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「っらぁっ!!」
「げは……っ!!」
クロキのラリアットが弾ける。ふらついたアラトはそれをもろに直撃してしまい、半回転した後キャンバスに崩れた。
優勢のままアラトを甚振り、今の一撃に確固たる手ごたえを得たクロキは、肩を回しながらアラトを見下した。
「ふー……、感謝しろや、今日のところはそんなもんですましといてやるよ」
「ま、て……、どういう……」
ふとして、クロキがロープに身を預けながら言う。余裕綽々の物言いをアラトは無視できなかった。
「はっ、お前はもう、俺の脅威でも何でもないってことがわかってるからなぁ……?」
「う、ぐぅ…………!!」
「もうガキじゃねぇんだよ、男の優劣ははっきりしてる。「RAD」、お前はもう俺の敵じゃねぇ」
クロキとの差はあまりにも大きいものだった。年齢の差は変わっていないはず、だが、プロレスのみならず、まさか喧嘩の腕前まで、これほど追い抜かれているとは……。
「せいぜい先輩サマの気にくわない真似せず、おとなしくしとけや」
「待……てよ……!!」
クロキがリングを去る。その前にと、アラトは必死に起き上がり、ふらつきながらクロキの手首を掴んだ。
鼻息荒くせっついてくる後輩に、クロキは鬱陶しそうに顔をそらす。
「あん? これ以上やったら潰れんだろうが。まだボコられてぇのか?」
「まだ……勝負は終わってねぇ、ぞ……っ!!」
疎ましそうに見られても、もはや気にもならなかった。アラトは必死に拳を握る。
「っおらぁぁっ!!」
「チッ……、うぜぇんだよっ!!」
ドボオオオォォォ!!
「ごはぁっ!」
乱暴な前蹴りを腹に食らい、アラトは尻餅をつく。クロキは舌打ちし、膝をかがめてアラトの髪をひっつかんだ。
「そんなに甚振られてぇか? いっとくが、テメェのクソ生意気な態度を許したわけじゃねぇぞ?」
「はぁ……はぁ……、ク、ソ……ぉっ!」
見逃してやると言ってやったのに。いや、今後奴隷同然に扱うことを見透かされたのかもしれない。
クロキは鼻を鳴らすと、アラトの背中に、反対になるように腰を下ろす。
「…………おらぁっ!!」
ギシッ、ミシッ!!
「ぐっ……ぎぃ……ぐがああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アラトの両足を担ぎ上げ、逆エビ固めを繰り出す。キャンバスに頬を擦り付けたアラトは、その鈍痛に喉を鳴らす。
「けっ。ガキの頃はこんなに簡単につかまらなかったろ? お前、こんなに弱かったっけ?」
「ふーっ! ふーっ!! ぶっ殺す……っぐぁ、があああぁぁぁ……っ!!」
「口に気をつけろ、つってんだろ。クソガキ」
冷たく吐き捨てると、クロキはさらに角度を残虐に動かす。それだけ骨が擦れる音が響き、アラトの悲鳴も大きくなった。
「あーあ。すっかり張り合いなくなっちまったぜ。まぁいい。そもそも、ガキの頃にしかましてくれた分の報復が目的だったしなぁ」
「はぁ……はぁ……!!」
「お前が泣いて許しを請うまで、付き合ってやってもいいかもな?」
まるで、敵わない。昔は自分の方が強かったのに。今ではサンドバック同然だ。
その悔しさは大きいもので、精神的な落差は言わずもがな。強者となって目の前に存在する先輩の足に……しがみつくだけ痛めつけられる。
悲鳴を上げるアラトに、更に深々と腰を下ろし……、クロキは笑みを引いた。
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