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さっど【SAD】
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道化のプリンセス 後編




2.


ーーーーー「なにすんのよっ!これ取りなさいよっっ!!!!」


絶望に沈んだうさぎの意識を覚醒させたのは、いつの間にか再び閉じられた緞帳の向こう側から微かに聞こえてくる甲高い声だった。

聞き覚えのあるその声の主は誰だったか…


ーーーーーちびうさっっ!!?!


朦朧とした思考がその名に辿り着いた瞬間、彼女の意識は完全に覚醒した。


「ぐっ…くううぅぅ!!?」


強制変身解除のダメージが抜けきらず軋む全身に呻き声を漏らしながらも懸命に身をよじり、声の方向を見やる。

だが閉ざされた視界の向こうから伝わってくるのはちびうさの悔しげな声と下卑た興奮に彩られた歓声のみ。

そしてその歓声はそこかしこでボルテージが上がり、妖しげな嬌声が増してゆく。


「ち…ちびうさっ…!どうしっ…て!何が…一体…っ⁉︎」


胸が掻き毟られるような不安と焦燥の水位が上がり、いうことを聞かない身体を引きずるようにして正面のガラス壁へとようやくにじり寄ったうさぎの耳に、檻の中の彼女だけに聞こえるような憎々しげな妖婆の声が響いた。


『ギヒヒッ! ようやくお目覚めですかの『元』月のプリンセス? 姫がお休みになられてしもうた故、今は飛び入りのピエロショーで場内は盛り上がっておりますよ? ギヒヒヒヒ!!』


「飛び入り…⁉︎ ピエロッ… 何を言って…るのっ!!?」


『焦らずとも今見せてくれるわぃ、間抜けなピエロの姿をのぉ〜〜? ギヒヒヒッ!!!』


うさぎの不安が飽和点を迎える寸前、唐突に緞帳が開かれステージ上の光景がうさぎの視界に飛び込んできた。


「ちびムーンッッ!!? こ、このッッ…よく…もっっ!!?!」


うさぎは絶句し、血が出るほどに唇を噛む。

そこにはスポットライトを浴びるちびうさ…スーパーセーラーちびムーンの背中があった。

だがそれは将来有望なセーラー戦士の卵としてではなく、彼女と同様に虜囚としての姿だった。

おそらくは彼女を救出しようとこのテントに忍び込んだところを見つかったか、あるいは自分と同様に罠にかけられてしまったのか。

セーラースーツが所々破損し汚れているところから前者かもしれない。

だが、屹立したその小柄な肢体の頸部にはステージ中央に出現した高さ80センチほどの金属支柱と太い鉄鎖で繋がれた首枷が嵌り、自由を奪っている。

緞帳が動いたことに気づいたのかハッとしたように身を翻し、うさぎと視線が合うものの反応はない。

やや消耗は隠せないものの、負けん気の強そうな眼光には未だ精気が宿りこちらを見遣っている。


「ち…ちびムーン⁉︎」


『ギヒヒッ! 向こうからこちらは見えぬ、安心せい』


客席の邪な歓声のトーンが変わった。

彼らもまた緞帳が開かれた事に気づき、またマジックミラー状になった壁面が何を意図したものなのか薄々と理解し、残酷な対面ショーを期待しているのだ。

一人状況が見えないちびムーンにも会場の空気が変化した事には気づいたのか、戸惑いながらも再度牢内のうさぎに背を向け客席を睨みつけているようだ。


「くっ…ちびムーンをどうしようっていうのよっっ!!?」


『はてさてどうしてくれようかのぉ〜〜? あの未熟な愚か者には仕置を兼ねて道化師らしゅうして貰いたいところじゃがのぉ? ギヒヒヒッ!!』


惚けたように嘲笑うジルコニアだが、その内心もまた笑いが止まらなかった。

放置しておけばデッドムーンにとってセーラームーンに比肩する災厄となるであろう未来の最強セーラー戦士…未だ成長途上にも拘わらず、容易ならない力を発揮する少女戦士をどうしたものかと苦慮していたのだが、向こうからノコノコとこのサーカス要塞に現れてくれたのだ。

そう、まさにこの地で古来から使われていると聞く諺『飛んで火にいる夏の虫』要塞機能と妖魔•魔獣群を総動員して歓迎し、首尾よく生け捕りにできた。


ーーーーセーラームーン共々に八つ裂きにしてやりたいところじゃが、それは出来ぬ… またも魂が何処かに転生し新たな災厄が早晩芽吹くであろうからの…


仇敵達の生命を絶てぬジレンマに舌打ちしつつも、その代案は存在した。


ーーーーならば心を潰し殺してくれよう… 己の無力さに二度とセーラー戦士として戦えぬほどの呪詛を刻み込んでくれるわいッ ギヒヒ!!!


居室の中空に浮かびステージ上や客席、虜囚達の表情や仕草を鮮明に映し出す直径1メートルほどの水晶球を凝視しつつ、妖婆は舌なめずりした。



「この! なんとか言いなさいよっっ! 大勢で私を捕まえてもそれ以上ナンにも出来ない意気地無ししか居ないのデッドムーンって!!?!」


『やれやれ騒がしい赤ん坊じゃのぉ〜〜? せっかく貴様が会いたがっておったゆえ連れてきてやったというに礼儀知らずな……ギヒヒヒッ!!!!』


「!!?!」


『ほれ、こやつに会いたかったのじゃろう? 感動のご対面じゃ… 後ろを見るがよいギヒヒヒヒッッッ!!!』


「うっ…うさぎぃぃぃぃーーーーーっっ!!?!」


ジルコニアの言葉に再度振り返ったちびムーンの表情が驚愕に固まる。

先刻は自分の背を晒しものにしているだけのつまらない小道具と思っていた鏡が透明のガラス壁と化しており、その向こう側に制服姿のうさぎが監禁されていたからだ。


「どっ…どうして!!? 変身はっ…! 幻の銀水晶はどうしたのよっっっ!!?!」


見るからに消耗しているうさぎの胸から銀水晶を収めたブローチが消え失せている事に気づき、蒼白となるちびムーン。


『ギヒヒヒッ! オツムの緩そうな貴様にもわかっておろうて…? セーラームーンはもうおらぬ…そういうことよ、ギヒヒッ!』


「なっ…そんなの…! そんなことあるワケないわっ!!! セーラームーンは強いんだからッッ!!!? 」


『ではそこの箱の中におるのは誰じゃ〜? セーラームーンはどこにいる? ギヒヒヒヒッッ!!!』


「くっ…ううっ…!」


冷厳とした事実を告げるジルコニアの嘲笑に、ちびムーンの反駁も途切れざるを得なかった。

檻の中のうさぎがどれほど酷な扱いを受けたのか容易に想像でき、怒りと共に容易くセーラームーンから銀水晶を奪い取ったデッドムーンの力への戦慄が背筋を凍らせる。


『さて、会いたがっておった『元』セーラームーンに会わせてやったのじゃぁ… おヌシにも我らが公演に協力してもらうからのぉ…? ギヒヒヒッ‼︎』


「こ、公演…!!? だ、誰があんた達に協力なんかっっっ!!!?」


半ば呆然としていたちびムーンだったが、そのふざけた言葉に激昂し何処からか見ているのだろう姿なき妖婆を睨みつけるようにして虚空へ言い放つ。


『いいや、きっとする、するともさ…ギヒヒヒッ‼︎』


「きゃああああぁああぁぁあッッッ—————ッッッ!!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜ッッッ!!?!」


「う・うさぎっっっ!!?」


突然薄暗いステージを照らす赤い光と絶叫にガラス檻を見遣れば、逃げ場もない狭い空間で暗赤色の電撃網がうさぎの全身を包み込み、各所でスパークの火花を散らしている。

即死したりしないよう出力は調整されているのだろうが生身のうさぎ、しかも少なからぬダメージを負っているだろう今の身体ではどうなるかわからない。


「やめてっ!!! やめなさいよーーーーーーっっっっ!!!!!」


『ほぉぉ……? では我らの公演に協力する…というんじゃなセーラーちびムーンよ? 結構結構…ギヒヒヒッ!!』


「ひ…卑怯者…‼︎ わ…わかった…わよっ……!」


悔しさと己の無力さに唇を噛みながら悪意に満ちた妖婆の要求を呑む、呑まざるを得なかった。

このままではうさぎは嬲り殺されかねない、選択の余地は無かった。

自身拘束されているこの状況ではうさぎを檻から救出し、共に脱出することは限りなく不可能に近くマーズやヴィーナス達の救けを信じるしかない。


「言うこときいてあげるわよっ! だから出演料に幻の銀水晶よこしなさいよーーーーっっ!!?!」


憤然とした口調と必死で作った強気な表情でちびムーンは叫んだ。

無論ちびムーンもジルコニアがせっかく奪った幻の銀水晶を返すなどとは思っていない、せめてもの反撃と時間稼ぎだ。

そのつもりだった。


『幻の銀水晶… ああ、後生大事にセーラームーンが抱えておったあの石ころの事か? ギヒヒ!よかろう… 我らの云う通りにすればくれてやるわぃ、ギヒヒヒッッ!!』


「えっ…!!? や、約束よっっっ⁉︎」


ジルコニアの反応は意外なものだった、あっさりと承諾したのだ。

どこまで信用できるか知れたものではないが、もしかするとデッドムーンは銀水晶が秘めた力を知らないのかもしれないという事も考えられた。


(と…とにかく今は時間を稼がなきゃ…どんな恥ずかしい事させられても、みんなが来てくれるまでは頑張らなきゃ‼︎)


デッドムーンの思惑がどうあれ、多少なりとも時間を稼ぐ事は出来そうだった。その代償がどれほど苦痛や恥辱に満ちたものであろうとも。

『ギヒヒヒッ! しかしナンじゃのぉ… せっかくの事に可憐な妹分が来てくれたというに今ひとつ盛り上がりに欠けるのぉ… お主の事など目もくれぬ連中が随分と多いではないか?』

「……!!?」

『やはりプリンセスに比べればこんなちんちくりんでは役不足…ということかのぉ〜〜? ギヒヒヒッッ!!!』


うさぎの惨状とジルコニアの嘲弄に気づかなかったが、改めて客席を見渡せば妖気で狂わされギラついた欲望を隠そうともしない視線で凝視し下卑た歓声を挙げてくる男たちも多いが、ステージ上のちびムーンには目もくれず、何かに群がっているような集団がそこかしこに存在し、時折嬌声が響き渡る。


(な…何? 何をしてるのこの人達…⁉︎)


悪い予感は一瞬ごとに募るが、実際何が起きているのかは見当がつかなかった。


『さてさて皆様〜〜 いま一人の月のプリンセスご来場の栄誉を賜りましたゆえ、これより貢ぎ物を献ずる事といたしますわぃ… ご希望の方は一列にお並びくだされ、ギヒヒヒッ!』


ジルコニアの新たな言葉が反響すると同時、それまで下卑た嬌声を上げ続けていた男たちの動きがピタリと止まった。

ステージ上のちびムーンからは客席の様子はわかりづらかったが、何かのスイッチが入ったかのようにうっそりとした動きで男たちは列を作り、唐突な静寂が支配する中をこちらに近づいて来ている事は判った。


『そうれ、謹んで麗しき姫様方に進呈してくだされ、皆様方の敬愛の念を存分に込めてのぉ〜〜〜〜 ギヒヒヒヒーーーーッッッ!!!』


まさしく正真正銘邪悪な魔女の呪文といった響きでジルコニアの言葉が続くのと同時、先頭の男の腕が翻り何か細長い物が宙を飛び、ベチャリとした湿音とともにちびムーンの傍らに着地し、飛沫がちびムーンの上気した頬に数滴降りかかった。


「なにコレっ…⁉︎ く、臭っっ!!?」


その生温かくネットリとした飛沫は、初めて嗅ぐ強烈な生臭さを持っており、思わずちびムーンは身体をよじりながらたたらを踏む。

正体不明の悪臭に狼狽するちびムーンの周囲に次々に投げ入れられる物体が同じようにネバついた音を立てながら落着し、その都度生臭い悪臭は濃度を増してゆく。


「えっ…こ、これってっっっ…!!?! セーラームーンの…!!?」


鼻孔のみならず、目を刺すような悪臭の刺激に思わず目を閉じていたちびムーンがようやく薄眼を開けると、正面の床に見覚えのあるホワイトピンクの薄絹があった。

それは間違いなくスーパーセーラムーンの特徴的なコスチュームパーツである腰リボンに間違いなかった。

だが、その艶やかな光沢を湛えたリボンはその光沢を覆い隠すように幾つもの悪臭を放つ白濁色の粘液溜まりが糸を引き合い、ぐしょぐしょとなってあたかも汚れたボロ雑巾のような無残な姿をちびムーンに晒していた。

ハッとして周囲を見渡せば最初に飛んできたのは右のロンググローブであり、リボン同様に白濁粘液まみれの表面のみならず、乱れた形で床に投げ捨てられたその内側にも大量に存在しているのかヒジ側の開口部からジュクジュクと溢れ出てきている。


「セッ…セーラームーンのスーツに何したのよっ!!? このクサいのなんなのよっっっ!!!!?!」


『ギヒヒヒッ!! 子種汁を見るのも嗅ぐのも初めてかセーラーちびムーン? それはオスとメスがまぐわった時に、オスがメスのまんこに突き刺した肉棒の先端からメスの子宮に吐き出すモノよ…』


「えっ……!!?」


思わず赤面し俯いてしまう初心な少女を嬲るようにしてジルコニアは露骨な性語で悪臭粘液の正体を告げる。


『しかし浅ましいものよ地球人のオスは… これまで曲がりなりにも自分達を守ってきてくれたセーラームーンの装束で欲情し、己が醜い肉棒を擦り付けては子種汁を撒き散らしておるのじゃからのぉ〜〜〜 ギヒヒヒヒッ!!!」


「そっ…そん…なっ……⁉︎ 」


『ウソではないぞぃ? ヌシも見ていておったろうセーラーちびムーン? ほうれ論より証拠、まだ未練がましくお楽しみな輩もおるではないか? ギヒヒヒ!!!』


「あっ…⁉︎ あああっ…!!?!」


それを手にしている内に劣情を堪えきれなくなったのだろう、一人の若い男がセーラースーツ…それもボディスーツの股間部分に鼻を押し付け下品に鼻腔音を荒げながら匂いを嗅ぎつつ、垂れ下がった襟部分を屹立した赤黒い肉棒に押し付けながら自慰行為に耽っていた。

無論ボディスーツもまたグローブやリボン同様に、否それ以上に精液まみれでヌメ光り悪臭を振りまいているが、デッドムーンの淫魔法に完全に冒され劣情の虜となっている男には関係ないのだろう。

生理的な嫌悪感と怒り、羞恥心、いたたまれなさといった感情が渦巻き一秒たりとも見ていたくない光景にも関わらず、ちびムーンの視線は男の自慰行為から離れられない。

突然男の身体が唸り声とともに痙攣し震え、荒い息とともに恍惚の表情を見せる。


「うっ…うううう…うぅぅぅ… い…いや…あぁ!!?!」


男の射精した大量のスペルマが、イエローゴールドのトリプルラインが鮮やかなコントラストを描くブルーのセーラー襟に白濁色の醜悪な前衛芸術を加えた。

ようやく満足したのか、男は陵辱したボディスーツをステージに投げ捨てる。

ベチョリとちびムーンの足元の床に張り付いたボディスーツから性臭が一段と濃く立ち昇り、ちびムーンの鼻腔を刺す。

一体何人の精液を浴びせかけられたのか、スーツの中も外も泡立つほどにドロついた白濁液が垂れ滴り、両肩部のクリスタルガードも大量に浴びせられ続けた精液で半ば凝固している。

ぐしゃぐしゃに乱れた胸リボンの端から僅かに覗くブローチ… 幻の銀水晶が収められたそれもまた白濁液で汚され尽くしているのがわかる。

思わず手がブローチに伸びそうになるが、ちびムーンは必死に自制する。

ここで銀水晶に手を伸ばしても、檻の中のうさぎに手渡す前に何が起きるかは想像に難くない。


『ギヒヒヒッ!手を伸ばさぬか、感心じゃのぉ〜〜 そうじゃきちんと約束は守らねばのぉ〜〜〜? さすれば何処かの誰かが苦しまずに済むというものよ…ギヒヒヒッ!!』


やはり誘いだった、ちびムーンがブローチに手を伸ばせばそれを口実にうさぎを…あるいは他の誰かを傷つける残酷なゲームだったに違いない。


『さて如何ですかなプリンセス? お召し物もプリンセスに劣らず民たちからの敬慕の念を向けられておるご様子ですぞぃ?』


いかに妖術で操られているだろうとはいえ、街の人々に自らのセーラースーツをレイプされる様を見せつけられ打ちのめされているうさぎの心を更に抉るように、ジルコニアの嘲笑が響き渡る。


『その可憐なスカートも随分と優雅に彩られておりますなぁ〜〜 お穿きなられますか? このババめがまたお手伝いして差し上げますぞぃ? ギヒヒヒッッ!!』


「ど、どこまでうさぎをっ!!?!」


下卑た歓声と濁った視線の先、自らが繋がれた鉄柱の先端に無残に垂れ下がるミニスカートもまたボディスーツに劣らず男達のザーメン漬けにされ、腐臭を放つボロ雑巾同様の有様になっていた。

あんなものをうさぎが穿かされる… 想像しただけでも血液の逆流をちびムーンは抑えられない。


「馬鹿じゃないのっっ!!? そっ…そんなヘンなこと絶対にうさぎはしないし、絶対させないんだからっっ!!!」


『ギヒヒッ! そうかのぉ〜〜? 我らの前で無力無様を晒したのみのセーラームーンには似合いの装束じゃと思うがのぉ〜〜 ギヒヒヒッ! それにさせないと申してもおヌシに出来るのは我らのいいなりになる事だけではなかったかのぉ〜〜 んんん?』


「くっ…うううっ…!!」


『どうじゃ?檻の中の小娘もそう思うじゃろう? ギヒヒヒッ!』


再度『約束』を匂わせちびムーンを牽制する妖婆のしわがれ声。

僅かとはいえ幻の銀水晶を取り戻す可能性、そして自分以上の危機に瀕している牢獄内のうさぎの事を思えば無謀な激発は絶対にできない。


『自分の立場を思い出してくれたかのぉ〜〜? では次のショーの開幕と行くかのギヒヒヒッ!!!』


未来の脅威であるちびムーンを更に追い詰めると、ジルコニアは恥辱ショーのクライマックスを高らかに宣言した。






『ヒヒ!そうじゃ、その場所に跪いて座れセーラーちびムーン』


「……く…うっ!?!」


周囲に散乱する精液漬けのセーラースーツの中央の場所へ客席とガラス牢に平行の角度で歯噛みしながら跪くちびムーン。


『ギヒッ! そのまま大人しくしておれよ? ほれ、そいつには特にタップリ献上品が詰まっておろうて? プリンセス達に献上して差し上げろ、ギヒヒヒッ!!!』


一段と強くなった周囲のオス臭気に眉を顰めさせるちびムーンと、絶望の色を更に募らせる牢内のうさぎの双方を更に恥辱の泥沼に沈めこむべくジルコニアの命令が男たちの傍らに立つミラーパレドリイの一体に向け飛ぶ。

無造作に振られた下級妖魔の腕から何かが投擲され、それはちびムーンの目の前に落着する。

それまでのものよりもやや重い落着音と共にステージに転がった物体は、一段と激しい悪臭を放っていた。


「これっ…セーラームーンのブーツッ!!? ひ…ひどいっ…!!?」


真紅の光沢と白銀の縁取りライン、月の紋章でセーラームーンの美脚を更に引き立てていた聖なる長靴…それが今、無残極まる汚物壺と化していた。

おそらくは淫気に狂った男達が先を争って肉棒を突き入れ欲望を放ち続けたのだろう、ブーツの中からは半ばゼリー化しているほどに濃厚な白濁液がドロドロと流れ出し、表面もまた大量のザーメンによって汚し尽くされた上に各種のゴミや汚れがへばり付き酷い有様となっていた。


『さあて、では始めてもらおうかのぉ〜〜? セーラーちびムーンよ、そのブーツを手に取れぃ… そして鼻と口をすっぽり覆って中の芳しい芳香をたっぷりと吸い込むが良い ギヒヒヒッ!!』


「なっ…!!?」


ジルコニアの言葉はちびムーンの想像の域を超えていた、いかに心中密かに憧れ続けてきたセーラームーン…うさぎのブーツといえどその匂いを嗅ぐなど生理的な嫌悪感が先に立つ、増して今は男の精液漬けにされて猛烈な悪臭を振り撒く汚物塊も同然の状態……


(い…いやっ…いくらセーラームーンのブーツでもそんなっ…⁉︎ でっ…でもやらないと、うさぎがっ…!!?!)


内心の葛藤と嫌悪感、ブーツへの嫌悪感を持ってしまったうさぎへの後ろめたさ… それらを表情に出さないよう必死に押し殺し、ちびムーンはヌルつく表面のブーツを両手で掴むと自らの胸に引き寄せた。

「な…なによ、そんなことなのっ⁉︎ つまんない嫌がらせだけどやってやるわ、ふん!こんなの全然平気なんだから!!!」

うさぎの心にこれ以上のダメージを与えない為にもここで弱みを見せるわけにはいかない、ちびムーンは悲壮な覚悟を抱え蒼ざめつつも強気に言い放つ。

それはジルコニア達だけでなく、うさぎに向けてのメッセージでもあった。

『おうおう… 元気なコトじゃ、たっぷりと堪能するがよいぞ〜民達の捧げ物をのぉ〜〜 ギヒヒヒッ!!』


「ふ…ふん!!!」


必死で平静を装い、作り笑いを浮かべながら牢内のうさぎに向け視線をやる。


(時間を…時間を稼がなきゃっっ!! 護ってママ!銀水晶!!!)


牢内のうさぎが懸命にガラス壁を両手で叩きながら何か叫んでいるが、ジルコニアによって遮断されたのか先刻まで聞こえていたうさぎの声は全く聞こえない。


(私の悲鳴や何かが、こいつらによく聞こえるようにしてるのね…悪趣味!)


そう思い、改めて手にしたブーツを見遣った。

浴びせかけられたのは精液だけではないのか、周囲に立ち込めるオスの臭気に慣れてしまったはずの鼻梁に新たな悪臭気が射し込んでくる。


「ンッ!! んんんんッッッ———ッッッ!!!!んんぐぐぐぐううううッッッ—————ッッッ!!!!」


意を決して穢されたセーラームーンのブーツへ顔を寄せ、ちびムーンはおぞましい混濁臭を吸い込んだ。


(く…臭いっっ!!?! 臭いぃぃーーーーーーっっっ!!!)


肺胞に流れ込んできた臭気はあたかも生ゴミを煮詰めたような暴力的な生臭さであり、脳髄を殴りつけられたような衝撃と苛烈な嘔吐感に今にも意識が飛びそうなほどだった。

だが、数秒と経ずして変化が生じた。


(や…やだっ…頭が…ぼーっとしてきて… ううっ…ヘンになっちゃうぅぅ…… 臭い、こんなに臭い…のにっっ!?!)


耐えきれず投げ捨てようとしたブーツと自身の両手が一体化したように離れようとはせず、もう1ccとて吸い込みたくはないはずの悪臭を貪るようにして吸ってしまっている。

ちびムーンの意識にみるみる濃い霧が被り、思考が寸断されてゆく。


(わ…私っ…どうして…… こんなっ… 駄目ぇ…… 何も考えられなくなってきて…… は、早くみんな来てぇぇぇ… ほたるちゃんっっ!!!)






「ダメぇぇーーーーーっっっ!!!?! ちびうさっっ!!! それを吸っちゃダメぇぇぇーーーーーーーっっっ!!!!」


必死でガラス壁を叩き絶叫するものの、目の前のちびムーンにうさぎの声は届かない。


「んっく…! くうううぅぅぅーーーーーーっっっ!!?! かはあっ!?」


両胸と股間一帯に走った激しい疼きにうさぎの動きが止まり硬直する。

セーラー服の下で左右の乳首は限界近くまで屹立し、股間スリットはしっとりと湿り始めている。

全身が火照り、呼吸も荒くなっているのが自覚できた。


『ギヒヒッ! どうじゃセーラームーンよ、面白い見せ物じゃろう〜〜? なんじゃ、こんなものを見ていやらしく濡らしてでもおるのか〜〜? ギヒヒヒッ!!!』


突然牢の中に響く妖婆の嘲笑、それは牢内のうさぎだけに聞こえているらしい。


「ジルコ…ニアッ! こ、このテントの中の空気…ってっっっ!!」


『ようやく気付いたか? 貴様の想像通りよ… 無味無臭の催淫瘴気で満ち満ちておるわぃ あの男どもの姿を見れば効果は一目瞭然じゃろう〜〜? ギヒヒッ… セーラー戦士ならばよほど長時間晒されねばどうということも無かろうが、今の貴様にはよく効いておるようじゃなあ〜〜 ギヒヒヒッ!!」


「こ、この卑怯者…!! ま、負けないわよっ! 絶対にっっ!!!」


『ギヒヒヒッ!せいぜい頑張ることじゃのぉ〜〜 それとひとつ教えてやろうわい、あのチビ助が貪り吸っておる貴様のブーツに詰め込まれておるのが、あの下等なオスどもの子種汁だけだと思うか? さにあらず、特別に合成したミラーパレドリイどもの汁やらタチの悪い細菌やらもた〜っぷりと混ざっておるわぃ』


「なっ…!!? ど、どういうことよっっ!!?!」


『簡単じゃぁぁ、セーラーちびムーンもどうしようもない色狂いになるのは時間の問題ということじゃわ、あの装束や銀水晶の力である程度は抵抗できるやもしれぬが、当然その分は力が落ちようて…ギヒヒヒッ! ほれあやつの手をよく見てみるがよい』


「!!?! あっ…あれはっっ!!? ちびうさダメェェーーーーーーーっっっ!!!!」


咄嗟に見遣った視線の先、ジルコニアの言葉の意味を察したうさぎは絶叫した。

瞳から光を喪い、夢遊病者のように抱え込んだブーツから噴き出る汚臭を吸い続けるちびムーンの嵌める左右のロンググローブ表面にポツポツと黒いシミが浮かんでいる。

あれは単なる汚れなどではない、明らかに侵食の類だ。

デッドムーンはちびムーンの肉体のみならず、セーラースーツにも邪悪な刻印を刻みつけ、慰み者にしようとしているのだ。


『ギヒヒヒッ! まあ暫くはこのショーを堪能しておれセーラームーンよ… まだまだ演し物はあるからのぉ〜〜 ギヒヒヒヒッ!!!』


新たな無力感に打ちひしがられるうさぎを残し、ジルコニアの声は消え沈黙だけが牢内に残った。





目の前で自らの装具を悪用され、仲間を貶められる有様を目の当たりにし悲嘆にくれる仇敵の姿が映し出される水晶球を見つめながら妖婆は醜い笑みを浮かべる。

次は立ち位置を逆転させ、セーラームーンにあの穢し尽くされたコスチュームを全裸から纏わせ晒し者にしてやるのも悪くない。

その時までに他のセーラー戦士どもも捕えられていればなお良いのだが。



「これで時空を超えた二つの銀水晶、ともに我がものよ… 二人のプリンセス、そして二人のクイーンよ…… その対価として永劫に地の底で穢れた悦楽と肉欲に浸り続けるが良いわぃ…… ギヒヒヒヒヒヒヒィィィィ!!!!!」



長い長い歳月を超え、ようやくあの忌まわしい白き月の王国に復讐を果たせる喜びに妖婆は歓喜の思いに打ち震えていた。



FIN.


道化のプリンセス 後編 道化のプリンセス 後編

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