集合時間が近づいてきたので、ウルトラウーマンの着ぐるみに入る真由。 それをサポートする俺。 ウルトラウーマンの着ぐるみに入る前に真由は黒光りするノッペラボウで言った。 「今日の撮影頑張ったら、今夜も私をいっぱい愛してね!」 「もちろんだよ!」 そんな会話をした後、真由はウルトラウーマンとなった。 今日の撮影は海で行うため、俺は海パンに着替えた。 ウルトラウーマンも準備された黒い競泳水着へと着替えた。 着ぐるみだから水着はなくてもいいように思えるのだが… 。 水着の上からアロハシャツと俺は短パン、ウルトラウーマンはミニスカートを履いて集合場所へと向かった。 今日はレンタカーはなく、全員マイクロバスに乗って移動する。 目的地は港、そこで船に乗り換えてアクティビティのできる離島へと向かう。 離島へと渡してくれる船頭さんはウルトラウーマンを見て驚いていた。 離島なら観光客も少なく、迷惑を掛けずに撮影ができるとスタッフは考えたのだろう。 俺とウルトラウーマンは水着になるとライフジャケットを着け、まずはシーカヤックへ。 簡単に説明を受けた後、スケルトンになったシーカヤックにウルトラウーマンが前、俺が後ろで乗り込んだ。 スケルトンカヤックは全て透明でカヤックに乗りながら綺麗な海の中が覗ける。 漕ぎ始めてすぐにウルトラウーマンがくぐもった声を上げた。 「すごい!」 着ぐるみを着ている時は声を出さないようにしていた真由も海の美しさに思わず声を上げたようだった。 そんなウルトラウーマンに後ろから抱きしめてキスをしたいところだが、残念ながらこれは撮影。 俺たちと並走するカメラマンとスタッフの乗ったカヤックもいるので抱きしめるだけに留め、新婚カップルが海の中を堪能している演技をした。 魚を見つけるたびに指差すウルトラウーマン、それに頷く俺の様子を撮影した。 だが、あまりに真由が時間も暑さも忘れて夢中になるものだから、ウルトラウーマンのマスクの覗き穴や呼吸穴から汗が漏れ出した。 撮影もいい画が取れたので、大量に汗が漏れ出るウルトラウーマンを心配して撮影は終了し引き上げた。 昨日とは違い、車の中で涼む場所もない。 幸いアクティビティを楽しむ人も他にいなかったので、ウルトラウーマンのマスク、そしてラバーマスクを脱がせて真由の水分補給が行われた。 そして今日はこれから顔から水を垂れ流すウルトラウーマンを何度も見ることになる。 水分補給の後はパラセーリングの撮影を行う。 ボートに引っ張ってもらい、空中散歩を楽しむ。 真由はノリノリだが、俺は高いところが苦手だ。 スタッフに笑顔になるように促されながら、ゆっくりとパラシュートは上空へと上がっていく。 怖がっている俺の手の上から手を重ね握ってくれるウルトラウーマン。 そして俺の方を向いて一つ頷いて勇気をくれた。 お陰で俺はビビりながらもパラシュートは大空へと舞い上がり沖縄の海の絶景を空から楽しむことができた。 空中散歩を存分に楽しんだ後、パラシュートはゆっくりと高度を下げていくのだが嫌な感じがしてきた。 それは真由も感じているようで、俺の手を握る手に力が入る。 今度は俺がウルトラウーマンの手の上に俺の手を重ねてギュッと握った。 ウルトラウーマンは体を強張らせ俺に体を寄せた後、すぐに水上に不時着した。 当然のようにウルトラウーマンの顔に海水が掛かりあたふたする真由。 そんなウルトラウーマンの顔に海水が極力掛からないように俺は真由を庇ったが完全に防ぐことができず、海水がウルトラウーマンのマスクの中へと侵入した。 ウルトラウーマンを抱きしめ少しでも海水が入らないように持ち上げているところにボートが戻って来て、大量に水を掛けられた。 そのせいでウルトラウーマンのマスク内にも海水が入り呼吸ができずに咽せ返す真由。 そんな真由を先にボートに上げて、俺も続けてボートへと引き上げてもらった。 ボートの上では下を向いてウルトラウーマンのマスクの穴から海水を垂れ流しながら咽せる真由の姿があった。 「大丈夫?」 そう声を掛けると、俺はすぐに真由の着ぐるみとラバーマスクも脱がせた。 真由は真っ赤な顔で涙目になり、鼻水を垂れ流して俺に抱きついてきてパラセーリングは終了となった。 着ぐるみの中に水が入ってくる恐怖を経験した真由。 次のバナナボートの説明を受けている時俺はもうこれ以上の撮影は彼女への負担が大き過ぎると進言した。 パラセーリングの撮影後を見ているスタッフの中には俺の意見に頷く人もいたのだが… 。 真由本人がバナナボートに乗ってみたいと言い出した。 こうして長めの休憩を挟んでバナナボートの撮影を行うこととなった。 バナナボートはパラセーリングと比べものにならないほど、ウルトラウーマンのマスク内に海水が入ってくるのは避けられないだろう。 着ぐるみを着ていない俺ですら、バナナボートから振り落とされれば、鼻や口から海水を食うことになるだろう。 そんなバナナボートに跨り準備ができると、俺の前にいる真由が後ろを向いてくぐもった声でこう言った。 「私、頑張るからね」 その言葉に俺はキュンとした。 真由は俺にいっぱい愛されたくて、今から辛い撮影に臨むのだと知ったから。 撮影が始まると同時にボートがゆっくりと動き出し、バナナボートが引っ張られる。 始めはゆっくりと引っ張られているだけだったが、ボートはだんだんと速度を上げていく。 今までいい感じに揺れているだけだった波が、速度が上がると表情を変えて襲い掛かってくる。 激しい縦揺れに加え、左右にも振られる。 振り落とされないようにバナナボートについた持ち手を握っているのだが、指が剥がされていくような感覚に襲われていく。 それでもなんとか耐え忍んでいると、ボートがターンする。 縦揺れはもちろんのこと、強い横Gに耐えきれずに俺もウルトラウーマンもバナナボートから振り落とされて海の中へ落ちた。 自分のことだけでも大変だが、俺はすぐにウルトラウーマンに近づいて声を掛ける。 「真由、大丈夫?」 声は出せないのは分かっている。 ウルトラウーマンは大丈夫というように首を縦に振ると、マスクの穴という穴から海水が飛び出してきた。 俺が真由の体を支えるように少し持ち上げると、顔を下へ向けて着ぐるみのマスクの中に入った海水をしっかり排水していた。 ある程度排水が済むと真由は咽せることなく呼吸して小さくくぐもった声で言った。 「ビックリしたぁ、でも楽しいね」 「そうだね」 そんな会話を交わした。 その後も何度かバナナボートに乗り振り落とされたが、真由はすぐに呼吸しないでしっかりと着ぐるみのマスク内の海水を排水してから呼吸していたので咽せることはなかった。 そして今日の撮影は無事に終了した。 真由への配慮から少し早めに切り上げてホテルへと戻ることとなった。 早めに切り上げて昼過ぎにホテルへと戻って来れたのだが、スタッフや俺の前以外で真由は素顔を晒さず、ウルトラウーマンのまま移動してホテルまで戻ってきた。 部屋へ入るとすぐにウルトラウーマンの着ぐるみを脱がせた。 熱中症などになっていないか心配だったからだ。 だが、意外と本人は元気だった。 真由曰く、着ぐるみに体が慣れてきたそうだ。 ランチをホテルで摂った後、真由がこんなことを言い出した。 「明日の撮影って、シュノーケリングとスキューバダイビングだよね」 「うん、そう言っていたね」 「じゃあさあ、今からホテルのアクティビティで空きがあったら予行演習してみない?」 そんな真由の元気さに驚きつつ、確認する。 「俺は大丈夫だけど、真由は大丈夫なの?」 「もちろん、大丈夫だよ!」 そう言って笑顔でピースサインを俺に見せてきた。 ホテルのアクティビティのフロントへ行って尋ねると、枠があるということでスキューバダイビングを申し込む事にした。 一つ気になることがあった、それはライセンス。 俺はある程度経験しないと取れないアドバンスウォーターのライセンスを持っている。 “でも真由は?” そう思っていると真由は俺よりランクが上のダイブマスターのライセンスを持っていた。 そこで初めて思った。 もしかして、新婚旅行でスキューバダイビングの撮影をするのも見込んでキャスティングしたのではと。 ボートで沖まで出て美しい珊瑚の広がる沖縄の海を俺も真由も存分に楽しむことができた。 かなりはしゃいでいた真由は帰りのバスで寝てしまった バスから部屋まではおぶって部屋へと連れ帰り、ベッドの上で俺も力尽きてそのまま眠ってしまった。 俺は真由とは本当の夫婦になれた、そんな錯覚をするほと幸せな気分だった。 つづく