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ごむらば
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8.陰キャな彼女と陰キャな俺 【怪獣着ぐるみ拉致編】

その後も百合子とは良好な関係を築いていたのだが、一つ問題が生じた。 それはアミューズメントパークで不定期に開催されるウルトラマンショー。 ウルトラマンショーとリアルペニスの着ぐるみの届く日が重なってしまったのだ。 百合子が受け取りはしてくれる事になったのだが、俺はどうしても外せない用事があるからと説明し、必ず来週末一緒に過ごす事を条件に用事を優先させてもらった。 百合子に対して後ろめたい気持ちはもちろんあったが、ガルベロスの中の女性にもう一度会いたい気持ちも大きくなっていた。 ガルベロスを助けたお礼として貰った入場券で入場した俺は真っ直ぐはショーの会場へと向かった。 ショーの開始までにはまだかなり時間があるので俺が一番乗りだった。 今日は流石に前回のような事はないと思うが、嫌でも期待してしまう。 その期待の現れはショーの席の位置にも現れていた。 最前列の舞台に向かって左側。 ココが一番ガルベロスを近くで見ることができるから。 不定期に開催されるウルトラマンショーはウルトラマンは新しくなるのだが、基本的に怪獣は使い回し、それも同じ怪獣の出演が多く、最近5、6回のショーにはガルベロスが必ず出ている。 俺がこのショーを見始める以前から怪獣は替わっていないのかも知れないと思う。 その証拠にガルベロスを助けた時、着ぐるみは細かなところがいくつも補修されていた。 いろいろな想像を巡らせ、その時を待つ。 だんだんと会場に親子連れが入ってくると、自ずとテンションが上がってきた。 ショーが始まると司会のお姉さんが子供たちとコミュニケーションを取る背後から詰め寄るガルベロス。 その姿に気づいて悲鳴を上げて逃げていくお姉さんと入れ替わるようにウルトラマンが登場し、ガルベロスに勢いよく飛び蹴りを喰らわせた。 死角からの攻撃に受け身も取れず、ステージの中央から左端まで飛ばされたガルベロス。 男性アクターの飛び蹴りで軽々と飛ばされたところを見ると、今日もガルベロスの中身は女性で間違いなさそうだ。 反撃に備えて構えるウルトラマンに対して、ガルベロスは受け身が取れずに飛ばされて軽い脳震盪でも起こしたのか、すぐには立てないでいた。 怪獣を倒したウルトラマンに子供たちの声援が送られるが、着ぐるみを脱げば背の高い男性が小柄な女性に飛び蹴りを喰らわせて吹っ飛ばしたのだ。 着ぐるみを着て行われるショーだから許されるが、普通にそんな事をすれば暴行でしかないと思った。 ガルベロスに感情移入しているからこそ、見えてくる視点だと思いつつも心の中で俺はガルベロスを応援する。 ゆっくりと立ち上がろうとするガルベロスの凶悪なキバの生えた口がこちらを向いた時、ガルベロスが俺に小さく手を振ってきた。 それに対して俺はガッツポーズで応えた。 立ち上がったガルベロスはステージの中央へ移動し、ウルトラマンとの殺陣が繰り広げられる。 凶悪な長い爪のついた腕を振り回すガルベロスの攻撃をかわすと、ウルトラマンはガルベロスの胸にパンチを入れた。 堪らず後退りするガルベロス。 俺は胸の辺りを思いっきり殴られて、息ができなくなっていないかとガルベロスの事を心配した。 ガルベロスは後退りしながらも体を回転させて、尻尾でウルトラマンに攻撃を加えたが、ウルトラマンはジャンプ一番ガルベロスの尻尾攻撃をかわすと背後から覆い被さるようにしてガルベロスを押し潰した。 また、死角からの攻撃だ。 ウルトラマン卑怯だぞ。 そう思いながら、自分よりも体重の重い男性アクターに押し潰されたガルベロスを心配する。 押し潰されても頑張って立ち上がるガルベロスを見て、俺は拳を握りしめ声には出さずにガルベロスを応援した。 そんな一方的にやられているガルベロスに別の怪獣レッドキングが登場し、ウルトラマンに攻撃する。 ウルトラマンは堪らず、怪獣たちとの距離を取る。 レッドキングの顔の位置がウルトラマンと同じくらい。 レッドキングの頭の下にある首の付け根辺りにある覗き穴の位置や腕の位置を見てもガルベロスとそう大差がない事からレッドキングの中身もおそらく女性だろうと俺は思った。 2対1となったウルトラマンに援軍が。 スピーカーから流れる声とともに新たなウルトラマンが登場し、勢いよくレッドキングに体当たりをした。 男性アクターに勢いよく体当たりをされたレッドキングの女性が耐え切れるはずもなく、そのまま吹っ飛ばされて後方にいたガルベロスとぶつかって2体の怪獣は倒れた。 ステージの右側で握手を交わすウルトラマンに会場からは拍手が起こるが、体の大きな男性が女性たちを力でねじ伏せているようにしか、俺の目には映っていなかった。 レッドキングは仰向けで手足をバタバタさせているが、ガルベロスは立ち上がるとウルトラマンたちに向かっていく。 ガルベロスの攻撃はあっさりとかわされると、ガルベロスの両側にウルトラマンたちが… 。 そして逆さまに持ち上げられたかと思うと、ガルベロスは勢いよく背中からステージへと落とされた。 着ぐるみは分厚く作られているが、あれではガルベロスの中の女性への衝撃はかなりのものだろう。 俺の予想通り、ガルベロスの動きは一瞬止まり動けなくなっていた。 それでもここはショーのステージ。 ヨロヨロと立ち上がると左端の舞台袖へと消えていく。 そしてレッドキングもその後を追い掛けるように舞台袖へと消えていった。 怪獣を倒したウルトラマンたちに駆け寄る司会のお姉さん。 ここからは司会のお姉さんを通してウルトラマンたちと子供たちの交流が始まる。 その間、ガルベロスとレッドキングの中の女性たちは休憩できるが、投げられたり蹴られたりと痛い思いをしている怪獣役の女性たちを心配しながらも、そんな怪獣の中で頑張っている彼女たちを想像して俺は興奮していた。 子供たちの交流を邪魔するように、休憩を終えたガルベロスとレッドキングが現れた。 その後もウルトラマンたちも怪獣たちも増えてステージ狭しと戦いを繰り広げ、最終的には怪獣とウルトラマンで1対1で戦い、ウルトラマンが怪獣を撃破していきショーは終わった。 いよいよ待ちに待ったパーク内を歩きながらの触れ合いの時間となった。 専用のゲートからウルトラマンたちが次々と現れて、パーク内へと繰り出していく。 レッドキングや後半から登場した怪獣たちもウルトラマンの後について歩き出したのだが、ガルベロスの姿が見当たらない。 もしかして、ショーで怪我をして参加できないのだろうか? そんな不安を抱きながらも待っていると、ガルベロスが出てきた。 凶悪なキバのついた口をこちらに向けたかと思うと一つ頷いて歩き始めた。 出発が遅かったのと、見た目がグロテスクなためあまり子供が寄ってこない。 俺にとっては好都合だった。 今日のガルベロスは幸い足は痛めていないようで歩みは順調だったのだが、カモフラジュされたパーク内にあるスタッフ用の退避小屋の近くでガルベロスの足が止まり、小屋へと向かっていく。 それに俺もついて行った。 言葉なく南京錠を爪で指差すガルベロス。 開けろという事だろう。 番号を覚えている俺は南京錠を開けて、ガルベロスと小屋へと入った。 小屋へ入るなり抱きついてくるガルベロス。 俺も嬉しくてガルベロスを抱きしめた。 そして聞いてみた。 「今日は足は痛くないのにどうして?」 「貴方にお礼がしたくて!私をお持ち帰りして欲しいの」 そう言ってガルベロスの爪が指し示した所には、前回ガルベロスが回収されていった大きな袋と台車が用意されていた。 「でも、流石にガルベロスごと女性を連れて帰るのは… 」 そう躊躇している俺にガルベロスは言った。 「もし車で来てるんだったら、この小屋の近くの扉からバックヤードへ出て、真っ直ぐ行った扉の向こうが駐車場よ」 「ちなみに、扉のロックナンバーはこの小屋の南京錠と同じだから」 それだけ俺に伝えると、ガルベロスは台車に載せられた大きな袋の中へと自ら入っていった。 袋の中で体を丸めたガルベロスがこちらを向いて言う。 「連れて帰ってくれたら顔をお見せします」 そう言われて俺の決意は固まった。 “連れて帰ろう!” もう後先の事は考えられなくなっていた。 大きな袋の口を閉めると台車を押して小屋を出た。 つづく

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