陰キャ女子であり、スーツアクトレスであり、ド変態でもある百合子。 一緒にいるだけでいろいろな顔を見せてくれる百合子が俺は大好きだ。 そんな百合子の部屋で会う日だけでなく、最近では俺の部屋でも会う日が増えてきた。 古くなって百合子が貰譲り受けたガルベロスの着ぐるみは今、俺の部屋に飾ってある。 そんなガルベロスの着ぐるみを見ながら俺はある事を思いついた。 早速、次の休みに百合子に試してみようと思う。 不敵な笑みで出迎えた俺に警戒気味の百合子。 なかなか勘が鋭い。 百合子に試そうと思っているのはガルベロスの着ぐるみを着せてのダンス。 陰キャな自分を変えるべくダンスも練習したが、続かなかったと百合子は話していた。 「今度、ダンスの練習に付き合ってよ」 そう言われた事を思い出したので、着ぐるみを着せてダンスの特訓をしてあげようと考えたのだ。 だが、そんなストレートにガルベロスの着ぐるみを着せたまま、ダンスの練習には持ち込めるとは思っていない。 だから、ある作戦を実行した。 「ねぇ百合子、今日はガルベロスになって怪獣酒場ならぬ、怪獣喫茶で俺を接客して欲しいなぁ」 そう言うと百合子は首を傾げていた。 そこで俺は説明を加えた。 「メイド喫茶の怪獣版って感じなんだけど… 」 「それ、面白そう!」 百合子は笑顔で俺の提案を受け入れてくれた。 早速、ラバースーツに着替え、ラバーマネキン人形姿になるとガルベロスの着ぐるみの中へと入っていく百合子。 俺は着ぐるみの中にゆとりがあると飲み物を運ぶ際溢してしまうからと理由をつけていつも以上にウレタンを詰め込んでガルベロスをパンパンにしてから着ぐるみの背中のファスナーを閉めた。 窮屈で文句の一つも出そうなものなのだが、百合子は黙ってそれを受け入れた。 いつもより体に張りのあるガルベロスは実際の動物のように見えてそそられる。 そんなガルベロス用に準備しておいたメイド服を見せるとくぐもった声で百合子が言った。 「それを着せてくれるの?」 「うん!凝ってるだろ!」 大きく体を縦に振るガルベロスはノリノリだった。 着ぐるみにマネキンを入れてウレタンを詰めたガルベロスを採寸して購入したメイド服なのでサイズ的にはピッタリだった。 黒いミニスカートのワンピースに白いフリルの付いたエプロン、そして頭に付けるホワイトブリムをつけて最後に黒いタイツを履かせてみたが、途中で破れて無残な姿になったが、これはこれでヨシとした。 見た目は怪獣だが中身は女子。 くぐもった声でこんな独り言が聞こえてきた。 「一度メイド服着てみようかな?」 それを聞き逃さなかった俺は言った。 「良かったらラバーメイドになって、俺に1日奉仕してよ!」 「あっ!それいいね、メイド服姿が恥ずかしかったらノッペラボウでもいい?」 「全然いいよ!でも奉仕はしてね」 「うん!」 メイド服を着たガルベロスとそんな会話を交わした後、俺は自分でコーヒーを淹れて準備するとソファーに座り、メイドとなったガルベロスに言った。 「コーヒーをお願い」 そう言うと、ガルベロスはお辞儀するとキッチンの方へとゆっくりと歩いて行った。 その様子の一部始終を観察する。 キッチンに入ったガルベロスは凶悪な歯が付いた大きな口を向けて、コーヒーの位置とトレーの位置を確認していた。 その姿は見た目とのギャップもあり、かなり可愛い。 コーヒーとトレーの位置を確認すると、今度は長い爪の付いた両手の付け根で慎重にコーヒーカップを挟み、持ち上げるとトレーに乗せた。 百合子はガルベロスのキャラを完全に忘れ、慎重にコーヒーを扱っている。 トレーに乗せたコーヒーを大きな口の中から凝視しながら、ゆっくりと俺の方へとコーヒーを運んで来てくれるのだが、その姿は幼い子供が慎重にものを運ぶ姿に見えた。 普通なら時間の掛からない動作さえも時間が掛かってしまうのは着ぐるみだから仕方ないだろう。 見た目の凶暴そうでグロテスクな姿の上からメイド服を着せているので、そんなガルベロスは少し可愛く見える。 そんなガルベロスに俺はお願いをしてみた。 「コーヒーが美味しくなる魔法を掛けてよ」 俺がそう言うとガルベロスは固まり、少し考えていたようだが大きく一つ頷くと、長い爪の付いた手で精一杯ハートになるように手を形作った後、くぐもった声が聞こえできた。 「萌え萌えキュンキュン、美味しくなーれ!」 かなり恥ずかしかった事は百合子の声で分かる。 頑張った百合子に応えるように俺はコーヒーを飲んで言った。 「ああ!凄く美味しくなったよ」 そう言うとメイド服を着たガルベロスは嬉しそうな仕草を見せた。 俺の横へと座るガルベロスは甘えてきた。 メイドの仕事を終えたので褒めて欲しいのだろう。 「ありがとう」 俺はガルベロスの頭を撫でながら、そう言った。 「うん」 と小さくくぐもった返事が返ってきた。 「ところでメイド喫茶ではショーをやったりするところもあるみたいなんだけど、怪獣喫茶でもダンスを披露したりしてくれないのかなぁ?」 ダンスという言葉に百合子がビクッと反応した。 そんなダンスの話を聞いたのはつい最近のことだったので、百合子にも心当たりがあったようだ。 今まで甘えるようにくっついていたガルベロスが体を左右に振りながら後退りする。 そんなガルベロスの目の前に俺はあるものを差し出した。 それは光沢のあるスパッツと七分袖のシャツ、それにハイレグになったワンピース水着の3点セット。 一昔前にエアロビクスでもするような格好だが、ガルベロスのサイズに合わせて特注した事を伝えると百合子は諦めたように頷いた。 破れたタイツ、メイド服、ホワイトブリムも外すと、シルバーのテカテカしたスパッツを履かせ、同じシルバーのピッタリとした七分袖のシャツを着せていく。 もちろん、ガルベロスの3つの頭が入るように首元は大きく開いている。 上下のウェアを着るとガルベロスの体の凹凸がしっかりと浮き出てシルバーの輝きがガルベロスの体を綺麗に見せてくれた。 最後にガルベロスの青い体にも引けを取らないメタリックブルーのハイレグのワンピース水着を着せた。 「百合子、これでダンスの練習をしよう!上手く踊れるようになったら、ガルベロスが似合いそうなドレスを買ってあげるよ」 そう言ったが、ガルベロスの反応はイマイチだった。 「それとその衣装を着ていた簡単には着ぐるみから出られないよ!それに少し締めつけられるだろう」 そう言われてハッとしたのだろう。 「もうぉ、稔のイジワルぅ」 そう返す百合子の声は嫌がっている感じはしなかった。 むしろ、少し喜んでいるようにも聞こえた。 テレビの前のソファーを端へ移動させると、テレビでYouTubeのダンスを検索して流す。 始めは子供でも踊れる簡単なものから始めた。 右へ左へステップを踏んでジャンプする。 単純なものだが、着ぐるみを着ているとなかなかキツイのは見ていて一目瞭然だった。 動きがどんどん鈍くなり、2分も経たないうちに遅れ始め、3分が経つ頃には動かなくなっていた。 「百合子、まずは体力をつけないと!」 そう言って少し休憩を取った後、再び同じダンス動画を流した。 着ぐるみだけでも暑いのにラバースーツまで着ているのだから、当然暑さは半端ではない。 それでも動画に合わせて頑張って動いていたが、今度は2分も続かずにガルベロスは床に女の子座りで座り込んでしまった。 「大丈夫?」 思わず声を掛けたが、言葉なく頷くだけだった。 さすがに熱中症の危険もあると判断した俺はレオタードを脱がせて、黒光りするラバーマネキン人形のような百合子をガルベロスの着ぐるみから引っ張り出した。 頑張った百合子の体は異常なまでに暑くなっていた。 そんな百合子を抱いていると愛おしくなり、頭を撫でながらキスをした。 「よく頑張ったね、飲み物取ってくるよ!」 そう言って飲み物を取りに行こうとしたが百合子は俺の手を掴んできた。 「もう少しだけ… 」 そんな百合子に寄り添い、俺はしばらく一緒にいた。 それから何度かダンスの練習は続いた。 黒光りするラバーマネキン人形姿でのダンスに慣れてからガルベロスの着ぐるみを着てのダンスへとステップアップさせていき、最近ではガルベロスのまま百合子は華麗に踊れるようになった。 つづく