「最後にゼンタイを着せていきますね」 スタッフはそう言うとまた私の足下へ消えてしまった。 足からゼンタイを履かせてくれているのだろう、しかしあまりハッキリと触られている感覚がない。 ラバースーツよりもスムーズにゼンタイを着せていくスタッフ。 あっという間に両足を通すと、両腕も通してしまった。 最後に頭も黒いゼンタイで覆われてしまう。 ゼンタイは布製なので、息苦しさは正直あまり変わらない。 ただ、視界は格段に悪くなった。 光が当たっている箇所しか見えなくなり、少しでも暗いと全く見えない。 そんな私にスタッフが話し掛けてくる。 「体は動かないし、顔の凹凸もなくなり、生田さん完全にマネキン人形になりましたよ!」 そんなことを言われた私は少し嬉しかった。 スタッフは続ける。 「マネキン人形なのに、中に生きた人が入っているなんて見ているだけでドキドキしますね」 そう言われた私もドキドキしてきた。 私なドキドキが治らない私の背後へ回ったスタッフがゼンタイのファスナーを引き上げる。 いよいよこれでマネキン人形として搬入される。 確かにラバーマネキン人形というのは見たことはない。 お店にあるマネキン人形はプラスチックの様な硬質のものがほとんどで、稀にゼンタイのようなマネキン人形は見たことがあった。 よりリアルを追求しているのだと思い、自分の姿を姿見で見ようとしたが全く見えなかった。 スタッフはゼンタイの背中のファスナーを閉めたのに私の前に戻って来ない。 どうしたのだろうと思っていると、背中で何かしている感触だけはあった。 それを訪ねたくても、動くことも話すこともできない私はただただスタッフが説明してくれのを待ち、それをきくしかないのだった。 背中で何かするスタッフはかなり時間を要している。 一体なにをしているのだろうかと気になって仕方がなかった。 腰の辺りから始まり、今は背中の真ん中辺りまできた。 背中のファスナーが開かないように細工しているにしても時間が掛かり過ぎている。 そして首の後ろ辺りまできて、ようやく終わったようでスタッフは私の前に現れた。 「仕上げにゼンタイのファスナーが分からないように縫い合わせました」 「これで生田さんは呼吸するだけの生きたマネキン人形になったわけです」 「これからの撮影ドキドキしますよね」 「私も近くで生田さんを見守りますよ!」 無邪気にそう言うスタッフの声は楽しそうだった。 だが、私はそんなスタッフの言葉が怖かった。 これから私がどんな目に遭わされるのか知っている様で。 つづく