会議室に戻ると美波ちゃんが私の姿を見て声を上げて驚いていた。 「凄い!天野先輩ですよね」 そう聞かれて私は頷いて見せた。 リアル【アマリンちゃん】については美波ちゃんも詳細までは聞かされていなかったようで、恥ずかしいくらいのリアクションに少し戸惑った。 私の周りをグルリと回った美波ちゃんが言った。 「このリアル【アマリンちゃん】はどうやって着たんですか?」 確かにそう思うだろう。 ファスナーはおろか着ぐるみをどうやってきたのかも分からないのだから。 「また、教えてあげるわよ」 そう言ってテンションの高い美波ちゃんを美羽が宥めた。 「じゃあ、次は【アマリンちゃん】を着てもらうけど、凛いいかなぁ?」 「ウン!モチロン!」 私の声が変わっている事に再び驚く美波ちゃん。 「もういちいち驚かないの!」 そう言って美波ちゃんを諭す美羽。 そんな美羽が段ボールから取り出したのは、海女さんが着るようなツーピースの両面スキンのウエットスーツだった。 おまけに同じ両面スキンの目と口だけ穴の開いたマスクまであった。 「ミワ、コレドウスルノ?」 私が尋ねると美羽は答える。 「決まってるじゃない、凛が着るのよ」 「エエ!ワタシ、モウキグルミキテルンダヨ!」 「大丈夫、大丈夫、今も全然暑くないでしよ」 そう言われて気づいた。 インナーとリアル【アマリン】ちゃんの着ぐるみを着ているので暑くて仕方ないはずが、全く暑くもなく快適だった。 「ホントダ」 「ね、着せるの手伝うから、美波も手伝って!」 美羽の勢いに押され私は2人に両面スキンのウエットスーツを着せてもらう事になった。 ロングジョンになったウエットスーツに足を通した後、腕と頭を通してビーバーテールでツーピースのウエットスーツを一つにする。 意外だったのは着るのにさほど苦労しなかった事。 両面スキンのウエットスーツは裏も表もゴムが剥き出しなので滑りが悪く着るのにかなり苦労するはずなのだが… 。 だが、リアル【アマリンちゃん】の肌は滑りが良く簡単にウエットスーツを着る事ができた。 ウエットスーツに着替え、すっかり海女さんらしくなったリアル【アマリンちゃん】を私が姿見で見ていると、背後から美羽が両面スキンのマスクを近づいてくるのが見えた。 しかし、ここは敢えて抵抗せずに美羽にマスクを被せてもらう。 マスクは首の部分が長くなっていたが、こちらも滑りがよく簡単に被る事ができた。 そんな私にグローブとブーツも履かせて、あっという間に顔も誰だかよく分からない海女さんにされてしまった。 「どう?凛、これだけ着ても暑くないでしょ!」 美羽は説明書に少し目を通してから言った。 確かに暑くない、それにウエットスーツの動きにくいさは少しあるものの、それほど苦になるほどではなかった。 私は自分の状況を確かめるために手をグウ、パーさせたり歩き回ったりしていると、美羽と美波ちゃんが【アマリンちゃん】の着ぐるみの準備を始めた。 “まさか、このまま【アマリンちゃん】に入るの?” 両面スキンのマスクを被せられ口が動かしにくくなった私がそう思っている間にも着々と準備を進める2人。 まずは【アマリンちゃん】の口の部分を外すと大きな穴が顔を覗かせる。 「じゃあ、凛、入って入って」 家にでも招き入れる調子で【アマリンちゃん】の口から中へ入るように勧めてくれる美羽。 私は不本意ながらも、リアル【アマリンちゃん】海女さんバージョン姿で、ゆるキャラ【アマリンちゃん】に丸呑みにされていくのだった。 すぐに違和感を感じた。 以前に入った【アマリンちゃん】とは違い、着ぐるみの中がかなり窮屈だったから。 今日はリアル【アマリンちゃん】の着ぐるみの上からウエットスーツまで着ているからかも知れないと思ったが、それだけではなさそうだった。 首を傾げながら下半身が呑み込まれた私に美羽が言った。 「以前の【アマリンちゃん】と違うでしょ!内側を発泡ゴムでコーティングしたので、今の凛にピッタリだと思うよ」 “なるほど!” それで窮屈だけでなく中に入っていくのも苦労するのだと頷けた。 体全体が【アマリンちゃん】に呑み込まれた私に美羽が声を掛けてくる。 「凛、口のところ塞いでも大丈夫?」 私は大きく2度頷いたが、着ぐるみの中で頭が以前のように振れることはなかった。 防水ファスナーが閉められて、私はゆるキャラ【アマリンちゃん】となった。 初めて【アマリンちゃん】になった時はブカブカだったが、今はピッタリフィットして私のための着ぐるみ【アマリンちゃん】になった事を実感した。 これだけ重ね着しても、少し息苦しさはあるものの初めて着た時のような暑さはなかった。 そして、私には一つ気になる事がある。 初めて【アマリンちゃん】になった時は、海女さんが着ているような上着が浴衣風で赤い帯に白い短パン衣装を着ていたのに今日の【アマリンちゃん】は裸なのだ。 3頭身のぽってりとした、いかにもゆるキャラ体型の【アマリンちゃん】とはいえ、裸というのはいかがなものだろう。 そう思っていると、美波ちゃんが光沢のある水色のワンピースの水着を持って来た。 「天野先輩、今からコレを着せますね、片足ずつ上げてください」 美波ちゃんに促されて、片足ずつ上げてワンピース水着に足を通していく。 さすがというべきか、ワンピースの水着は【アマリンちゃん】の体にピッタリフィットした。 リアル【アマリンちゃん】とは違い、ぽってりした【アマリンちゃん】の水着姿を見ながら、太ったらこんな感じなんだろと思った。 なるほどね、海女さんのゆるキャラでも潜る時は観光客に見てもらうために、この目立つ水着を着て潜るんだと思った。 そう思いながら姿見でどんどん変わっていく自分の全身を確認していると、鏡越しに美羽と美波ちゃんが段ボールから何か出しているのが見えた。 それを見て私は心の中で呟いた。 “ウソっ!” つづく