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「どうしたぁ? さっきまでの威勢はよぉ?」
ガッ! グボォッ! ドガァッ!!
「はぁーっ! はぁーっ!」
アラトの頭に血が上っていくのとは裏腹に、カイチは逆に冷静さを取り戻していた。
一歩分間を空けた、至近距離での殴り合い。
下級年は誰しも、よほどの自信がない限りはカイチとはその距離では戦わない。アラトもそれを、策を練って勝負に挑むほどに警戒していたものの……。
「はぁーっ! はぁーっ! 殴り合いじゃ、負けねぇとか、思ってんだろ……っ!!」
「あぁ。だから?」
「…………てんめぇぇぇっ!!!」
「フッ……」
ガッ! ドガァッ!! グボォッ! ゴッ! バキッ!
ボクシングの試合に近づくにつれ、アラトの勝機は薄れていく。
アラトが必死に殴り掛かるも、カイチは涼しい顔でそれをすべて見切り、躱し、反撃までをこなしていく。
カイチの態度、そして殴り合いでは勝てないという事実が、アラトにとっては癪であり、ますますと冷静を損なっていく。
「くく……、今まで好き放題やってくれたもんなぁ……。さぁ~遊ぼうぜぇ……サンドバック君?」
「がぁぁ……ぁぁ……っ!!」
(く、そがぁぁぁ……カイチの、野郎……っ!!)
ゴッ! グボォッ! ドガァッ!! ガッ! バキッ!
(はぁ……はぁ……、わざと……俺を……KOしないように……!!)
ガッ! ドガァッ!! グボォッ! ゴッ! バキッ!
ジャブが何度もアラトの顔面にはじける。そのいずれも、カイチの本気の威力ではない。むやみな策など無駄だったのだといわんばかりに、アラトの必死さを嘲り、おちょくり倒している。
「はぁ……はぁ……、オラァッ!!」
「ほぉ?」
だが、ここ一番でも、アラトは殴り返す。大振りのストレートを、カイチは少し口を丸くしながら躱す。
いくら遊んでやっても、アラトは最後まで油断ならない男だ。カイチは嘲笑を浮かべながらも、それを再確認した。
「く、そぉぉ……負けるか、おらぁっ!!」
そもそもにして、拳で殴り合って負けるなんて事実自体が、アラトにとっては屈辱以外の何物でもなかったのだ。
顔に何度もジャブがはじけ……ふらつきながらも必死に、無謀にも殴り合いを身構えるアラトを見て、カイチは鼻を鳴らして嘲笑した。
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