第1章 第3話
Added 2025-05-27 08:53:06 +0000 UTC第1章「目覚めの草原」 ⸻ 第3話「夜の音」 日が傾き始めると、草原の色が黄金から深いオレンジへと変わった。 足元の草が風に揺れるたび、さらさらと乾いた音を立てる。 「夜……か」 ドロシーはため息をつき、空を見上げた。 雲のない空に、星がぽつりと灯る。 身を隠すような場所もなく、ドロシーは丘の下の木陰に腰を下ろした。 体温の下がった空気に、少し肩をすくめる。 「こんなところで、眠れるのかな……」 風の音のほかには、何の音もしない。 虫もいなければ、動物の気配もない。ただ、どこかの遠くで鐘の音が、またかすかに響いた。 さっきよりも、ほんの少しだけ近い。 ──あれは、誰かが鳴らしているのか。 それとも、風に揺れるだけの古い鐘か。 考えてもわからない。けれど、眠らなければいけなかった。 明日、また歩くために。 ドロシーは丸くなって、尾をたたみ、目を閉じた。 その夜──夢を見た。 見たことのない場所に、誰かが立っていた。 黒い羽の、男のような、鳥のような。 彼はこちらを見て、何も言わなかった。 そして目が覚めると、朝になっていた。