前回はこちら

前回はこちら ● 思うにこいつは、人間というものは一体どこまで壊せるのか、それを試したいだけだったのかもしれない。肉体的にも、精神的にも。 (もう、だめ、だ……) ふわりと体が浮く感触、俺の肉体に奴の肉体がふれあい、密着し、持ち上げられる。 あぁ、初めて見たとき、その裸体を見るまでは、その今どき...
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「満足したんで。おれはもう終わりにしていいっすよ」
散々ボコられて、犯された俺を見下して、奴は軽くストレッチをし、背を向ける。
自分でも目で覆いたくなるような、惨敗。タイマンを求める者通しをつなげるアプリがきっかけだ、自分より強い者とかち合うことなど日常茶飯事。このまま俺たちはこのまま別れて、何の縁もない他人に戻るのだろう。
だが、それでも。俺はこいつをどうしても見下してしまってならなかった。ここまで完膚なきまでに敗北したとしても、未だにこんな「ガキ」に敗北した事実を納得できないでいる。
「あ、がぁぁ……ぁぁ……」
なんで、この、俺が。
心に不穏な影が差す。なんで、こんなガキに命乞いなんてしなければならないのか。……すぐにでも、すましたその面を原形が消えるまで殴りつぶしてやりたい。
……奴はリングを降りようとしている。
奴は今、こっちを見ていない。
「っらあああぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドガ……ッ!
野心が差し込む。俺はその背に襲い掛かっていた。がむしゃらに振りかぶった拳が、振り返ろうとした奴の頬をかする。
「………………」
何も表情の変化はない。だが、俺は身の毛がよだつほどの恐怖に震えた。
俺は一番やってはいけないことをやってしまったのだと、すぐに理解した。
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グボオオオォォォッ!!
「ぐ、ぎぃっ!!」
奴の膝、拳が、また俺の肉体を破壊し始める。
やり返すつもりなどない、俺は殴られ、蹴られ続けながら、必死に謝り続けた。
「ほんの、出来心、で……っ!」
グボォォォォォォォッ! ドゴォォォォォオオオッ!
「ご、めんな、さ……!
もう、逆らいません、からぁ……っ!」
ドガッ! バキッ! グボッ!
「ひっ……! もう……殴らないで……い、たい……っ!」
グボォォォォォォォッ!
「すっ、好きなだけ犯してくださいっ!
だ、から……、ころさ、ないで……っ!!!」
「…………、殺しちゃったら、すいません」
バキッ! ゴッ! ドガァッ!! ガッ! グボォッ!
バキッ! ドガァッ!! ガッ! ゴッ!
……気が付いたとき、俺はまた、奴に犯されていた。全身を破壊されつくして「素直」になった俺を、また何も言わずに犯している。
「……中、締めすぎっすよ。俺に逆らうんすか?」
俺は、今度は逆らわなかった。
恐怖で身がすくむ俺の体をどれだけ提供できるか、奴が気持ちよく行為を終えることだけを考え、その機嫌を損ねないようにだけ努めた。
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タイマンを終え、リングの掃除を終えて出口を出た後、奴は意外にも、俺を誉め、謝罪してきた。
不意を突かれて怒ったとはいえ、ここまでするつもりもなかった。そして、ここまで耐えたのはすごいと。
俺は、リングの内と外で、ここまでイメージを変容させる人物を見たことがなかった。だからこそ、このアプリを活用しているのだろう。
単純に強い者が弱いものを屠るという、その原始時代のような非現実に興味があるのは、俺にも理解できる。ただ、タイマン結果をSNSにアップする喧嘩自慢の若者は増えつつも、こいつには何か、それ以上の執着が感じられた。
そして、奴は消えていった。年齢も、出身も、普段何をしているのかもしれない。下の名前くらいは聞いておいてもよかったかもしれない。
次に会う機会があるとすれば、またこのアプリを開いてたまたまマッチングを期待するくらいか。だが、満身創痍を度外視しても、しばらくアプリを開く気にはなれなかった。
奴が、非現実、喧嘩に独特の美学を持っているらしい、有名ブロガーだと知ったのは、少し先の話だった。
yukibou
2022-07-16 01:55:33 +0000 UTCミケ空
2022-07-16 01:44:40 +0000 UTC