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● 「へへっ! 待ってたぜぇ、ユウキ……!」 夜。19時頃……。 誰もいない、下級年専用の練習部屋。 いつにもまして悪い顔をしたアラトに呼び出されたユウキは、その思惑にうすうす感づきながらも、その顔を見つけて小さな嘆息を吐く。 悪い顔……、心の底から喧嘩を愉しもうとしている顔だ。実際に今宵のアラトの狙...
●
ギシッ……ミシッ……!
「がぁっ!! ……っぁぁあ…………」
適度な距離をはさんでの打撃では、歯が立たない。そうしてアラトが腕力勝負に持ち込もうと肉薄した、その矢先。
ユウキは覆いかぶさろうとしてきたアラトをすり抜け、逆に、滑りこむようにアラトの背中に張り付いた。
(がぁぁ……っ! 堕とされ、ちまう……っ!)
ユウキの裸締めが決まる。ユウキの腕が首に食い込み、アラトは瞬く間に身動きを封じられてしまった。
(……力づくで、振りほどけねぇ……、やっぱ、コイツ……小せぇくせに、強ぇ……!)
アラトの目にもとまらぬほど、ユウキの動きは無駄がなく、ほとんど反射的なものだった。勢い任せの喧嘩殺法が通じる相手ではない……、やはり、ユウキは「格闘家」として、格が違う。
(やっぱ……ユウキには……勝てねぇのか……!)
「ギブか、アラト」
ユウキが耳元でささやく。
密着は解けない。目まぐるしく動き回った残滓で、汗で湿った肌がこすれ合い、互いに熱気を放つ。
(い……や……、まだ、だ……っ!
ぜってぇ……一泡……ふかして……やる……っ!!)
ギシッ、ミシッ……!
ユウキの勧告は、何も根拠のないものではない。完璧な裸締めは、勝敗に直結するほどに決定的だ。
「………………」
アラトが降参しない、つまりは、勝負はまだ終わっていない。
こと勝負に関してはどんなものであろうと冷静に徹するユウキの目は、冷ややかなままだった。
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