずかな精液まじりの人工愛液が漏れ出している。 さっきまで自分に対して対話していても、停止したらそれが止まる姿は、まさに彼の好きなアンドロイドの不自然さだった。 「ふぅ…………改めて、瑞希がアンドロイドだったなんてな……」 一樹は、ティッシュで股間を拭きつつ、ようやく落ち着いた時間が取れたことで、これからの為に一旦の脳内整理を行う。 少なくとも、このまま止め続けるわけにもいかないが、どうすればいいのかもわからない。 そもそも、一度ヤってしまい、子宮ユニット内に精液が溜まっている。この状況をどうするのか。 考えに考えた結果、テキストからの命令で「女性器ユニット内の精液を決して出さないようにしつつ、床に落下した液体を全て拭き取って処理し、下着を履いて制服の胸部分を閉じ、性行為をしたという記録を記憶データに反映させずに一時停止状態を解除し、擬似人格を再び動作させる」と、一心不乱に打ち込んだ。 直後、固まっていた瑞希は姿勢を解き、ティッシュを手に取り、自身の股間や真下の床に落下した愛液と精液を拭き取り、ゴミ箱に捨てた。 与えられた命令の通りにボタンを留め、下着を履き直し、元の状態に戻った直後、先程までの頬が赤く染まり多幸感に満ちていた表情が解け、突然いつもの表情を取り戻した。 「──────どうしたの一樹くん? クッキー食べないの? それとも、そこまで好きじゃなかったかしら」 「いやいやいや! 喜んでいただきます!」 「…………どうしたのよそんな変な態度で」 「いやほんとなんでもない! あ、美味しいなこのクッキー……」 「口にあったみたいでよかったわ。このクッキーはね……」 再び会話を再開した瑞希は、つい数分前の淫らな行為の時間など存在していないかのような、いつも通りの発言と振る舞いを取り戻した。 子宮ユニットに目の前の同級生の精液を溜め込んだまま、いたずらっぽい微笑みを浮かべつつ、持ってきたクッキーを食べる姿を眺める瑞希。 どうやらお気に入りのものだったのか、口に入れたあとは、表情からはわかりにくいがちょっと嬉しそうに話を始めていた。 それからその後は、大きなイベントが起きるわけでもなく、部屋の中で軽い雑談や話題を数十分間近く繰り広げた後で、一樹側からそろそろ帰ると切り出した。 時刻はおおよそ夕食時。瑞希はその言葉を受けいれ、玄関まで彼を送り迎えに移動した。 「誘いを受けてくれてありがとね、一樹くん。感謝するわ」 「……お礼を言うのはむしろこっちだよ。その、色々と……まあ、瑞希に誘われて断るわけねえって」 「変なこと言ってるわね。まあ、そこまで家通し遠いわけでもないみたいだし、これからもご近所交流でもしましょ」 「あ、そうか…………ああ、そうだな。そうしよう」 「それじゃあ、また明日、一樹くん」 最後に軽く手を振りながら、瑞希は笑みを向けてドアを閉じた。 ようやく一区切りがついた一樹。制服のポケットには、流れのままにそのまま持ってきてしまった携帯端末が残っていた。 「……………………なんか、返すにしても言いにくいな……」 情報の渦潮から抜け出したような気分の彼は、数十秒ほどその場でぼーっとしてから、ようやく自宅までの歩みを進めた。 「瑞希がアンドロイドか……そうか…………そうなのか……」 今でも現実だとは思えないほどのとんでもないことを知り、天使のような美少女を自由に操作できる環境を意図せず得てしまった。 彼にとって今の状況は、望む全てを手に入れたと言っても過言ではなかった。 「……………………帰ってから考えるか……」 衝撃的な事実と、今やアイドルと言っても過言ではない彼女との性行為。嬉しい事は間違いなく嬉しいが、キャパシティを完全に超えてしまっていた。 どこか上の空な一樹は、ずっと頭の中で色々考えながら、自宅への帰路についたのだった。 こうして、アンドロイド好きの男子と、自分がアンドロイドだという自覚のない、才色兼備の美少女転校生との、機械仕掛けな新しい日常が幕を開けたのであった。
Comments
本当だ……表示上では2万字超えていなかったので大丈夫かと思っていましたが油断していました……申し訳ありません。 文字数制限で切れた後はそこまでの量はありませんが、可能な限り今日明日に途中から最後まで含んでいる分の記事を更新させていただきます。 期待をしてくださった意味でも、報告してくださった意味でもありがとうございます。
土装番
2025-11-26 13:37:52 +0000 UTC最後が途切れてるのは字数制限に引っかかった感じでしょうか。 発売をとても楽しみに待っております。
リドル
2025-11-26 12:02:05 +0000 UTC