ホテルを先に出た俺はホテルから出てくる桃華をこっそりと待った。 桃華は決して着替えられない事は分かっている。 桃華のバッグに着替えもハイヒールも詰めて南京錠で俺がロックしたから。 これから全身ショッキングピンクで目立ち過ぎる桃華の後をつけて、動画を撮影しようと思っている。 全身光沢のあるショッキングピンクの桃華がホテルから出て来た。 ダウンジャケットのフードを深く被り、顔を隠しているが、それ以前に全身ショッキングピンクで周りの注目を浴びていた。 俯き加減で歩き出した桃華。 周りの目は冷ややかで、すれ違うたびに人々がヒソヒソと桃華姿を見て話す姿が見られた。 中には写真や動画を撮影する者も出てきた。 かく言う俺もその1人なのだが。 俺と桃華が会うホテルは駅と駅の中間にある。 俺と桃華は帰る方向が違うため、ホテルを出て別れた後は、それぞれ自宅の最寄り駅に近い駅へと向かう。 そのため、駅でバッタリ出会うことも無いようにしていた。 桃華は人々の冷たい視線に晒されながら、ヒソヒソとされる自分の噂話に耐えて下を向きながら歩き続ける。 当然振り返ることもないので俺は容易に桃華を撮影しながら尾行を続けた。 そのまま駅へ向かって電車に乗ると思っていたのだが、桃華は駅へのルートを外れた。 おそらく、全身ショッキングピンク姿では電車に乗って、自分の姿を晒すのに耐えられないと思ったのだろう。 ただ、桃華の住む高級住宅街はここからかなり遠い。 電車を使わないとなるとタクシーを利用すると思うのだが、裏通りを進んでいく桃華。 通りが細いため、タクシーが通ることはほとんどないだろう。 どうするのだろうと思いながら尾行するも桃華は駅からはどんどん離れていく。 どうやって家に帰るのだろうと不思議に思っていたのだが、桃華はボロアパートの前で足を止めた。 そして、バッグのサイドポケットから鍵を取り出し、その鍵でボロアパートの一室へと入っていった。 俺は桃華の入ったアパートの部屋の表札を確認しに近づく。 そこには確かに【桜井 桃華】の名前があった。 どうしてこんなボロアパートに桃華が… 。 ショッキングピンク好きの派手な桃華には似つかわしくないボロアパートだった。 そう思って立ち尽くしていると、俺は肩を叩かれた。 振り返るとそこには警察官が2人が立っていた。 その後ろにはパトカーも見えた。 何が起こったのか一瞬分からなかったが、心当たりはあった。 全身ショッキングピンクの桃華が注目されるのはもちろんなのだが、途中から俺にも人々の視線が注がれているようには感じていた。 そんな人々の誰かが俺をストーカーだと思い通報したのだろう。 俺は桃華のことばかり見ていたので、周りのことが全く見えていなかった。 途中から俺は気づいていなかったが、警察官に尾行されていたのかも知れない。 つづく