初入店後、お腹が空いたので近くのファストフード店へと入った。 注文を済ませトレーに載せたハンバーガーとポテト、ドリンクのセットを2階のイートインスペースへと運ぶ。 外が見える窓際の席について、今日あった事を振り返りながらドリンクを飲み、ポテトを口に運んだ。 「ふぅー、疲れた!」 そう呟いてハンバーガーを一口食べた時だった。 後ろで大きな声で電話をする男性の声が聞こえてきた。 振り返った僕は固まってしまう。 なぜなら、そこにいたのは僕とリホちゃんを酷い目に合わせた小太り中年男だったから。 僕は嫌悪感いっぱいで睨みつけるように小太り中年男を見ていた。 そんな僕と小太り中年男の間をタイトなスカートにジャケットを羽織ったハイヒールの女性が横切った。 その時、僕の顔を見て一言。 「どうしたの?そんな怖い顔して」 キリッと整った身なりの可愛い女性にそう指摘された僕は我に返って言った。 「いや、別になんでもないんです」 そう言うとまた窓の外を向いてドリンクを口にした。 「そうなの?隣り座ってもいい?」 「あっ、どうぞ」 その可愛い女性はまさに僕の好みの女性だった。 その女性は席に座るとドリンクを飲んで大きくため息をついた。 「ふぅー、疲れたぁ」 この女性もいろいろあったのだろう。 仕事で疲れたのがヒシヒシと伝わってくる。 この可愛い女性と接点を持ちたいと思った僕は思い切って話し掛けてみた。 「お仕事大変だったんですか?」 「そう大変だったの仕事、今日はいつもより長くて特に疲れたわ」 そう言う女性の口調からも疲れているのが伝わってきた。 「そうなんですね、僕も今日初めての仕事で大変な経験をして、いろいろ疲れました」 「でしょうね、初めてでアレはね」 僕の話に同意してくれる女性を思わず凝視してしまう。 「どうしたの?」 首を傾げて僕を見る女性の瞳に吸い込まれそうになっていると女性が言った。 「あっ、私は片桐 梨穂子(かたぎりりほこ)24歳だよ」 突然の自己紹介に驚きつつも僕も自己紹介した。 「榊原 忍です、20歳です」 「へぇー、シノちゃん私よりも四つも年下なんだ」 そう言われてドキッとしたが、親しみを込めてそう呼んでくれたのだと思った。 しばらく、そんな奇跡の出会いをした梨穂子さんと世間話をしながらハンバーガーやポテトを食べた。 梨穂子さんの登場で、小太り中年男の事はどうでもよくなっていたのだが大声で電話で話しているので気になって振り返ってしまう。 見るからに不潔な小太り中年男は席を荷物などで独占し、その周りには誰も座れず、冷やかな他のお客さんの視線にも動じないで大声で電話で話していた。 また、小太り中年男を睨みつけていると梨穂子さんが言った。 「仕返ししちゃう?」 梨穂子さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべると、まだ残っているドリンクのフタを外した。 「シノちゃんもまだドリンク少し残っているでしょ、フタ外して」 僕は梨穂子さんの言う通りにした。 そして、トレーを持って席を立つと僕を小太り中年男の方へ向かうように誘導する。 電話に夢中の小太り中年男がかなり近づいた時、梨穂子さんが後ろから僕の背中を押した。 僕は突然のことでバランスを崩してトレーを投げ出してしまった。 トレーが飛んでいった先は小太り中年男。 フタを開けておいたドリンクが見事に小太り中年男に掛かった。 咄嗟の事でビックリしている小太り中年男。 そこへ梨穂子さんも小太り中年男にトレーごとドリンクをぶっ掛けた。 そして、梨穂子さんは語気を強めて僕に言った。 「あなたどう言うつもり、急に止まらないでよ!服汚れたじゃない!ちょっと来て!」 そう言うと小太り中年男を放ったらかしにして僕の手を握ると階段を駆け降りていく。 背後で小太り中年男が叫んでいるが、お構いなしにそのまま店を飛び出した。 つづく