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ごむらば
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不思議な動物園【前編】

私は聡美。 ごく普通の会社に就職してたんだけど、訳あって退職。 一念発起、昔からなりたかった動物園の飼育員になれたんだけど…… 。 この動物園は少し変わっている 動物が亡くなるとしばらくはその動物の檻が閉鎖され綺麗にリニューアルされてから開放される。 これだけならば特別に変わったことはない。 変わっているというのは、その動物を担当していた飼育員も見なくなるのだ。 そして代わりの動物が搬入された形跡もないのに動物がいるということ。 例えば熊が亡くなった時は、檻の中が綺麗に整備された。 今までは糞や食べ残しで汚れていた檻の中は、動物がいるのに相応しくないほど綺麗になる。 その後はというと檻の中は綺麗なまま維持される。 そして、肝心の熊はというと初めは不自然な動きだが、日に日に熊っぽい動きになっていった。 私が転職して初めて仲良くなった玲奈ちゃんは、猿の担当だった。 小さな猿を我が子のように世話していた彼女の猿たちがある時、ウィルス性の病気でなくなってしまった。 私は仕事帰りに彼女と一緒にご飯に行くことが多かった。 だから、自分の担当する猿が亡くなって彼女は酷く落ち込んでいた。 やはり、猿の檻は閉鎖されてリニューアル工事が始まった。 その頃から玲奈とご飯に行くことも園内で会うこともなくなった。 しばらくの閉鎖の後、猿の檻は開放された。 猿の檻は以前と違い、内側にはガラスが張られていた。 猿は2匹おり、やはり動きが不自然に見えた。 そのうち体の小さな猿は、つぶらな瞳で私の方をジッと見つめる。 何かを訴えかけるように。 しかし、すぐに視線を逸らして木に登って背中を向けた。 この動物園の歴史は古く、動物たちも高齢になっていた。 よって、亡くなることもよくあり特に不思議なことではなかった。 そして、私のところにも動物の死が訪れる。 担当していたカバが亡くなってしまったのだ。 高齢に加え、水の管理が行き届いてなかったのが原因。 ようやく、懐き始めた矢先のことだった。 当然のようにカバの展示は閉鎖。 そして、私と相棒の先輩男性 誠さんは園長に呼ばれた。 いつも話で私を楽しませてくれる誠さんも、ショックのせいか無口だった。 園長室に入ると園長は席を立ち、私たちをどこかへ案内する。 案内された先は動物の霊安室。 静かに扉が開かれる。 そこは霊安室といった雰囲気ではなく、作業場といった感じのする部屋。 園長の後について行くと、私が担当していたカバが2匹、床に横たわっている。 そのカバたちに作業員が何かを塗り始めた。 園長が説明を始める。 「契約書にも書いてあったと思うが、これから君たちはカバの飼育員からカバになってもらう」 私には園長の言っている意味がわからなかった。 確かに契約書にはサインしたが、ありきたりのことが書かれていただけで途中からはキチンと読んでいなかった。 園長は私が動揺するのを見越してか、私の契約書のコピーを準備していた。 園長から契約書のコピーを受け取ると、目を通す。 契約書の真ん中辺りに確かに、その記述はあった。 “飼育を担当していた動物が、亡くなった場合には担当動物を担当が代行する“と。 つまり、私と誠さんがカバになるということ。 誠さんはこの状況を分かっているようだった。 園長から、これからカバの展示スペースのリニューアルと亡くなったカバの型を取り、着ぐるみの製作にあたり時間を取るということとが告げられた。 その間、私たちは特別休暇をもらえることになった。 突然、カバの着ぐるみに入るように言われ動揺したものの、少し楽しみな面もあった。 以前勤めていた会社のイベントでゴジラの着ぐるみを見た時、私はときめいてしまった。 しかもそのゴジラに入るのが男性でなく女性、その上その女性が自分と親しい人物だったので、羨ましくて仕方なかった。 そして私の気持ちを知ってか知らずか、会社からは彼女のサポートを命じられた。 近くで彼女の姿を見ていて私は着ぐるみ、しかもリアルな着ぐるみに入りたいという欲望が大きくなっていった。 そして自分の欲望を満たすために、やってはいけないことをしてしまった。 ゴジラの着ぐるみを家に持ち帰ってしまった。 イベントの後片付けと称して、マイカーを持ち込んでゴジラの着ぐるみを持って帰った。 少し拝借してすぐに返すつもりだった。 しかし、気づけばかなりの時間が経っていた。 幸い社内でゴジラの着ぐるみが紛失したという声は全く聞こえてこなかった。 時間の経過と共に、私はゴジラの着ぐるみの虜になっていて手放すことができなくなっていた。 着ぐるみを取り返されたくない思いから、会社を辞めて動物園に転職したのも一つの理由だ。 因みにゴジラに入っていたのは私より小さな女性だったが、無理をすれば着ることもできる。 着ぐるみの中は広いので体を捻って、1人でファスナーを閉めることもできた。 転職後、忙しく働いていた私にご褒美のような特別休暇。 さて、もらったはいいが特別休暇の使い方に困る。 まずはしばらくご無沙汰していたゴジラの着ぐるみに入ることにした。 足を通して体を潜り込ませ、ファスナーを閉めようと、体を捻ったところで携帯が鳴った。 やれやれと思いながら、ゴジラから出かけたところで携帯は鳴り止んだ。 このままゴジラに戻ろうかとも考えたが、せっかく途中まで脱いだので着信を確認することにした。 着信はカバの飼育のパートナーである誠さんからだった。 すぐに折り返すと誠さんはすぐに出た。 暇してるなら一緒に出かけないかと誘われた。 ずっと気になっていた誠さんからの誘い、すぐに返事を返して、いそいそと出かける準備を始める。 1時間後、待ち合わせの場所へと到着。 手を挙げて私を呼ぶ誠さんが彼氏だったらいいのにと妄想する。 待ち合わせ場所は動物園近く。 しかし、今日は動物園の休園日。 どこへ行くのか聞くと、園長からあった話を噛み砕いて説明しながら歩き出した。 動物園は歴史が長いのだが、来園者の減少や動物の餌代で経営不振に陥っていた。 そこで園長は亡くなった動物そっくりの着ぐるみを造って、従業員に動物を演じてもらうことを思いついた。 もちろん、そんな造り物ではすぐバレてしまうと思っていた。 しかし、意外にもバレなかった。 もともと、動物園の動物は野生動物と違い動きがほとんどなかったからだ。 これに味を占めた園長は、日頃から動物の世話をしている飼育員に目をつけた。 飼育員なら、動物を一番近くで見ているので動きを真似ることもできるだろうと考えた。 それに動物の世話をする必要がなくなると、飼育員を解雇しなければならないが動物として働いてもらえば問題もない。 こうして動物が亡くなる度、飼育員が動物になっていったのだと教えてくれた。 トラやライオンはすでに人に入れ替わっていること。 猿は偏向ガラスを用いて小さく見えるようになっていることやペンギンやレッサーパンダも同様であることを教えてくれた。 ただ、ゾウガメは時々ふれあい広場に出ないといけないのでそこで、子どもたちに触られたりイタズラされるので大変だとも教えてくれた。 それでも餌の準備から餌やり、糞尿の片付け掃除をすることを考えると、始めは慣れない者もいるが動物を演じることを楽しむ者もいると教えてくれた。 動物園の裏口に来ると誠さんはIDカードをかざして、ドアのロックを解除し園内へ。 私も後に続く。 仕事を始めた当初、副園長に園内を案内してもらった時、ここには近づかないように言われた場所があった。 誠さんは私をそこへ連れて行ってくれた。 入口で先ほどと同じようにIDカードをかざす。 ドアが開くとそこは天井の高い幅の広い通路が伸びていた。 そして通路の両側には引き戸があり、それぞれドアの大きさは全く異なり、さらにドアには動物の絵が描いてあった。 誠さんが猿の絵の描いてあるドアをノックすると、中から「ハイ!」と返事が返ってきた。 扉を開けると、中に茶色の全身タイツを着た人がいた。 1人はテレビを見て、もう1人は立っていた。 「玲奈ちゃん?」 私は茶色の全身タイツ姿で立っている人に声をかけた。 「あ、聡美さん!お久しぶりです」 と玲奈。 「元気だった?ところで」と言って、玲奈の全身を見る。 茶色の全身タイツを着て、顔だけが玲奈ちゃん。 「これって」 私の言葉に玲奈が反応する。 「私、今はお猿さんなんですよ」 そう言って毛皮を着始める。 足を通すと全身タイツの足が毛の生えた足に代わる。 腕も同様に毛の生えた腕に代わり、頭を被ると真っ赤な顔のお猿さんになった。 首元にある尻尾をお尻まで下げると、ファスナーが閉まりお猿さんが目の前に現れた。 ファスナーは深い毛に隠されて全く見えない。 「すごい、ホンモノみたい」 私の言葉に両手を床につき、猿を演じる玲奈。 「あとはね、お猿さんのマスクを私の顔にくっつければ、瞬きも口も動かせるんだよ」 と言って、玲奈はお猿さんの歯のようなマウスピースをはめて見せた。 その瞬間、猿の檻が開放された時のことが鮮明に思い出された。 不自然な動きをし私を見つめていたのは玲奈であったと。 「挨拶か?」 テレビを観ていたもう1人の猿役の男性が、誠さんに声をかけた。 「まあ、そんなところ、またよろしくな!」 と誠さんは声をかけて部屋を出た。 私もついていく、玲奈は嬉しそうに手を振っていた。 次に訪れた部屋はゾウガメ。 同じようにドアをノックする。 返事がない。 再びノックすると、男性が顔を出した。 「お!誠か 入れよ」 「お前もやっとコッチ側へ来たか」 「そんなところだ」と誠が返す。 「隣がパートナーってわけだな、まあどうぞ入って」 と言って部屋へ通された。 部屋の中にはゾウガメが1匹と園内スタッフの女性が1人いた。 ゾウガメは長い首をゆっくりと持ち上げてコチラを見る。 途端にカメとは思えないスピードで、私の方へ向かってきたかと、思うと女性スタッフの方へ振り返り長い首を振り始めた。 女性スタッフは慌てた様子でゾウガメに駆け寄ると、甲羅の左右真ん中辺りの助甲板(甲羅構成している一枚)を外すと、ナットが現れる。 それを工具を使って外し、背甲部(甲羅の上部)を取り外す。 そうすると、亀の表皮が剥き出しになる。 その表皮を縦に割るようにファスナーが走っている。 それを開くとグレーの全身タイツが出てきた。 全身タイツ人間は胸の膨らみや頭の後ろにあるお団子から女性だと推測できた。 全身タイツ女性は着ぐるみから、体を起こす。 その顔にはゴーグルと酸素吸入器のようなマスクが取り付けられていた。 ゴーグルは目の部分からホースのようなものが伸びている。 そして酸素吸入器のようなものを外したのだが、中はボールギャグのようになっていて涎が垂れる。 顔が露わになって私はようやく気づいた。 「明美さん!」 「久しぶり、聡美ちゃん」 この明美さんは私が飼育員になりたいので、ずっと相談していた人。 そして、飼育員の空きが出たからとこの動物園へ呼んでくれた人。 ただ、私は念願の飼育員になったが、明美さんの姿を動物園で見ることはなかった。 そういえば、私が動物園に来た時にはゾウガメのコーナーはすでに存在していた。 だから、明美さんと会うことがなかったのだと理解できた。 「聡美ちゃんも、いよいよこっちに来るんだね」 私はよく分からなかったが、 「ハイ」 と返事を返した。 「ところで、聡美ちゃんは何の飼育員だったの?」 「カバです」 「そうか、カバか、水に入らないといけないから少し大変かも、でも優遇されるからやり甲斐があると思うよ」と。 “ ? “ キョトンとしている私に明美さんは説明を始めた。 この動物園はもう知ってると思うけど、一部が動物ではなくて着ぐるみを着た人が演じてるの。 そして動物を演じている人は動物園から少し離れたマンションを与えられて、そこで生活してるの。 ちなみに、通勤の際はマンションから動物園のこの施設まで地下道で繋がっているので、他の飼育員に詮索されることはないけど、同時に会えなくなるの。 この施設は “オアシス“と呼ばれているから覚えておいて。 で、さっきの話に戻るね。 優遇されるというのは、水に入ったり、私たちみたいにお客さんと触れ合ったりした場合、特別手当が出て給料が増えるのよ。 私はある程度理解ができ、なるほどといった感じで頷いていた。 私は気になっていたことを明美さんに聞いてみた。 「ゾウガメの中はどうなってるんですか?」 明美さんは「いいよ」と言って説明を始めた。 まず、このゴーグルだけど、チューブのようなものがついてるでしょ。 私は頷く。 そうだなぁ、百聞は一見にしかずというし、覗いてみてと明美さんは私にゴーグルをつけてくれた。 ゴーグルの中はというと、ゾウガメの目に繋がっているようでゾウガメの目を通して外が良く見える。 それで私を見つけた明美さんいやゾウガメは私のところに近寄ってきたことが分かった。 これは呼吸用ね。 そう言って明美さんの口にボールギャグのようなものをウエットティッシュで拭きながら教えてくれた。 確かにボールギャグの真ん中には穴が開いている。 この穴がゾウガメの口に繋がっていて呼吸ができる。 でも、どうしてボールギャグなのかというと、うっかり声を出さないため。 口いっぱいにボールが入っていると、唸り声はあげることはできても、言葉は発することはできない。 動物園にいる以上は徹底して動物を演じなければいけないということも教わった。 明美さんからは休園日には、着ぐるみのメンテナンスや破損箇所がないかのチェックのため着ぐるみを着てスタッフに確認してもらうことや猿やゴリラのように指を使えない動物については園内スタッフが着ぐるみの脱着の際にはサポートについてくれることも合わせて教えてくれた。 誠さんたちの話も終わったようだったので、ゾウガメルームを後にした。 「もう一つだけ良いかなあ」 誠さんが少し申し訳なさそうに聞いてきたが 私は快く了承した。 次はトラと聞いてトラの絵が描かれたドアを探す。 探しているとカバのドアを見つけた。 私たちの部屋だ。 私はカバの部屋のドアに手をかけ、ゆっくりと開く。 中は照明も点いておらず真っ暗。 入口のスイッチを押すと照明が点灯した。 中はだだっ広く端の方にテーブルとイス、奥には畳も二畳ほどひかれていた。 あとは簡易式の更衣室に冷蔵庫やポットもあった。 ここでご飯があれば十分生活が出来そうだなと思った。 我に返って誠さんを探すと、誠さんはドアの絵を確認しながらかなり進んでいた。 私はカバの部屋の照明を慌てて消して誠さんの後を追いかけた。 トラのドアが見つかりノックする。 すぐに女性の声がしてドアが開いた。 中からはスタッフ女性がでてきた。 「井上先輩に挨拶を」 誠さんが恐縮しながら伝えると部屋へ通してもらった。 部屋の中にはトラが2匹いる。 2匹はこちらを睨みつけた。 1匹はこちらへゆっくりと向かってくる。 もう1匹は視線を逸らしその場に寝そべった。 その動きは本物のトラにしか見えない。 ゆっくりと近づいてくるトラは唸り声をあげ、今にも襲いかかってきそうで怖い。 誠さんがしゃがむとトラはそのまま誠さんの方へ。 そして誠さんに襲いかかった。 押し倒された誠さんに乗りかかるトラ、私が食べられると思い声が出た。 「危ない!」 その声に反応したトラは人間くさい動きでスタッフ女性に何か指示をした。 スタッフ女性はトラに駆け寄るとお腹の辺りを触り、そこにあったファスナーをゆっくりと開く。 トラは誠さんから離れて体を起こし二本足で直立する。 大きく開かれたトラのお腹からはトラ柄のタイツに覆われた人の手が出てきた。 その手はトラの頭を押さえて上半身を振る。 すると今度はファスナーからトラ柄のゼンタイが出てきた。 全てトラ柄のゼンタイで覆われていて顔は分からない。 人にしては足が不自然な感じに曲がっているためふらついているので、女性スタッフの用意したイスに腰掛ける。 背面にあるゼンタイのファスナーを下ろしようやく男性の顔が出てきた。 しかし、口には何かを咥えている。 後で聞いた話では、息を吹き込むことで、トラの声を出すことができるそうだ。 口に咥えていたものを外すと、 「おお、誠お前も動物デビューか」 と横柄なものの言いよう。 でも、誠さんは頭を下げて対応していた。 簡単に挨拶を済ませるとトラルームを後にした。 トラルームでは聞き辛かったことを誠さんに聞いてみた。 トラの足が不自然だったのはどうなっていのかということを。 誠さんは嫌な顔せずに答えてくれた。 トラの後ろ足が特殊な形のブーツになっていてそれを履くことでトラの足に見せていると。 そして今日挨拶をした人たちは誠さんと仲の良い元飼育員たちだったり、先輩ということも教えてもらった。 しかし飼育員の誠さんがなぜ、この裏事情に詳しいのかも疑問に思い聞いてみた。 誠さんはカバの飼育員の前に別の動物の飼育員だった。 それはサイ。 動物園で飼育されていたサイが亡くなり、展示スペースのリニューアルとサイの着ぐるみが完成した頃、サイは乱獲と感染症で絶滅危惧種に指定された。 さすがに絶滅危惧種をどうやって入手したのか監査が入る可能性や着ぐるみに入っている人ごと連れていかれる可能性もあり、サイのコーナーはなくなった。 どのみちサイはなくなっていたかも知れないとも。 それは着ぐるみがリアリティを追求し過ぎたため、かなりの重量で誠さんはともかく、相方の女性はほとんど動くことができなかったから。 そんな話を聞いて、誠さんとはその日は別れた。 自宅に戻ると急いで飛び出していったので、部屋の中が散乱していた。 片付けもひと段落し、ソファに腰掛ける。 ソファには急いで脱ぎ捨てたゴジラの着ぐるみがこちらを向いていた。 まるで着て欲しいと言うように。 リアル着ぐるみを着ている人たちを見て、自分も着ぐるみを着たくなっていた私はゴジラに入る事にした。 ゴジラに入って体を捻ってファスナーを閉めた時、部屋のインターホンが鳴った。 「またぁ」 思わずこぼす。 どうしようか迷っているとまたインターホンが鳴る。 面倒くさくなり居留守を決め込む事にした。 “ガチャ“音がしてドアが開く。 ゴジラの中からドアが開くのが見えた。 “ヤバッ!」鍵かけるの忘れてた。 誰が来たのか分からないがもうダメだと思い、ゴジラのままソファにもたれかかる。 「こんにちは、聡美?いないの?」 入って来たのは前の会社の同僚の洋子。 彼女とは仲が良く、よく私の部屋で家呑みをしていた。 当然、洋子の目にゴジラが映った。 靴を脱いで部屋に上がると真っ直ぐ私、いやゴジラに向かってきた。 「聡美、これって!」 もう、わたしがゴジラの中にいることが分かっているようで、洋子はゴジラに話しかける。 誤魔化せる訳はないが、取り敢えず死んだふりを決め込む。 洋子は背後に回りファスナーを開けた。 涼しく新鮮な空気に続いて洋子の言葉がゴジラに入ってきた。 「やっぱり、隠れてた」 モゾモゾとゴジラの着ぐるみから出る。 暑くてかいた汗と気不味さからの冷や汗が止まらない。 「ゴジラの着ぐるみがなくなってたのは、聡美が持って帰っていたからだったのね」 洋子にはゴジラの紛失がバレていた。 そのまま正座をして、洋子のお説教を聞く。 私の退職後も会社はゴジラの着ぐるみの有無に気づいていないことを洋子に聞いた。 結果2人で協議し、着ぐるみはこのまま私の部屋に置いて、時々洋子が遊びに来た時はゴジラになるということで話はついた。 洋子はカバンから何かを取り出した。 それは彼女がイベントの時、ゴジラの中で着ていたインフレータブルのラバースーツ。 洋子が久々にゴジラの着ぐるみを着たがっていることが分かった。 同時に私の退職とゴジラの着ぐるみがなくなったことから、私が着ぐるみを持って帰ったということに洋子が気づいていたことになる。 “何故だろう?“ その疑問を直接洋子にぶつけてみた。 洋子からは私自身も気づいていない答えが返ってきた。 イベントの時、私は洋子のサポートをしていたのだが洋子から見て私の様子がいつもと違うことに気づいたそうだ。 その違和感は洋子が着ぐるみに入る時に顕著に見られたようだ。 それで洋子は私が着ぐるみに入りたがっているのではと疑念を抱いたらしい。 それは洋子もゴジラの着ぐるみに好んで入っているからこそ分かったことである。 私自身は普段どおりに振舞っているつもりでいたが、全然そうではなかったようだ。 お互いになんとなくゴジラの件は納得した。 そして洋子は久々にゴジラの着ぐるみを今から着たいと言い出した。 私はある条件を提示した。 それは目隠し。 洋子にしっかりと目隠しをしてからゼンタイを着せる。 ゼンタイの上からもさらに目隠し。 インフレータブルのラバースーツを着せてからゴジラの着ぐるみへ。 インフレータブルのラバースーツを少し膨らませてから、秘部にバイブが当たるように固定した。 バイブのリモコンをラバースーツの外に出し背中のファスナーを完全に閉めてから空気を送り込む。 ラバースーツがパンパンに膨らむと、目隠しは外れることがなくなり、バイブは秘部に押さえつける形となった。 目隠しが気に入ったのか、洋子の入ったゴジラは興奮しているようで、手足を楽しそうに動かしている。 もっとも、バイブには気づいていないようだが。 「もうちょっと待ってね」 洋子に声をかけて私はベッド以外物のない寝室でビデオ撮影の準備をする。 準備が整うとゴジラの手を引いて寝室へと誘導する。 ビデオカメラを回し始めてからバイブのリモコンをオンにして、リモコンをゴジラの着ぐるみの中へ放り込み素早くゴジラの着ぐるみのファスナーを閉める。 洋子は異常に気づいたようで、ゴジラの着ぐるみ越しにバイブを何とかしようとしている。 しかし、着ぐるみ越しではどうすることもできない。 洋子は感じているようでゴジラは小刻みに震えているが、その場から動かない。 バイブがいいところを責めているようで、ブルブルと震えていたゴジラは膝をつき前のめりに倒れた。 倒れたところでバイブの攻撃が止むわけではない。 床に寝転がり喘ぎ声をあげ始めるゴジラ。 ベッドの広くなっているヘッドボードに置いてあったビデオカメラを手に取ると、床で伏せた状態で喘ぐゴジラを近くで撮影する。 これは私がしてみたかったこと。 着ぐるみに閉じ込められているので、自分ではどうしようもない状況の中で、秘部をバイブで責められるというシチュエーション。 ゴジラの中で気持ちよくなっている洋子を自分に置き換えると濡れてきた。 バイブは洋子が使っているから、私は電マを手にベッドに飛び乗る。 電源を入れ自分が着ぐるみに入っている状況を床に転がり喘いでいるゴジラを横目で見ながら妄想を膨らませる。 ゴジラからの喘ぎ声が大きくなる中、私の声も大きくなる。 時間的には私も洋子も大差なく逝ってしまった。 私はベッドで深呼吸しながら、呼吸を整える。 私が落ち着いてきた頃、ゴジラが再び床を這い回りながら喘ぎ出した。 先ほどは声を必死に抑えているようだったが、今度は違う。 くぐもった声が部屋中に広がる。 「ダメダメダメ、逝っちゃう、逝っちゃう」 を繰り返している。 「聡美止めて、お願い、壊れちゃう」 「あぁぁー、ダメ、ホントに止めて」 床でうつ伏せで左右に揺れているゴジラを私はただ眺めていた。 「逝く、逝く、逝っちゃう、逝っちゃぅぅぅぅ」 声がゴジラに吸い込まれるように消えていった。 静かな時間が続くが、それも長くは続かない。 ゴジラは三たび動き出した。 「聡美、助けて、止めて、ごめんなさい」 謝られるような覚えはないが、洋子が必死なことは分かる。 仕方なくファスナーを開けることにした。 ゴジラにワザと覆い被さり、ファスナーを開けようとするが今までにないほど、左右に体を振るゴジラ。 ロデオでもやっている感覚で、ちょっと悪ふざけをしてから、ゴジラの着ぐるみのファスナーを開けようとした時、洋子は動かなくなってしまった。 ゴジラの背中のファスナーを開けて、バイブを止める。 ラバースーツ越しに洋子の体を揺すってみるが、全く動かない。 ラバースーツ越しでも感じる体の熱さ。 どうやら洋子は気絶してしまったようだ。 私が乗っていた位置はバイブのちょうど上辺り、暴れるゴジラを押さえつけてファスナーを開けようとした位置は覗き穴兼呼吸穴の辺り、加えて冷たい空気でラバースーツを膨らませていないので、洋子が今まで経験したことのないような暑さに気絶してしまったのだろうと推測できた。 ラバースーツの空気を抜いてから洋子をゴジラの着ぐるみから引っ張り出す。 小柄な洋子だが、気絶した人間の体は想像以上に重くて引っ張り出すのに苦労した。 気絶から目覚めた洋子にはこっ酷く怒られたが、最後にはまた次回も同じようにやって欲しいと言われた時、私は固まってしまった。 ビデオはというとゴジラの喘ぐシーンはいい感じに撮れていたのだが、自分のオナニーも映り込み正直恥ずかしかった。 【後編】に続く


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