正月が過ぎると、冬休みはあっと言う間に終わった。 通学路の雪と凍った地面に注意しながら、美織はいつも通り学校へ通い始めた。 そんな冬のある日の朝、理子先生は朝のホームルームで今日の予定を簡単に話すと
「etcですのでー、小学生のみなさんは、なるべく早く体育着を着て校庭に集まってくださいねー。
・・・では、今年もやってまいりました! 1週間後には2泊3日のスキー教室が始まります! もちろん、スキーができない人もできる人もみんな強制参加と行きたい所ですが! ・・・受験控える中学3年生の方達は、こんな時期でもあるので、勉強が忙しくて参加はできないなぁーと言う方は職員室まで申し出てくださいねー。 3年生の方だけですよ?」
それを聞いて美織は
(あ、そうかーー・・・。 この学校、スキー教室があるんだよねー・・・)
美織はこの学校に入学した時に1年間の予定表を配られ、スキー教室というイベントがあるとこに驚いた。 東京の学校・・・ しかも小・中学校でスキー教室と言う行事が開催される学校なんて、ほんの一握りだろう。 そして美織はスキーと言うスポーツは知ってたが、やったことはほとんどなく、うまく滑れるか不安になった・・・。
そしてその不安は、スキー教室当日に見事的中した・・・。
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・・・・・・
・・・・・・・・・
スキー教室当日の朝、学園からバスでおよそ1時間半走った所にある、水湧スキー場と言う所に向かった。 そこは大晦日と正月に泊まった亜月ちゃんの別荘がある奥水湧温泉郷から、さらに国道を走った所にある市営のスキー場だった。 美織は学校から配られたパンフレットを出し、そのスキー場の地図をもう一度見てみると、さほど大きいスキー場ではないのだ。 昨日の晩、ネットでも調べてみると、口コミでは上級者コース以外ほぼなだらかな斜面で、スキー初心者にはうってつけのスキー場だと評価されていた・・・。 その評判を見て、美織は若干ほっとしたのであった。
そしてバスはそのスキー場近辺の宿屋街に駐車し、学園一同バスを降りて『旅館 暖光壮』と言う旅館に入った。 旅館はボロく寒く、だだっ広い木造2階建ての建物が、学園一同2泊3日過ごす所であった・・・。 そのだだっ広い旅館の女将に学園一同が泊まる部屋に案内され、一般客室から離れた、別棟のにある風呂トイレ別・洗面所別・男女別の大部屋が学園生徒が寝泊まりする部屋だ。 生徒達はその大部屋に上がり込むと、荷物を置きすぐさま、美織以外の生徒は私服又は制服からスキーウェアへと着替え、美織はと言うとジャージに着替えた・・・。
スキーウェアに着替えた学園一同は再び旅館の玄関に集まると、美織とその兄以外はほとんどスキーウェアやゴーグル等を装着していた。 中にはスキー板とスキー靴が入った、大袋を背負っている者もいた。 美織兄妹はスキー用品をすべてレンタル店で借りる予定で、大部分の者はスキー板だけ借りると言う者がほとんどであった。 節約志向でかつスキーにもよく行くと言う家庭は、ほぼすべての道具を家から持ち出し、リフト代だけで済ませるという者もいた。
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学園一同スキー場へ移動すると、笹川兄妹は理子先生と共にレストハウスに入っていった。 そこで兄妹にスキー用具一式を借りる手続きをすると、スキーウェアを着て、生まれて初めてプラスチックの硬く重くどでかいスキー靴を履いて、スキー板を装着した。 斜面を滑る事以外自由のないこのスキー装備は、笹川兄妹を不安にさせた。 美織共に兄もスキーをするのは初めてであった・・・。 学園一同スキー装備をすべて装着し、リフト前の広場に整列すると理子先生は
「はぁーい! みなさーん! 先日、学校で配られたスキーチーム表の通りにチームを組んでくださーい!」
全員が返事をすると美織・亜月・巴は
亜月「じゃあ美織っち、初めてのスキー頑張ってね!」
巴「じゃあね~、美織ちゃん。 初めては怖いかもしれないけど~、頑張って~」
2人のお応援に、美織は苦笑と不安を混じった表情をしながら
「う、うん・・・ 頑張るよー」
そう言うと、3人はそれぞれのチームに分かれた・・・。 ちなみにスキーチームと言うのは、3日前に学園一同スキーレベルに関するアンケート用紙を配られ、その回答に合わせて、初級クラス・中級クラス・上級クラスへと組分けをしていった。 笹川兄弟は今日が初めてスキーをやる日なのでもちろん初級クラスで、亜月と総司は上級クラス、巴とその弟(白川雄一 しらかわゆういち)は中級クラスに組み分けられた。 上級クラスと中級クラスの差に大きな違いはなかったが、まあそれはいいだろう・・・。 あと初級クラスは小学年1~2年生が主体であったため、上級生の笹川兄妹はちょっとだけ恥ずかしい思いをした・・・。
そしていよいよスキー講習が始まると、最初は全員スキー板を脱ぎ、入念に準備体操をした。 それが終わると全員スキー板を装着し、中級上級クラスはリフトへと乗り込み、初級クラスはリフトには乗らず、なだらかな斜面を徒歩である程度登った。 初級クラスの講師は、なんと校長先生直々であった! 美織達はそこでスキー板を装着し、なだらかな斜面での滑走が始まろうとしていた。 すると校長先生が
「いいですかー! 滑るときの基本は、スキー板を八の字にして滑べりまーす! ゆーっくり左右波のように滑りますので、みなさんは私の後に・・・ うん・・・? ちょっとちょっと!! 笹川さん達!! 勝手に滑って行っちゃだめだよー!!」
何が起きたかと言うと、笹川兄弟は勝手にスーーーッと滑っていった・・・ だが、笹川兄弟は勝手に滑ったのではなく、急に突然スキー板が斜面を滑り出し
美織「ふぇえぇぇーーー!! なにこれ止まらないーーー!!」
兄「うぉおおお!! 止まれ止まれーー!!」
両足垂直になったスキー板は軽快に斜面を滑りだし、兄妹共に手に持ったストックを雪にこすりつけるが一向に止まらず、かなり下の辺りで尻餅を使いズズズズッ!と気合で止めた・・・。 兄妹の行動に校長先生は苦笑しながら
「ハハハ・・・」
(東京から来た兄妹かぁ・・・ 年に1回は必ずいるけど、中学生であの慌てぶりは初めて見るなぁ・・・)
と思いながら笑った。
・・・
・・・・・・
午前中と午後のスキー教室が終わると、学園一同は旅館に帰り、スキーウェアから私服へと着替えた。 そして、休む暇なく風呂の時間がやってきて入り終えると、またすぐに夕食の時間がやってきて、食堂へと移動した・・・。 大人・中学生組はお膳に安っぽい懐石料理が並べられた物で、小学生組はカレーライスという、学園一同分の食事が用意されていた。 そして、みな席に着くと
学園一同「「「いただきま~す!」」」
安っぽい懐石料理・カレーライスでも、とても美味しい料理で手を止める者はいなかった。 美織は今日1日中スキーで体力と筋肉を存分に酷使し、昼夜食共に身体のエネルギーを少しでも補うため、いつもの倍くらいの量のご飯を胃袋に入れ込んだ・・・ それは学園一同みな同じだった。 夕食が終わると、次の就寝時間までの間はちょっとした自由時間で、各自本を読んだり、歯を磨いたり、早めの就寝に着いたりと、みな思い思いに過ごした。 美織と亜月は今日は珍しく、美織の兄・総司・雄一の5人で、この棟の会議室的な部屋でババ抜きをしていた。 総司は亜月のカードを
「そいやっ!」
と言いながら引き抜くと
「うわぁ! ババ引いちまった!」
総司の悔し顔をよそに、亜月はケタケタ笑いながら
「プハハハハ! ご愁傷さま!」
総司は仕切り直して、隣の美織にカードを選ばせた。 そして美織は
「えい!」
と、カードを抜き見事
「やった! 一番上がり!」
美織は喜びながら、手持ちの2枚カードをテーブルに置いた。 5人の反応は
総司「うわぁ! 1位取られた〜!」
亜月「あぁーん・・・ 私もいい線まで行ってたのに〜」
雄一「うおー! 1位は俺だと思ったのにー!」
美織の兄「よし! じゃあ今度は2位の争奪戦だな!」
なんて言い合いながら、ババ抜きはそこそこ盛り上がって終わり、ダラダラと中3男達の雑談タイムへと入った・・・。 その一部の場面で総司は疲れた表情をしながら
「はぁー・・・ ゲームしたいなー、ゲーム・・・ switchでスプラトゥーンやりたいなぁー」
雄一が不満そうな顔で残念そうに
「そうだよなぁー、ここせっかくWi-Fiあるのになぁー。 でも、学校が禁止してるしからしょうがないよなー。 まあ、俺はゲームよりもスマホ禁止の方がこたえるけとなー」
学校はスキー教室中と旅館内での携帯ゲームを禁止し、スマホも盗難防止と言う名目で、旅館に着くとすぐさま全生徒のスマホを没収され教員の部屋の金庫へと大事にしまわれた。 これに美織の兄は真顔で
「まあ、ゲームとかスマホは帰ればいつでもできるし・・・ たまにはこんなオールドな遊びとか、会話も楽しいと思うけどな」
すると亜月は、その発言に同意し
「そうだよ。 兄貴は四六時中ゲームしてるんだから、こんな日くらい我慢しなさいよ」
と言った。 5人の会話は基本中3男子中心だが、その会話の中で時折美織と亜月が口を挟むといった談笑がダラダラとしばらく続いた。 総司は亜月の発言に若干疲れた顔をし
「いやぁ・・・ プライベートはプライベートで、なかなか時間取れなくてねぇ・・・ 四六時中ゲームしてるとは言っても、大体はネット配信向けでやってるからねぇ・・・」
雄一が、総司の発言に興味ありげに反応し
「あ! それって最近やり始めたゲーム実況ってやつ? youtubeのだろ? 最近の再生数はどうなのよ?」
総司は苦笑しながら
「うん、ぼちぼちって感じ・・・ とは言っても収益化にすると雀の涙だけどね・・・。 あ、でも最近は登録者が段々と増えたきたから、大手ゲーの実況でもそこそこの再生数上げられるんだ。 今、その実況界隈じゃあStreamのマイナージャンルが熱くてetc」
総司と雄一は同じyoutubeの配信者同士、情報やら愚痴やらを色々語り合うと、美織は感心しながら
「そういえば総司さんyoutuberなんでしたよね・・・ あれ? 雄一さんもyoutuber何ですか!? すごーい! クラスにyoutuberの人が2人もいるなんて初めてですよー!」
なんて驚きながら言うと、雄一は照れてニヤけながら
「いやぁ、youtuberなんてカメラとPCとネット回線があれば誰でもできるし、俺なんかいわゆる底辺youtuberってやつで、動画の伸びもそんな無いし・・・!」
総司は雄一の発言を否定し
「いやいやいや・・・ 雄一君は底辺じゃなくて、もう中堅と名乗ってもいいんじゃないの? 俺なんかよりずっと前からやってるし、登録者も再生数も倍違うし・・・」
亜月は意地悪く笑いながら、茶化すように
「兄貴の場合はアレでしょ? ほら、自分が小さなアニメの女の子になってしゃべったりするやつ? まあ確かに、ブサイクな兄貴が画面に出てきて『ブンブンハロー』なんて言っても誰も見ないからね!」
美織の兄貴が笑いながら
「それヒカキンか?」
総司は苦笑し自虐しながら
「ハハハ・・・ まあ、俺がそんなことしてupしても再生百桁行かないだろうね・・・。 収益化なんて不可能だよ」
雄一は笑いながら興味ありげに
「んでさ・・・ その、最近のVtuberの活動はどうよ? この間ライブ配信やってたじゃん? カオナシ君からスパチャ幾ら位貰ったのよ?」
総司君は苦笑気に
「いやいや、カオナシって・・・ 視聴者さんと呼びなさい! まあ優しい視聴者さんから、幾らかは貰ったけどね・・・ 流石に大手レベルの稼ぎは無理だよ」
美織の兄は難しい顔をし、腕を組みながら
「フウゥ、YouTuberが流行ってると思ったら、今度はVtuberにスパチャかぁ・・・。 なんだか、時代の速さに着いていけんよ・・・」
ため息ををつきながらそう言った。 その時であった・・・
巴「ちょっと鈴木さんったらやーだ~! ウフフフフフフ~!」
鈴木「だって本当なんだよ! アハハハハ!」
小杉「作り話じゃないの?! プッハハハハハハ!」
5人が座っている席から、3つ離れた先に巴・鈴木・小杉の中学3年女子組が座っており、3人の明るい笑い声が5人の耳に入った。 ただ、この3人は美織の5人組のように遊んでいるわけではなく、なんとこの自由時間の最中にも数学の教科書とノートを広げ勉強会をしていた!
その様子を見た総司は、感心しながら
「いやぁー・・・ えらいなぁ・・・ こんな日でもちゃんと勉強してるよー・・・」
と言うと、美織の兄が総司と同じく感心しながら
「受験生の鏡だな」
だが雄一は苦笑しながら
「いや、これが本来の受験生の姿なんじゃないのか? むしろ受験生の俺たちが呑気にトランプで遊んでるのが異様と言っていいような・・・」
美織の兄は苦笑しながら
「いやぁー・・・ 実は俺もここで少し勉強するために英単語集なんかは持ってきてはいるんだが・・・ スキーで疲れるは、筋肉痛だわ、眠いわで、とてもとても勉強どころじゃなくて・・・」
総司もうんうんと頷きながら
「俺も久々に足筋酷使してすげー疲れた・・・。 これで勉強会やっても実が入らないよ・・・」
雄一も同意したような顔で
「だよなぁ。 引きこもりに久々のスキーは疲れるわー・・・。 学校に行くのも久しぶりだし・・・」
すると美織が心配しながら
「そういえば雄一さんはどうして学校に来ないのですか? 何か悩み事とか・・・」
雄一はちょっと申し訳なさそうにと言うか、情けない表情で苦笑しながら
「いや、アハハ・・・ 特に悩みとかはないんだけど、めんどくさいだけ・・・。 冬休み終わりくらいに先生が訪問してきてさぁ、親となんか深刻そうに話し合っててねぇ・・・。 それから冬休み終わったら、両親と姉に家から追い出されるように学校に通わされてさぁ・・・」
冬休み終わりの登校日、雄一は巴に連れられるように学校へ通学し、巴と共に教室へ入ろうとした時、少しソワソワしながら教室に足を踏み込むと、クラスメートと顔を合わせた。 すると、クラスメート全員から驚嘆的な声を上げられた。 亜月は他人行儀に
「あぁー、やっぱそれが理由なら学校には行った方がいいですよ。 何か他に嫌な事があれば別ですが・・・」
雄一はちょっと同意しながら
「そうなんだけどなー・・・。 youtubeで動画撮って編集作業とかしてると、やっぱりどうしてもupが深夜辺りまで掛かるからなぁー・・・ 学校行きながらじゃ厳しいというか・・・ まあ、それは言い訳か、アハハ・・・」
雄一は最後に苦笑した。 すると総司は話題を変え、向こうで勉強してる中3女子に聞こえないよう、雄一に静かな声で
「そういえばさぁ、巴さん第一水湧高校の進学クラスに受験するって本当なの? ちょっと小耳にはさんだんだけどさぁ・・・」
すると雄一も静かな声で
「いや、別に静かな声じゃなくてもいいと思うが・・・。 そうだな、本人はまだ完全に進学クラスに行こうとは思ってないみたいだぞ・・・」
総司は声の音を戻し、安心と不安がミックスしたような表情で
「そうかー・・・ まだわかんないみたいだなぁー・・・」
雄一は真面目な顔で
「あそこの進学クラスは入りゃいいってわけじゃあないからな・・・ しかも県内じゃ数少ない進学クラスだから、当然県内の優秀な奴が集まるし、勉学も普通クラスと比べて3ランクくらいは上だって言われてるからな・・・」
美織の兄も真面目な顔で
「一般クラスの俺らも無関係じゃないぞ。 理子先生が言ってたけど、水湧第一は難関じゃない分、油断すると確実に足をすくってくる高校だって・・・」
雄一も少し考え込みながら
「しかも受験生も多いしな・・・ 偏差値も多少見積もっほうがいいとか何とか言ってたっけ・・・」
すると今度、美織の兄は茶化しながら総司に
「総司も水湧第一高校が1番志望だっけ? 先生にこのままじゃあ受かるのは運次第って言われてるの聞いたぞ? トランプなんかやってないで、向こうで勉強した方がいいんじゃないか?」
雄一も意地悪く笑い総司を茶化しながら
「フフフ・・・ そうだな。 このままじゃあ姉と一緒の高校に入れないぞ」
総司は照れて顔を真赤にしながら
「バカ何言ってんだよ! いやいやいや! 別に・・・! あそこの高校は近場だから受けるだけで・・・! 別にそんなんじゃあ・・・! それに・・・ 一緒に勉強って・・・! できるわけ・・・!」
勘の良い美織は、この一連の会話を聞くと、思わず驚きながら口に手を当て
(え?! もしかして、総司さん・・・ 白川さんの事が・・・!)
それに対し、勘の悪い亜月は
「なーにキョドってんのよ? 勉強したかったら仲間に入れてもらえばいいじゃない?」
総司は顔を赤くしながら
「い、いや・・・ 別に、今は、する気分じゃないし」
と、弱々しく言った。 その5人の様子を向こうにいる中3女子の鈴木さんが、ジィーーっと見ていて、鈴木さんはクスクスと笑いだした。 勉強に集中していた巴・小杉さんが、その様子を見て
巴「ちょっと鈴木さん~? どうしたの~? いきなり笑い始めて~?」
小杉「うん? 何か思い出し笑いしたの?」
すると鈴木さんは笑いを堪えながら
「ううん、内緒♪」
と笑顔で言った。 そんなこんなで、就寝時間までの自由時間は過ぎていった・・・。
・・・
・・・・・・
そして時刻は深夜というか、朝5時半の女子部屋・・・ 誰1人こんな時間に起きるはずもなく、気持ちよさそうにまだグウグウzzzと寝ていた。 しかし、美織だけが腹痛でその時間帯に目を覚ました・・・ 体をグイッと起こすとボサボサ頭が起き上がり、お腹を抑えながら
(お腹痛いなぁ・・・ トイレ行かなきゃ・・・ めんどくさいなぁ・・・。 あー、流石にお昼も夜もちょっと食べすぎちゃったかなぁ・・・)
昼・夜に胃袋へと入れられた食材は、胃で消化され、臭い糞便となって大腸にこんもりと溜まっていた。 美織は
「よいしょ・・・」
と、静かな声で言いながら立ち、お腹を抑えながら廊下に繋がる戸へと向かった。 そして、戸に着いたその時だった・・・ 部屋出口の戸を開けようとした途端
ガラガラガラ!
戸が勝手に開き、なんとそこには美織の兄が立っていた・・・! 美織は驚き、すぐさま不審な目で兄を見ながら、こう言い
「え?! ちょっと!? 何よ・・・?!」
男子禁制の女子部屋を開けた兄に対して、美織はこう驚きながら言った。 すると、寝ぼけていた兄は
「は? 美織・・・? あ!? 部屋間違えたわ!」
と言って、そそくさと男子の部屋の戸に移動した・・・。 そして美織の兄は美織がトイレに行くんだなと、確認すると男子の部屋へと入っていった。 美織は大部屋すぐ近くにある女子トイレ向かい、女子トイレのスリッパを履き、適当な和式の個室へと入っていった。 和式トイレに跨ると、ボロイ個室の壁ひびから、冷たい隙間風がピューピュー吹いていた・・・ 美織は体をブルッと震わせながら
(うぅーー! 寒いなぁ・・・! 早く済まして出よ!)
と不機嫌な顔をしながら、タンクトップズボンとパンツを同時に下ろし、お尻を和式トイレに下した・・・。 その際、太ももからふくらはぎにかけてズキッと鈍い痛みが走った! 美織は顔を歪ませ
(痛たたた! はぁー・・・ 完全に筋肉痛だ・・・。 これ、今日もこんな足でちゃんと滑れるのかなぁ・・・)
なんて心配をしながら、お腹に力を入れると
「ウゥ! ・・・・ウゥーーン!」
と踏ん張り声を上げた・・・。
ブウウゥゥーー!
腸に溜まったガスが自動的に放出され、肛門がモコッと膨らむと
「プハァ・・・! ハァー・・・ ウゥ! ウゥゥン!!」
踏ん張りを仕切り直し、足をさらに左右に広げ、また踏ん張った。 大腸から肛門口に移動したウンコが外界に向けて動き出し、狭い肛門口をこじ開けるように、ウンコは異臭を放ちながら外界へと顔を出した。 そして、そのまま和式トイレの水溜りへと落ちていった・・・。
_________少し時間を巻き戻そう・・・。
美織の兄はトイレから出ると、間違えて女子部屋を開けてしまい、美織がそこに突っ立っていた。 兄は気まずく男子部屋の戸へ行き、美織をがトイレに歩いていくのを見送ると、自身の布団へ再び戻って来た。 だが寒い館内にパジャマ姿の体をさらけ出した結果、体が冷えて眠れなくなってしまった。 美織の兄はこんなことを考え
(あぁーー・・・ それにしても足が痛いな・・・。 美織も多分、相当な筋肉痛になってんだろうなぁ・・・ あいつも普段運動しないから・・・)
そして兄はある重要な事を思い出した・・・ それは
(うんー? そういえば美織のやつ・・・ トイレに行ったんだよなぁ? トイレに行ったなら・・・ へ?! あいつ食事の時、先生の話聞いてなかったのかよ!?)
兄は布団をガバッと上げると、忍び足で他の者たちを起こさぬよう、再びトイレへと向かった。 向かった先は女子トイレ・・・ そしてなんと兄は女子トイレのスリッパを履き! 女子トイレへと入っていった!! だが、これにはもちろん正当な理由がある・・・ 間違っているのは美織の方なのだ・・・。 そこはまず置いといて、兄は女子トイレに入ると、ドアがどこも閉められていないことに気づいた・・・
(あれ・・・? あいつ、間違いに気づいて引き返したのか?)
なんて思った矢先、その女子トイレ内から
「プハァ・・・! ハァー・・・ ウゥ! ウゥゥン!!」
なんて言う、ウンコを踏ん張る女の子の声が聞こえた・・・ 兄はこの声を聞いたとき美織だと確信した。 何10年も同じ屋根の下で暮らして、聞き間違えることなどなかった。 兄は忍び足で女子トイレ内に足を進めると・・・ 排便の臭気が兄の鼻を襲った・・・ そして、その臭気がした個室に美織は
いた・・・。 見間違いはない・・・。 黒い赤身がかった長髪の女の子は我が妹だった・・・。
しかも、その妹はドアを開けっ放しにしながら、お尻丸出しで・・・ 排便をしていた・・・。 美織は
「ウゥゥン・・・!」
なんて踏ん張り、お尻の穴から立派な尻尾を伸ばしていた・・・。 兄はどうしようかと迷ったが、人が来たら洒落にならないだろうという思いから、兄はなるべく美織の排便を覗かないように、こう声を掛けた
「美織・・・ お前、こんな所で何やってるんだよ・・・」
その兄の突然の声に美織は驚愕又は恐怖し、尻尾のように伸びたウンコを ブランブランッ と、させながら振り返った! 一瞬幻聴かな?とは思ったが、確かに美織の目には兄が映った!! 顔を背けてたが・・・ だが、何故女子トイレに!?
「はぁぁあ!? あ、あああ!! もうぅ!!」
美織は悲鳴にも似たような声を上げた・・・。 ドアを閉め忘れた事、兄に排便を見られた事、兄が女子トイレにいる事、そんな出来事により怒り・恥ずかしさ・恐怖・軽蔑と言った感情が美織の心を一瞬にして取り巻いた。 そして何故かはわからないが、ふと冷静に戻り顔を向き直すと、肛門からブランブラン生えているウンコを
「フゥン!!」
と力強く踏ん張り、大きなキュウリ分の太さがあるウンコが水溜りに ビチャッ と落下した。 そして美織はお尻丸出しで立ち上がり、個室の内向きドアを勢いよく
バァン!! カチッ!!
と閉めた。 兄はやれやれ何て顔をしながら
(あいつ・・・ やっぱ先生の話し聞いてなかったのか・・・)
何て思いながら、女子トイレの外で美織の排便が終わるのを待った。 そして美織はすぐさまトイレットペーパーで股間と肛門を拭き、女子トイレから出ると、兄がのほほんと突っ立っていた。 美織は兄に対峙するような形で、声を張り上げ
「信っじられない!! 何やってんの!? これが見てわからない!?」
美織は眉間にしわを寄せながら、女子トイレマークに指をさすと、続けて
「トイレに入ってるのが私じゃなかったら、もう人生終わってたよ!? あと、女子トイレに入って何してたの!? 何がしたかったの・・・!? ・・・まさか!? ニュースに出てくる変態のようなetc!!」
と美織が言いかけたところで、兄は制止し
「おいおいおい!! 声がでけえって! 時間帯考えろ! みんなぐっすり寝てるんだからよぉ・・・。 大体お前、何でドア開けながらウンコしてんだよ・・・ いつもそうなのか?」
美織は逆に説教されたことに切れて、ちょっと声の音量を落としながら
「はぁぁぁーー!? この変態! 女子トイレに入ってた奴に言われたくないわよ! こんな事がばれたら、私達転校しなくちゃetc」
兄は再び美織の説教&叱りを遮り、そして
「お前夕食の時、先生の話聞いてたか? ここの男子トイレの大便器は詰まって使えないから、男子は女子トイレの方を使ってくださいと、んで女子は食堂近くの女子トイレを使うようにしてくださいと・・・ そう言われただろ? なのにお前、こっちの女子トイレ使いに行って、しかもドア開けっ放しで・・・」
美織は 「あ・・・」 と言い思い出した・・・。 別に聞いてなかったわけじゃなく、わかってはいたけど、ほぼ反射的な感覚でここのトイレを使ってしまった・・・。 兄は続けて
「まったく小さい頃からお前は・・・ 確認して来てよかったよ。 トイレに入ったやつが、俺だったらから良かったものの・・・ 他の人にあんな姿見られてたらどうすんだよ?」
美織はぐうの音も出ず、しかも正論だった。 美織は涙目になり恥ずかしく怒った顔で
「うるさい!! バカ!! 変態!!」
と言い放ち、女子部屋へと入っていった。 兄はまたやれやれ、みたいな顔をしながら男子部屋へと入っていった。
・・・
・・・・・・
そして朝・・・ ゲレンデにてスキー教室の時間になると、今日は初級クラスもリフトに乗り、上まで登って滑走すると校長先生兼スキー講師に説明された。 そしてリフトにて必然的に笹川兄妹は一緒のリフトに乗るわけだが・・・
美織「・・・」
兄「・・・」
美織は兄と顔を合わせないようそっぽを向き、兄も一言もしゃべる事はなかった。 いつもこの兄妹は学園でもこんな感じなのだが、今日に限っては・・・ 言葉を交わしていいような雰囲気はなく、スキー場の音楽とリフトの滑車柱を通過する音だけが虚しく響いていた。