□【まえがき】
文量約1万8千字
挿絵出来たらちょっと加筆調整とかしてノクターンにアップ予定です。
…………予定です。
□【本文】
「なぁ、かずき……」
「ん?」
起き抜けでまだ寝ぼけているのか、寝ぐせ混じりの頭をかきながら和樹がおれを見下ろしてくる。
おれはそれをキッと睨みつけながら、朝の奉仕によって口の中に溜まった精液を屑紙に吐き出した。
「おまえ今日からアルコール禁止!!」
「は、え?」
丸めた屑紙をゴミ箱に放り投げて思い切り指をさすと、和樹は尚更困惑したように視線を彷徨わせる。
本当に何もわかってない様子なのが、余計にはらだたしかった。
□
おれの日課は早起きからはじまる。
和樹よりも早く起き朝食の準備をして、簡単に身繕いをすませる。それから水場で軽く口をゆすいで、まだ寝ている和樹のベッドへと向かう。
わずかに酒の香りを漂わせて無防備にぐーすか寝ている和樹を見ながら、おれはため息を抑えられなかった。
一時期夜遊びがおとなしくなっていた和樹だったけど、付き合いもあるのか最近は痛飲して帰ってすぐ寝る事が多くなっていた。
他の雌の匂いはしないから、本当に酒の付き合いだけなんだろうけど……。構ってくれる時間が減って少しばかり不満だったりもする。
「はぁ……まったくもう」
それでもやることは変わらない。シーツの中に頭から入ると、上半身を和樹の下半身の位置まで潜り込ませる。麻のズボンを下着ごとずらすと、半立ちになっている肉の凶器が飛び出てきた。
「……またかよ」
おれはそれを見てため息を抑えきれなかった。最近、どうにも元気が無い。
おれが和樹とのはじめてを済ませた頃は、寝ていてもビンっとはねて頬にぶつかることだってあったのに。
「酒のみすぎなんだよ……まだ20にもなってないのに」
はぁとため息を吐きながら、ズボンをもう少し降ろして玉袋まで露出させる。意を決して股間に顔を近づけると、ゆっくりと玉袋に唇を押し当てる。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
――ちゅっ♡
たっぷり3秒数えてから玉袋から唇を離す。湿った空気の弾ける音が唇から漏れた。
「……ん、こっちも♡」
――ちゅっ♡
「ん……♡」
もう片方にも同じようにキスをしてから、同時に両手でそっと支えた半立のちんこの先端にもキスをした。こっちは丁度鈴口のあたりに啄むようなキスを3回。
――ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡
「ん♡ ……いただきます♡」
たまたま出会った他の犬系獣人に聞いて実践してみた、唇を当ててキスをするという犬系獣人の親愛表現だった。
唇をゆっくり3つ数えるまで押し当てるのは『好きー』という意味。連続して3回キスをするのが『だいすき♥』という意味らしい。調子に乗って「朝フェラで起こしてほしい」なんて要求してきた和樹にふざけ半分でやったらものすごく好評で、なんとなく惰性で続けているうちに習慣になっちゃったんだよなぁ。
「ちゅるっ♡ ちゅっ♡ れろっ♡」
伸ばした舌でカリ首を丁寧に舐めまわしながら、時折鈴口をちゅうっと吸い上げる。口に先端を含んで唾液をまぶしながら舌で舐めまわして、吸い上げるようにしながら頭ごと上下させる。
我ながら手慣れてきたなぁなんて思いながら、口の中で硬さを増していくちんこに顔をしかめることになった。
「んぅぅ……」
うっすい……。
何て言ったらいいんだろう。雄の匂いというか生の匂いというか。獣人の鼻はかなり鋭いらしくて、意識すればそういうのが嗅ぎ分けられるのだ。
例えば沢山セックスした次の日はやっぱり薄くて淡白な感じだし、今日みたいにアルコールを沢山飲んだ次の日もやっぱり薄い。逆に暫くセックスをせずに間をおいた後はすごく濃い。
少し前に危険魔獣が出た時に緊急招集があって、2週間近く命を削るやりとりをして帰ってきた時なんかすごかったっけ。
あまりの濃さにフェラしてるだけで腰がかくかく動いちゃって潮ふかされて、我慢できずに襲ってきた和樹に耳元で「俺の子を孕めよ」って囁かれながら子宮を何度も突き上げられて、思わず嬉ショ……なんでもない、忘れた。忘れてた。思い出さなくていいことだった。
生活が安定するまでは赤ちゃん作らない約束で常に避妊はしてるんだけど、あの時は命がけの戦いの高揚で色々吹っ飛んじゃったらしい。
避妊薬を事前にちゃんと使ってたからよかったけど、なかったら確実に受精させられてた。
……何はともあれ、そんな風に多少の上下はあるものなんだけど……。
「うん、んー……?」
今日はというか、ここ数日ずっと薄い。昨日だって酔って帰ってきてすぐに寝ちゃったからセックスもしてないのに!
「ふぁふひ、おふぁよう」
「あぁ、アオイか……おはよう……フアア……」
暢気にあくびなんかしている和樹が、おれの頭を撫でてくる。思わず尻尾が反応して動くけど、ひとまずさっさと終わらせなくちゃいけない。さっきより激しく頭を上下に動かして、ちんこを吸い上げていく。
「んっ、ふっ♡ んふっ♡」
「あぁ……うっ」
無防備な和樹がうめき声をあげると同時に、ちんこが脈動しながら薄くてものすごく苦い精液が口の中に満たされていく。
「んぐっ……!?」
いつもは平気な精液だけど、今日のは特別苦かった。正直飲み込むのが難しいくらいに。
いくらなんでもこれはない、健康状態に問題有りとしか思えない。20前だってのにアルコールで体を壊すなんてシャレにならない。
和樹にはこれからももっと働いて、おれを養ってもらわなくちゃいけないんだ。出来る限り健康で居てもらわなくちゃ困る。
射精が終わったタイミングで口を離しながら、近くにあるちり紙代わりに使っている屑布置き場から一枚手に取る。
そしておれは口に溜まった精液を吐き出しながら、和樹にアルコール禁止令を突きつけることになったのだった。
□
朝食の席で、先程のやりとりの真意を説明した。
「そんなに不味かったの?」
「冗談抜きで吐くかと思った」
「そっか……」
完全に目が覚めて事態を飲み込んだ和樹が、なんだか切なそうな表情でそんなことを聞いてきていた。精液を不味いと言われてショックを受けてるみたいだけど、そもそも元から美味しいものじゃない。
「俺も最近ちょっと飲み過ぎだなぁとは思ってたけどさ」
「前はそこまで飲み歩いたりしてなかったろ、どうしたんだよ急に」
頬をかく和樹に、おれは純粋な疑問を投げかける。そもそも大人の遊びを覚えても、酒好きってほどじゃなかったんだけどなぁ。ここ暫く妙に飲み歩くことが増えていて、帰りも遅くなりがちだった。
「あー……この間、緊急招集があっただろ?」
「ッ……う、うん」
一瞬あの時の、帰ってきた和樹とのアレを思い出して頬が熱くなる。それをなんとか抑えて返すと、和樹はおれの変化に気づいていないように話を続けていた。
「俺もそこで結構活躍したんだけどさ、町の危機を救ったってことで行く先々で酒を奢られて、全部断るわけにもいかなくてさ……」
「あぁ……」
要するに、英雄なりの人付き合いってことらしかった。それにしても未成年にそんなガブガブ酒飲ませて、日本じゃ考えられないよなぁ。
「もうそろそろ落ち着くとは思うからさ、もう少し辛抱してくれよ」
そんな風に話を終わらせようとするけど、おれの鼻は誤魔化されない。雄の匂いが弱まるってことは生命力が落ちてるってことでもあるのだ。話していても少し顔色も悪いし、普通にしていても匂いが弱い。
「……でもさぁかずき……おまえ体調悪いだろ?」
「……わかる?」
毎日ちんこ舐めさせられてれば、体調の変化くらいわかるようになる。最近ずっと朝は半起ちだし、心配はしていたのだ。
「わかる、だから今日からアルコール禁止! 誘われてもそれを理由に断れ!」
「でもなぁ、付き合いとかあるし」
どうしてそこでNOと言えない日本人を発揮するんだかコイツは……。仕方ない、早くも最終手段の出番らしい。
椅子から降りて立ち上がると、和樹の前までいって瞳をうるませて上目遣いをする。少し前のおれなら恥ずかしくて出来なかったポーズも、さんざん色々とやらされた今なら抵抗なく出来てしまう。
「おれ、かずきが倒れちゃったらやだ……ずっと元気で一緒に居て欲しい」
ほらほら、お前のかわいいわんこの頼みだぞー?
じっと見つめ合っていると、和樹の頬がちょっと赤らんだ。なんかキショい。
「……わかった、アオイの為にも頑張って断るか」
ようやく折れた和樹がでれっとした表情でおれの頭を撫でてくる。狙ってやったけどチョロすぎないかコイツ、逆に心配になってきたんだけど。
「よし、ひとまず仕事だ、ご馳走様!」
心配している間にも和樹が何やら気合を入れなおしたようで、皿をまとめて洗い場に置くと荷物を片手に家を飛び出そうとする。
「いってらっしゃ――じゃねえ! ちょっと待って!」
「お、おぉ!?」
少し空元気っぽい和樹をそのまま見送ろうとして、ひとつ思いついたことをやるために呼び止める。
これでちょっとでも元気が出ればいいなと考えながら途中で急ブレーキをかけた和樹に追いつくと、腕を引っ張って頭を少し下げてもらう。そうしないと悲しいことに身長が足りなくて届かないのだ。
射程範囲に入ったことを確認してから、おれはそっと背伸びをして唇を和樹の頬に押し当てる。
――ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡
きっちり3回、キスをしてから手を放して和樹の顔を見上げた。
「……いってらっしゃい」
「――いってくる!」
気合のみなぎった様子で飛び出していく和樹の背中を見送って、今日何度目かもわからないため息をついた。
ほんとに効果覿面とは、やっぱり単純すぎないかアイツ……。まぁ元気になったならいいんだけどさ。
「さて、おれも片付けてから買い物いくかー」
とはいえ自分の仕事は残ったままだ。さっさと洗い物を終わらせて何か精のつくものでも買いに行こうと食器の積まれた洗い場へと向かう。
……さっきから左右に揺れてバフバフうるさい、尻尾を掴んで止めてから。
□
奴隷には奴隷なりのコミュニティがある。主人次第だけど、待遇が良いところなら日中にある程度の自由は許されている。
買い物の途中でアパートの近くにある治安の良い公園へ向かうと、出入りが許されている広場の片隅で奴隷たちがのんびり談笑しているのが目に入った。
亜人系の奴隷たちはそれぞれ公園の屋台で買えるちょっとした軽食を持ち寄り雑談しているようだ。……悲惨な奴隷のもうひとつの側面。
良いご主人さまと出会えた幸運な奴隷たちの集まり。遠目に彼女たちが手にしている食べ物を確認して屋台へ向かう。お小遣いはそこそこ貰っているので余裕があった。
「おれもいい?」
「あ、アオちゃんいらっしゃい」
「あぁ、アオイもきたか」
藁半紙に詰められた菓子を持って声を掛けると、顔見知りばかりのメンバーは笑顔で迎え入れてくれる。
買った菓子はクッキーのような菓子だった。甘みは薄いがまぁ食べれないこともなくて量が多いのが魅力である。
「ラーニャさん、戻ってきてたんすね」
「えぇ……久しぶりね」
集まりの中でひときわ大きな身体を持つのがラミアのラーニャさん。ヘソから舌が蛇になっていて、腰にあたり部分に巻きスカートを付けている。
他には乳のでかいほんわか系羊系獣人チッチルと、兵士や戦士といった職業が似合いそうなクール美女の犬獣人ラクティさん。
ラーニャさんは結構高位の魔術師さんの奴隷で、なんでも昔魔術師との賭けに負けて奴隷になったらしい変わり種。少し前の緊急討伐が終わった直後に隣町に行く依頼を受けていてこの町から離れていた。
チッチルは元冒険者で依頼主に騙されて奴隷になった同じ傷を持つ仲間。ラクティさんは家族の借金を肩代わりしたことが原因だとか。
「どうしたの、久しぶりだけど浮かない顔ね」
おれの様子を見るなりラーニャさんが見抜いてくる。この人は本人もかなり高位の魔術師なので相談役として物凄く頼りになり、奴隷たちからも慕われている。
暫く悩んだ末に、どうせ相談にきたんだしと腹をくくって事情を話す。
「実はさ、ご主人がさいきん酒の飲みすぎてちょっと疲れてるみたいでさ……」
ラーニャさんはあらーという顔を浮かべ、ラクティさんは何となく和樹に同情してそうな顔をしていた。
「それで、ご主人が構ってくれなくて寂しいんでしょ~?」
「……単純に、心配なんだよ」
半分は嘘だった。正直寂しい。それを見透かしているのかラーニャさんは少し考える素振りを見せる。
「まぁな、時には命を預けあう相手でもある、むやみに断るのは……うぅん、難しいな」
「わかってはいるんだけどなぁ……」
ラクティさんは元々冒険者というか兵士だった人なので、そういう付き合いにも多少は詳しい。
「解決策ではないけど、対処療法ならちょうどいいのがあるわね」
「え?」
考えていたラーニャさんが穏やかに微笑んで。腰のベルトにくくりつけられた小さなバッグを漁る。
「はいこれ」
「っ!?」
「……なんすかこれ」
差し出されたのは黒い粉末が入った小さな小瓶だった。
「龍奮粉よ」
「りゅーふんこ?」
聞き慣れない言葉に繰り返す。翻訳能力が唯一と言っていいおれの能力だけど、たまに変な訳し方をすることがあるので確認は必要だ。
「滋養強壮にとても効く男性用の精力剤よ、亜竜の睾丸から特殊な製法で精製した粉。女の子にはさほど効果はないけどね。貴重だけど和樹くんにはうちの主人が命を助けられているからね、特別にひとつあげるわ」
「いいんですか?」
「えぇ、仲良くね。使う量は中くらいのお鍋のスープに人間用の耳かきの先程度で十分だから、絶対に入れ過ぎちゃダメよ?」
「ありがとうっす!」
直接的な対処法に内心驚きつつも、好意は素直にありがたいのでお礼を言う。命云々はたぶんこの間の緊急討伐に関わることだろう。
笑顔でお礼を言うと、ラーニャさんも穏やかな笑みを返してくれた。
「ま、待てアオイ、それは、その……気をつけたほうが」
小瓶を懐にしまいこんでいると、ラクティさんが顔を真赤にしながら珍しく動揺した様子で声をかけてきた。
「……え、そんなやばいんすか、これ」
「その、私の主が一部を分けて貰ってな……少し、試したことがあるのだが……いや、うん」
よほどのことがあったのか要領を得ないラクティさんに首を傾げていると、隣のチッチルが楽しげに口元に笑いを浮かべた。
「うち知ってるよ、一晩中ラクちゃんの遠吠えが聞こえててさ、次の日ラクちゃんのごすずんが他の住人からめっちゃ怒られてたヤツ。ラクちゃんは腰ガクガクで動けなかったんだよね?」
ちらりとラクティさんを見ると、彼女は反論できない様子で顔を真赤にして俯いていた。
服の上から小瓶の感触を探して触れる。ごくりと喉が鳴った。
「さっきも言ったけれど、使う量にはくれぐれも気をつけるのよ?」
「う、うん……あ、ありがとう」
「アオちゃんもごすずんと仲良くねー」
「き、気をつけるんだぞ……ほんとにな」
念を押すように首を傾げながら忠告してくるラーニャさんの言葉を頭に刻み込みながら、しばらく談笑したあとお礼を言ってその場を後にした。
□
「気をつけろ気をつけろって、フラグみたいじゃねーか」
我が家に帰ったおれは、料理の支度をしながら先程の会話を思い返していた。
物とラクティさんの反応に気圧されて気付いていなかったけれど、改めて考えると押すなよ押すなよと言われている気分になる。
熱したフライパンを横に外し、外側だけ焼き目をつけた肉を置いて布でくるんでから、今は鍋で野菜をくたくたになるまで煮込んでいる。
鍋の前に立ちながら、服の中に入れた小瓶をそっと取り出す。
……女が飲んでも問題ないっていうけど、本当に大丈夫なんだよな?
「中くらいの鍋ならほんのちょっとでいいんだよな」
瓶の蓋を外して、適当なスプーンを探す。量を間違える訳にはいかない。
それにしてもなぁ、ラクティさんって勝手にクールなイメージしてたけど……そうだよな、性奴隷なんだもんな。
兵士として鍛えていたクールな姉御みたいな人が、一晩中遠吠えして腰ガクガクに…………。
「…………な、なんか怖くなってきた」
小瓶の中の黒い粉を眺めていると、なんだか急に怖気づいてしまった。
うん、やっぱ怖いし今日のところはやめておこう。というか頭ゆだってたけど許可なく主人の料理に薬仕込むとかありえない。
ラーニャさんは信用できる人だけど、ちゃんと和樹に伝えてやるべきだな。
よし、やめやめ。外した蓋を手に持って、小瓶に重ねる……う、結構固いな。
「ただいま~! アオイ、帰ったぞ!」
「うひゃい!?」
勢いよくドアが開く音がして、和樹が意気揚々と帰宅する。とっさに手に持っていた小瓶を後ろ手に隠した。
「ん? どうしたんだよ、折角はやく戻ったのに」
「あ、や、ただびっくりして、早かったな!」
「おう、可愛いわんこが心待ちにしてるって惚気たら見逃してくれたよ」
「そ、そっか……そっか」
ガキみたいに笑う和樹を見て、可愛いと言われたことにむず痒い気分になる。
あー、おれもちょろいのかもしんねぇ。背後で鳴る風切り音に溜息がでそうになるのを堪えて両手を前に出す
背後から、ふわりとすごく食欲をそそる香ばしい匂いがしてきた。
「……なんかすっげーいい匂いするな、何作ってるんだ?」
「え、や、スープだけど?」
……強いて近い匂いをあげるなら味噌汁の匂いだ、それも香ばしい少し炙った赤味噌の。つまり日本人の食欲を激しくそそるいい匂いがした。
おかしい、今作ってるのはただの野菜スープだ。不審に思いながら振り返って手に持っている空の小瓶に視線を落とす。
珍しいガラス製の小瓶は向こう側が透けて見える、というか中身が無いからうす茶色に色づいた鍋の中身がハッキリと見えた。
………………あの、中身はどちらへいかれたんで?
「味噌っぽいけど、まさか味噌あったのか!?」
「へ!? い、いや、これはラーニャさんから貰った粉で、和樹が主人助けたお礼だからって」
「あぁー……そういやあったなぁ、そんなの。へぇー」
匂いのせいか横からスープを興味津々で覗き込む和樹は、「やっぱ味噌汁みたいだなぁ」と嬉しそうに顔をほころばせている。
その横顔を眺め、おれは尻尾の毛を逆立たせながら、こちらにきてから最大の危機に脳みそをフル回転させていた。
「あ、でもこれは、味、確かめてない、から」
「そうなのか? んじゃ俺が……」
「あーーーーーーー」
久々に嗅ぐ味噌っぽい匂いに子供みたいに手を伸ばす和樹の腕を慌てて抑え込むと、おれは小瓶を横に置いてお玉を手にとった。
「だめだめ! そういうのは奴隷の! おれの! 役目なの! 和樹は出来上がったものを食べるのが役目!」
「えー」
匂いは良いけど、味が悪ければ誤魔化せる。不満げな和樹を押しのけて小皿に液体をすくう。
量めっちゃ多いけど、平気だよな? 女にはあまり影響ないんだよな? 不服だけどいまの身体は女だから大丈夫だよな?
「葵?」
「な、南無三」
小声でつぶやき、薄茶色の液体を口へと流し込む。ふわりと鼻腔を突き抜ける穏やかな味噌の香りに、舌の上にひろがる程よい塩分。
どんな方向から判断しても"おいしいおみそしる"としか思えない味に、おれは絶望を知った。
無理だよ、おれだって懐かしいと思ったもん。よく知っている味じゃないけど懐かしくて涙出そうだもん。
「葵、どうだった?」
これを和樹に飲ませてあげられないのだ、おれに不自由させないようにといつも身体張って働いてくれてる和樹にこれを飲ませてあげられないのだ。
くそ、もったいないなんて考えず失敗したって廃棄すりゃよかった、大失敗だ。
「あ、これは、いやー」
い、一体どうやって言い訳すれば……。
「……ちょっと」
「あ、だめっ」
なんてしどろもどろになっていると、反応で味を判断したのか和樹はおれからお玉を奪い取ってスープを飲んでしまう。
制止する暇もなかった下手な言い訳なんてせずに正直に伝えていればよかった。
異常な量の薬が何の影響もないとは思えない、おれは青ざめながら和樹の様子を伺う。
「か、和樹! 大丈夫か!? すぐに」
「――うまい、これ、母さんの味噌汁だ、うめぇ」
すぐに吐き出せ、そう言いたかった。言おうとしたんだ、涙を浮かべてそんな言葉を口にする和樹の顔を見るまでは。
止めなきゃいけない、止めてラーニャさんに相談に行かなきゃいけない。わかってる、理性ではそんなことわかってるんだ。
「和樹、だ、大丈夫か?」
「ん? あぁ、滅茶苦茶うまいよ……嬉しいな、また飲めるなんて」
嬉しそうに言う和樹にすぐに吐き出せなんて言えない。自分のへたれを悲しく思いながら、おれは和樹に外出許可をもらう。
「あ、あのさ、ちょっと、買い忘れたものあるから、少しでてきても、いいか?」
「え? あぁ、いいけど……金必要か?」
「昼の残りあるから大丈夫、だから! 鍋のそれ、あの、飲むのは後にして」
「お、おう?」
おれは即座に家を飛び出し、ラーニャさんがまだ公園にいることを祈って走った。
□
「あらぁ」
公園でひとり日向ぼっこをしていたらしいラーニャさんと入り口でばったり出会った。久しぶりに良い天気だったから、と笑う彼女が残っていてくれた奇跡に感謝をしながら事情を話した。
「どうしよう、おれ……」
「うーん、そうねぇ。あれって基本的には滋養強壮の薬で、その効果を利用して人間種の雄がタフな他の種族とする時に使う薬なのよね。でもあれ一瓶ならものすごーーーーーく元気になるだけだから大丈夫だと思うわ、疲れ気味だったなら尚更ね」
「じゃ、じゃあ悪影響とか、和樹が、しんじゃうとか……」
「大丈夫よ、すっごくすっごぉーーーーーく元気になっちゃうだけ、それに一口だけなら適量ちょっと超えたくらいよ。全部飲んでしまっても死んだり、障害が残ったりなんてことはないわ」
「よかったぁ……」
ラーニャさんにすがりつくようにへたりこむ。体温の低い長い指先がおれの髪の毛を撫でた。
「怖かったわね、でも大丈夫だから……さ、早く帰ってごはん食べていらっしゃい、ご主人をまたせちゃいけないわ。あなたも飲みすぎちゃダメよ」
「うん……ありがと、ラーニャさん」
優しい言葉に安堵したおれは、帰りに店じまいの準備をはじめている馴染みの青果商からデザート用の果物を買って帰宅した。
意気揚々と、味噌汁の匂いが残るダイニングへ向かうとテーブルに座った和樹がおれをみて申し訳無さそうな顔をしていた。
「ただいま、急にごめん……な……?」
「おかえり……わりぃ、匂いに我慢できなくてスープだけ先に飲んじゃった」
「……あ、ぁ」
飲むなって言ったのに、そりゃ事情話さなかったおれも悪いけど!
慌てて鍋に向かうと、スープの量は半分近くになっていた。
「あ、葵の分はちゃんと残しておいたから、な?」
「そういう問題じゃねーんだよ! もらった粉ってのは滋養強壮剤で! 間違って鍋に全部入れちゃってたの!」
半泣きになったおれは、安堵と怒りの勢いで全部ぶちまけた。和樹が目を丸くしておれを見る。
「おま! そういうのは先に言えよ! てか止めろよ!」
「泣きながら飲むの見てたら止められなかったんだよバカァ!」
お互いムキになって言い合い、肩で息をする。
「通りでなんか身体がポカポカすると思ったわ」
「……大丈夫なのか? それだけか?」
「あぁ、疲れが飛んだ感じはするけど、それだけかな?」
近づいて顔色を伺って見ると、確かに良くなっていた。ついでに疲れているような汗の匂いも消えていて、調子も良さそうだった。
「……なら、よかった」
「次からはちゃんと言えよ? 怒らないから」
「……うん」
呆れたように言って頭を撫でてくる和樹に、ほっとしていたおれも責任を押し付けることはできなかった。
「んじゃ、飯にしようぜ」
「わかった、準備するからちょっと待ってて……和樹はスープなしだからな」
「へいへい」
果物をテーブルに置き、布を外したフライパンを火にかけて、肉の塊をナイフで切り焼き加減を確認する。……うん、ちゃんと火が通った淡いピンク色でいい感じだ。
やろうと思えば案外何とかなるもんだ、味付は岩塩と安かった乾燥ハーブでいける。
「おまたせ、食べようぜ」
「お、頂きます」
「いただきます」
なんちゃってローストビーフに付け合せの温野菜。おれはスープで和樹は水。竈の近くに置いてあったパンも程よく温まっている。
「そういや今日の仕事なんだったんだ?」
「ん? あぁ危険域近くの見回りだよ、だから早く終わったんだ」
手を合わせ、食事をはじめる。
スープはやっぱり味噌汁で美味しくて、羨ましそうにする和樹に飲み過ぎと怒ったり。
最初は不安で焼きすぎたけど、慣れて結構旨く焼けるようになったローストビーフを褒めてもらって尻尾を振ってしまったり。
食事の時間は和やかに過ぎていった。
奴隷の地獄を経験した身としては、こんな穏やかな毎日が永遠に続けばいいのにと思ってしまう。
好きな人と毎日顔を合わせて、お腹も満たされる。
こういうのが、きっと幸せなんだろうなって思う。
だからおれはすっかり忘れていたんだ。
適量を使った主によって、ラクティさんがどうなったかを。
☆
「ごちそうさま、今日のローストはうまくいったなー」
「…………あぁ」
結構ボリュームのある厚切りの肉だ、日本で食べた肉と違って硬いけど食べごたえがある。
時間をかけて食事を終えたおれは背を伸ばし、食器を洗い場へ片付ける。
覗いた窓の外は西日が一番強くなって、町並みはオレンジ色に染まっていた。もうすこししたら夜が来る。
「和樹が帰ってきたからすぐ準備しちゃったけど、ちょっと食べるの早かったかもなー」
「…………あぁ」
おれにもスープの効果があったのか、少し身体がぽかぽかしてきた。
洗い場に溜めておいた水の冷たさに心地よいものを感じながら、使った食器を洗っていく。
「今日蒸し暑いからなー、日が落ちたら風呂いこーぜ」
「………………あぁ」
ちょっとぽかぽかしてるせいか、じわりと肌に汗が浮かんでる。寝る前に入っておかないと、べとべとしそうだ。
……ぞわり、悪寒のようなものを背中に感じて尻尾の毛が逆立つのを感じる。
「……か、和樹?」
「葵、お前……」
振り返ると和樹が、おれの尻を舐め回すように見ていた。
「やっぱむっちゃエロいよな」
「は、な、なんだよ急に……」
突然そんな事を言いだした和樹に少し動揺しながら洗い物を済ませる。ふと漂う匂いが濃くなっている事に気づいた。
「尻の形がさ、ちっこいのに丸くて、触るとすべすべして指に力を入れると肉がもっちりとさ……」
「や、やめろって」
今更だと自分でも思う、おれと和樹はとっくにそういう関係だ。でも気持ちを切り替えてない時に言われても困る。
というか、なんで急にセクハラ発言しだしたんだよこいつは。そう考えるおれの視界に、空っぽの鍋が入り込んだ。
「…………ぁ」
相談したらもう解決した気分になって、すっかり忘れていた。まだ何ひとつ解決なんてしてないのに。
背後で椅子が倒れる音がして、近づく気配を感じた。
「…………葵」
「や、ま、まって和樹、まって」
「……お前のせいだろ?」
近づいてくる和樹は、苦しそうにシャツの胸元を緩めた。
和樹から匂いがした、すごく濃い、発情してる雄の匂い。
「そ、そうだけど、ちょっとまって、あの、ほら」
「ごめん、今日はマジで余裕ないわ」
和樹の手がおれの腕を掴む、強い力で引っ張られて逆らえない。ぐいぐいと腕を引かれて、ベッドの上に投げ出される。
緊急討伐で昂ぶってたときだって、もっと優しかった。
抱きしめて髪の毛を撫でながらシたいって言われて、ベッドに寝転がったのだっておれの方からで。
「あっ」
「あちぃ……」
和樹はおれの隣に膝をつくと、いつもより乱暴に服を脱いでいく。匂いがどんどん強まっていくのを感じる。
その手がズボンにかかって、麻の下着ごと転がるようにずりおろし、乱暴に脚を振って脱ぎすぎる。
勢いで飛んでいったズボンが壁にぶつかって乾いた音を立てた。
「葵」
「あ、ま、まって……まって」
ドクドクと音が聞こえるほど屹立した陰茎に、おれは初めて慄いた。最初のときと違う。
今までのどれとも比較にならないほど、獣欲を持て余してヒクつく雄がおれを狙っていた。
「待てないんだよ」
「あ、ひ、ひにんやく、ひにんやく、のませてっ」
おれの服にかけられた手が、こちらにあって現代文明を凌駕する便利な魔法薬の名前を聞いて止まった。
慌ててベッドから滑り落ちて、半泣きになりながら常備している棚から淡いピンク色の液体で満たされた小瓶を引っ張り出す。
「……」
「ひ、のむ、のむから、すぐのむから!」
指が震えて蝋で密封された蓋を開けられずにいると、背後から和樹が覆いかぶさって力づくで瓶をねじ開けた。
背中に押し当てられる逸物がまるで焼けた鉄の棒のようだった。急かされるように、どんな力で開ければこうなるのかヒビの入った小瓶を口につけて中身を一気に流しこむ。
あんなの、薬なしじゃ確実に孕まされる。時期じゃなくても発情期にされる。
飲み終わったのを確認した和樹が手元から小瓶を払い飛ばし、おれを再びにベッドへと連れ戻した。
「ひゃ、うぇ」
新しく買ってくれた貫頭衣が乱暴に脱がされ、ひらひらと宙を舞う。おれの肩を掴んでベッドに押し倒しながらブラジャー代わりの胸当て布を剥ぎ取っていく。
「あ、う」
飾り気のない白いパンツを、剣を握って硬くなった手のひらが掴み、体ごと引っ張るような勢いでずり降ろしていく。
「アオイ、わりぃけど色々やってる、余裕ねぇ」
「きゃんっ」
べちりと、勃起する逸物が下腹部に叩きつけられる。ヘソの奥がきゅんっと切なく疼いた。
「あ、ゃ……♡」
頭がぼんやりしてくる。考える間もなく子宮が全面降伏していた。
おれの中のメスが、大好きな和樹とセックスしたいと泣きそうになって叫んでる。
いつもみたく男のおれを押しのけて、発情しきったいやらしいメスが和樹と交わりたいと出しゃばってくる。
それが今日に限ってはなんだか妙に気に入らない。もしかしたら飲んだスープがおれの中の男の部分に反応してるのかなんて、ありえないことを考える。
頭が茹だるようにあつい。
……あぁ、そうだ、おれだって前は男だったんだ。和樹相手に尻尾を振ってケツ振って甘えて喜んでるメスとはちがう。
おれは男だったんだ。
心がざわつくままに、口を開く。今になって怯えて避妊薬を飲まされたことも腹立たしくなってきた。
「はっ、や、やって、みろよ♡」
勇ましく、怯えを隠して和樹を挑発的に睨みつける。なんだかおれのテンションも妙に高い。
「お、おれだって、おとこだ! い、いつもみたいに、簡単には負けねーからな!」
「そうかよ」
無言でおれを見下ろしていた和樹が乱暴におれの肩を掴んでベッドに押し付ける。
いちもつの先端が入り口に押し当てられて、そのまま腰が進められた。
「んぃぃぃっ♡」
入れられただけで眼の前がチカチカする。ヤられすぎて開発されてるおれの身体は、和樹の逸物で簡単に快楽を得てしまう。
「今日は、簡単には負けねぇんだろ?」
「ひぅ♡ あっ、あぁっ♡ ま、まけ、なっ♡」
和樹が耳元でささやく、必死に声を絞り出すと逆光を浴びながら和樹は……いつもよりずっと邪悪な笑みを浮かべた。
「じゃ、いいよな」
「はぇ……んぃぃっぃぃい♡」
喉から変な声が漏れた。腰のストロークのスピードがどんどん速くなる。
――パンッパンッパンッパンッ
肉のぶつかる乾いた音が耳を打つ。ガチガチに固まった逸物の先端が、おれの子宮口をガツガツと責めてくる。
いつもと違って、すごく乱暴で激しい動きだった。こっちなんて全く気遣ってないような動きだった。
「はっ♡ うっ♡ うぁ、だめ♡ そこ、そこだめ♡ やだ、ぁ♡」
「どうした? "おとこ"なんだろ? こんなの効かないよな?」
いじめるような口ぶりに、昂ぶっていた気持ちが萎えてくる。
うぅ、無駄に粋がってみたけど、やっぱり駄目だった。
和樹のちんちんはもうおれの弱いところを知り尽くしていて、立ちはだかる雄を吹き飛ばしてメスの快楽を引き出していく。
テンションが上って男だなんて粋がっても今のおれはメスだってことを、わかっていたつもりで改めて思い知らされる。
強い雄にいじめられて、子宮がごめんなさいと鳴き出した
「どうしたんだよ葵、"おとこ"なら子宮で感じたりなんてしないよな?」
「はぁ♡ ひ、ひぃんっ♡ ご、ごめ、ごめんなしゃい♡ ごめんなしゃい♡」
いじわるな和樹に向かってでてきたのは謝罪の言葉。だけどいくらごめんなさいしても、和樹はいじわるをやめてくれない。
乱暴な子宮責めは、脳みそが蕩けそうになるくらい気持ちよかった。激しく動く腰がおれの身体を浮かせて、鳴きわめく子宮を突き上げる
「なんだよ葵、負けないんじゃなかったのか?」
「むりぃ♡ こんなの、勝てないよぉ♡ まけたぁ♡ まけましたぁ♡ おれのまけ、れしゅぅ♡」
思考がトロトロになって、口から勝手にメスの言葉が漏れ出ていく。敗北宣言したおれの顔に和樹の顔が近づいてくる。
「もうちょっと頑張れ、ん……」
「んっ、ちゅっ♡ ちゅぁっ♡ あむぅ♡」
唇を重ねて、口の中でれろれろと舌を絡ませる。大好きなキスに興奮して尻尾が勝手に暴れまわる。
「ぐ、そろそろ一発目出すぞ」
「んぁぅなか、ちゅっ♡ なかぁ♡ なか♡ ちゅっ♡ なか♡ なかぁ♡」
「わかってるよ……う、ぐっ」
銀色の糸が引く唇にキスをしながら、中出しをねだる。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」
「おれ、が♡ まちがって、ましたぁ♡」
……さっきの妄言をわざわざ蒸し返してくるあたり、和樹のいじわるはまだ終わらないらしい。きゅっと切なく締め付けられる胸を抑えながら、覚悟を決める。
「何が間違ってたんだ?」
「お、おれはぁ♡ ……う、うぅ……おんなのこ、れしゅ♡ 和樹のことがしゅきな、めすわんこれしゅ♡」
本当の意味の敗北宣言。人生の大半を過ごしてきたセピア色の記憶が走馬灯のように流れ、ぽろぽろ涙が溢れてくる。
何度やってもやらされても、自分を否定しているようで苦しくて辛い。だけど、なのに……。
「そうだよな、アオイはもう女の子だもんな?」
「ひゃい……♡」
「じゃあ、可愛くおねだりできるよな?」
「ひゃい♡」
和樹に女の子として認めてもらえて、女として扱ってもらえて、メスとして番って貰えて。
脳がとろけるくらいの幸福を感じてしまう。
与えられる幸せに酔っ払って、熱に身を任せるように全力で猫撫で声を作る。
「かじゅき♡ ご主人しゃまぁ♡ ご主人さまのことだいしゅきな、あおいのわんわんおまんこにぃ♡ ご主人しゃまのとろとろしあわせミルク♡ いっぱい注いでくらしゃい♡」
自分でもどこから出しているのかわからないとろけるような甘い声。おねだりを聞いた和樹が満足そうに口元を歪めて、腰の動きを早めてくる。
「……上手に、出来たな、ご褒美だぞ! アオイッ!」
「あっ、ひゃぅっ♡ あんっ♡ ふぁぁん♡」
「ぐ、うぉぁっ!?」
動きが小刻みにすばやくなっていき、和樹の口からどこか動揺した声が溢れた瞬間。
おれの中で和樹の主人棒が爆発した。密着した子宮口から精液が流れ込んできて、入らない分は膣内に満たされていく。
「う、ぐぅぅ!?」
「ひゃ、ひゃんっ♡ ひゃん♡ ひゃぉん♡」
切羽詰まった甲高い鳴き声がおれの口から出た。濃い、濃すぎる。っていうか濃いにも程がある。
――ぶぢゅる
身を捩ると、まるで固まりみたいになった精液が結合部からひりだされるように溢れた。
溢れた精液は流れ出ることがなく、まるでゼリーのように球状を保って動きに合わせてプルプル揺れる。
「う、ぐ、や、やっべ、これ……っ」
「はぁ、はーはー♡ はー♡」
うわぁ、あんなの中に出されてるの? 慌てて避妊薬飲んどいてよかった。
「はぁ♡ はぁ♡ はぁ♡」
飲んでなかったら絶対妊娠してた、あんなの溢れるくらい出したのに和樹の雄はおれの中で臨戦態勢を保っている。
「はっ♡ はっ♡ ハッ♡ ハッ♡ ハッ♡ ハッ♡ ハッ♡ ハッ♡ ハァッ♡ ハァッ♡」
駄目だろ、これは駄目だろ、絶対ダメだ、ダメに決まってる。
こんな凶悪な精液だすちんこで犯されたら、普通のメスなら発狂する。頭の中真っピンクになって、交尾することしか考えられなくなる。
「アオイっ、ぐ、ぅ」
「れろっ、じゅっ♡ ちゅっ♡ あむ、れろっ♡」
がっつくように和樹の口周りを舐め回し、首筋やらたくましい胸板へ舌を這わせて玉のような汗をぬぐう。
ラクティさんが気をつけろと言った理由がよくわかった。油断してたら確実に妊娠するまでやってた。
「よ、ようやく治まった、アオイ、ちょっとストップ、待て、待てって」
取り敢えず和樹も一発出して落ち着いたみたいだし、一旦交尾しなきゃ。
「わんっ♡ わんぅっ♡ ご主人さま♡ こーび♡ こうびしよ、もっとこうびしよ♡」
和樹が何故かおれを離そうとする、意味がわからない。だってちんこは全然元気じゃん。
「まて、待て! おすわり!」
「はっ、はっ♡ くぅぅん……♡」
命令されて動きを止めるおれから、和樹はちんぽを引き抜いてしまう。
濃すぎて溢れて来ない精液の固まりが詰まったお腹を撫でながら、愛液と精液で濡れてかるちんこを凝視しておれは尻尾を振りたくる。
なんでこんないじわるするんだよ、おれの事嫌いなのか?
「落ち着きはしたけど、まだまだ出そうだ……やべぇなあの薬……アオイもなんか変だし」
「へっ♡ へっ♡ かじゅき♡ やだぁ♡ こうびしよ、こうびしてぇ♡」
切なくて悲しくて和樹を呼ぶと、和樹はおれを抱き寄せた。
なんて失礼な、おれは至って正常だ
「すぐしてやるから、ちょっとまってな」
「やだぁ♡ まてないっ♡ すぐする!♡ すぐしたい!♡ 交尾っ♡ 交尾するっ♡」
「……わかった、四つん這いになってお尻だして」
「うんっ♡」
即座にベッドの上で手足をついてお尻を高く突き出して、よく見えるように尻尾をぶんぶん振り回す。
「かじゅきぃ♡」
「いつにもましてスケベなわん娘になっちまって……」
うるさいな、おれをこうしたのは和樹だ。今回だって和樹が悪い、だから責任とって交尾しなきゃいけないんだぞ。
そう思って「わんわん♡」と和樹が好きな鳴き声をあげながら尻を上下に振る。
「落ち着いたらまたムラムラしてきたし、加減なしでいいよなもう」
「うんっ♡ きて♡ いっぱいきて♡」
和樹の指がおれの尻肉を鷲掴みにする、次の瞬間――期待通りにちんこが背後からおれを貫いた。
「アオッ……ォォォン♡」
「一気に動くぞ、いいなアオイ」
「ワンッ♡ ワンッ♡ アオッ♡ ワォン♡」
先程にもまして激しい腰使いが、おれを責め立てる。なんでも体の構造的に獣人は背後からのほうが子宮を突きやすいらしい。
なので和樹の動きでガチガチのちんこが何度も子宮を突き上げてきて、気が狂いそうな気持ちよさが身体の中で渦巻いていた。
「くっ、アオイ、また出すぞ」
「ワンッ♡ アォン♡」
舌を突き出し、よだれを垂らしながら吼えて答える。あっという間に達した和樹はまたたっぷりと濃い精液を流し込んできた。
最初のよりは幾分薄い、でも尋常じゃない濃い雄の匂いがする。
「う、ぐぅ……こ、これならいけそうだ」
「ヘッ♡ ヘッ♡ キャオッ!?♡ ワンッ、あぉん♡」
意外にも早いなと思ったら、出して間髪入れずにまた和樹が動き出した。ちんこの硬さは全く変わっていない。
休憩無しでこんな激しいのなんて始めてで、暑すぎてだんだん呼吸が苦しくなってくる。
「ハッ♡ アォッ♡ ヘッ♡ ヘッ♡」
「う、はぁ、はぁ……く、うぅっ」
次第に部屋の中は2つの音だけが入り交じるようになる。
苦しそうなふたり分の息遣いと、柔らかい肉を硬い棒でぐちゃぐちゃにかき混ぜる音。
汗の匂いと生の匂いが混じって嗅覚が馬鹿になりそうだった。
「う、ふぅ、ぐっ」
「アッ♡ キュゥン♡ クゥン♡」
汗だくになった和樹の身体がおれに覆いかぶさる、少し乱暴に汗ばんだ慎ましい胸を揉みしだき、振り向かせてキスをしてくる。
激しく突き上げる動きが、ねちっこく子宮口を嬲る動きに変わった。
「あ、くぅん♡ あむ、ちゅ」
「れろっ、ちゅ……じゅる」
背を反らして横に振り向き舌を絡めあう。頬を伝う汗が混ざって少ししょっぱい。
次第に子宮が爆発してしまいそうな勢いで熱を持ち始めている事に気づいた。
「ぁ、かじゅき……おれ、いきそー♡」
「んっあぁ、わかった……」
ぐりぐりと子宮をいじめる力が強くなっていく。
和樹と身体を重ねるようになってわかったことだけど、おれは感じやすいけどイキにくい体質だったらしい。
最近は和樹のほうが早いから大体セックスの最後に一回イっておしまいだ。
「……どうせシーツもマットレスも取り替えだこれ、気にせずイっていいからな」
「はっ、くぅん♡ わんっ♡」
そのかわり途中が気持ちいいほど、興奮してるほど最後にイク時は……あー、なんだ、凄い。
和樹の手がおれの後頭部を掴んで、少し乱暴にベッドに押し付ける。
汗で湿ったシーツに顔を埋めながら、和樹はおれの尻を高く突き出させると思い切り体重をかけて子宮を押し始めた。
ぐっ、ぐっと突き上げるんじゃなく入り口を押し開くように。ちんこが中をえぐる。
どこで覚えてきたのか犬系獣人の雄が雌を屈服させる時の体位。最初は眉唾だったけど試しにやってみて恐れおののいた。
「くぅぅん♡」
相手が好きな雄だと思うと逆らう気力が全くなくなる、四肢から力が抜けて膣肉だけが締まりを強くするのが自分でもわかる。
容赦なく一番奥を狙う雄に、もともと屈服していた子宮が当然のように陥落した。
おなかの奥できゅうきゅう鳴きながら子宮口が開いて、精液を受け入れる準備を始める。その奥にある卵巣が卵を作っているのがわかる。
卵子と子宮に膜を張って受精と着床を防ぐ効果のある避妊薬を飲んでいるから妊娠はしないけど、身体は多幸感で満たされながら妊娠する準備をはじめている。
「アオイ……」
「ん……♡」
ピンと立った耳元に、和樹の声が届く。
「出すぞ……イけッ」
「……わんっ♡ あおっ、おぉん♡」
射精と同時に命令を受けて、おれの身体は素直に……深く静かに絶頂した。
濃い精液が注ぎ込まれた子宮から、滲み出るように溢れる快楽が全身を巡る。それは頭に到達するなり眼の前を白く染め上げていく。
それが過ぎればどこか周囲を暗く感じるようになって、チカチカと星がまたたいて見える。
手足に力が入っていた、無意識にピンと伸びていた手足が程なく弛緩していく。
太ももを熱い液体が流れていく、ばしゃばしゃと精液混じりの潮を噴いてしまっているみたいだった。
肉体的な快楽や刹那的な快感とは違う、想像を絶する幸福感でイかされるこの感覚。
心も身体もぽわぽわとしてきて、全てが満たされていくような感じ。
「わ、ふぅ……♡」
「今日はまた盛大にイったな」
「くぅぅん♡」
結合部から大量に溢れる潮と……その、和樹との交尾が幸せすぎてまたやらかした嬉ションの感触を感じているのか、苦笑いしながらおれの頭を撫でる。
考えると憂鬱になりそうな片付けのことは思考から放り出し、暫く続くこの多幸感に浸る。
セックスするたびにやってくる、和樹の体温を感じながらイけるこの時間が本当に大好きだった。
それにしても……はぁ、すごかった……。
「アオイ……」
夢心地で軽く船を漕いでいると、和樹の声が背後から降ってくる。
「終了ムードのところ悪いんだが……」
「んぁ……きゅんっ♡」
和樹の腰が少し動く、ガッチガチのちんこがイったばかりでジンジンしている子宮をえぐった。
……既にあんなに濃いのを何発も出しているのに、え?
「……か、かじゅき、しゃん?」
震えながら振り返ると、和樹は眉間に皺を寄せながらおれを見下ろしてきていた。
「……その、悪いアオイ、なんかさっきよりムラムラしてきた、やばい」
「あ…………あっ……ぁ……」
機嫌よく左右に振られていた尻尾がへにゃりと萎れて、耳は後ろに倒れる。
――うち知ってるよ、一晩中ラクちゃんの遠吠えが聞こえててさ……
昼間に聞いた呑気な暴露が頭の中で反響する。
適量だったんだよな、ラクティさんとこ。じゃああからさまに摂取量間違えたうちは……?
「……本格的に効いてきたみたいだ、ごめんな、アオイ」
「や、ぁ……かずき……まって、やだ、おねがい……むり……」
「……ごめんな」
力強い指が、おれの腰を掴んだ。もう逃げられないぞという宣告に、僅かに膀胱に残っていた尿が恐怖で漏れた。
今までよりもむしろ力強さと硬さをました肉の凶器が。おれがもう雌であることを否応なく理解らせる邪悪の化身が。
本物の獣(ケダモノ)となって牙を剥いた。
――ゆるしてっ、やだぁ! あっ、やんっ♡
――むり、無理なのっ、もうむりりゃからぁ♡ ごめんなさい、ごめんなさいっ♡ ごめんにゃしゃいぃ♡
――わっ♡ わんっ♡ わんっ♡ わぉん♡ わぉぉぉん♡ きゃんっ♡ きゃんきゃん♡ きゃおぉぉぉん♡
――あおっ、あおぉぉん♡ わぉっ♡ わぉぉん♡ わんっ♡
――アオォォォン♡ オンァォンッ♡♡ ォンッ オォォン♡♡♡
――アオ゛ッ♡♡ オォォン♡♡ オ゛ン゛ォンッ♡♡ ワ゛オ゛ォォ゛ン♡♡♡ ア゛ォ゛ォ゛♡♡♡ ォォ゛ォン♡♡♡ オォ゛ン♡♡♡ アオ゛ォ゛ォン♡♡♡♡♡
♡
結局おれは逃げることも出来ず一晩中イカされ続け、日が昇る頃には精液で膨らんだ腹から射精みたいに精液を噴き出す無様なオブジェと化していた。
……てか精液で腹が膨らむってどういうことだよ。
そんなツッコミをしながらも、当然のように腰がガクガクでまともに立ち上がる事すら出来ないおれは、気絶から醒めてすぐベッドの住人となった。
理不尽なことに和樹はむしろ快調そうにピンピンしていて、おれを看病しながら遠吠えがうるさいという近所からのクレームに謝って回るはめになっていた。
涙で腫れぼったい目元に冷やしたタオルを乗せて、整えられたベッドで和樹の謝る声を聞いていたおれは、天罰だと思いながら二度と薬には頼らないことを誓うのだった。
Firu
2021-07-11 18:56:53 +0000 UTCkunashi
2019-07-12 16:52:30 +0000 UTC