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こんなチビ、一瞬で倒せると、そう思っていたのに……。
ボクシングの学園対抗戦。俺にとっても白星を一つ稼げる、キャリアを伸ばすためにも重要な試合だった。その対戦相手を初めて見た時、俺は楽に結果を残せると感謝した。
……図に乗って、煽りすぎてしまった。そこまでしても圧勝を疑わなかった。
グボオオオォォォ!!
「あ、がぁ……?」
冷静ながらも、その目には怒りが滾っている。
散々に挑発を重ねられたユウキは、自軍のセコンドの静止も、観客の悲鳴も耳に届かなかった。
意識の朦朧としたい相手に、躊躇いなく拳を当てていく。既に相手は、腹筋はひしゃげ、顔面は潰れ、足さばきもままならない。
呻くような弱々しい声で、首を振る。これ以上殴られれば……。
「ちょ……、ま……!!!」
グボオオオォォォ!!
「ぶばぁ……っ! もう……、や、……め……っ!!」
ドボオオオォォォ!!
「ぐ、ぎぃぃ……っ!!」
「ひ、ぐ……っ!」
身長差のある相手に、まさかここまで一方的に……、散々に痛めつけられた挙句、戦意を喪失しきったあたりで、相手はようやく縋りつくようユウキに肉薄することにできた。
たまらずユウキに抱きついた相手は、もはや観客やセコンドに己が無様を晒すこともいとわなかった。自分より体格の小さなユウキの腰を掴み、鼻血で汚れた顔で涙を貯めながら見上げる。
「…………放せよ」
「俺、が……悪がった……、降参、ずる……!」
ユウキが冷ややかに見下す。涙目になり、逆鱗に触れた対戦相手に対し、それが一変して命を乞い始めても怒りしかなかった。
「ひ、ぃ……がぁぁ……、死んじ、まう、からぁ……!」
「……タオルを投げてもらえるといいな」
ドンッ!!
相手を突き飛ばす。尻餅をつく相手に対し、ユウキは身をかがめ……、その顎下を狙う。
……このまま喰らえば、どうなるか。相手の顔は引きつり切った。
「うぁ、ぁぁああああ……っ!!」
スパッ!!
……グボオオオオオオォォォォォォ!!
……カンカンカン!!
顎が砕け、赤い泡がだらだらと零れ落ちる。
命乞いの涙はそのままに、締まりのない顔で大の字に転がった相手を一瞥だけして、ユウキはそのまま、勝利を誇示すべく拳を掲げた。
「あ、がぁぁ……あぁ……」
「……そんなザマを晒すくらいなら、初めから図に乗るんじゃなかったな」
普段なら自分と打ち合った相手に対し、結果がどう転んでも称賛を忘れないユウキだが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。
勝敗は決した、残酷なまでの対比となって。ユウキは吐き捨てるや、試合のゴングははゆっくりと収まり……、ユウキは視線を下げた背後で忙しく担架が運び込まれた。