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紛争学園 來山 シドウの神原狩り 1

 久しぶりに紛争学園のイラストノベルを製作しておりまして、今回はその時間軸より前の、本編につながる話となっております( *´艸`)


 本編にて対決する二人のイラストはpixiv(https://www.pixiv.net/artworks/81697273)に投稿してます!




「よぉ~、神原の下級年の野郎だな」


「……?」


 ロードワークの最中。ふと背後から声をかけられた紛争学園の下級年の青年、カイチは、休憩がてら足を止めた。


 振り返ると、すぐその影に覆われた。広い肩幅を持つ、大柄な体躯の男。


 ここいらでは見かけない顔だった。そして相手の放つ不穏な空気に、カイチも自然に顔をこわばらせる。


「…………誰だ?」


「ふーん、見た感じ、俺ほどじゃねぇがそこそこ鍛えてんじゃねぇか。……まぁ、あの野郎の通うガッコの奴なら当然か」


「…………喧嘩か?」


 相手の素性など知れない、だが、カイチにはなんとなく察しがついていた。


 向こうの肉体は服の上からわかるほどに鍛えられている。そして、そんな奴にここいらで話しかけられる理由は大体決まっていた。軍立である神原学園に所属していれば、喧嘩で勝ちをとろうとする不良から狙われることも多い。


 ……しかし、デカい。神原の上級年にさえ、これほど大きい奴はそうはいないだろう。



「で、だ。梓川 ユウキ、知ってんだろ?」


「……それがどうした?」


 相手……、十分大柄なカイチが見上げるほどの背丈を誇る青年、來山 シドウ(くるやま しどう)は、カイチを神原学園の生徒だと認識したうえで、それ以上の興味は示さず、ただ鼻を鳴らした。


 ……ユウキ。友人の名前をしかと聞いたカイチは、さらに警戒を強める。


「連れて来いよ。ま、連絡先でもいいわ」


「は、なんでお前に?」


 何を言い出すかと思えば。意味の分からない流れで見ず知らずの他人に友人を売るはずもなく。カイチがにべもなく断ろうとした、その矢先。


 シドウは容赦なくカイチに詰め寄り、胸倉をつかむ



「わからねぇか? 頼んでんじゃねぇ。

 ……死にたくなけりゃ、言うこと聞いとけ。あいつと同じ学校の奴を生かす意味ねぇんだわ」


「……死にてぇのはそっちだろ、どこの誰に喧嘩売ってんのか、わかってんのか?」


 ……さしずめ、ユウキに何か私怨がある奴か。拳をちらつかせるシドウに対し、カイチの反応は冷ややかだった。


 無論のこと、そこらのチンピラに負けるつもりなど毛頭ない。どころか、神原の頭を狙っている一人として、舐められるわけにはいかなかった。

 つい先日にも地元の喧嘩屋のオッサンを犯して勝ち誇っていたアラト程ではないにせよ、他人との喧嘩に積極的であるカイチは、シドウからの挑発を真っすぐに受け取った。


(アホのアラトとは違ぇんだ。ユウキはむやみやたらに喧嘩吹っかけて回る奴じゃねぇ。……百パー逆恨みだ。

 仕方ねぇ、俺がねじ伏せておくか……)


「あぁ、そういやテメェ、名前は?」


「荻原 カイチ。そういうテメェも名乗れや」


「俺ぁ來山 シドウだ。ま、サンドバックに名乗っても仕方ねぇが、よろしくな?」


 シドウは変わらず、不遜な態度でカイチを悠々と見下し続ける。カイチは不愉快そうに顔をしかめていた。


 ……コイツが相手が格闘技を習得しているかどうか……、同じ軍立に通っているのかもわかっていない。単純に見れば、見上げるほどの巨体は確かに脅威だが……。



「弱い者いじめは好きじゃねぇんだが……、どうやら、体に聞くしかねぇらしいなぁ?」


「……テメェも、どっかの下級年か? でけぇからって、強いとか勘違いしてんじゃねぇぞ」


「面かせや、オラ。男同士、裸の付き合いと行こうぜ」


 シドウが顎を引くようにして、喧嘩に誘う。


 負けることなど考えていないのはお互い様らしく。カイチは衝突前の独特の空気を感じ取り、薄く笑みを浮かべた。



 若者同士の喧嘩やスパーリングといったことが慣習となっている現在では、道端などではなく近場の貸しリングに諍いを持ち込むのがセオリーであり、それは軍立に通っていれば尚更だった。


 すぐそこにあった、古びた貸リング。もつれ込むように二人は火花を散らして移動した。



 ……カイチの方に油断があったのは否めない。どうせ有名なユウキにちょっかいを出したいだけの、口だけのでくの坊だろうと。


 だが、格闘技素人であろうシドウのポテンシャルは、カイチの想像の先をいっていた。



「くはは。だから、やる前に聞いてやったのによぉ?」


「ぶ、は…………!」


 勝負が進み……、容赦なく顔面を殴られ続け、意識が朦朧となっている。追い詰められていったのはカイチだった。


 カイチの様子見のジャブなどはシドウの圧倒的な筋肉量の前にダメージを阻まれ、ならばと本腰を入れる間に、シドウの強烈な一撃に見舞われた。

 シドウは確かに、格闘技を何ら習得してはいない様子だ。……いや、かじってはいるが練習などに積極的ではない、といった感じか。


 だとしても、そこから先はシドウの独壇場だった。最初の一撃で意識を刈り取られかけたカイチは、次から次へと飛んでくる大きな拳を受け続けるばかりとなる。



「ボコボコだなぁ、オイ。

 カイチ、つったな。そろそろユウキを売る気になったか? あ?」


「はぁ……はぁ……! テメェの立場なら……大切なダチを売んのか?」


「……ほぉ?」


「てめぇみてぇのに、ダチを売るくらいなら……死んだほうがましだ、ボケ……!!」


 首を鷲掴みにして無理矢理に立たせる。カイチは鼻血を垂らしたまま、シドウを睨み続けた。


「へっ、いつまで持つか見ものだぜ。……もうわかってんだろ? 俺の拳はあまくねぇ、ぜっ!!」


 ドボオオオォォォ!!



「ぐ、ほぉっ!!」


 ドボオオオォォォ!!


「オラオラァッ!!」


 グボオオオォォォ!!


「げ、はっ!!」


 ドボオオオォォォ!!


「さっさと吐かねぇと……」


 グボオオオォォォ!!


「大事な腹筋がいかれちまうぞ、ボクサー君!!」


 ドゴオオオオオォオオオッ!!


「が、はぁぁ……っ!!」




「はっ! 所詮、喧嘩も格闘技もフィジカルが全てだってのが、わかんねぇのなぁ?」


 自分と同様、見事に割れたカイチの腹筋に興味を持ってか、執拗に腹を殴りつぶしていく。


 いつしか腹筋は機能を失い、カイチは苦しげに嗚咽を漏らす。


 身長差でおそらく20センチ以上の差もあり、体重は言わずもがな。しかも、それをささえているのは脂肪のかけらもなくすべて筋肉。

 カイチがいかにボクサーとして優れた技能を有していても……、劣勢に立たされた今、そんな相手に勝つどころか逃げることさえも絶望的だった。


「俺に比べりゃ、テメェも貧相な! ガリのチビなんだよ! 俺と戦うこと自体、おこがましいんだよなぁっ!!」


 血管の浮かんだ二頭筋を際立てて、己の肉体を誇示するシドウは、すでに自身の勝利を確信しているのだろう。

 唾液の粒を垂らしながら、カイチは悔しげに奥歯を噛み締めた。



「へ、どうだ? 単純なパワーの差は? 可哀そうに、大事なダチも守れねぇなぁ?」


「く、そがぁぁ…………! ま、だ……俺、は……!」


「せっかくだから。あの野郎を潰す前に……、神原繋がりのお前を甚振って遊ぶとするか」


 元より、カイチがユウキのダチだと知った時点で、シドウにはただで帰すつもりはなかった。

 こいつが喧嘩を買ってこなくても、完膚なきまでに叩きのめす。痛めつけられた友人の姿こそ、……ユウキにとって、最大のメッセージとなるだろう。



(……テメェがまた俺の前に出てこない限り……、テメェのダチがどんどん俺に潰されてくぜ……、なぁ、ユウキ……)


 まずは、一匹。ユウキを圧倒的な差でもって打倒するために鍛え上げてきたこの肉体は、その友人には余裕で通用した。


 目の前のコイツを、どんな風に潰していこうか……。縮こまった腹筋を庇い、弱々しく頭を垂れるカイチを見下して、シドウは舌なめずりした。



 つづきはこちら。

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