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「へへっ! 待ってたぜぇ、ユウキ……!」
夜。19時頃……。
誰もいない、下級年専用の練習部屋。
いつにもまして悪い顔をしたアラトに呼び出されたユウキは、その思惑にうすうす感づきながらも、その顔を見つけて小さな嘆息を吐く。
悪い顔……、心の底から喧嘩を愉しもうとしている顔だ。実際に今宵のアラトの狙いは、まさかのユウキだった。
「アラト」
「下級年最強はだれか、いい加減決着つけようぜ……、ダチだからって容赦しねぇぞ」
アラトはすでに裸で、試合の格好になっている。見るからにやる気満々といった感じだ。
ユウキはアラトとの熱量の違いを感じながらも、その性格をよく知っているユウキはアラトからの挑戦を受けて立つことを選んだ。どうせ断っても追いかけてくる、その単純さとしつこさは実体験済みだ。
「またかよ、お前も懲りないな」
「またとかいうんじゃねぇ!」
「どうして、ユウキが下級年最強なのか」。その疑問をふとアラトが思い出すたびに、ユウキはこうしてアラトにタイマンを挑まれる。そのたびにユウキはアラトを真っ向から下してきた。
紛争学園の生徒として、普段は気のしれた友人だというのに関してユウキは気にしなかったが、それにしたって挑まれすぎな気もする。
「俺は自分で下級年最強を名乗ったつもりはない、興味もない」
「お前に興味がなくてもな! 俺が納得できねぇんだよ!
それに最強狙ってんのは俺だけじゃねぇ……だから! 一番最初にお前を倒すのはこの俺だ!」
試合の戦績で言うなら、ユウキも無敗ではない。だから、ここでいうアラトの倒すというのは、圧倒的な力で倒し、徹底的に犯し、男として格下にするという意味だ。
そんな屈辱に、自分が甘んじるはずもない。ユウキは鼻を鳴らすと、アラトに倣って勝負の準備を始めた。
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グボオオオォォォッ!! ドゴォッ!!
「がっ! くそっ!」
「遅い」
洗練された動きでアラトを追い詰めていく。アラトも必死に打ち返すものの、ユウキには命中しない。
勝負開始間もなくして、勝負のペースは完全にユウキが握っていた。
その圧倒的なフットワークと、その控えめな体格からは想像できない威力の打撃によって、ユウキは相手にほとんど何もさせないままで試合を終わらせることも多かった。
「っぁ!!」
グボオオオォォォッ!!
苦し紛れに繰り出されるストレートを涼しい顔のままで避け、その頬にジャブを放つ。
これだけリーチの差があるのだから……と、アラトはユウキと相対するたびに考えるが、実際は体格の差による有利をほとんど感じられなかった。
たまらずまばらな足取りで後退するアラトに対し、ユウキはすこし笑みを浮かべ、くいとグローブをふって挑発する。
いつでも冷静で真剣なユウキには珍しい態度だが、アラトの頭に血を登らせるには十分だった。
「~~~~っ! ユウキぃっ!!!」
ドゴォッ!! グボオオオォォォッ!!
「がぁぁ……ぁぁあ……っ!!」
怒り、ユウキに迫るアラトだったが、今度は拳を繰り出すまでもなく……、短いボディ、直後にアッパーで顎を上に吹き飛ばされてしまった。
早くも、決定打だった。アラトは膝をつき、そのまま倒れてしまう。
「はぁ……はぁ……っ! く、そぉぉ……っ!!」
「まだ続けるか? スパーリングじゃすまなくなるぞ」
ユウキはアラトに背を向け、コーナーに戻り、キャンバスでもだえるアラトを観察しつつ言う。
「はぁ……はぁ……、まだ、始まったばっか、……だろうがっ!!」
「……フン」
だが、アラトは膝を震わせながらも立ち上がった。
追い詰められ、全身に血が滾ったアラトはまさに狂犬そのもの。中途半端なダメージでは決して倒せないことをユウキは知っている。
「っおらぁぁぁあああっ!! 力じゃ、お前に絶対、負けるはずねぇんだよっ!!」
「そうか」
グボオオオォォォッ!! ドゴォッ!!
念入りに、重く。獰猛に襲い掛かってくるアラトのボディを潰していく。アラトの見事に割れた腹筋にユウキの拳が次々とめり込んでいく。
「がぁぁ……ぁぁっ!! もう、ぜってぇ、許さねぇ……っ! ぶっ倒して、死ぬほど犯してやる……っ!!」
「言ってろ、負けるのはお前だ」
グボオオオォォォッ!! ドゴォッ!!
連続したボディに悶絶するアラト。その苦しみを押し殺してユウキに襲い掛かるも、直後に、ユウキの足が一閃する。
「ごぁぁぁっ!!」
容赦ない蹴りがアラトの顎をはね上げた。
「ふん……」
意識をぐらつかせ、再びダウンしたアラトを背に、ユウキはコーナーに戻る。
特にルールがあるわけではない。だが、追撃は無用だと感じていた。それよりも必要なのは、何度立ち上がっても自分には勝てないと思い知らせること。
ユウキは当然のように考えていたが、見くびられているのはアラトも肌身で感じており……、それゆえに、いつまでもキャンバスに転がってなどいられなかった。
「はぁ……はぁ……っ!!」
「まだやるのか?」
「ふーっ! ふーっ!
ったり、めぇだ……、もう、許さねぇ、からな……っ! 絶対に、ぶっ倒してやる……っ! ここから逃げられると思うなよ……っ!」
ふらつきながらも立ち上がるアラトを見て、ユウキも静かに、リングの中心に戻ってくる。
早々に打ち倒されたアラトは、血走った瞳でユウキを睨み、顎をくすりつつ唸った。
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※ユウキ単独ver
yukibou
2021-11-24 12:21:16 +0000 UTCムキムキ翔太
2021-11-24 11:57:27 +0000 UTC