介護される側として、この1週間は全く自由がなかったので今日からは自由に動ける。 そんなことを思いながら目覚めた私だったが、私の視界は相変わらず肌色で覆われていた。 “あっそうか、まだ要介護スーツを脱がせてもらえていないんだ” “さすがに早い時間だから介護実習の運営スタッフも来ていないよね” そう思ったのだが、昨日までの全く見えない視界ではなく、肌色越しに薄っすらと周りを見ることができた。 “あれっ?!” “1週間も要介護スーツを着ていたので目が慣れて見透せるようになったのかな?” 始めはそんなぐらいにしか思えなかったのだがすぐに異変に気づいた。 背中で組んで使えなかった腕が動かせるようになっていたのだ。 ただ、動かせるとはいっても肩を掴むような感じで腕が折り畳まれているので、それほどの自由はない。 そして、足は相変わらず折り畳まれたままだった。 なんとか腕が使えるようにならないかと、短くなった腕を動かしていると何かに触れた。 柔らかくて肌色をした人のようなもの。 恐る恐る、それを確認するとそれは人のようで少し動いた。 その人も私を確認する様に触れてくるのだが、どうやらその人も腕を折り畳まれている様だった。 体を這いずるように動かしてその人との距離を詰めて分かったこと。 それはおそらくだが私と同じ姿にされているということ。 その人は明らかに私より体が大きかった。 すぐに想像できるのは彼が五十嵐 京介さんではないかということ。 状況が未だに飲み込めないが、特殊な介護実習はまだ続いてるのだろうか? そして私と彼はまた別の実習生に介護を受けるのだろうか? そんなことを考えながらも不安に駆られて、私も京介さんもお互いの距離を詰めると短い手足で抱き合うようにくっついた。 そんなくっついた私の体が持ち上がり、京介さんと引き離される。 咄嗟のことで驚いて短い手足をバタバタさせたが、なんの抵抗にもならずそのまま私はベッドから降ろされて床に四つん這いの状態で置かれた。 そんな私の目の前には文字の書かれた紙が置かれていた。 目を凝らしてよく見ると、それはこの介護実習が行われる前に私がサインした誓約書だった。 正直、文字が多く運営スタッフが泊まり込みで1週間介護実習を行うことや介護のための器具はあるが、補助がないことを説明されたので内容はそういった内容だと思い込んでサインした。 四つん這いの私にも分かるように、運営スタッフはある部分をペンで差し示しながら文字をなぞっていく。 [介護実習中に性行為などに至った場合、介護実習終了後、どのように扱われても一切申し立て致しません] そこにはそんな文字が並んでいた。 思い込みもあったが、それでもある程度は目を通したはずなのだが、見落としていたのだろうか。 京介さんは介護リフトで吊り上げられた後、私と同じように床に四つん這いで降ろされていた。 そして、私と同じ様に運営スタッフが誓約書をペンで差し示しながら文字をなぞって読まされていた。 誓約書を読まされた後、私と京介さんは同じケージに詰め込まれる。 2人で入るにはあまりにも小さなケージだったが、それでも2人一緒にいられることが嬉しかった。 そんな私たちの耳に信じられないような運営スタッフの会話が耳に入ってきた。 「あの食事に混ぜた媚薬の効果は絶大だなぁ」 「ああ、前回もそうだが今回も性欲には程遠そうな人間でもあれほど狂ったように交尾をするんだからなぁ」 「全くだ、顔も分からない相手とアソコまでよく交尾できるなんて、あの媚薬凄いなぁ」 「俺は監視カメラ越しに何度も抜かせてもらったぜ!」 “全部見られていた!” 監視カメラなど、どこにも見当たらなかったのに巧妙に仕掛けられていたのだろう。 しかも、媚薬のせいでムラムラして性行為に及んだことも分かったが、誓約書の文言も読まずに私も京介さんもサインをしてしまっていた。 そんな自分にも腹が立って声を上げようとしたが、喉の奥までチューブが挿し込まれて人ではない獣のような呻き声しか出なかった。 「おいおい、ヒトイヌが怒ってるみたいだぞ!」 「そう怒るなよ!これから大金持ちにヒトイヌとして何不自由なく飼われるんだから喜べ!」 「あっ、そうそう今着ているヒトイヌ型のシリコンスーツはもう一生脱ぐことができないから、ヒトイヌとして生きて行くんだぞ!ハッハッハッ!」 人の不幸を笑う運営スタッフを私は睨みつけた。 だが、シリコンスーツに阻まれた私の目を彼らが見ることはないだろう。 私は悔しくて悔しくて仕方がない中、同じくヒトイヌにされた京介さんのことを考えていた。 介護する側と介護される側の両方で私は京介さんと交わっていたのに顔を見たことがない。 “一目でいいから彼の顔が見たかった” そう思いながら、私と彼はケージに詰め込まれお互いの顔を見ることなく、大金持ちの家へと運ばれていくのだった。 つづく
ごむらば
2025-11-07 16:34:44 +0000 UTCJan Koda
2025-11-07 15:22:56 +0000 UTC