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「カイチの格闘ジムアシスタント」


「はぁ……ったく……」


 口を絞るタイプの鞄を肩に下げ、カイチはこの日何度目かの重い嘆息を吐いた。


 繁華街を離れ、地下通路を下る。怪しげな店が立ち並ぶ中、職員に渡されたメモ書きの住所を頼りに進んでいく。



(アラトの野郎……お前のせいだぞ、この俺がペナルティなんざ……!)


 カイチは気が遠くなる気分で、アラトの顔を思い返しては恨み節を呟く。


 普段から学内でも学外でも喧嘩っ早い行動が目立っており、日々職員室に目をつけられていたアラト。それとは違い、自分は試合以外で学園に眉を顰めさせる行動は慎んできたつもりだった。試合中だって、最低限ルールを守っている。


 だが、アラトが先にけしかけたのだ。肘が当たったのは偶然だとしても……もう少しで失禁してしまう勢いの激痛だった。

 だからやり返したのだ、そこからは泥仕合で……自分はここにきて初めてペナルティを負う羽目になった。



「ま、仕方ねぇ……バイトだと思ってさっさと終わらせるか」


 アラトは地下ボディビルへの出場らしかったが、どのみちきっと碌な目には遭わないだろう。……そして自分は、格闘技ジムのアルバイト。とはいっても公式の試合に出場しているわけではなく、試合も自分たちの裁量で行っているらしかった。


 ……いわゆる、地下格闘技というやつだ。どちらにしてもいい予感はせず、カイチは嘆息を吐き、扉を叩いた。



 ……扉をくぐり、簡素ながら以外に清潔感のあるエントランスをくぐり、手前の受付に自分の名前を言う。

 少しして関係者らしき男がやってきて、ともに奥へとと進みながら、仕事の簡単な流れを聞く。


 仕事部屋だという場所の扉を開いた、まさにその直後のことだった。




「…………、っ……俺は……」


「おぉ、ようやく気が付いたらしいぜ」


 薄暗い部屋の中央で、眩いほどのライトに手出され、カイチは目を覚ます。


 まだ状況が理解できず、恐る恐るといった様子で瞳を転がしてあたりを見渡していると……、周囲の器具などに腰を下ろしていた、見知らぬ男たちが寄ってくる。


 見渡す限り、面積の少ない下着をつけた、筋肉隆々の男たち。


「…………むぐっ!?」


 そして……今、自分は口を縛られており、宙につられていることに気が付いた。手と足をサンドバックに張り付けるようにして拘束され……、周りの男と同じような下着に着替えさせられていることに気が付く。


(な、なんだ、この格好……、周りの奴らも!? てか、なんで俺縛られて……!?)


 ……思い出せば、あの時だ。扉をくぐろうとしたその瞬間に、背後から何者かに首を絞められ、抵抗の間もなく失神させられた。

 

 戸惑うばかりのカイチが目を見開いていれば、浅黒い肌をした一人が、ボクシンググローブを叩き合わせながら近づいてくる。



「よぉ、やっぱ神原学園のヤンキー君はエロい体してんなぁ?」


「むぐっ! もごっ!!」


「おっと。暴れても無駄だぜ? チェーンを弾き切るなんて真似はできねぇだろ?」


「ここは店の地下、俺らの特訓上でもあるけどさ。叫んでみても誰もこねぇから、安心してよがってくれや」


 男は近づくと、拘束されたカイチの胸をグローブで撫でた。どこかいじらしく先端の突起ばかりを執拗に触り、カイチは必死に体を揺らす。


(やめろっ! 触んじゃねぇ!! クソ、説明しやがれ、なんで俺がこんな……!!)


 ……ドボオオオォォォ!!


(……っ!?)


「ご……、もごっ……!?」


「はは、やっぱ生の体を殴れんのが一番のトレーニングになるわ」


 カイチの筋肉を愛撫していたのもつかの間。男は歯を剥いて笑うと、きれいに隆起したカイチの腹筋を殴りつけた。

 肩をびくつかせ、ふさがれた口でせき込むカイチを、周りの男たちが取り囲んでいく。


「なぁ~カイチくん? いつもの奴らみたく、どうせ格闘技ジムの手伝い以外に、何も聞いてないんだろ?」


(……が、ぁ……、クソ、どういう、ことだ……?)


 殴られた直後でカイチは目元をきつく寄せながらも、嘲るように言う男の言葉を聞く。


 聞いたこともないようなジムで、どうせただの雑用を任されるとばかり思っていた。だが、違和感がなかったわけではなかったが……。



「ここはただの格闘ジムじゃねぇ。金持ち相手のウリ専を兼ねたエロい試合をやってる、ちょい特殊な格闘団体なんだよ。

 ま、今時珍しくもねぇけど」


「…………!?」


 言葉の意味は何となくわかる。……つまりは、体を売る仕事をしている連中で、ここはそういった側面もあったということ。


 男の一人が下品な笑みを浮かべながら言う。当然のごとくそんな話を聞いていないカイチは、ただひたすら目を丸めていた。


「まぁ~……ただの地下格闘技と違うのは……、何でもありでサービス満載の試合を見せて、金を積まれたらそのまま何人かの客の相手をするって感じだ」


 だから……周りの男たちは鍛え抜かれた肉体をして、ここまで肌の露出が高いパンツを……、ただの格闘の試合では無かろうとは思っていたが、まさかそのような場所だとはつゆ知らず。カイチは布の下でごくりと唾をのむ。



「でもさ、そんな仕事してっからストレスもたまるわなぁ?」


「むぐっ…………」


 ふと、うろこの目のように筋肉の線が浮き出たわき腹を軽く殴られ、カイチは軽く呻く。


「そこで、お前みたいなアルバイトが定期的に必要ってわけ。ストレス解消の人間サンドバックがなぁ?」


 カイチはここで、ペナルティの意味を理解した。


 ただの強制的なバイトでは済まない。そして自分に罰を与えた教員の口ぶりから、ペナルティを犯した生徒を送り込む先はいくつか用意されているらしかった。


 つまりはここも……どうやらそういうことらしかった。


「サンドバックばっかじゃ物足りねぇよなぁ」


(つまり……俺はまんまと、こいつらのサンドバックになるためにここに来たってことかよ……!?)


 始めから決まっていたのだろう。そして、神原学園に罰を与えられ、ここにきた今までの生徒も、おそらくそろってこの憂き目に遭ってきた。

 ……やはり、ただのアルバイトなわけがなかったか。想像通りとはいえ、カイチは気の遠くなるような気がしてならなかった。



 グボオオオォォォ!!


(!!)


「オラ! どうだ、俺のパンチはよぉ?」


 カイチが考えていると、手前の男の拳が飛んできた。鳩尾を正確に穿つパンチに、カイチは身をよじって悶える。


「効いてねぇんじゃねぇのか? 体には自信があるだろうしなぁ?」


「確かコイツ、ボクサーなんだってよ。だったら殴られるのは慣れてるよなぁ?」


 男たちが目を見合わせ、カイチの肉体を眺めつつ……拳を握る。


 こんな体躯のいい男たちに交代で殴られたら、身がもたないどころではなく、完膚なきまでに体を壊されるかもしれない……。カイチは悲壮に表情を歪めたが、逃げ場などどこにもなく。


(くっそ……こうなったら、乗り切るしかねぇ……! 打たせ稽古みたいなもんだぜ、こんな奴らのパンチなんざ……っ!!)



 グボオオオォォォ!!


(ん、がぁ……ぁぁ!)


 ドボオオオォォォ!!


(ぐぶ……っぁ……!!)




 覚悟を決めたカイチだった、が、予想以上の拳の威力、そして容赦のないリンチに、苦しげな呻きを隠さない。

 やはり、紛いなりにも格闘技に精通している男たちだということなのだろう。決して素人の出せる威力ではない。


「へっ……なかなか色っぽい呻きだぜ……サンドバックの分際であんま興奮させんなよ、なぁ?」


 グボオオオォォォ!!


「殴られて感じてんのかぁ? とんだマゾ野郎が来たもんだぜ」


 ドボオオオォォォ!!


 拳がうずまり、汗がしぶく。


 男たちの拳を次々と受け止め続けたカイチの腹筋はすぐに真っ赤に染まり、次第に弛緩し始める。


(ぐぅ……ぁぁ……、クソ……こいつら……ガチでやっても、相当手ごわいだろ……!!)


 拘束が解かれれば……カイチは淡い期待を抱いていたが、拳の威力を身をもって味わい続けるうちに、無理矢理の脱出は困難であると認めざるを得なかった。


 周りには五人、カイチ以上の肉体を持ち、格闘技経験者。全員を倒すなんてほぼ不可能だし、拘束から逃れてもすぐに押し倒され、またリンチが再開されるのみ。



「もう脱がしちまえよ。窮屈そうだし」


 腕を回しつつ、ふとカイチの横にいる男がいう。


 その言葉に男たちはニヤつきながら頷きあうと、カイチの口元をふさぐ布をほどき……、そして、カイチの下半身にも指を這わせていく。


「……っ! ぷはっ……! こんのぉ……テメェら……触んじゃ、ねぇ……!」


「はっ、声に余裕がねぇなぁ? オラ!!」


 口元を縛る布がとられたカイチが睨みつけても、男たちは全く気にした様子もなく、カイチの下着を掴む。

 筋肉の線をなぞるように……、下着のふちを掴み、そして一気に引きずりおろす。


「……っ!!」


「くはは、わかってたけど……案外お前も悪い気はしてえんぇんじゃねぇのか?」


 下着がおりて、窮屈さから解放された性器がその陰から一気に跳ねて飛び出した。


 人間サンドバックのいきりだった性器を見て、周りの男たちがげらげらと笑い合う。カイチは羞恥心のあまり唇を噛み、逃げることもできず小刻みに震えながら俯いていた。


「さぁて、リンチプレイの再開だぜ!」


「っ!?」


 グボオオオォォォ!!


「ご、はぁ……っ!!」


「ぎゃははっ、殴っただけでビンビンに動いてやがるぜ、……オラッ!!」


 グボオオオォォォ!!


「ぎぃ……が、は……っ!」


「そういやこいつは、軍立だよなぁ。だったら、このブツは結構活躍してんじゃねぇのか?」


ドボオオオォォォ!!



「ん、……がは……っ!」


 性器の先から先走りが垂れ始め、腹を潰されるたび、大きく跳ねると同時にその量はどんどん増していく。

 性器全体が汗と先走りで艶めき始めたころには、カイチは次に打ち込まれる拳への恐怖と、それ以上の下腹部に渦巻く刺激に悶絶していた。


(か、は……はぁ……はぁ……! くっそぉ……試合、してっから……殴られ続けると……やっぱ……やべぇ……! ヤってるみたいな、気分になって……っ!!)


 とりかこむ男たちの視線、揺蕩う熱気。カイチは性的な興奮を禁じえなくなっていく。


 それを意図していた男たちは、次第にぐったりと頭を垂らし始めるカイチの様子を見て、笑みを深めた。



「そろそろイっちまいそうだぜ、コイツ」


「はっ、イやらしい野郎だぜ……ここでも十分通用するぜ、なんなら本当にバイトしてみるかぁ?」


「が、ぁ…………、テ、メェらぁ……、次、会ったら……絶対に……!!」


 カイチの反応を見て、男たちが笑みを引きながらカイチの肩や頭を軽く叩く。


 下半身の勃起が示す通り、体の熱は冷めず、興奮は否めない……。が、それでもなお、自分を嘲笑する周りの男たちへの明確な敵意が勝っており、カイチは猛全と唸ることを止めなかった。



「がははっ。テメェみたいなガキにゃ、喧嘩だろうと負けねぇよ」


「はぁ……はぁ……、くっそぉ……んな、ことは……がぁっ!!」


グボオオオォォォ!!


ドボオオオォォォ!!


 カイチが何か言いかける寸前、二人の男の拳を一度に腹に打ち込まれる。衝撃のままに、カイチの体がサンドバックごと揺れる。


(ぶ、は……、や、べぇ……腹、潰れて……、もう、限界だ……!!)


 腹筋が、というわけではなく。あえて下腹を狙って殴られているのもあり、カイチの性器は先端から真っ赤に充血し、艶めきながら小刻みに震えている。


 まもなく、射精するだろう。「拳でイかせる」ことも重要なテクニックとして身に着けている彼らにとって、カイチがついに至っているこの反応は特別珍しいものではなく。



「んじゃ、……そろそろイっちまえ?」


 ふとして、男たちが、カイチを拘束しているサンドバックを掴み、二人がかりで勢いよく背後に押した。


 カイチの体ごとサンドバックが背後に揺れ、カイチは浮ついた意識の中で風を感じ……、そして前には、ぐるりと腕を回している、この中で一番体格のいい男。


 ボクシンググローブが迫ってくる。……いや、揺らされたその反動で、カイチは自ずと拳へと向かっていく羽目になった。



「こいつでフィニッシュだぜ、オラァァッ!!」


 グボオオオォォォ!!


「んっ……ご、ぁぁ……っ! ……があ、あぁぁぁぁぁぁっ!」


ビュクッ……ビュルルルルルッ!!




 男の渾身の一撃を、しかも自ずと受けに行く形になったカイチは、陥没した腹筋でグローブを深く飲み込み……その下で、ついに射精してしまった。


 大きく性器を揺らしながら精液を吐き出し続ける。最後の一撃を埋め込んだままの男の肉体やグローブを白く汚した。



「まだまだ夜は明けねぇぜ? サンドバック君」


(がぁ……っぁ……、や、べぇ……、っぁああ…………)


 このままではまずい、だとしても、身体を揺らす程度にしか抵抗できない。


 屈強な筋肉を誇る男たちに逃げ場なく取り囲まれ、全身を殴りつぶされていく。鍛えた体にボクシンググローブが食い込んでくる鈍い痛みと、それに伴う下半身への痛烈な刺激。


 ……こ、これが、ペナルティか……。もう二度と違反は犯すまいと決心したカイチは目をぎゅっと絞り、気が遠くなる思いで耐え続けた。

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