SamuZai
土装番
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クリスマスに連なる女性型との情事の数々 1話先行公開版

 現代よりもやや離れた未来の時代。機械工学や生物学、解剖学と、様々な学問が繋がり、人工知能と組み合わさり結実した結果、容姿から立ち振る舞いまでまるで人間のように稼働できるアンドロイドが製造可能になっていた。  当初アンドロイドは、大手不動産系などの大企業が主導する場所や富裕層でも無ければ手元に置くことは敵わなかった。  しかし、アンドロイドの完成から二桁単位の時が経ち、ある程度一般の領域まで手が届くまでに普及するようになった。  値段ごとに性能はまちまちであり、それこそ本当に人間のように動ける機体となれば懐が塵と化すような金額が必要になるが、金額ごとの選択肢も増えたことで、一般の領域にもそれは広まるようになっていった。  これは、そんな時代のクリスマスの時期を巡る、とある島国の首都内の様々な場所で発生した、数々のアンドロイドと人間の情欲的な出来事の話である。 * * *  クリスマス。それは、かつてはキリストの生誕を祝う日として始まってから、様々な土着信仰が交わりながら現代まで続いているひとつの祝い日である。  いつしかクリスマスは、サンタから子供たちへのプレゼントの日、それに乗じた資本商戦が加熱する日、恋人達がイルミネーションと共に過ごし愛を深める日と、それぞれの人々によっていくつもの意味を持つようになった。  誰かにとっての特別でもあれば、誰かにとってのなんでもない日でもある。クリスマスは毎年何があるか、何が起こるかもわからないのである。  そんなあるクリスマス・イブの22時過ぎ、一人の大学生が、とても簡易的なクリスマス装飾を身に着けつつコンビニでぼんやりとレジに立っていた。 「これお願いしまーす」 「はーい…………アプリはお持ちですかー?」 「あー、ちょっと待ってて! …………読み込み遅いな、はい」 「ありがとうございます。693円になります。お支払いは?」  彼の名前は熊澤悠馬。現在大学二年生の20歳、男子学生である。  悠馬の通っている大学は今、ちょうど冬休みの時期。一人暮らしをしている彼にとっては、非常にちょうど良い完全フリーの時間だが、それをバイト代を稼ぐチャンスと捉えて、普段は入らない深夜帯の時間に入るようにしていた。 「ありがとうございましたー。…………はぁ、やっといなくなったか」  大抵は別の誰かが入っている頃だが、今回に限っては、殆どのスタッフが休みを取っていた。  それもそのはず、今日はクリスマス・イブ。次の日はクリスマス。デートを始めとした各々の用事がある他のスタッフ達は、ちょうどこの日に休みを申請。そこに生まれた隙間に彼が入り込んだのだった。 「…………ここで買わずそういう店で買やあいいのに」     クリスマス商戦では、特にそういうタイプの商品が重視され積み上げられる。  コンビニでは何十年も前から、他社がそれ以前から展開していた商戦に乗り、普段販売しているそれよりも豪華かつある程度味を近づけたチキン系のホットスナックを販売し、同時に元々スイーツ系に力を入れていることを利用して大小サイズを揃えたクリスマスケーキも販売。  そこからクリスマスフェアやキャンペーンも開催し、機に乗じた売上向上を目指していた。  しかし当然、その負担は現場にのしかかる。その上、そもそもクリスマスという行事が色んな人に関わる分、アルバイトでもクリスマスは休むという人も多い。  結果、悠馬には丁度いい稼ぎ時となったのだが、だからといって面倒くさい、楽に稼ぎたい、忙しくしたくないという気持ちが無くなるわけではない。お金が欲しいメインの気持ちである分、出来れば人が途切れてほしいなと思いながらぼんやりとレジ周りに立っていた。  しかし、そんな彼には一体、共に同じ時間に働く、同様に簡易的なクリスマス装飾を身に着けた機体がいた。 「悠馬さん、入荷が来ましたよ! 丁度お客様も少ないですから、今のうちに進めましょう! あっ、お疲れ様です!」  深夜ながらも元気に話しかける女性の名前は陽鞠。悠馬が働くコンビニに導入されている女性型アンドロイドである。  少しだけブラウンが入った黒髪のさらっとしたセミロングヘアーに、容姿年齢は悠馬と同じ大学生程に感じられる、それぞれのパーツが非常に整った、好みの違い以外では欠点が一切見当たらない可愛らしい顔立ち。  制服越しにもわかる程の、山のような盛り上がりの胸に、人間女性の平均よりも高めな身長が、ボディラインを作り出し、プログラム通りの美しい立ち姿勢が、まさしく最高なプロポーションを目立たせていた。  この時代では、アンドロイドの店員は殆どのコンビニで採用されており、人間のアルバイトが足らない時や、シフトが組めない時に動かされている。  中には、例外なく容姿端麗なところを利用して常設しているような店舗も存在しており、まさにこの時代には無くてはならないものになっていた。 「あーはいはい。陽鞠、ちょっと外に入ってきそうなのいるから一旦納品整理と品出し頼むわ」 「はい、わかりました悠馬さん!」  導入されているアンドロイドは、アルバイトを含めたスタッフ達の命令に対して従順に従うようにプログラムされている。  その上で、彼女達は人間のように振る舞い、完璧に店員としての仕事をこなし、店員としての求められる全てを満たすことができていた。  一方で、彼女達の性能は、現在巷に溢れるアンドロイドよりも明確に性能が低く、ところどころ融通が利かない部分や不自然な点も存在する。  共に働いているうちに、人間らしい振る舞いの中にも、どこか違和感のある部分が見え隠れするが、客側にはそれは気にされていない。  まさに、性能の良い備品という言葉が非常に似合う存在だった。  悠馬と陽鞠は、クリスマス・イブの深夜に入りつつある時間でも、それまでと変わらずいつも通りに作業を進めていた。  本来ならば既に片付け段階に入るホットスナックの棚にクリスマス系チキンを入れ、たまに入ってくる客を捌きつつ、入荷された商品をそれぞれの棚やバックグラウンドに積み上げていく。  二人はてきぱきと進めるが、そのペースは微妙に違っており、悠馬は時折軽い休みを入れているが、陽鞠は一切休む時間を挟まないまま、常に微笑みを起こしつつ工場の機械のように作業を継続していった。  そんな中、時刻は23:30頃。ちょうどレジの近くにいた悠馬が、もうそろそろレジに来そうだと感じたカップル客を視界に入れつつレジに入っていった。 「あ、ケーキあんじゃん。ケーキ食べる? 食べる?」 「食べるー! でもショートケーキしかないじゃーん! あたしショコラがいー!」 「ワガママ言うなっての……お、一個余ってんじゃんラッキー」 「ほらーあんじゃない! あたしショコラ全部ね。龍一がショートケーキで」  だいぶ酔っ払っている、おおよそ同い年かもう少し上の年齢のカップル。  その手には、追加の酒にコンビニ販売の強壮剤、さらにコンドームが女性の手に握られていた。 (チッ…………後でヤリまくるって雰囲気いっぱいじゃん……)       悠馬は、二人が明らかにこの後性行為に入るだろうという雰囲気を漂わせていることに苛立ちわ覚えていた。女性側が可愛らしく身体付きも色気に満ちていることがより拍車をかける。  よくネットスラング内で言われている、クリスマスの寄るはカップルがセックスする時間。それをまさに体現したような光景に、まだ童貞の彼は内心に八つ当たりな怒りの炎が点火しつつあった。 「ありがとーござましたー」   どこか投げやりな挨拶になり、カップルが去っていった後で溜息をつく悠馬。  店内に客が誰もいないことを確認してから品出しに戻ろうとしたところで、ちょうど彼が行った冷蔵、惣菜系のエリアには、もうすぐ商品を全て入れ終える陽鞠がいた。 「悠馬さん、こちらの品出しは終わりましたよ! カゴを裏に持っていきますね!」  ちょうど彼女は今、腕を軽く伸ばして棚の上の方にある食品の品出しを終わらせようとしているところだった。  腕が伸びたことで、彼女のボディラインがより強調され、豊満な胸が形を変えつつ制服と衣服に張り付く。  つい十数秒前に羨ましいカップルを見て、情欲の蓋が開きそうになっていたところに、直接の刺激がぶつけられる。 「あ、ああ……ありがとう」 「? どうしましたか、悠馬さん?」 「ああいや別に、なんでもない。ちょっと廃棄の整理してくるわ」 「はい、わかりました!」  どこか遠慮気味な悠馬の反応に、陽鞠は眼球ユニットの奥の機構を動作させながら、視覚による簡易的なバイタルチェックを行う。  直後に悠馬がなんでもないという反応を見せたことで、陽鞠はそれを中断してから自身の仕事の続きに入った。 「………………はぁ……あんな彼女がいたらなあ……セックスとかできたらなあ」  悠馬は以前から、彼女に対して漠然とした好意を抱いていた。  見た目は理想的な美少女で、いつも笑顔が可愛らしく身体つきも申し分ない。  そんなアンドロイドが、バイトの度に近くにいるというのは、彼にとってのご褒美でしかなかった。  特に今は、自分と彼女以外に同僚は誰もいない。まさに独り占めの状態。心臓を高鳴らせるなという方が無理な話だった。  もうすぐ廃棄の時間となる商品を集めてレジに向かい、その時間がやってくるまでの間、彼はじっと遠くから陽鞠のことを見つめる。 「……………………いらっしゃいませー! 現在クリスマスフェア限定チキンとクリスマスケーキ販売中です!」  深夜にも関わらず、サボるような素振りすらなく、通りすがった客に向けてプログラム通りの微笑みを向ける陽鞠。  深夜でも関係なく、常に微笑みを絶やさず、その上で手は一切休めない。視線を反らして顔を客の方に向けている時でも、第三の目が付いているかのように正確な手捌きと個数把握を見せる。  注目せずに対話していると、人間のようにしか見えないが、よくその挙動に注目してみると、やはりどこか不自然だったり不思議な振る舞いをしている瞬間がある。  そのギャップが、どこか彼には魅力的に見えた。  もうすぐ廃棄の時間が近づく中、じっと彼女の姿を見つめていたその時、新しい客がレジ前まで来て、ケーキを置いた。 「あっ、いらっしゃいま」 「クリスマスチキンとサニチキひとつ」 「少々お待ち下さ……い……!?」  じっと陽鞠のことを見られるチャンスだったのにと、内心で不満を漏らしながらホットスナックを取りに行こうとしたその時、彼の前には、先程まで全く存在を認知していなかった、客の行列が突然発生していた。 (嘘だろさっきまでいなかっただろうが……!)              時折発生する、直前までそんなに人がいるように感じなかったのに突如レジ前に生まれる行列現象。  内心でとても大きな溜息をついて舌打ちをしながら、悠馬はそそくさと応対を始めた直後、レジ前の人の数を感知して信号を受信した陽鞠が、一旦その場の作業を止めて、足早にレジへと移動した。 「お待たせしました! お次のお客様隣のレジへどうぞ!」  スムーズな動作でレジ前の準備を整え、迅速な対応としっかり聞こえる音声で客への移動を促す。  悠馬はチラチラと隣を見ながら、彼女が手を動かす様を見ているが、商品を動かす手に一切の無駄がなく、どのような商品を取っているかもしっかり捉えつつ整理をしており、商品まとめも完璧。眼球を単体で動かしたりと、効率化に余念がない。ホットスナックを取る動線も非の打ち所がない。  喋りだすタイミングやそれぞれの行動、自社サービスの案内もきちんと行っており、ところどころで機械的な面が垣間見えるところが、人間らしさの中に混じるアンドロイドらしさとして少々目立っていた。 「皆さんメリークリスマス! 今日が良い日でありますように! 袋はご利用になりますか?」  するとその途中、陽鞠は突然レジ打ちを一旦止めると、店内の客や隣の悠馬に向けて、明るくクリスマスを祝うセリフを、両手を拡げながら口にした。  それから、何事もなかったかのようにまたレジ打ちに戻り、それまでと変わらない丁寧な接客に戻った。  レジに表示されている時刻を見ると、ちょうど0:00。どうやら25日になり、クリスマス・イブからクリスマスになった瞬間に、その日を盛大に祝うセリフを吐き出したらしい。 「ありがとうございました! 今日が良い日でありますように! いらっしゃいませ! メリークリスマス!」  日付が更新された瞬間から、接客の挨拶にも特殊なセリフが付属するようになった。  本社から送信された接客プログラムに従って稼働する彼女は、一年の行事ごとにセリフが変わり、それが終わるとすぐにそれを止めるようになっている。  クリスマスの他にも元旦や新年度が始まる4月1日、その稼働地域ごとの行事やゴールデンウィークなど、柔軟に対応しているが、正確にかつ堂々とそれを行っている姿は、非常に機械らしいと同時にそういうものだと、悠馬を含めた客達は感じていた。   そうして、一気にホットスナックやケーキを消費しつつ、突然やってきたレイドバトルのような客の波がようやく静まるが、陽鞠はしばらく、悠馬と同じレジの隣に立っていた。  悠馬は、レジ打ちの間に過ぎていた食品廃棄の読み込みを進めている最中、チラチラと彼女の姿を見る。  客足は落ち着き、店内には今の所客は一人程度、それでも彼女は、接客プログラムに従うように背筋を伸ばして、誰もいない方向へ微笑みを浮かべたまま待機している。  その横顔はとても綺麗で、かつ胸のサイズがよりくっきりとわかる制服越しの横乳が、彼の劣情を刺激した。 (…………ちょっとくらいはいいか)  隣のレジまでの距離はそう遠くない。ちょっとだけ横にズレれば手が届く。レジの上に置いたおにぎりやサラダなどの廃棄類を一度かごに一つずつ詰めながら、彼は衝動のままに少しだけ移動し、右手を伸ばして、彼女の尻に触れて軽く揉んだ。 「どうしましたか、悠馬さん?」  とても柔らかいが、どこか芯の固さがきちんとある非常に触り心地の良い尻の感触を感じた直後、陽鞠は頭だけを横に向いて悠馬の行動に反応した。  嫌がっているような雰囲気は無く、純粋に自分に触れて何か用でもあるのか、というようなリアクションであり、正面を向いていた時と変わらない微笑みでじっと彼からの返答を待っていた。 「あーいや……………………なんでもない」 「そうですか。何かあったら、なんでも言ってくださいね!」  どう返そうかずっと悩み続けている間、悠馬はずっと彼女の尻を撫でては揉みしだき続けていた。  今まで感じたことのない、人の柔肌のようだがどこか違うものを感じる絶妙の感触。  元々彼女の性能がそこまで高くなく、百貨店や一部の個人店、SNSで見るような高性能機と比べると明らかに動作が稚拙な分、人工皮膚のクオリティもそれよりかはそこまで高くないのかもしれない。  だとしても、美少女の尻としての心地よさは、彼の心をざわつかせ、密かに男性器を固くさせるには充分だった。  悠馬はその後、今していることを正直に言うわけにもいかないと思い、適当に誤魔化すようなことを言ったが、陽鞠はそれをそのまま受け止めているかのようなセリフで笑顔を向け、再び店内へ視線を向き直した。  それと同時に、樹脂製の尻を掴んでいた手を離して元に戻す。 「…………ち、ちょっとこれ裏に運んでくるわ」 「わかりました。ここで待機していますね!」  たった今行った行為がまるで無かったかのような、今までと変わらない屈託ない反応を返した陽鞠。  背中を向けて、飲料コーナーと一体になっているウォークイン冷蔵庫の方へ移動しながら、右手を見つめて尻の感触を思い出すやつ悠馬。  この時間に入るまでの間に、コンドームを買っていったカップルや、誰かの家に向かう途中らしい美女、コスプレで胸元が空いていた美女、適当な酒とチキンを二人分買っていった男の通話から聞こえた女性の声など、クリスマス・イブという日だからこその、数々の劣情を催す事象が起きている分、彼の情欲はいつも以上にふつふつと湧き上がってきた。  今は一旦と、強い感情を抑えながら、廃棄食品を置きに移動し、いつも通りのバイト時間を過ごそうとしていたのだった。 * * *  時間は過ぎて、深夜の1時頃。一日を越したことでクリスマスとなり、店内の装飾や街中に飾られたイルミネーションが真価を発揮する日となった。  だが、今の彼には関係ない。この日は朝の6時までシフトを入れており、それまでは時間を見計らってチキンのホットスナックを追加していく時間となる。  特にこの日は、深夜0時を回った頃に外では雪が降り始め、ロマンチックなホワイトクリスマスになり始めていた。  足元が不安になる分客足は遠退きやすくなり、バイトにとっては楽が出来る確率が高くなる。 「はーー……客どもはいいよなあ…………今頃セックスしてたりするんだろうなー…………シフト入れたの俺だからなんにも言えねえけど」  完全に客足が落ち着き、来店する人も十数分に一人レベルで少なくなってきた頃、悠馬は今頃イチャイチャしているであろうカップルを羨ましく思いながら溜息をついていた。  こういう時に肌を擦り合わせ、キスをしたり乳を揉みしだいたり、思いっきり性欲をぶつけるようなセックスをしたみたい。  歳相応か平均よりも強めな性欲が湧き出しながら、ようやく生まれた余裕の時間を過ごす。  それまでは作業をしたり、客との応対をしたりと思考をそちらに割いて色々考えずに済むタイミングが続いていたが、落ち着いた途端に本来の色んな思考が復活するように湧き上がってくる。 「お、彼女アンドロイドキャンペーン……こんなのやってたのか…………あ、締切さっきかよ……」  携帯端末を軽く弄っていると、SNSのタイムラインに流れてきた、自分好みの彼女がクリスマスに届けられる懸賞キャンペーン。  ちょっと参加してみようかと、今の気持ちや衝動もあってアクセスしてみたが、終了時刻はクリスマス・イブの23:59:59。懸賞結果も終了直後から間もなく発表され、その日の朝に届けられる。  もう一時間近く過ぎてしまっており、元々当たるとは思っていないが参加も出来なかったことで、小さな不幸の積み重ねという部分でなんだか嫌な気分になっていた。  彼女が欲しい。可愛い子と性行為がしたい。クリスマスにそういうことがしたい。今の衝動と重なった懸賞内容が呼び水になり、そんなことがよりハッキリ頭を巡る段階になった直後、ちょうど隣でレジに立っていた陽鞠が、彼の方を向き声を出した。 「悠馬さん。私、充電に行ってきますね!」  隣に立っていた陽鞠が、相変わらずの明るい声で彼に一言言った後、そのまま事務所の方へ戻っていった。  陽鞠は常にヘルプ的立ち位置で存在しており、いつもは充電をしながら事務所で待機している。  しかし、そこまで性能の良い機体ではない分、バッテリーの性能もそこそこ程度で、現在街なかで稼働していたり個人が所有する機体と違って24時間連続で動き続けることもできない。  その為、バッテリーが残り僅かになると、こうして擬似人格に乗せたメッセージを伝えて事務所に戻り、充電に入っていく。  特にここ2〜3日は、クリスマス期間なのもあってシフトに入っている者が少なく、連続で稼働していた。  その為、このタイミングで充電に入らざるを得なかったのだった。  悠馬は止めることもなく、事務所に向かっていく彼女の姿を見つめていたが、その時に彼女の揺れる胸や可愛らしい横顔、扇情的なボディラインに、先程掴んで揉んだ尻が視界に入った。  それが、彼女欲しい彼女欲しいと思ってばかりな彼の劣情を刺激した。 「………………陽鞠でなんとかならないかなあ」        ああいう可愛い彼女とセックスしてみたい。そんな衝動が、彼の中に強く溢れてくる。  先程、尻を揉んでも反発自体はされなかったことから、よりその奥まで行ってみたいという衝動が強くなり始めていた。  幸いにも今は深夜帯。この時間帯になると、平常時ですら人入りはゼロに等しくなる。その上、外の雪は先程よりもさらに強くなっており、深夜に誰かが来るにはかなり億劫になるであろう状態となっていた。    「………………今のうちにやってみるか……?」  密かに男性器が固くなっている悠馬。視線はレジ側から繋がっている事務所の扉の方に自然と向いていた。  今なら、陽鞠を使ってこのどうにもならない衝動を発散できるかもしれない。セックスはできなくとも、胸を揉んだり顔を埋めたり、キスしたりはできないだろうか。  今日来た客の様子からも、コンプレックスのこもった羨ましいという感情と性欲が重なり、自然と足が事務所の方へ向かっていく。  そして、そのまま彼は事務所の扉を掴み、ノックもせずに開いた。 「ちゃんと充電中か……」  扉の先にいたのは、店長含めた他のバイト達も着替えたり、やり取りをしたりと色んな使い方をする事務所の端で、壁際に設置されたパイプ椅子に座ってぐったりとしている陽鞠の姿だった。  すぐ側には、コンセントに刺さった充電ケーブルがあり、それは彼女の首筋まで伸びている。  陽鞠は充電中も、背筋を伸ばして両手を太ももの上に置いた、お淑やかさすら感じる座り姿勢で待機しているが、目蓋を開いて微笑みを保ったまま動かなくなっている姿が、人ではない異様さを際立たせていた。    すぐ側の机では、コンビニ内の監視カメラ映像を写し出したモニター画面や、店員に知らせる小さな張り紙や書類、冷凍庫や掲示物など、事務仕事に必要なものやある種の物置代わりになっている箇所まであり、事務所内は雑多という言葉が似合う内装になっていた。  悠馬は、やるなら今しかないと、一度周囲を確認して客が誰一人いないことを確認してから、意識していない大きな歩幅で事務所に向かい、真っ直ぐ陽鞠の目の前までやってきた。  目を開けて微笑みを保ったまま座り込んでいる彼女の目の前で手を振ってみるが、リアクションは一切帰ってこない。  チラっと視線を監視カメラの方に向けた後、少しだけ動いてカメラにちょうど手が写らない位置に調整し、今度は彼女の左胸を軽く掴んだ。  上と下で服の質感が違う分、手に感じる感触もまた変わるが、彼女の左乳はある程度の固さがありつつも確実に柔らかく、尻の方よりもかなり揉みがいのある極上の質感をしていた。  思わずこのままずっと掴んでいたくなるような気持ちになりそうだが、充電中の陽鞠は全くリアクションを返してこない。  悠馬はここで一旦手を離し、一気に早くなった呼吸を整える。 「やわらか……!」   初めて揉んだ女性の乳。作り物で本物ではないことはわかっているが、それでも関係のない、陽鞠のそれを揉んだからこその魅力がある。  今、悠馬の心臓は高鳴り、股間が固くなっている。脳内は、とにかく彼女とセックスがしたい。性器がついたりしていなくても、絡み合いたいという衝動に埋め尽くされている。  悠馬はもう一度、監視カメラから店内を確認して誰もいないことを再確認してから、迷いなく陽鞠の首筋に繋がった充電ケーブルを引き抜いた。 「………………充電ケーブルの接続が切断されました。充電を中止します………………あれ、悠馬さんどうしましたか?」  ケーブルが抜けた直後に、いつもの彼女とは全く違う機械的で無感情なセリフが吐かれた後、擬似人格が起動し先程と変わらない声色になる陽鞠。  悠馬へ何の用があるのかと質問した直後、彼は何も答えるようなことはしないまま左腕を掴み、強引に洗浄室へと引っ張っていった。  アンドロイドが導入されているコンビニ店舗には、全身を洗浄する為のシャワーと洗剤が備わった洗浄室がほぼ全店舗に作られている。  人間と同サイズの備品かつ自律稼働する道具という観点から、接客を行わせる以上定期的な洗浄は必須と判断された結果、与えられた勤務時間が終了した後は自動で自ら全身を洗い清潔にさせてから、待機状態に戻らせるようにしたことによるものである。  洗浄室には監視カメラが設置されておらず、人間も使用可能であることから、人間の従業員にもシャワーが浴びられるという点で好評を得ている。  我慢ができなくなった悠馬は、その洗浄室に彼女を連れ込み、誰にも見えない状態で一対一の環境を作り出した。  陽鞠は変わらぬ表情で笑みを保ったまま、じっと視線を反らさず彼のことを見つめ続ける。 「今の所お客様の応対は大丈夫ですか? 今はクリスマスなので、クリスマスチキンとサニチキは……」  自分がどういう状況かもわかっていないような彼女の言葉を無視して、悠馬は一心不乱に彼女が身につけている制服を脱がせ、その下のシャツからボトムスまで全て脱がせていった。  陽鞠は一切抵抗せず、店内の時と同じようなセリフを喋り続ける。  店内だと違和感が無くても、こんなことをされても同じこと言い続けているのは流石にスペックが低いと悠馬が実感しながら脱がせていくと、そこには乳首の備わっていない豊満な生乳と、なぜか存在している女性器ユニットが股間に存在していた。  女性器の質感自体は、本物のようなそれではなくかなり精巧なオナホというような雰囲気だが、彼はそもそも性器が付属していることそのものに驚愕した。 「マジかよ……ついてるとは思わなかった……!」  それを目当てに連れ込んで脱がせたが、企業が支給して現場で使用する為のものなのだから付いていないのが当然だと考えていた。  だが彼のダメ元が見事的中した。一瞬時間を見つつ、彼は下半身を露出して男性器を剥き出しにして、全裸姿の陽鞠に背中を向けさせる。  周囲を見渡し、何かローションに使えるものは無いかと見回すと、洗浄室に備えられている棚の中に、いかにも業務用という雰囲気をした無骨なパックを見つける。  そこには「アンドロイド用人工体液」とだけ書かれており、軽く手の上にそれをこぼすと、まさしくローションのような感触をしていた。 「ローションだよなこれ……まあ使ってみるか」  思い返すと、陽鞠を始めとしたアンドロイドは、口内や瞳が人間のように潤っていた気がする。朧気な記憶からそんなことを考えつつも、とりあえず使わせてもらおうと、悠馬は軽く手にとってそれを女性器ユニットの外性器部分に塗りたくり、自分の肉棒にも軽く塗った。  そして、滑らないように軽く洗い流してから陽鞠の姿勢を前屈みにし、腹部を掴むと、一気に膣内へ肉棒を挿入した。       「もうすぐ廃棄の時間が近づいてるので、そろそろ次の廃棄の準備をし────」  それまでは、膣内に挿入される直前だというのに、時間帯ごとの彼女らしい口調での発言をし続けていた陽鞠。  だが、それを無視して挿入された瞬間、突然彼女の発言がぶつ切りになったように停止し、動作そのものも無くなった。  陽鞠の膣内は明らかに冷たく、感触もそこそこいい値段のするオナホ程度のもの。  店内の暖房だけでは足りていないであろう冷えが伝わり、人間のそれとは違って肉感的な温かさもない。まだ性行為自体したことのない悠馬でも、わかりやすく人間そっくりではなく、ちょっといい性玩具くらいなんだろうと感じていた。  しかし、発言が止まってから間もなく、突如膣内がうねりだし、暖房がついたように徐々に温かくなり始めた。 「女性器ユニットの使用ですね! 悠馬さんの使用は今回が初めてですが、このような動作で大丈夫ですか?」        挿入によって何かスイッチが入ったように、軽く全身を前後させながら、真下を向いた乳を揺らす陽鞠。  ひとりでに膣が動き出したかと思うと、今度は主導権を握ったかのようなガイドをし始めた。  未だ膣肉は冷たく、膣壁の動作も単調気味だが、そこには間違いなく人では得られないであろう快感が伝わってきた。 「あ、ああ……えっこんな気持ちいいのか……え?」  いきなりやってきた予想外の快感に最初はそのまま流していたが、彼の思考は陽鞠の発言を聴き逃がせなかった。  「俺の使用はってことはもう、他にも使われてるのかよ!?」   「はい! 私の女性器ユニットは、従業員の性処理の為に備わっていますから! 他にも、店長の有島さんや、同じアルバイトの幸崎さんや…………」 「待て待て! 今言わなくていいから!」   同じスタッフとして稼働すると同時に、従業員のメンタルケア、性欲処理も兼ねた機能が備わっていたことを、悠馬は全くと言っていい程知らなかった。  確かに彼は、冬休みに入り初めて夜勤に入っていたが、それ以前からも彼女と共に仕事していることはあった。が、いくら身体がエロく美少女ぶりがすごいといっても、そういう機能があるという話は全く聞いていなかった。  そういえばと、つらつらと挙げられた使用者の名前を聞くと、より本社に近い店長はまだしも、他に聞いた名前は自分以外の夜勤に入っている人物の名前だった。  つまり彼女は、この店でのオナホのような扱いを夜は受けていると言っても過言ではなかった。 「マジか……最初からそうだったのかよ…………」  こういうことならば遠慮する必要はなかった。そういう使い方はできるのかともっと早めに聞いても良かったと後悔し始める悠馬。  なんだか好きな相手に恋人がいるといったものとはまた別の独特なダメージを負ったが、彼女の単調な動作ながらもきもちいい女性器ユニットの感触は、セックスを継続させた。  膣肉はどんどん温かくなり、より擦れ心地も良くなっていく。  じわじわと人工愛液が溢れて滑りがよくなり、いやらしい音も増加していく。 「もう少しで射精しそうですね! 私の女性器ユニットに、遠慮なく出してくださいね!」  レジに出ている時と全く変わらない元気な口調で射精を促す陽鞠。目の前の官能的な姿とあいまって、なんとも言えない奇妙な感覚と興奮が同時にやってくる。  少なくとも今は、気持ち的には彼女とのセックスが気持ちいいという方が勝っていた。  見たことのあるセックスの映像や描写を参考にして腰を突きつつ、陽鞠の膣動作に引っ張られながら、性欲のままに強く押し付ける悠馬。  そして、耐えられなくなった彼は、機械仕掛けの模造品ながらも初めて女性の膣内で射精した。腰を掴む力が強くなり、より彼女の身体と蜜壺の温度を感じやすいように腰を押し付けた。  陽鞠は、注がれた精液を変わらぬ微笑みのまま子宮ユニット内に吸引し、いつもの性行為時と同じように溜め込んでいった。  程よく温かな樹脂肉と、簡易的ながらも良い具合の電動オナホのような動きが重なり、悠馬は今まで自宅で行っていた自慰の時とは比べ物にならないような気持ちよさを味わった。  射精が終了したことを確認すると、陽鞠は姿勢そのままに、可動域いっぱいに首と肩を動かして彼の方を見る。 「お疲れ様でした、悠馬さん! いっぱい出ていましたね!」  陽鞠の言動からは、セックス直後のような情感を全く感じない。それどころか、そもそも喘ぎ声ひとつすら上げていない。  喋りには感情が籠もっているのに、状況と状態にはあっていない表情と声色をしている。ただそれをひとつの業務として処理し、小さく身体を震わせているアンバランスな姿は、悠馬にとって今までで一番非人間的でアンドロイドらしい雰囲気を感じたような気がした。 「まだ男性器は勃起していますね! どうしますか? 性行為を続け──────」  震える膣肉内のセンサーから、まだ勃っている肉棒の状態を検知し、性行為をこのまま継続するか提案しようとする陽鞠。  しかしその直後、彼女の音声が突然途切れ、そのまま力尽きたように崩れ落ちた。膣圧も消え、足の支えも無くなり、完全に膝を曲げてのうつ伏せ姿勢となった。 「はぁ…………はぁ…………あれ?」  今までで一番気持ちいい射精の感覚に浸っていた彼は、いきなり聞こえてきた重い音に、現実に引き戻された感覚になった。  視線を移すと、先程までペラペラとスムーズに喋っていた陽鞠が洗浄室の床に崩れ落ちていた。  乳首の無い両乳が床に潰れてくっつき、右頬が体重に潰れてたわんでいる。  膣内動作も瞬間的に消失し、指すらもぴくりとも動いていない。どうしたのかと軽く尻や背中、頭や頬を叩いてみるが、一切の反応がない。 「………………まさか、バッテリー切れか?」  ここで彼は、こうなる直前に彼女が充電の為に事務所に戻ったのを思い出した。  それを強引にケーブルを抜いて、洗浄室へ引っ張ってきたのだから、バッテリーが切れかけている時にこのような激しい動作をさせたのなら、そうなってしまっても当然である。  欲望に身を任せた行動によって思わぬ事態になった悠馬はどうしようかと慌てるが、動かなくなった彼女をじっと見ていると、まだ収まらぬ性欲から劣情が湧き出してきた。 「………………もう一回だけヤっとくか」  彼は一度、人間女性よりも明らかに重い陽鞠の身体をひっくり返す。  彼女の表情は直前の明るい笑顔のまま固まっており、音声に合わせて動いていた口の動作の途中で静止している。  改めてわかる乳の大きさと、非常に精巧な見た目であり、女性器がありながらも豊満な乳に乳首がない姿が、なんとも言えない奇妙なギャップをもたらしていた。  悠馬は、まだ温かく人工愛液もじんわりと排出されている肉壷にもう一度肉棒を突っ込み、一方的に犯しているような体位で腰を振り始めた。  先程までは、ある程度のコミュニケーションを取っているようだったが、今はまるで豪華なオナホを使っているみたいに感じる。  刺激に釣られて陽鞠の身体が力無く揺れ、勢いに任せて先程は制服越しだった両乳を揉みしだいたり、谷間に顔を埋めて両手で挟んだりと女体を存分に堪能する。  死んだように反応は無く、リアクションも無い。だが、彼女はまた動くという信頼性もあり、何も気にせず容赦なく使えるという気持ちが、停止した彼女を犯すことへの抵抗感を無くしていた。  いやらしい音を立てて、冷たくなり始めている生殖器官の模造品をひたすらに犯す悠馬。  そして、彼は欲望のままに二度目の射精を行った。  今度は受け止めるような挙動も無く、注いだ分が、膣内に残っていた人工愛液と共に外へ漏れ出る。  短い間に二回の射精を果たした悠馬は、乳を鷲掴みにして揉みながら、思いっきり呼吸をして気持ちを落ち着かせた。 「……………………あれ、これどうすんだ」  二度も機械人形の膣内に射精し、スッキリしたところで頭がだんだん冷静さを取り戻して来る頃。  彼は陽鞠との肉体的な時間があまりにも気持ちよかったことで一時的に脳内から吹き飛んでいたが、今はバイト時間真っ只中。人がいない時間を狙ったとはいえ、衝動のままに二回目に突入して誰もいない時間を伸ばしたのは流石に不味いと冷静になった。  それと同時に、陽鞠へ中出しした後はどうするのかということも考えていなかった。  実際のところを彼は知らないが、そもそもの性処理を想定しているのならば、おそらく性行為を行った後は自分で女性器ユニット内の精液を洗い流して処理してくれるはず。  バッテリーが切れてラブドール状態の彼女は自分で動くことはできない。つまりは彼自身がどうにかするしかない。  それを察した悠馬は、悪い意味でクリアになった脳で一気に眼と手足を動かし、シャワーを手に取り彼女の外性器を片手で大きく拡げた。  勢いよく、ついさっきまで愉しんでいた性器にお湯を当て、片手を奥まで突っ込んで自分の精液を掻き出して洗い流す。  冷えてちょっとだけ固くなりつつあった樹脂製の性器のめんどくささを感じつつ、専用洗剤も使って膣内で泡立て、子宮ユニットまで手洗いしていく。  急いでいる分力が入りつつ、陽鞠の下腹部が下から突き上げられているように浮き上がり、腰がちょっとだけ浮く。  そうして急いで洗った後は、入荷された商品から取って置いたであろうタオルを手に取り、割れ目と体表面を拭いてから衣服を全て着せ、両脇に腕を通して彼女を洗浄室から引っ張り出した。 「おっも……!」  樹脂と金属で出来た美少女の重さを全身に感じながら、なんとかコンセント近くまで引っ張り出し、椅子に座らせる余裕もないまま床に寝かせ、急いで首筋のカバーを開いて充電ケーブルを接続する。  一度だけ陽鞠の身体が痙攣した後、接続端子横のランプが点滅する。無事に充電が開始されたことを確認すると、非常に慌ただしかった時間がようやく終わり、悠馬は思わずその場でへたり込んだ。 「良かったなんとかなった………………いやいやいや良くねえ! 廃棄廃棄!」  時間は既に2時を過ぎ、次の廃棄の時間がとっくに過ぎている。  二度の射精を終えたあとも休まる暇は無く、悠馬は急いで制服を着直して店内に戻り、そそくさと廃棄商品をカゴに入れてレジへ戻った。 「はーーー……あっぶなかった…………けど、かなり良い思いはさせてもらったな…………陽鞠を使えるとかぜんっぜん知らなかったわ」  ひとまずいつもの作業に戻りつつ、彼は脳内で彼女の柔らかな膣肉の感触を思い返していた。  他のバイトや店長は既に使っていたというのが癪だが、これはある意味自分へのクリスマスプレゼントなのではないかと一応ポジティブに考えながら、ずっと可愛くてエロいと思っていた美少女とのセックスの記憶を、思い出として刻んだのであった。  なお、この後彼は慌てて、性行為している間に誰か客が来ていないかを監視カメラの映像から確認した。  二人やってきていたが、幸いにもセルフレジを使用してくれていた為事なきを得た。  悠馬は今後油断しないよう、やりすぎないように気をつけようと誓ったのだった。 * * * 「今日もお疲れ、悠馬くん」 「お疲れ様です悠馬さん! メリークリスマス!」  そうして、シフト交代の時間となる朝6時を迎え、ようやく帰宅する悠馬。  店長の隣には、充電が50%程完了したところで起動し、朝5時頃から何事もなかったかのように復帰した陽鞠が、相変わらずのイルミネーションのような笑顔で彼に労いの言葉を向けていた。  帰宅の道中、悠馬はひとつだけ購入したクリスマスチキンを齧りながら、足元に気をつけつつキンキンに冷えた帰路を歩く。 「さっみぃ…………よくこんな朝っぱらから出ようと思うな……」  道中では、何かのイベントや約束があるのか、朝6時過ぎにも関わらず、人間同士のカップルや、アンドロイドを彼氏彼女にして歩く男女の姿がそこかしこに見られた。 「…………いつかアンドロイド買いてえなあ。帰って陽鞠みたいなのがいたら、最高なんだろうなあ」  最初は性行為を臭わせるカップルや、買い物後の恋人と共にする時間を楽しみにしていそうな客に対してイラつき続けていたが、その後で思い出に深く刻まれた、コンビニ備品の美少女アンドロイドとのクリスマスセックス。  例え性能の低い機体であっても、その体験は彼にとってはとても深く幸福的なものとして刻まれた。  いつかは自分のものである女性型を手に入れて、帰ったら玄関で迎えてくれて、一緒に時間を過ごして気持ちいいセックスが出来たらいいなあと、街行く人間機械様々なカップルを眺めながら、だんだん眠くなってきた目を擦りつつ、理想を抱いて歩いていった。  こうして、彼にとっての今年のクリスマスは、ひとつの忘れられない思い出となったのだった。  これは、同じ都市、同じ日のクリスマス・イブとクリスマスの中で起こった、様々な場所での女性型にまつわる性欲的、情欲的、肉欲的、誤作動的な話の数々である。


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