新婚旅行から数日後、俺は都心の料亭の前にいた。 真由は姿を現さず、体調不良と連絡が入り撮影は延期となった。 そのため、スーツ姿のウルトラの父の俳優さんと着物姿のウルトラの母の女優さんは着替えを済ませ、ロケバスでスタンバイしていたのだが、なぜか俺が申し訳ない気持ちになった。 それよりも俺は真由のことが気になって仕方なかった。 2週間後、結納のシーンの撮影を行うと連絡が来た。 真由の体調はすぐに良くなっていたようだが、撮影する料亭を押さえられなかったので2週間後にずれ込んだらしい。 正装をした俺と俺の両親役、晴れ着姿のウルトラウーマンの真由と前回同様の正装をしたウルトラの父、ウルトラの母との結納のシーンを撮影した。 撮影が終わると流石にウルトラの父もウルトラの母もキツそうに見えた。 特にウルトラの母は着ぐるみの上から着物を着ていたので、中の女優さんが体調を崩さないか心配した。 一方、真由は新婚旅行の時の撮影よりもはるかに楽だったのだろう。 動きから見てもウルトラの父やウルトラの母とは全く動きが違い、むしろ晴れ着を着て楽しそうにしているようにさえ見えた。 それに真由が着ぐるみフェチだと知ったので、俺の真由に対する心配も幾分か減ったように思えた。 撮影後、ロケバスで事務所へと一緒に引き上げて着ぐるみから着替えを終える真由を俺は待っていた。 あまりにも距離が近くなり過ぎて、新婚旅行の撮影の際、連絡先を聞きそびれていた。 真由の体調不良を聞いた時、連絡が取れないことが歯痒かった。 しばらく待っていると着替えを終えた真由が出てきた。 「もしかして私の出待ちですか?それともストーカー?」 笑顔でそうふざける真由に言った。 「一緒に帰ろ!」 「うん!」 俺は真由と手を繋いで歩き出す。 「体調不良って聞いたけど、大丈夫だったの?」 「うん、ただの生理不順だよ」 「そうなんだ… 、あっそうだ、真由連絡先教えてよ!」 急に大きな声を出した俺をビックリしたように見る真由だったが、スマホを出して連絡先を交換した。 駅が近づいてくると繋いでいた手を恋人繋ぎに変えてギュッと俺の手を握って真由は顔を少し赤らめて言った。 「明日の10時に〇〇駅集合だよ!」 「えっ、俺聞いてなかったよ」 「言ってなかったんだよ、明日は私の両親に挨拶だよ!」 そんな会話をしているうちに駅に着いた。 帰る方向が逆なため、駅のホームで真由と別れる。 「じゃあ、また明日!」 「うん!また明日ね!」 そう言ってその日は別れた。 この撮影もそろそろ終わりであることは実感している。 あと撮影するなら親への挨拶と新婚生活のシーンくらいだろう。 そんなことを考えながら次の日を迎えた。 指定された駅に着くと、すでに真由がいた。 「おはよう宗介!」 「真由、おはよう!」 周りを見たがスタッフらしい人もカメラもなかった。 「スタッフは?」 「う、うん、家で待ってるかなぁ?」 妙な返事をする真由。 「あっそうだ、宗介を迎えに行くように頼まれて、ついでにケーキも買ってきて欲しいって言われたんだった」 そう言うと真由は俺の手を引いて駅前近くのケーキ店へと向かった。 ケーキを購入して歩くこと5分。 俺と真由はとある家へと辿り着いた。 表札を見て俺は妙な真由の行動にここで気づくことになった。 表札には【中谷】の文字。 「ここって?」 「うん、私の実家、宗介のことを両親に紹介したくて… 」 「えーっ!今日って撮影じゃなかったの?」 「うん、実は… 」 顔を真っ赤にして答える真由。 「ごめんなさい、急に私の両親に挨拶って嫌だったよね」 真由はそう言うと完全に下を向いてしまった。 「撮影じゃなかったんだ、じゃあ真由のご両親に挨拶に行こっか」 そう言って俺は真由の手を取り引っ張った。 「えっ、いいの?」 「良いも悪いも、真由こそ俺でいいの?」 「うん、もう私、宗介じゃなきゃダメなの」 「じゃあ、挨拶に行こう!上手く挨拶できるかなぁ?」 俺がそう言うと真由は涙を浮かべた目を拭って言った。 「私の両親も宗介のことをきっと気に入ってくれると思うよ!」 俺は緊張しながらも真由の両親に挨拶をした。 つづく