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「紛争学園」~とある昼下がりの決闘~ 1

 yukibouです(*^_^*) JZcommitment(https://www.pixiv.net/member.php?id=4806105)さんからのコミッションで、自分の創作設定、「紛争学園」について、一緒に考えたキャラクターを用いてイラストと物語を描かせて頂きます( *´艸`) しばらく続きますので、興味を持っていただけたら幸いです( *´艸`)


●「紛争学園」とは


 神原軍立学園の通称であり、「軍立」の教育機関。優れた軍人を輩出する名目にて、強靭な人材を育成するカリキュラムを研究している。そのため、外部から格闘技や護身術に秀でた青少年をスカウトすることもある。

 ここではその一環として、定期的に生徒同士の試合が行われている。籍を置く血の気の多い生徒のあらゆる欲求を解消する目的もあって、試合に負けた者は、勝ったものから犯されてしまう。

 近年では軍立の教育機関は増えており他にも多数存在するが、その中でも「紛争学園」は中心的な存在となっている。


●登場人物


船橋 ハルヤ


 紛争学園の下級年生。やや弱気で大人しい性格。喧嘩はあまりしないが、冷静で芯は強く、下級年の中では人気な存在で友人も多い。が、その延長で、好戦的な生徒に喧嘩を売られて絡まれることもしばしばある。(苛めの意識はなく、純粋に荒事を好む生徒が多い。特に下級年生は屈託のない好奇心でハルヤの実力を試したい者が多くいる)

 体格は標準だが、紛争学園の生徒の中では比較的力が強くなく、試合ではあまり結果を出せていない。それでも持ち前の明るさと、学年の垣根を越えて気にかけてくれるケンゴとラクヤの存在もあって、紛争学園の過酷な日常を笑顔でこなしている。


石浦 ケンゴ


 紛争学園の中級年生。勝気で冗談が好きな面もあるが、本質的には素直で剛直な性格。ハルヤとは幼馴染であり、兄のような存在だった。だがやや過保護な面もあり、ハルヤに悪意なく喧嘩をしようと持ち掛けた下級年生を鋭く睨み、威嚇して肩代わりしようとする面も。長い付き合いもありハルヤの事は心底信頼している裏側で、引っ込み思案で穏やかな性格のハルヤには揉め事を解決することはできないと思っている節も見受けられる。

 ハルヤからは憧れに似た感情を向けられているが、一方でケンゴはハルヤの事を恋愛対象として見ており、紛争学園に入って以降はハルヤを粗野な生徒から守るべく、時間さえあればハルヤの教室に出向いている。

 同じく中級年で、ハルヤに好意を向けているラクヤを敵視しており、ハルヤを奪われまいとして非常に警戒している。


前堂 ラクヤ


 紛争学園の中級年生。不良然とした性格をしており、気性は荒く、敵対した相手には問答無用で殴りかかることもしばしば。だが、誰彼構わず当たり散らすということはなく、寧ろ普段は社交的であり交友関係は広い。

 また独占欲が強く、ハルヤが他の人物と話しているのを黙って見ていられず、嫉妬を燃やすこともある。

 ケンゴと同じくハルヤの事を好きだが、ハルヤとは紛争学園から知り合いになった。試合で結果を出せないハルヤに、かつては同じくひ弱だった自信を重ね、隣にいて守りたいと切に願っている。ケンゴと同じく、ハルヤは大事に守るべき対象だとして考えており、例え好意的だとしてもハルヤに近づこうとする輩はハルヤ本人以上に警戒し、必要だと思えば襲い掛かることもある。

 その感情故に幼馴染であり、同じくハルヤを愛しているケンゴを猛烈に敵視し、いつもハルヤを奪い合っている。




 神原軍立学園 通称「紛争学園」。

 

 プライドの為には抗争や喧嘩を辞さず、血の気の多い生徒が集うこの学園にて。今日もまた、とある紛争が巻き起こっていた。




「テメェ! あんまハルヤにひっついてんじゃねぇぞ! ケンゴ!!」


「あぁ!? いちいち因縁つけてんじゃねぇよ! ラクヤ!!」


 のんびりと昼食をとる時間の筈が……、怒声を上げ、胸倉を掴む。すれば掴まれた方も顔をしかめ、胸倉を掴み返した。


 先んじて掴みかかった赤髪の青年、前堂 ラクヤは、向かい合う茶髪の青年、石浦 ケンゴを睨み付け、苛立ちと興奮で鼻息を荒くしていた。


 ……そして、それとなくケンゴの手が届かないようにラクヤにおしのけられた青年、……二人より頭一つ程度控えめな体格をした船橋 ハルヤは、いつもの事だと感じつつも、どうしたものかと嘆息を吐いていた。


 いつものように昼飯時。午前の授業が終わるやこちらの教室に駆け込んできた二人に同時に誘われ、ハルヤはいつもの校舎裏で弁当をつついていた。だが、二人ともがそれを気に入ってはいないようで……。



「ふん、俺らは昔っからの仲良しだからな。テメェこそ赤の他人のくせに、馴れ馴れしくしてんじゃねぇぞ。なぁ、ハル?」


 ふと、ケンゴがハルヤの肩に腕を回し、勝ち誇るように笑みを浮かべる。ラクヤを牽制してかわざとらしく昔からの呼び方をするケンゴに、ハルヤはそれ以上何も言えなくなってされるがままになった。


「はっ、関係ねぇだろ。兄貴風ふかして逆に鬱陶しいんじゃねぇの? なぁ、ハルヤ?」


 だが、させじとラクヤはハルヤの腕を引き、自身の胸まで抱き寄せるようにしてケンゴから引き戻す。汗と香水の匂いが漂う笑顔のラクヤに顔をずいと近づけられて、ハルヤはどうしていいか分からず、誤魔化すような曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。


 下級年のハルヤにとって、中級年の二人は先輩だ。だが、二人とは敬語も使わず、気楽に名前を呼び合う仲である。

 そのうちの一人のケンゴは、ハルヤにとって近所に住んでいた所謂幼馴染でよく顔を知っている。昔から頼りになる兄貴分で、ケンゴの後を追いこの紛争学園に入学した後も様々なことを手助けしてくれた。

 

 そして、もう一人のラクヤは、ここにきてから知り合うことになった。少し剛直な面があるケンゴとはまた違った人懐っこさを持つラクヤは初めて会った時から優しくしてくれて、今では年齢が違うとは思えないほど遠慮なく何でも話せる中になっていた。

 

 紛争学園では、日夜生徒同士の試合が行われる。とりわけ下級年の中でも非力で、その結果の芳しくないハルヤにとって学園での生活はあまり楽なものではない。それでもこうして楽しく暮らせているのは、自分を気にしてくれる二人がいるからだ。

 

 ……その二人が、顔を合わせる度揉めるほど致命的に相性が悪いのが、当面の悩みではあるのだが……。



「はぁ……。いい加減喧嘩はやめろよ、二人とも……」


「つーか、今日は俺が誘ったんだろうが! なにテメェまでひっついてきてんだよ!」


「うるせぇ! 俺が先に誘ったわ! 俺がハルと一緒にいてなにが悪いんだよ! 俺は危ない野郎が近付かねぇように見張ってるだけだ、テメェみてぇな奴をな!」


 呆れたハルヤの声は届かず……、ハルヤを奪い合うべく、二人の言い争いは更にヒートアップしていく。


「お前に何ができんだよ! 俺と一緒にいた方が安全に決まってんだろうが、ボケ!」


「あぁ? 俺より弱い奴にハルが守れるかよ、わかったらさっさと消えろや!」


「んだと、コラァッ!!」


「うわ! も、もうやめろってば!」


 拳を握り、ついには殴り合いになる……その寸前で、ハルヤは二人の間に身を挺して止めに入る。

 

 必然的に二人の拳がハルヤに向いた途端……、二人はバツが悪そうに顔を見合わせると、苛立たしさをかみ殺す様に目を逸らした。


「あの……二人とも、俺のこと気にかけてくれるのは嬉しいけどさ……。俺にとっては二人とも仲良しの友達っつーか、先輩っつーか……」


 試合の戦績はもちろん腕力でも差があるハルヤにとって、高いレベルで実力の拮抗している二人の衝突を止めるのは命懸けだ。なんとか止めることができたものの……、一触即発の空気は消えない。ハルヤはぎこちない笑みを浮かべて、二人に笑いかけた。


 そんなハルヤを尻目に、ラクヤは舌打ちすると、今一度ケンゴの胸倉に掴みかかった。


「もう我慢ならねぇ……、おい、ケンゴ」


「あ?」


 ケンゴが冷ややかに返すと、ラクヤはふと、その口元に挑発的に笑みを浮かべる。


「今日こそ、俺とタイマンはれや。いい加減決着つけんぞ」


「……上等だ、コラ!」


「え!?」


 そして、二人がどちらともなく立ち上がった。凄まじい形相で戦意をたぎらせて睨み合う。

 

 穏やかな昼下がり、平和だった昼休憩は一瞬の事で……ハルヤは肩を跳ねさせた。



 この学園の生徒にとって、拳での喧嘩など身近なものだ。まして好戦的な生徒も多く、そういった荒事を進んで引き受ける者さえいる。そしてそれは試合に倣い、生徒に解放されているリングを用いられることもあった。

 

 

「……本当にやるの?」


「たりめーだ。言っとくが邪魔すんじゃねぇぞ、ハルヤ」


 戦意を剥き出しにした二人が収まることはなく。あれから、流れるようにここに来てしまった。問答無用の喧嘩でない分マシかとも思ったが、これはこれで十分に危険かもしれない。

 ハルヤは不安そうにしていたが、すっかり熱の上がった二人はもう聞く耳を持つようには見えなかった。




 そんなハルヤの心配そうな声に、ラクヤは吐き捨てる。ケンゴを威嚇していたかと思えば、ハルヤに向き、拳を掲げて勝気な笑みを浮かべて見せた。勝利を捧げるとでも言わんばかりのキラキラした笑顔に、どうしていいかわからないハルヤも軽く手を振っておく。


 生徒用のトレーニングルーム。数あるスパーリング用のリングの一つに、二人は既にあがっていた。日頃のトレーニング、そして過酷な試合の末に鍛え抜かれた肉体を晒し、試合の格好で相対している。

 火花を散らして睨み合う中、ケンゴは目を逸らさないまま、低い声で口を開く。


「おい、ハル。お前は先に部屋に戻ってろ」


「え……、……わ、わかった。怪我しない程度にしなよ?」


 始まれば、おそらくどちらかが潰れるまで止まらない。これから始まる勝負はケンゴにとってもハルヤに見せたいものではなく、それは確信できる。


 それをどことなく察知したハルヤは、放置していいものかとすこし戸惑ったが……、自分とは違う中級年同士の気迫に押されるように、その場を後にした。

 

 

 ハルヤがいなくなり、改めて睨み合う。

 

 軽く体をほぐしているラクヤに、同じようにして準備を進めるケンゴが口を開いた。


「……おい、分かってんだろうな」


「あぁ」


 真っ直ぐに睨み、そして改めて確認する。何を今更とラクヤも鼻を鳴らした。


「お前も、好きなんだろ? アイツの事」


 ケンゴの問いに、ラクヤは少し固まってしまったが、否定するはずもなく睨み返す。


 ハルヤが好き。それこそが、二人が互いに嫌悪し合う一番の理由だった。ハルヤを挟んでいがみ合いになる毎日の中で、何かを察するまでもなくそんなことは最初から明白だ。そしてハルヤを独占する為には、もう一人はどうにかして排除しなければならない相手であり、必然的に戦意を燃やすことになる。

 

 互いの試合や喧嘩の実力がほとんど拮抗していることも、ハルヤの奪い合いが全く進展しないことに繋がっていた。恋敵が実力者であることは互いに認めているところだが、その一方で、自分の方が強いという確信も互いに持ち合わせていた。

 

 今までは、ただでさえここの試合に慣れないハルヤの前で荒事を持ち込みたくなかったからこそ、空気を読んできた……。だがそれも今日限りだ。意外にも、こうしてどちらかが公に喧嘩を売ったのは初めての事だった。一方で、近々こんな日が来ることは二人ともが読めていた。 

 どちらが強いか、どちらがハルヤを隣で守るのにふさわしいか、ここでけりをつける。まぎれもなくハルヤを賭けた決闘だった。



「……俺は昔からあいつのこと知ってる。子供のころからずっと一緒だったんだよ。……今更、横入りしてきたテメェなんかに渡せるかよ」


「はっ、幼なじみってやつだよな? でもあいつがここに来たばっかで、試合で勝てないとき、お前は何か力になってやれたのかよ?」


 軽薄なようで、考えの深さを垣間見せるラクヤの言葉に、ケンゴは表情を苦くする。

 

 はっきり言って、ハルヤのここでの試合の成績は良くない。同じ年の連中に絡まれた喧嘩だって負け越しだろう。……そして、ラクヤもまた、昔は喧嘩が弱かった。

 自分と同じ境遇で、だからこそその気持ちを理解できる。強くなりたいと願う気持ちが、すぐに現実に追いつくとは限らない。それこそが、ラクヤがハルヤに感情を向ける理由だった。


 あいつを守りたい。ここで生きていくにはあいつは柔すぎる。手に入れたうえで、絶対に他の奴らから守り通す。……だが、その点でケンゴが譲る筈もなかった。


「……あいつは優しいだけだろ。あいつを分かってやれて、ここで守れんのは俺だけだ。ケンゴ、テメェには務まらねぇよ」


「綺麗事ばっか並べやがって……! 要するにあいつが欲しいだけだろうが、アイツの事は誰よりも俺が分かってんだよ」


「それはテメェもだろ。……とにかく、あいつは誰にも渡さねぇ」


 ……それ以上話しても無駄だろう。ケンゴは口をついて出かけた言葉を呑みこみ、言い返すのを止めた。ここまできて、口論で何かが解決するはずはないだろう。

 喧嘩や試合に明け暮れた男が、こうして体と戦意を剥き出しにして向かい合っているのだ。それがただの口喧嘩で終わるなんてまさかだろう。



「いい加減、ケリつけようぜ」


「勝った方が、あいつに告白できる。それでいいよな?」


「あぁ、正真正銘の決闘だ」


 この勝負に勝ったものが、ハルヤに告白できる。その時、ハルヤはどんな顔をするだろうか。案外鈍感な面があるハルヤが、自分たちが向けている感情に気づいているとは思えない。

 決闘の事を知ったなら、ひょっとしたら負けたもう一方に同情して寂しがるかもしれない。だが、どうしても決着はつけなければならない。


 ラクヤは頷く。と同時に、背後から何かを取り出して見せた。


 ラクヤが隠し持っていたそれを目の当たりに、……そしてその覚悟を今一度目の前にして、ケンゴは唾を呑みこんだ。


「あいつは怪我しないようにとかいってたが……先に言っとくぜ」


 ラクヤの取り出した、赤い液体の揺れる小瓶。

 

 摂取したものの感覚や身体能力を向上させる薬品、学生の間でひそかに噂になっている「赤水」のアンプルだった。中級年では他の学年よりも噂が通っており、試作品のそれを手に入れるのは他の学年と比べて難しくなかった。勿論、教員に見つかればただでは済まないだろうが。


「俺はテメェに勝つためならなんでもやる。テメェに負け認めさせる為なら、なんだってな。

 お前が降参しねぇなら、骨の一本や二本軽く折るぜ。降参するまでお前を壊し続ける。……それでもやんのかよ?」

 

 ……それを飲めば、少なくとも飲んでいない奴より試合で強くなれるが、その後に尋常でない倦怠感や筋肉の断裂など、副作用もあると聞いている……。隠しもせずにそれを取り出したラクヤに、ケンゴは卑怯だとは思わず、寧ろ当たり前のようにそれを受け入れていた。


 約束を交わした以上、絶対に負けられない勝負となる。そして、油断すれば負けるかもしれない相手だというのも承知の上。だからこそ、確実に勝利を得るためには万全を喫することが最重要だった。

 どんな手を使っても、敗北は許されない……、相手を降参させるためなら手段など選んでいられないのだ。それを見せつける意味もあるのだろう。


 ここにきても、考えが同じだとは思わなかったが。決闘が始まるだろうと考え至っていたケンゴもまた、それを取り出す。


 ラクヤはそれを見て目を見開いたが、すぐに乾いた笑みを浮かべた。


「はっ……、やってみろ。勝つのは俺だ」


 そういってケンゴは鼻を鳴らす。そして、二人ともが瓶の蓋を弾き、それを一気に飲み干した。


 「赤水」が喉を伝い、体に廻るまではそう時間はかからない。キャンバスの中央で睨み合い、熱が充満していく気配を感じ取る。

 

 揃って、空の瓶をリングの外に放り捨てる。直後、二人の間に、音のないゴングが響いた。



 次回はこちら(https://www.pixiv.net/fanbox/creator/23459386/post/228981)


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