会社のすぐ傍にある、紫陽花が咲き誇る茶処。
梅雨の季節、雨に濡れる紫陽花は一層その色を深くし、
店の風情を際立たせていた。
昼休みになると、僕は決まってそこへ向かった。
目的はただ一つ、そこで働く彼女に会うためだ。
明るい髪のポニーテールが印象的な彼女は、
いつも優しく微笑んで迎えてくれた。
雨の日の憂鬱さも、彼女と交わす数分の会話で、
どこかへ吹き飛んでしまう。
彼女に会う時間が、日々の仕事の活力になっていた。
それが当たり前のように続いていたある日、
僕はパタリと店に顔を出せなくなった。
緊急のプロジェクトが舞い込み、朝から晩まで会社に缶詰状態。
睡眠時間を削って仕事に没頭する日々が、一週間ほど続いた。
疲労困憊で、彼女に会いに行ける余裕もなかった。
仕事が一段落し、ようやく落ち着きを取り戻した僕は、
真っ先に茶処へと向かった。
閉店間際、店の明かりが消灯したタイミングで、
彼女の姿を見つけた。
レジを締めながら、少し寂しそうに窓の外を眺めている。
俺の姿に気づいた彼女の顔に、驚きと安堵が入り混じった表情が浮かんだ。
「…こんにちは!お元気でしたか?最近いらっしゃらないので心配していました。
ただ、今日はもう閉店でして…」
彼女の笑顔に相反し、潤んだ瞳が僕の胸を締め付けた。
これまで、ただのお客としてお店に通っていた僕に
寂しさを露わにする彼女を見て、僕の気持ちは確信に変わった。
「ごめんなさい。仕事で少しトラブルがあって、なかなか来れなかったんです」
そう言って、僕は一歩、彼女に近づいた。
彼女の髪が、店の奥の僅かな光に照らされて、柔らかく揺れる。
「実は…ずっと、君に会いたかった」
正直な気持ちを伝えると、彼女の頬が赤く染まった。
彼女が店の入り口の扉をそっと閉めた。
そして、カラン、とドアベルが鳴り、静寂が訪れた。
俺は彼女の手を取り、優しく引き寄せた。
「君も、同じ気持ちだと嬉しいんだけど」
そう言って、彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。
紫陽花の香りが漂う薄暗い店内で、二人の吐息が混じり合う。
初めて触れる彼女の唇は、想像以上に柔らかく、甘かった。
僕のことを受け入れる彼女。
そのまま彼女を抱き上げ、店の奥へと進む。
そして、彼女の柔らかな髪が散らばった…