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「へへ、グロッキーか、アラト……?」
「う、ぐぐ……」
徹底抗戦を決め込んだアラトだったが、やはり無謀が過ぎた。ことクロキを挑発するのは命取りになりかねない。
昔は、違った……。だが、この学園における下級年と中級年の基礎的な能力の差は無慈悲であり、クロキはそれを見越して、アラトに対し過去の清算を挑んでいる。
……子供の頃は、ほぼ対等だったというのに。実力の差がついた今、復讐を挑んでくるなんて。道理が通ってないとは言えないが、少なくともアラトはいまいち納得できなかった。
(やっぱ……正面からの喧嘩じゃ、勝てねぇ……けど、このまま負けたら、何されるか……!?)
だが、ここは腕に自信のある男たちが集う、弱肉強食の学び舎。戦うか、もしくは泣き寝入りするしかない。
アラトは、過去に「BLACK」たるクロキにしたことを鮮明に覚えているがゆえに……、クロキは自分を容易く開放しないだろうと理解していた。それもそうだ、逆の立場だったら絶対に報復を考える。
年下相手になめられることの屈辱さはよくわかるし……、負けたら、どんな目にあわされるか、想像もしたくはない。
「くくく、そろそろ心折れてきたらしいなぁ……?」
指の骨を鳴らしつつ、クロキがにじり寄ってくる。悪い笑みには、もはや自身の勝利を信じ切った絶対的な自信がみなぎっていた。
クロキにとって、普通にやれば勝てる喧嘩なのだ、さぞ気持ちがいいだろう。アラトはぎりと奥歯を噛み締める。
(仕方ねぇ……、こう、なったら……)
「はぁ……はぁ……、悪く、思うなよ……!」
「あん?」
だが、その慢心ゆえに、クロキは今確実に油断していた。追い詰められたアラトは目を血走らせる。
「…………隙ありだオラぁっ!!」
ガシッ!!
「がぁ!? んがぁあああ……っ!!」
鼻息荒く、アラトはクロキの背後より、その下腹部目掛けて勢いよく腕を上げた。狙いすましたその先で、クロキの急所を丸々と掴む。
クロキは余裕だった顔を一変させ、すぐに動けなくなった。まさかの思いでびくと肩を震わせる。
「あぁ……がぁぁぁ……、テメェ……!?」
「はぁ……はぁ……、大人しくしろよ?」
アラトが、金的攻撃などするはずがない。甚振り尽くす理由はあれど、クロキの中には熱血漢な後輩に対する一定の信頼があった。
……すべては、クロキが必要以上に挑発を重ねたうえ、想定していた以上に追い詰めてしまった結果だった。隙を見せてしまったことに苦い顔をしつつ、それでも、クロキは笑みを引きつらせる。
「おい、アラトぉ……テメェ、自分が格上相手に何してんのかわかってんのか?
何でもありの勝負を、俺としてぇのか?」
「…………うるせぇ……! へへ、アンタの思い通りになるくらいなら、どんな手使ってもあんたをぶっ倒したほうがマシだぜ……」
ゴリュ!
「ぐ、ぎぃっ!!」
してしまった、という後悔はあるものの、今更後には引けずアラトが握力を強める。さすがのクロキもこれには悶絶し、短く呻きをこぼす。
これで、アラトは大人しく這いつくばって負けるという選択肢を自ずと捨てることとなった。助かるには、この勝負に勝つしかない。でなければ……、怒り狂ったクロキに、今度こそ殺されかねない。
「はぁ……はぁ……、
お前……ホントにいい度胸だよなぁ……? ガキの頃には、俺に調子乗った真似しといて……、今はよぉ……?」
「はぁ……はぁ……、無駄口叩いてる余裕は、ねぇぞ……っ!」
アラトは引きつった笑みを引き、クロキの性器に指を立て、押しつぶしていく。パンツの布地越しに、アラトの手の中でそれは半分ほど勃起していた。
「最後のチャンスだ、アラト……、今すぐ放せや。殺すぞ」
「んなこといって、放したら俺をボコる気だろうがよ……!」
アラトの言葉はその通りだった。アラトが手を離した瞬間、どんな弁明も無視して徹底的に殴り潰すつもりだった。
クロキにとって、最初から容赦する理由はない。それでも、アラトの決死の抵抗は、まさに火に油を注ぎ続ける結果となる。
独特の痛みと怒りで額に筋を立てるクロキも、それほどアラトをだませるつもりではなかったらしく。低い声色で威圧し続ける。
「マジで、死にたいらしいなぁ……アラト……!」
「……おい、アンタ。
降参して、昔のことを手打ちにするってんなら、放してやってもいいぜ……?」
「……あ? 立場分かってんのか、クソガキ……!!」
このままクロキを負かすしかない……、アラトはさらに力を籠める。クロキは必死に耐え続けたが……、口の端から堪え切れない声がこぼれだす。
「ぐっ……がぁ……ぁあああああああ……っ!!」
最早、アラトにとっての唯一無二の勝機。それに縋り続けなければ、文字通りサンドバックにされる。
……クロキの怒りに満ちた呻きが響き続けた。
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yukibou
2020-11-13 11:11:57 +0000 UTCyshbs177
2020-11-13 08:56:53 +0000 UTC