まずは【アマリンちゃん】の口の部分を外すと大きな穴が空いた。 ここから体を滑り込ませていけばいいのだが、少し抵抗があった。 なぜなら、私はこれから【アマリンちゃん】に食べられてしまうような感じがしたから。 とはいえ、美羽に指導してもらいながら足から【アマリンちゃん】の中へと入っていく。 思っていたよりもスルスルと体は【アマリンちゃん】に丸呑みにされていく。 足を通したり、腕を通す際に美羽からアドバイスがあったが、美羽の言うほど引っ掛かりもなくあっさりと足も腕も通すことができた。 頭まで私の全身が【アマリンちゃん】の中へと収まった。 頭の部分は大きく作られているのか、スペースがあった。 【アマリンちゃん】の水色の瞳から光が差し込み、想像していたよりも着ぐるみの中は明るく感じた。 今のところ入って来た口の部分がガッツリと空いているので全く苦しくない。 全身を包まれているので暑さは感じるが堪らなく暑いわけではなかった。 「凛、口のところ塞いでも大丈夫?」 「うん、お願い」 私はそう返事をしてドキドキしていた。 私、天野 凛という存在は着ぐるみ【アマリンちゃん】にこれから完全に呑み込まれてしまうのだから。 【アマリンちゃん】の口の部分は、外側からしか閉める事ができず防水ファスナーになっているようだった。 ファスナーが閉じられ完全に着ぐるみ【アマリンちゃん】に閉じ込められると暑さがグッと増した。 でも我慢できない暑さではなかった。 「凛、どう?大丈夫?」 美羽にそう聞かれて声を出して答えそうになり留まった。 “着ぐるみって声出しちゃあダメなんだよね” そう思った私は頷いて見せた。 着ぐるみの中に少しゆとりがあるせいか、頷いただけでも頭が振れる。 「OK!じゃあ、少し歩いてみよう!」 美羽に誘導されて部屋の中を歩いてみるが、やはりゆとりがある分歩くたびに着ぐるみの中で体が固定されていないので体が振られてしまう。 「うん、じゃあ、脱がせていくね」 【アマリンちゃん】の口の防水ファスナーが開かれ、私は着ぐるみの外へ出た。 「どうだった?初めての【アマリンちゃん】は?」 私がどう答えていいのか答えに迷った。 美羽より細いから中がブカブカで動きにくかったなんて口が裂けて言えない。 だが、歩いている様子や全身タイツ姿を見ていた美羽は気づいているようだった。 「凛、かなり動きにくそうだったね、実は【アマリンちゃん】は私に合わせて作ったんだ、だから凛には少し大きいと思うよ」 「う、うん、そうなんだ」 なんとも歯切れの悪い返事をしてしまったが、美羽は全く気にしていなかった。 それよりも別の話を始める美羽。 「着ぐるみの中は暑かったでしょ!」 「うん」 「でもね、春先の海の水温はかなり低くなっているからかなり寒いんだよ!」 「うーん、それはなんとなく想像がつくかな」 私もこの土地の出身、春の海の冷たさは心得ている。 そんな私に美羽が続ける。 「私ね、溺れそうになりながら春の海に【アマリンちゃん】で潜った?いや浸かったかな、だけどかなり水が冷たくてビックリしたくらいなの」 私は美羽の話に頷いて見せ、美羽は話を続ける。 「だから、凛に【アマリンちゃん】を着てもらってブカブカなのを確認しておきたくて」 「確認って、何かあるの?」 「実は今、水面下で凛の要望を叶えるべく話が進んでるから楽しみにしておいて、それから今日は全身の採寸してもらうからね」 「採寸?」 「うん、凛が身バレしないためのものだよ」 その後、美羽にその事を聞いても、笑顔で秘密と返されるだけだった。 その後、帰り間際に業者の人が来て私の体を細かく採寸してもらって打ち合わせを終えた。 それ以降の打ち合わせでは【アマリンちゃん】の着ぐるみは全く出てこなくなった。 私的には着ぐるみを着るのが楽しかったので、少し残念だった。 その後は【アマリンちゃん】となった時の段取りなどを現地に出向いて確認をしていく。 当然、ベテランの海女さんたちにも挨拶をし、交流を図り着ぐるみで潜る際のサポートをお願いして回った。 そんな【アマリンちゃん】始動のため関係者との交流を続けていた。 ある日、久々に【アマリンちゃん】になる機会が訪れた。 しかも今回は私専用の全身タイツなども揃ったと聞いてワクワクした。 すでに会議室には【アマリンちゃん】の着ぐるみが置かれていた。 私が1人で会議室で待っていると、美羽と美波ちゃんが台車に幾つかの段ボール箱を載せて現れた。 「なになに?」 私は着ぐるみに関するものである事は間違いないことからテンションが上がって美羽に尋ねた。 美羽は積み上げられた段ボール箱の一番上に置かれたものを手にすると、私の前へと持って来た。 そして、私の目の前で開いた。 私は段ボール箱の中を覗いて、目を輝かせて声を上げた。 「凄く可愛い!」 つづく