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「決戦前夜 ~アラトVSAクラスの最強ボクサー~」 1

 作成予定のイラストノベル「紛争学園 バトルロイヤル編」に先駆けて、決戦前夜にあった、とある下級年のお話をUPさせて頂きます('◇')ゞ(pixivfanboxにてご支援いただいている方には各話完成次第そのまま公開、その後、通常のイラストノベルのようにboothなどで販売させていただきます。)


 世界観の紹介もかねて、恐れながら一話のみ全体公開にさせて頂きますのであらかじめ御了承ください。なにぶんフォロワーの皆様やご支援者様に参加いただいてお話を創作していくのは初めてになりますので、完成を目指して様々なアプローチをしていきたいと思っております。普段とは違ったやりがいがあり、今から作成者としても楽しみにしております('◇')ゞ


 このお話をきっかけに、「我こそは」と紛争学園の生徒に挑戦していただくキャラクターが増えればと考えております♪(新企画ばっかりが先行して申し訳ありませんが、作成中のユウキのお話の完結もどうぞご期待ください(#^^#))




「ふーっ、ふーっ……!」 


 神原軍立学園 下級年校舎


 日々激しい試合を行い、生徒の精神的、肉体的な強化を目的としている「軍立の学園」、その下級年校舎にはトレーニングルームがいくつも存在する。その中でも、ここは設備が古く管理のあまり行き届いていない、廃倉庫の傍らにある最も人気のない部屋だった。


 ここ数日、遊びの約束も蹴ってここに通い詰めになっている紛争学園の下級年、「前畑 アラト(まえはた あらと)」は、今日も一人、古びた器具を使って筋トレに励んでいた。



 ……ゴッ!!


「っぁ……!」


 ふと、汗だくになって筋トレに集中しているアラトの背中に、何かがぶつかる。


 アラトは呻くと同時に、誰かに背後から小突かれたこと、そして、いつの間にかこの部屋に自分以外の誰かがいたことを今になって気づかされた。


「……誰だオラァッ! ここはアラト様の貸し切りなんだよっ!」


「へぇ? お前いつから、学園の設備を独占できるほど偉くなったんだ? アラト君よぉ?」


 軍立の学園では生徒の粗暴さはもはや定評であり……、誰かれ構わずまず牙を剥いて威嚇するのが定石となったアラトに対し、……けしかけた相手はにやつくばかりだった。



「へっ、……コウに聞いたぜ。こんなとこでコソコソ練習とはよぉ、無駄にこずるい真似しやがって」


「……テメェか、コラ!」


 怯むどころか、挑発的な態度を隠さない青年に対し、アラトは顔をしかめる。

 その顔は忘れようもない。アラト自身やコウと同じ下級年Aクラスであり、アラト同様、己が内に最強の漢への野心を秘め、学園の覇権を虎視眈々と狙っている男だった。


 「荻原 カイチ(おぎわら かいち)」。ラフなTシャツにジーンズを着込んだ、アラトに違わず鍛え抜かれた体つきをしている黒髪の青年は、過酷なトレーニングで隆起しきっている上半身を晒すアラトを見て、つまらなそうに鼻を鳴らす。


「けっ、……今はテメェに関わってる暇なんかねぇ。邪魔すんじゃねぇよ、ヒマ人が」


「はっ、今日はやけにはりきってんじゃねぇかよ、あぁ?」


「白々しい言い方しやがって。テメェもとっくに知ってんだろうが。もうすぐ……」


「BCTだろ? 知ってる、つーの」


 カイチが肩を翻しながら言う。……アラトは器具を握りつつも、目を細めた。


 「BCT(Battlefield Combat training)」。神原軍立学園で一週間の期間を設けて行われる戦闘訓練であり、……俗にいう「紛争学園のバトルロイヤル」と知られて地域では有名だった。


 軍立の学園ではこうした実践的な訓練は定期的に行われるが、近隣に集合する軍立の中でも最大手である紛争学園こと神原軍立学園は、その訓練の規模も最大級であった。


 訓練は主に、緩衝マットで隔てられた迷宮のように設営された広大な体育館の中に、紛争学園の生徒、そして「外部からの参加者」が放たれて行われる。参加者はそれぞれ迷宮の中を歩き回り、その中で参加者同士が出会ったと同時に戦闘訓練が開始、互いのリストバンドを奪い合う。勝ったものが負けたものから奪い取り、入り口まで戻り自身のポイントに還元し、また迷宮の中で次の獲物を探す。


 それを朝から夕方まで、期日中ずっと繰り返す。大まかには、紛争学園の生徒が外部からの参加者を迎え撃つという構図だ。


 この一大イベントは、実際に最低一日以上は参加を強制されている生徒たちにとっても大きな意味合いを持つ。稼いできたポイントはそれぞれ期間終了後に学校中に順位付けされて知れ渡る他、そのまま成績に加味される……つまりは、学園の自分の立ち位置を示す「ランキング」に大きく関わってくることを意味している。

 そうでなくとも、外部からの参加者に学園の生徒が負けることとなれば、縄張り意識の強い者が多い生徒自身の名折れであるし、近隣の他軍立学園の生徒の参加も多く、それも対抗意識を後押ししていた。


 学園全体に「BCT」開催が告知され、外部にも参加者募集の窓口が開かれた。そのイベントの開始はもうまもなく……。


 生徒間、特に下級年の間では神経質な空気が漂っており……アラトもこの負けられない勝負を前にして、何週間も前からさらなる肉体改造に励んでいた。




「まぁ、抜け駆けして鍛えてんのはテメェだけじゃねぇけどな。俺は成績トップ維持していけりゃなんだっていいけど……。外部の奴らに、神原の力を示す絶好の機会だからなぁ」


「へっ、ずいぶんと余裕じゃねぇかよ。……速攻でリタイアして逆に学園の名を貶めんなよ? ヘボボクサー野郎」


「……んだ、コラ!?」


 へぼ、ボクサー野郎。それがカイチの逆鱗に触れることを知ったうえで、アラトは言い放つ。


 カイチは見るからに不愉快そうに顔をしかめ、拳を握ったが……、カイチとの不和など日常茶飯事であるアラトは気にした様子もなく、器具から手を放し、立ち上がった。



「…………」


「何見てんだ、コラ」


「……へっ、コソコソしてた割には、大したことねぇと思ってな? まだまだ割れが甘いんじゃねぇのかぁ?」


「んだおらぁっ!?」


 苛立ったカイチだったが……、自身の腹筋をシャツの上から軽くはたきつつ、カイチが言う。今度はアラトが額に筋を浮かべる番となった。

 ぎりと奥歯を噛み締め、今にも殴り掛からんばかりの勢いでカイチに迫っていく。



「テメェ、カイチぃ……バトロワの前に病院送りにしてやろうか、あぁ?」


「こっちのセリフだぜ。テメェみてぇな技術も何もねぇ筋肉バカなんぞに、この俺が負ける訳ねぇだろうが、ズブの素人野郎」


 怒りをにじませ、二人は詰め寄っていく。


 同じクラスに属して、交友関係も重なりがある二人。その因縁のきっかけに関しては特になかったが……、いわば気が合わないのは必然でもあった。二人ともが学園制覇を目指し、揺るがない。試合の戦績もほぼ同じ学年トップクラス。自分に匹敵する相手がすぐそばにいる緊張、それとない敵意はみるみる膨らんで、今ではカイチは、アラトが明確にライバル視する男の一人となっている。


 ただ、大きく違うのは、アラトが感情のままに突き進む激情型であるのに対し……カイチは自身の持つ才能や技量を理解したうえで、野心のままに計画を立てる冷静さを欠かさないということ。



「けっ……、無駄に減量ばっかしたなよっちい体で俺と張り合えるかよ。三食ウサギの餌か、あぁ?」


 アラトが半笑いで言い放つ。それは、カイチの幼少期から培ってきた生活や技術を茶化したものだった。


 カイチは自他ともに認める「ボクサー」であり、試合でもボクシングをもとにした動きで勝利を重ねている。それは下級年の間でも周知の事実だった。

 そして、カイチ自身がボクサーであることを誇りに思っていることもまた知れ渡っており……、子供のころから共にあったボクシングをこ馬鹿にするようなセリフは捨て置けなかった。


 二度目の挑発はさすがに堪えきれず、カイチは舌打ちを打つ。その眼はすでに暴力の気配を感じて血走っていた。



「……あんまボクサー舐めんなよ……。テメェなんざ秒で倒せるわ」


「はっ、ガチの喧嘩じゃ、テメェが俺に勝てるわけねぇだろうが、あぁ?」


 アラトが言い放つ、その直後だった。


 ドゴォッ!!


「ぐ……っ!!」


 カイチが拳を握った、アラトがそう思った直後には、アラトの汗に濡れた腹筋に拳が弾けていた。


 目も追いつかないほどの速攻。拳を構えているカイチは、ボクサーさながらの動きでそっと体を揺らしつつ、アラトを睨みつける。


「へっ、……挨拶代わりだぜ、テメェ」


「けっ……」


 ドゴォッ!!


「っ、……ちっ、少しはやるじゃねぇかよ……」


 今度はアラトが反撃を放つ。カイチはよけることもせず、むしろ腹を突き出してそれを受け止めた。


 短く呻くも、痛みを露にすることなどなく。お前の拳など避けるに値しない、暗にそう告げてアラトに余裕の笑みを見せつける。


 その態度に、アラトもまた笑みをひく口元をひくひくとゆがませていた。

 カイチはその年ですでに五年以上もボクシングにかかわっており、下級年の中でも格闘家としてのプロ意識が成熟している。空手を原型にしてはいても我流の喧嘩殺法で押し進んできたアラトは、そんなカイチに度々素人扱いされて見下されてきた。


 ……久しぶりに、どちらが上か教えてやるのもいいだろう。珍しくも、二人の利害が一致した瞬間だった。



「わかってんだろうな、コラ」


「こっちのセリフだぜ」


 紛争学園の、そう呼ばれる所以。


 睨み合う二人は、己の我を通すために拳で決着をつけるべく、その場を後にした。



 つづきはこちら

https://www.pixiv.net/fanbox/creator/23459386/post/495351


「決戦前夜 ~アラトVSAクラスの最強ボクサー~」 1 「決戦前夜 ~アラトVSAクラスの最強ボクサー~」 1

Comments

バトルロイヤル本編の前になるお話ですが、こちらも楽しんでいただけたら嬉しいです( *´艸`)

yukibou

どきどきします。期待します!

cuckoo

バトルロイヤルの前にひと暴れするお話となってます(^^)v

yukibou

アラト君来ましたね!!!!! 次が楽しみです~~~!

水錫

ありがとうございます、次回はボクサーの新キャラを本格的に登場させる予定です(^^)v

yukibou

面白そうな展開!楽しみにしてますー!

ミケ空


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